著者
坂本 充 鈴木 邦雄 岩熊 敏夫
出版者
低温科学第80巻編集委員会
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.80, pp.591-601, 2022-03-31

尾瀬ヶ原及びその周辺域の学術調査は第3次が終了してから年月が経過しており,その後本格的な調査が行われていない.そこで2016年12月に第4次尾瀬総合学術調査団を発足させ,検討を重ね,基礎研究に関わる事業と重点研究に関わる事業を2017年度〜2019年度に実施した.尾瀬の調査研究を実施した背景は,温暖化の進行と湿原の劣化の懸念,変化する生物とその環境に関する最新かつ詳細なデータの欠如などがある.基礎研究と重点研究の2つの部会で学術調査を実施し,多くの研究成果を上げることができた.
著者
蔵田 和史 鈴木 奈央 笹本 実 加治木 聡 権藤 加那子 鬼塚 得也 森 智昌 永井 淳 加藤 熈 坂上 竜資
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.406-412, 2011-12-31 (Released:2018-03-20)
参考文献数
27

口臭の原因物質としては,口腔内プラークに由来する揮発性硫黄化合物が特に重要である.現在,種々の口臭抑制剤が市販されているが,このなかでも特にポリフェノール化合物には口臭の抑制効果があることが報告されている.これまでわれわれは,カキノキDiospyros kaki Thunbergの果実より得られた抽出液にトレハロースを加えて作られた消臭剤「パンシルPS-SP®」に着目し,in vitroにおけるPorphyromonas gingivalisに対する静菌作用と消臭作用,さらにメルカプトエタノールに対する消臭作用を報告してきた.そこで今回われわれは,カキノキDiospyros kaki Thunbergの果実より得られた抽出液を限外濾過し,「パンシルPS-SP®」よりもさらにポリフェノール化合物の精製度を向上させたものにトレハロースを加えて作られた消臭剤「パンシルPS-M®」(以下,パンシルと略す)を用いて,口臭の抑制効果を検証することを目的として,被験者100名の口臭を「MS-Halimeter®」(以下,ハリメータと略す)を用いて測定した.まず,起床1時間後に口臭を測定し,この値を基準値(コントロール)とした.その後,蒸留水を嚥下2分後,1.0%パンシル溶液を嚥下2分後と10分後に同様にして口臭を測定した.実験の結果,コントロールと比べて,1.0%パンシル溶液嚥下2分後と10分後では,ハリメータによる口臭測定値において統計学的に有意な減少が認められた(p<0.05).以上のことから,パンシルはin vivoにおいて口臭の原因物質である揮発性硫黄化合物に対し,消臭効果をもたらすことが明らかになった.
著者
光藤 尚
出版者
日本自律神経学会
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.56-57, 2020 (Released:2020-04-02)
参考文献数
7

起立性頭痛の鑑別診断として脳脊髄液減少症と体位性頻脈症候群が挙げられる.体位性頻脈症候群の起立性頭痛の機序は不明である.我々は体位性頻脈症候群患者6例に脳槽シンチグラフィーを施行し,6例全例に低髄液圧を確認した.体位性頻脈症候群は交感神経機能亢進のために低髄液圧を来すことが推定された.
著者
稲垣 善之 酒井 寿夫 野口 亨太郎 森下 智陽 藤井 一至
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第129回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.143, 2018-05-28 (Released:2018-05-28)

森林生態系の物質循環において、カルシウム、マグネシウムなどの交換性塩基類は、樹木にとっての養分として重要なだけでなく、プロトンの生成、消費にも関わる。交換性塩基の主な供給源は、降水と土壌母材の風化である。これらの寄与は、降水と渓流水の物質収支から評価することができる。本研究は、高知県四万十川流域の鷹取山試験地のモミ天然林において交換性塩基の動態を明らかにした。2011―2015年において主要な物質の降水による負荷量と渓流水による流出量を算出した。樹木の養分吸収量速度は、隣接する流域における過去の調査(Ando et al 1977)から推定した。カリウム、マグネシウム、カリウムの母材からの風化速度はそれぞれ27 kg/ha/yr、36 kg/ha/yr、106 kg/ha/yrであった。これらの物質の降水による供給速度は風化による供給速度の10%以下であった。また、日本の17流域における年流出量と交換性塩基流出量の関係をRMAで解析した結果、マグネシウム、カルシウムは、年流出量が大きいほど濃度が増加する傾向を示した。年流出量の多い地域では、樹木の吸収量に対して相対的に母材からの風化速度が大きいため、渓流水においてこれらの濃度が増加すると考えられた。
出版者
嚶鳴社
巻号頁・発行日
no.91, 1882-08
著者
Yuki G. Baba
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.51-53, 2013-09-30 (Released:2013-10-02)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

A new species of the genus Marpissa (Araneae: Salticidae), Marpissa mashibarai sp. nov., is described using specimens obtained from Yamaguchi and Tokyo Prefs., in Honshu Island, Japan. This species exhibits poorly marked sexual dimorphism in body size and coloration. Both sexes have the black median line on dorsum of abdomen, allowing us to distinguish it from the other congeneric species.
著者
遠藤 修司
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.82, no.837, pp.16-00026, 2016 (Released:2016-05-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

This paper proposes a design method that uses electric power steering (EPS) to reduce the effort required for handling in a vehicle. To accomplish this, the design must reduce the physical effort required of the driver, improve the controllability of vehicle dynamics, and adjust steering feedback to adopt the driver's characteristics. The influence of the stability factor and rear cornering compliance on handling and the effects of modifying these conditions were investigated. In addition, in order to compensate for the influence of these factors, EPS compensation features are addressed. Thus, desired steering characteristics are discussed as a function of steering frequency and yaw rate magnitude based on yaw rate and a Lissajous figure of steering torque. The influence of the stability factor and rear cornering compliance on a stable handling feeling are proven by simulation and linear analysis, and the conditions that cause a loss of this feeling of stability, even when vehicle dynamics are stable, are explored. EPS compensation functions are proposed against the influence of the stability factor and rear cornering compliance on the sense of handling. Furthermore, other EPS functions are proposed to compensate for the response from yaw rate to steering torque and to help the driver better understand the vehicle's behavior. Finally, the effects of EPS compensation functions on reducing the effort required for handling are demonstrated by a test where a single lane change was performed.
著者
宮下 和夫 上村 麻梨子 細川 雅史
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.18, no.7, pp.317-324, 2018 (Released:2019-09-02)
参考文献数
22

魚油はEPAやDHAを多く含むため,酸化安定性が低い。また,酸化の第一次生成物であるヒドロペルオキシド(ROOH)の安定性も低く,ROOHの分解によりアルデヒドなどの風味劣化成分が酸化のごく初期から生じる。魚油の酸化防止は,この風味劣化成分の抑制が鍵となる。一方,魚油の風味劣化についてはこれまでも多くの研究があるが,その主因については明確にはされていない。本項では,魚油の風味劣化成分について,特にその酸化初期に生成するアルデヒドに焦点をあてる。また,魚油の酸化に伴う風味劣化の効果的な防止法についても紹介する。
著者
上野 徳美
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.195-201, 1994-11-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
15

本研究は, 被影響性の性差, すなわち説得の受容や抵抗を規定する受け手の男女差の問題を説得の圧力 (自由への脅威) の強さとの関連において検証することを目的とした。とりわけ, 説得の圧力の大小によって性差の生じ方に違いが認められるか否か, また, 性差が見られる場合, そこにどのような心理的メカニズムが働くかを中心に検討した。実験は, 2 (説得メッセージの圧力: 大, 小) ×2 (受け手の性別: 男, 女) の要因計画に基づいて実施され, 説得メッセージの提示直後に, メッセージに対する反応が多面的に測定された。実験の結果, 説得に対する認知反応 (好意的思考) に関して受け手の性の主効果が見られ, 女性は説得に肯定的な反応を示したのに対して, 男性は否定的な反応を示した。話題に関する意見においては十分に有意ではなかったが, 性の主効果の傾向が認められた。また, 認知反応 (好意的思考と反論の両者) や送り手の評価に関して, 圧力の大きさと受け手の性との交互作用効果があり, 話題に関する意見についても類似の傾向が見られた。すなわち, 説得の圧力が小さい時には性差が認められないのに対して, 圧力が大きい時には女性被験者では説得を受容する反応が見られ, 男性被験者では説得への抵抗が生じた。これらの結果は, 説得による同意への圧力が大きい場合に被影響性の男女差が明瞭になりやすいことを示したものであり, 受け手の性の効果は説得の圧力の強さと相互作用することを強く示唆している。さらに, メッセージ接触中に生じる受け手の認知反応 (好意的, 非好意的思考) や送り手に対する評価が, 被影響性の性差を生み出す媒介過程として関与していることが示唆された。
著者
ブレア P. グラブ 長友 敏寿 安部 治彦
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.239-245, 2000-09-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
1 1

Head-up tilt試験の普及により, 再発性の失神および失神前駆症状が自律神経調節障害による一過性の起立性低血圧と徐脈に起因することが明らかになり, 神経調節性失神(neurally mediated syncope)として知られている. 一方, これまでの研究で, 血圧はさほど変化しないにもかかわらず, 起立時に心拍数が異常に増加し, 失神前駆症状・運動不耐性・疲労・ふらつき・眩暈などの起立性不耐性を発現する大きな患者群があることがわかった. 本障害は一般に体位性起立性頻拍症候群(POTS; postural orthostatic tachycardia syndrome)として知られるようになった. 明らかな原因は不明であるが, 軽度の末梢自立神経性ニューロパシー(部分的自律神経障害; partial dysautonomia)やβ受容体過敏性(β-receptor supersensitivity)が病態生理として示唆されている. POTSの診断には詳細な病歴調査と神経学的検査を含む理学的検査が必要で, 特にhead-up tilt試験における反応様式は重要である. 本稿では, 体位性起立性頻拍症候群の歴史的背景, 臨床的特徴と診断, 治療法について概説する.
著者
平原 達也
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:21888752)
巻号頁・発行日
vol.2018-MUS-121, no.29, pp.1-6, 2018-11-14

音響実験機器の諸特性は,使用期間が長くなると変化する.かつて,新しい機器はエージング (慣らし運転) を行い,使いこんだ機器も電源投入時にはエージング (暖機運転) を行うことが普通であった.ところが,今日では,電源投入とともに受聴実験や音響測定を始めることが少なくないように思う.ディジタル音響機器のエージングはもはや不要なのだろうか? 耳の諸特性も,使用期間が長くなると変化する.高齢者の耳は,そのフロントエンドの感度が低下するだけでなく,バックエンドのさまざまな機能が低下する.これは高齢者だけの問題なのだろうか? 本稿では,このような音響実験機器と耳のエージングについていくつかの事例を紹介する.
著者
吉村 あき子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

「メタ言語否定」は、命題の真理条件的内容を否定する「記述否定」とは異なり、先行発話の持つ様々な要因(前提、慣習含意や会話の含意、形態、スタイル、発音など)に基づいて、その先行発話に異議を唱えるものであり、否定は語用論的に多義的であるとHorn(1985,1989,2000^2)は主張する。本研究はメタ言語否定の全体像を明らかにすることを目標に、メタ言語否定の否定対象に対する統一的規定、メタ言語否定の現象から明らかになる自然言語の否定辞の意味、さらに、個別言語としての日本語におけるメタ言語否定の特徴を明らかにした。メタ言語否定の否定対象は、上記のように非常に多様である。しかしメタ言語否定という現象が自然類をなすのであれば、その対象に対して統一的規定が可能であるはずだという考えに基づき、発話の認知処理プロセスという視点から、メタ言語否定の否定対象は、エコーの元になるものによって必然的にあるいは一般的に伴われるが伝達されないもの、と規定できることを示した。自然言語の否定辞のコード化された意味について、Horn(1985,1989,2000^2)はグライスの精神とメタ言語否定/記述否定という現実に存在する使用の区別(語用論的多義性)の間のジレンマに苦しみ、Carston(1996,1998a, b,2002)の、否定辞の意味はメタ言語否定を含むどのような否定辞の例も真理関数演算子であるという主張も、本来の定義に沿うと矛盾を生じる。メタ言語否定の現象の詳細な観察分析から、自然言語の否定辞は、論理学において定義される真理関数演算子を超えた非常にgeneralな「異議を唱える」機能を持つものであると分析しなければ解決しないことを示した。さらに、日本語のメタ言語否定を観察することによって、日本語には「の」を伴う「〜のではない」のような、述語を含むレベルの帰属的な(帰属元を持つ)メタ表示の否定であることをマークする表現形式があること、このことによって通常の否定形式が用いられた場合に伴われるニュアンス/効果が説明できることを示した。
著者
山田 知典 河合 浩志
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.76, no.11, pp.1244-1247, 2010-11-05 (Released:2011-05-05)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1
著者
Taiki MIYAZAWA Ohki HIGUCHI Masato SASAKI Minh Tu NGUYEN THI Teruo MIYAZAWA
出版者
Center for Academic Publications Japan
雑誌
Journal of Nutritional Science and Vitaminology (ISSN:03014800)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.137-139, 2022-04-30 (Released:2022-04-30)
参考文献数
12
被引用文献数
1

Turmeric products have many useful physiological functions and are widely used as health food and food ingredient. Here, we report the use of HPLC-ESI-MS/MS to simultaneously quantify bisacurone and three curcuminoids (curcumin, demethoxycurcumin, and bisdemethoxycurcumin) in turmeric products (high viscosity liquid, granular powder, tablet, and solution). The results showed that the standard values and measured values of curcumin in each product were almost same. Demethoxycurcumin and bisdemethoxycurcumin were contained in each products. Meanwhile, the content of bisacurone differed greatly among the products. In particular, the highest amount of bisacurone was found in the turmeric product A (high viscosity liquid, 9.48 g/100 g product). It would become important to consider the bisacurone content in turmeric products.
著者
Seiya Ohki Miyu Kunimatsu Shingo Ogawa Hiroki Takano Tomomi Furihata Hiromi Shibasaki Akitomo Yokokawa
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.375-382, 2022-05-01 (Released:2022-05-01)
参考文献数
27
被引用文献数
2

Evaluation of endogenous melatonin (MEL) secretion using its urinary metabolites is useful for the treatment of circadian rhythm sleep disorders. The primary melatonin metabolites excreted in the urine are 6-hydroxymelatonin (6-O-MEL) sulfate (S-O-MEL) and 6-O-MEL glucuronate, which result from sequential MEL metabolism by phases I and II drug metabolizing enzymes. To determine the accurate MEL secretion level, these urinary metabolites should be enzymatically deconjugated and converted into MEL. Furthermore, the use of LC–tandem mass spectrometry (LC–MS/MS) is preferable for the precision of this determination. Therefore, as part of our ongoing efforts to ultimately determine the level of MEL secretion, we herein aimed to develop an LC–MS/MS-based quantification method for 6-O-MEL and optimize deconjugation conditions. We determined the LC–MS/MS conditions of 6-O-MEL measurement and optimized the conditions of enzymatic reactions. The most efficient S-O-MEL deconjugation (102.1%) was achieved with Roche Glucuronidase/Arylsulfatase (from Helix pomatia) at 37 °C, pH-4.0 reaction buffer, and 60 min of reaction time. For human urine samples, the minimum amount of the enzyme required was 5944 units. Under these conditions, the accuracy and precision values of the 6-O-MEL determination (relative errors and standard deviation) were −3.60–−0.47% and <6.80%, respectively. Finally, we analyzed the total amount of MEL metabolites excreted in 24-h urine samples; it was 6.70–11.28 µg in three subjects, which is comparable with the values reported till date. Thus, we have established a new method of measuring the total 6-O-MEL in human urine samples using an LC–MS/MS coupled with the prerequisite deconjugation reaction.