著者
小林 泰子 石田 華南子 曽我 彩香 小島 麻希甫 牟田 緑
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的</b> 近年、多くの消臭製品が上市され、緑茶、ハーブ等の天然素材を利用した製品も目立つ。本研究では、綿布を各種条件で緑茶染色し、臭い物質のアンモニア、酢酸、エタンチオールに対する消臭性と、実用性を考慮した洗濯、光に対する染色堅ろう性について検討した。 <br><b>方法</b> 試料はシルケット加工綿メリヤス、緑茶粉末(宇治抹茶入り煎茶)、前処理剤はKLC-1カチオン剤、媒染剤はみょうばん、硫酸鉄(Ⅱ)、硫酸銅(Ⅱ)を用いた。染色は緑茶濃度5%o.w.f.、媒染は濃度0.5%で行った。調製布の染色性はK/S値で、消臭性は検知管法を用い、臭い物質の残存率で、洗濯、耐光堅ろう度はJIS法に従い、色差値で評価した。<br><b>結果</b> K/S値は、緑茶染色布では小さかったが、カチオン化+緑茶染色布では増加し、媒染、緑茶染色を重ねるとさらに増加し、染色性は向上した。アンモニアに対する消臭性は、未処理布にも認められ、消臭開始1時間後に残存率は20%となった。緑茶染色布では1時間後に0%、カチオン化+緑茶染色+銅媒染+緑茶染色布では10分後に0%になった。カチオン化、媒染により緑茶成分の布への吸着量が増し、高い消臭性が得られることがわかった。洗濯、耐光堅ろう性では、多くの調製布で変色が認められ、赤みが増した。緑茶中のタンニンやクロロフィルの影響によるものと考えられる。今後、成分と変色の関係を明確にし、堅ろう性の向上について検討する。
著者
倉橋 俊至
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.157-162, 2013-04

災害時(特に放射線災害)においては,保健所はその専門性を活かして積極的に役割を果たすべきである.健康危機の原因には様々なものがあり,原因別に健康危機に対する対応が定められている.しかし,原因不明の健康危機にも最悪の場合を想定して適切に対処すべきである.保健所の役割には,健康危機発生時の適時適切な対策の実施の他,健康危機の未然防止,事前準備,被害回復などがあり,平常時活動も重要である.保健所の具体的活動では,優先して実施すべき対策の判断が重要であり,リスクコミュニケーションの考え方に基づいて適切に情報収集,連絡調整,広報発信することが求められている.
著者
山口 悟郎 柳田 博明 小野 修一郎 副島 繁雄 和田 重孝
出版者
The Chemical Society of Japan
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.1499-1501, 1964

コランダム単結晶の水熱育成法は未だ確立されているとはいい難い。本報ではこの方法におけるいくつかの問題点,オートクレーブ内の温度差の問題,育成のための最適温度圧力条件,種子結晶,原料など反応物質の問題,時間と成長率との関連の問題についての実験結果をもとに,本法の特質を考察した。この結果,オートクレーブ内の温度差は外壁測温の場合よりかなり小さく,とくに銀カプセルを用いた場合ほとんど無視できるものとなる。コランダムの溶解速度に対する著者らの数値を用いて,この温度差の実効値について半定量的に議論した。つぎに,最適温度圧力については高温高液充填度ほどよいことがわかった。高温は結晶成長速度を速め,液の高充填度は,温度差の実効値を大にするものと考えられる。種子結晶については,成長に少なくとも2段階あり,種子のカット方向が重要であろうことが示唆される。原料については,コランダム,あるいは水酸化アルミニウムの状態の時間変化の影響は認められなかった。成長機構は成長段階が少なくとも二つあることに特徴がある。現在まで著者らの実験方法で数cmのコランダム単結晶を得ることができるが,鉄イオンの混入による着色を除去するのは困難である。
著者
秋山 正道
出版者
新潟産業大学経済学部
雑誌
新潟産業大学経済学部紀要 (ISSN:13411551)
巻号頁・発行日
no.55, pp.29-36, 2020-02

本論は新潟県内(以下「本県」と表記)における空襲被害の実際を明らかにすることを目的とする。時期は第二次世界大戦中(1939~1945)とする。第二次世界大戦中、日本が受けた空襲被害は1945年にほとんどが集中している。その嚆矢が3月9日深夜から10日にかけて行われたいわゆる東京大空襲であり、最大の山場が8月6日の広島、8月9日の長崎への原爆投下であり、これが日本政府のポツダム宣言受諾に大きく影響したことは周知のとおりである。この空襲はすべて米軍によって行われた。中小規模の都市への空襲は6月17日~18日にかけて鹿児島・大牟田・浜松・四日市の4都市に始まり8月14日の熊谷、伊勢崎(群馬県)の都市空襲まで続いた。この間、18回にわたり空襲が繰り返し行われ、60都市がその被害を受けた。しかし、日本政府がポツダム宣言を受諾した8月14日に空襲を受けたのは上の2都市のほかに大阪市と秋田市もあったことで分かるように被害の詳細は必ずしも正確にされてはいない。 本県においても空襲を受けた都市として長岡市が知られているが、小規模ながら他の都市でも空襲の被害が出ている。そこで、本論では、先ず長岡市の空襲被害を中心に述べ、ついでその他の県内各市の被害の実際について述べることによって本県の空襲被害の全体を明らかにする。
著者
河邊 聰 内藤 郁子 野村 正樹 畑 正一郎 大森 靖子 平家 直美 林 茂 吉田 光一 木村 忠紀 堀 榮二 遠藤 康雄 志村 公夫 冨家 裕久
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究論文集 (ISSN:18802702)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.433-443, 2008

京都の都心部には,平成12年の調査で3万戸の伝統町家があることが分かっていた。その後年々数は減少しているといわれる。町家では日々の生活が営まれ,その上で都市的・文化的価値の高さが語られる。(財)京都市景観・まちづくりセンターは,京町家居住者からの様々な相談に応じる町家相談会「京町家なんでも相談」を平成13年度に立ち上げた。本稿は,この相談会に寄せられた町家居住者からの相談内容をヒアリング形式で間接的に学習し,それを参考資料とした。資料から居住にかかわる不満・不安を抽出・分析し,問題点の把握と理解をした上で,今後居住不安解消の具体案を策定し,居住者への居住支援方策を提示したいと考える。このことから京町家の保全・継承の環境づくりに寄与したいと考えるものである。
著者
田中 里奈 橋本 禅 星野 敏 清水 夏樹
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.33, no.Special_Issue, pp.299-304, 2014-11-20 (Released:2015-11-21)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

In this study, we conducted a qualitative research to investigate how regional living conditions affect residents' subjective well-being. We did interviews with 21 people who lived in Suzu city, a rural area located at the northern edge of the Noto peninsula, Japan. A series of interviews was recorded and was transcribed after the interviews for coding and analysis. By coding the transcribed scripts, we found some common regional factors which affect residents' well-being. In general, factors related to natural capital and time usage have positive affect to well-being. On the other hand, factors related to social capital have both positive and negative influences to well-being while factors related to physical capital have mainly negative influences on well-being. These results suggest that we should add some regional factors reflecting characteristics of rural life when we conduct questionnaire survey to investigate residents' well-being in rural area.
著者
平田 昌弘
出版者
光琳
雑誌
食の科学 (ISSN:02871734)
巻号頁・発行日
vol.312, pp.52-60, 2004

2004年2月号
著者
金 明哲 鄭 弯弯
出版者
計量国語学会
雑誌
計量国語学 (ISSN:04534611)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.265-276, 2020-06-20 (Released:2021-06-20)
参考文献数
5

MTMineR(Multilingual Text Miner with R;エム・ティ・マイナー)は,テキスト計量分析の研究と教育のために,約20年前から開発し続けているフリー・ソフトウェアである.これは日本語,中国語,韓国語,英語,ドイツ語などのテキストから計量分析に必要となる要素を集計し,Rをバックで動かして統計分析を行うツールである.すべての操作は,マウスを用いたメニュー操作,オプションの指定,実行のボタンを押すことで結果が出力されるように設計されている.主な機能としては,データの前処理機能,計量分析に必要な構成要素の集計と検索機能,集計したデータの可視化方法,主成分分析,対応分析,クラスター分析などの統計的データ分析方法,トピックモデル,サポートベクターマシン,ランダムフォレストなどの最新の機械学習法が実装されている.MTMineRは市販のテキストマイニングツールでは実装されていない言語学や文体科学の研究に必要な機能を多数備えている.
著者
風間 隆宏 中村 隆 伊藤 敏朗 大塚 浩二 佐藤 勝弘 今津 雄吾
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.1356-1360, 2006
被引用文献数
5

津波による船舶被害軽減のための避難海域設定手法について検討を行った. まず, 中央防災会議各専門調査会によって公開されている「海岸での津波高さ」を用いて, 簡易的に避難海域水深を設定する手法を提案し, 気仙沼湾を対象とした津波シミュレーション結果と比較した結果, その妥当性を確認した. また気仙沼湾において避難海域への到着可否を検討した結果, 湾奥部から避難の場合は, 避難海域に到達する前に津波に遭遇する可能性があることが認められた. さらに人命第一を考えた船舶避難行動に関する考え方を提示し, 避難海域及び避難行動のルールは地域の実情を踏まえ関係者が協議し設定することの重要性を指摘した.
著者
橋場 正男 廣畑 優子 日野 友明 新堀 寛 出山 貞夫 千代田 博宜
出版者
一般社団法人 日本真空学会
雑誌
真空 (ISSN:05598516)
巻号頁・発行日
vol.42, no.12, pp.1100-1105, 1999-12-20
参考文献数
17
被引用文献数
1

The gas desorption properties of carbon based materials coated on inner wall of a cathode ray tube were examined by using a technique of thermal desorption spectroscopy (TDS). This material consists of graphite powder, titanium oxide (TiO<SUB>2</SUB>) powder and water glass. The major outgassing species observed in the temperature range from RT to 500&deg;C were CO<SUB>2</SUB> and H<SUB>2</SUB>O. The major outgassing source was graphite. In order to reduce the gas desorption in the cathode ray tube, the heat treatment with temperature higher than 400-500&deg;C is necessary.<BR>Since the surface morphology of graphite-water glass material was dense, the degassing was insufficient by baking treatment in the atmosphere. On the other hand, the degassing was very easy for graphite-TiO<SUB>2</SUB>-water glass material, because of the porous structure.<BR>The gas adsorption experiments were also conducted. The adsorption amount of H<SUB>2</SUB>O or CO<SUB>2</SUB> increased as the composition ratio of graphite powder. The gas adsorption capacity largely increased by the addition of TiO<SUB>2</SUB> powder into the graphite-water glass material. The enhancement of adsorption capacity is due to that the surface structure became porous and also the effective surface area large by the addition of TiO<SUB>2</SUB> powder.
著者
駒澤 正夫 ホセ パンティーク エディー リスタンコ
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.123, no.1, pp.133-142, 2014
被引用文献数
3

イロシンカルデラの地下構造を把握するため1996年2月にBulusan火山およびその周辺で重力調査を実施した。測点は標高の低い山麓の道沿いに限られ,測定数は225点となった。火山の山体に近い密度である 2,300 kg/m<sup>3</sup>(2.3 g/cm<sup>3</sup>)の仮定密度のブーゲー異常図は,山体部に測点がなくても実際の重力異常を表すと考えられる。重力異常にはカルデラ壁に対応する急勾配がBulusan火山の東から南を経て西に存在することがわかった。しかし,カルデラの北縁については勾配構造が明瞭ではなかった。Irosin townは急勾配構造の内側にある低重力異常域にある。重力の3次元解析から得られた重力基盤にはカルデラ壁を含むカルデラ領域を示す直径 15 kmほどの円形構造があることがわかった。さらに,その円形構造の内側には直径 5 kmほどの急勾配の壁で仕切られた漏斗状(上下逆さまの円錐)の構造が存在し,深さは 1.5 kmに達することがわかった。つまり,イロシンカルデラは,陥没構造が一カ所だけ確認でき,大量の火山砕屑物の噴出を伴った大規模噴火(複数回の場合も含む)は,ごく狭い領域に限られることを示している。また,重力異常による質量欠損の計算から約 40 km<sup>3</sup>の領域から1.1 × 10<sup>10</sup> トンの火山砕屑物を噴出したと推定され,既存のカルデラの直径と質量欠損の関係と整合的である。
著者
伊藤 操子
出版者
特定非営利活動法人 緑地雑草科学研究所
雑誌
草と緑 (ISSN:21858977)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.36-41, 2010 (Released:2017-06-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1

日本におけるクズ(Pueraria lobata Ohwi)は,万葉集にもよく歌われているが7~8世紀にはかなり広がっていたようだ.また,季節の風物というだけでなく,古来,生活必需資材として様々な形で利用されてきた,塊根から採る葛粉は食料として,つる繊維から織る葛布は衣類などに,茎葉は家畜の飼料や肥料になり,葛根は貴重な薬であった.しかし,近年利用されなくなった人里のクズは,列島改造計画による土地造成で形成された都市・市街地の多くの解放地に侵入し急速に拡がった.河川敷,鉄道敷,高速道路では最優占種であることが報告されており,造林地,果樹園等も含めその被害は深刻である.米国では,土面保護植物や第2次大戦で荒廃した放棄畑の土壌改良用として政策的に普及したクズが,現在では制御不能な強害草に指定されている.クズの植物体は3出複葉を着ける当年生茎,多年生茎,節から発生する節根,これが伸長・肥大した主根(塊根)で形成されている.当年生茎は,4月上・中旬に1,2年生茎の腋芽から発生し,地表を這い進むものと立ち上がるものとがあり専有面積・容積の拡大に働く.クズの種子繁殖力は低く,繁殖は主に多年生茎が昆虫幼虫の食害や老化で分離することによると考えられる.
著者
菅沼 聡
出版者
科学基礎論学会
雑誌
科学基礎論研究 (ISSN:00227668)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.89-95, 1998-03-31
参考文献数
24

我々が経験科学の成果から学んだ (ないしは推測した) ことの一つに, 我々人類は全宇宙で共通に成り立っている自然法則の範囲内で生まれたものであり, またその人類の生まれ育った地球は, 数千億以上もの銀河の中のごくありふれた一つの中の, 数千億もの恒星のうちのこれまたごくありふれた一つの回りをまわる小さな天体にすぎない, ということがある。<BR>いわゆるコペルニクス的転回以後の科学の根底に流れるこのような自己相対化, 平等原理を推し進めれば, この広い宇宙に我々人類だけしか知的生命が存在しないと考えることはかなり不自然ではないか, という疑問が容易に浮かんでくる。実際, 宇宙人, つまり地球外の知的生命 (Extraterrestrial Intelligence, ETI) が存在するのではないか, とする発想の根底にあったのは, 基本的には常にこの疑問であった(1)。もっとも, 従来はこの発想は単なる空想の域を出ることはなかった。何しろ検証も反証もしようがなかったのであるから。<BR>だが, ここ数十年来の電波天文学をはじめとするさまざまな科学技術の発展によって, この発想は近年にわかに現実的な様相を帯びてきた。実際今日多くの科学者たちが, 地球外のどこかに知的生命が存在するか, もし存在するならどのような方法で彼らと交信したらよいかという問いをモチーフに, きわめて真面目に宇宙人探しを行いだしている。科学者たちによるこのような真面目な宇宙人探し-それがSETI (Search for Extraterrestrial Intelligence=地球外知的生命の探査) である。1960年前後に一部の天文学者たちによって始められたSETIは, その後さまざまな活動がなされることによって, 現在では科学研究としての市民権を得たと言っても言い過ぎではない(2)。<BR>1990年代に入ってからの諸動向(3)により, SETIはいよいよ多くの注目を浴びてきている。もちろん根強い懐疑論者もいるが, いまや科学界においてSETIが理論と実践の両面にわたって盛り上がっていることは間違いない。それは, 巷にあふれている「宇宙人もの」や「UFOもの」のような明らかに実証性を欠いた擬似科学とは厳密に区別されるべき, 真剣に検討されるべきテーマなのである(4)。<BR>だがその一方で, 哲学者たちのSETIに対する関心は相対的にきわめて低い状況にある。これは, SETIがさまざまな哲学的含蓄を含んでいることを考えると, 奇妙なことである。もちろん, ETIは存在しないかもしれないし, 少なくとも現在ETIの存在確認は全くなされていない。だが, 多くの科学者が考えているように将来におけるその存在確認の可能性が無視し得ない以上, 我々哲学者は前もって, 実際のETIに関する何のデータもない今だからこそむしろできるような一般的問題に関する議論の叩き台としての大枠を作っておくべきであろう。そこで本稿で我々は, それをとりわけ, 実際にETIの存在が見出だされた際に我々人類に起こり得る哲学的インパクトについてに限って試みる。そしてそれを通して, SETIがいかに重大な哲学的意義を含んでいるかを明らかにしたい。