- 著者
-
浅田 順之
笹瀬 巌
- 出版者
- 一般社団法人電子情報通信学会
- 雑誌
- 電子情報通信学会技術研究報告. SANE, 宇宙・航行エレクトロニクス (ISSN:09135685)
- 巻号頁・発行日
- vol.108, no.267, pp.53-58, 2008-10-24
放送波を用いたバイスタティックレーダでは,送信局から直接伝搬する直接波やマルチパス波等の不要波のサイドローブ成分が,所望信号の強度に対して無視できないため,不要波抑圧が性能を向上させる上で課題となっている。従来の抑圧方式にはNLMS (Normalized Least Mean Square)規範の適応フィルタやサイドローブキャンセラを用いた方法があり,前者はNLMSによるため抑圧度が収束するまでかかる時間の問題になることや,目標の遅延時間がフィルタのタップ長以下となったとき,目標信号が影響を受ける問題がありSFN (Single Frequency Network)の放送形態を想定した場合,比較的長い遅延時間をもつ不要波が混入する可能性があるためこの問題は深刻化する。また,後者は地上デジタルテレビジョン放送の場合,参照信号がマルチパスの影響を受けている場合においても,ガードインターバルを利用して復調後再生した信号を参照信号として用いることで抑圧を行うことができるが,高精度な抑圧を行うためには高分解能で不要波の遅延時間を求め,その時間だけ遅延させた信号を抑圧用の参照信号とする必要がある。しかし従来のアナログ放送では参照信号のマルチパスの問題の解決は困難であり,また遅延時間を参照信号と不要波の相互相関で算出した場合,分解能は信号帯域幅の逆数で制限される問題がある。本論文では放送信号に含まれるSP (Scattered Pilot)信号に対してMUSIC処理を行い,高分解能で遅延時間を求め,伝送路の応答を考慮して各サンプル点での不要波の寄与から,不要波のレプリカ信号を作成し,所望信号と不要波が混在した信号からレプリカ信号を減算することで不要波を抑圧する方法を検討した。計算機シミュレーションで性能評価を行い,従来方法と比較した結果,提案方式は適応フィルタでの上述の問題点が生じず,かつ従来のサイドローブキャンセラの抑圧性能と比べて,不要波の入力が大きくなるほど,提案方式の抑圧性能が優位であることを示す。