著者
伊藤 孝行 大栗 和久
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.2792-2804, 2004-12-15
参考文献数
15
被引用文献数
2

コンピュータ関連技術の進歩による作業の非同期化,作業環境の分散化,勤務形態の変化にともない,組織のメンバの状況をリアルタイムに知ることが重要になっている.組織内の位置情報をメンバ間で共有することができれば,相手の状況を配慮したコミュニケーションやコラボレーションの方法を動的に選択することが可能となり,組織活動をより効果的に支援できる.一般的に,位置情報取得技術には,状況によっては位置検出ができないという問題点がある.また,より正確な検出と,そのコストにはトレードオフが存在する.本研究で用いた位置検出システムEIRIS も,同様に利用状況によっては位置検出できないという問題点をかかえていた.本研究ではEIRIS により取得した位置情報とともに,状況に応じて位置検出システムの過去の情報から構築した確率ネットワーク,経験的ルール,スケジュール,書き置き情報を基にした推定による情報を表示する位置情報システムを実現した.位置情報システムでは位置検出が困難な際にも連続的に位置情報を提示することを可能としている.また本研究では,メンバの行動傾向の取得が比較的容易な組織として,大学院の研究室を対象とした.本位置情報システムを7 名から構成される研究グループにて試用し,実験を行った.実験では,各メンバの位置情報を共有することによる利用者の影響と推定情報の精度についての2 つを主な評価項目として行い,実験結果を基に評価・分析することにより位置情報システムの有用性を示す.In this paper, we present an implementation of a real-time position inference system for a research group. In a research group, knowing the other members' presence, predicting visitors, and holding real-time meetings are time-consuming but important tasks in everyday life. Thus, in this system, we realize a prediction mechanism for group members and visitors. We also develop a support mechanism for holding real-time meetings. In order to implement a real-time position inference system, we need to detect location information of group members. In our school building, EIRIS (ELPAS InfraRed Identification and Search System) has been installed, and we utilize EIRIS to detect members' positions. However, there exists a trade-off between the value and cost of detecting exact positions. Thus, we first try to complement EIRIS's detection ability by employing a stochastic method, probabilistic reasoning, and heuristic rules. Then, we implement a visitor prediction mechanism and a real-time meeting support mechanism. Our experiments demonstrate that our position inference mechanism is more effective than a simple prediction mechanism that employs only stochastic data. According to questionnaires, we could confirm the effect of our system. Furthermore, we discuss on privacy issues that are important in planning positioning system for people.
著者
山根 健 蓮尾 高志 末光 厚夫 森田 昌彦
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.933-944, 2007-03-01
参考文献数
10
被引用文献数
2

シンボルグラウンディング問題やフレーム問題に起因する古典的人工知能の限界を超えるには,もともとパターンで表現される外界の情報をパターンのまま処理するパターンベースの推論が有効だと考えられるが,シンボルやそれに類するものを全く用いる必要のない推論エンジンはこれまでなかった.本論文では,非単調神経回路網が構成する大自由度力学系のダイナミックスを利用して,完全なパターンベースの推論を行うモデルを提案する.このモデルでは,情報はすべてパターンとして分散的に表現され,適切な推論結果を表すパターンへの状態遷移が生じるよう,力学系のある部分空間に軌道アトラクタを形成することが知識の学習に相当する.簡単な推論システムを構築したところ,全く未知の問いに対しても類推によって適切に答え,非単調推論も自然な形で実現できるなど,従来の推論方式にはない特徴が示された.まだ研究の初歩的段階ではあるが,本モデルは推論方式や性質が脳に似ており,大きな可能性をもつと考えられる.
著者
山田 和範 小池 崇文
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.769-770, 2019-02-28

本研究では,動画ライブ配信中のコメント入力により車型ロボットを制御しゴールへ導く視聴者参加型ゲームを提案する.視聴者参加型ゲームは多くの人が同時に楽しめるゲームで,その一つにスイカ割りがある. スイカ割りは,目隠しをした挑戦者が周囲の声だけを頼りにスイカを割る遊びである.本研究では,スイカ割りと同様の体験をインターネット上で実現するために,車型ロボットをその挑戦者, 周囲の声を視聴者のコメントと見なす.視聴者らはコメント入力で車型ロボットを操作し,車方ロボットをゴールに導くことで,スイカ割りの面白さをインターネット上で実現する方法について提案する.
著者
岩政 正男
出版者
農業技術協會
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.33-38, 1980 (Released:2011-03-05)
著者
池田 史子
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学國際文化學部紀要 (ISSN:13427148)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.A11-A21, 2006-03-07
被引用文献数
1

This article examines the accent system of nouns in the dialect of Tokuji Town, located in Yamaguchi Prefecture. In addition the article looks at the accent rules which are made when these nouns are put together to form compound nouns. It was found that the accent of these compound nouns is decided by the number of mora in the second element of the compound noun.
著者
中井 隆幸 西村 敏 藤沢 寛 大亦 寿之 池尾 誠哉 谷田 和郎 寺田 果生 山野 悠
雑誌
第81回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, no.1, pp.13-14, 2019-02-28

ハイブリッドキャスト4Kビデオによるライブ配信中に、クライアント情報に基づいてCMを挿入する再生実験を行ったので報告する。 具体的には、テレビ受信機にてIPTV-F・dashNXプレイヤを利用し、視聴状況や地域などクライアント毎に異なる端末情報をCMサーバに渡すことによって再生すべきCMリストを受信し、mpeg-dashのマルチピリオド機能を用いてCMを再生する。 さらに、局側でリアルタイムで作成される映像メタ情報に基づいたトリックプレイ機能を実装し、ハイコネXの端末連携機能を用いてスマートフォン上から操作可能とした。
著者
松嶋 秀明
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.449-459, 2013 (Released:2015-12-20)
参考文献数
40
被引用文献数
2

わが国の発達心理学研究と,発達にかかわる臨床実践の双方がよりよい結びつき方になることを模索するために,著者自身が非行少年の更生をテーマとしておこなってきた2つの研究(松嶋,2005, 2012)を素材として紹介しつつ,それらが臨床実践に対してどのように寄与すると考えられるのかについて論じた。非行へのリスク因子として発達障害や被虐待体験に注目したこれまでの諸研究の流れをふまえながら紹介された2研究は,それぞれに共通する特徴として,(1)特別な治療的セッティングではなく,生活をともにすることで営まれている臨床実践であること,(2) 少年の「問題」を自明なものとせず,周囲との関係のなかでいかにそれが見いだされているのかを検討したものであることが挙げられた。これらの研究は,(1)質的研究の方法論をいかして実践を詳述することにより,実践者を疲弊させがちな「問題」状況の相対化をはかれること,(2) 協働性の基盤として機能しえる記述がえられることを寄与として挙げて考察した。
著者
西野 泰代 氏家 達夫 二宮 克美 五十嵐 敦 井上 裕光 山本 ちか
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.17-24, 2009 (Released:2012-02-14)
参考文献数
34
被引用文献数
9 5

This study investigated the trajectories and related factors of deviant behavior among students during their three years of junior high school. Data was analyzed from 344 students who completed a questionnaire survey every September. Nineteen categories of deviant behavior were examined, such as smoking, drinking alcohol, bullying, truancy, violence, and stealing. We determined behavioral trajectories from mild deviant behaviors to more serious ones. The data showed that more than half of the children who engaged in serious deviant behaviors in the third year followed a trajectory from mild deviant behaviors. The three factors of “deviant peers”, “attachment to parents” and “achievement” were related to the trajectory into more serious deviant behaviors.

1 0 0 0 OA 誹諧武玉川

著者
慶紀逸 撰
出版者
半狂堂
巻号頁・発行日
vol.初篇, 1924
著者
一戸 美佳 市川 邦男 今井 博則 松井 陽
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.530-535, 2003-12-01 (Released:2010-08-05)
参考文献数
19

テオフィリン徐放製剤 (テオドールドライシロップ®) の至適投与量の検討を行った. 6か月~12歳 (中央値4.5歳) の気管支喘息児150名を対象に, 1週間以上の内服を確認した後, 内服3~5時間後のテオフィリン血中濃度を測定した. その結果, 6か月~1歳未満では投与量8mg/kg/日以下でも血中濃度10μg/ml以上となった症例がみられることから, 初期投与量はより少量とする配慮が必要である. 1歳児では投与量が11mg/kg/日以下であれば目標血中濃度域5~10μg/mlを越える症例は認められず, ガイドライン通り8~10mg/kg/日での開始は妥当である. 2歳以上の喘息児では10mg/kg/日から投与を開始し, 血中濃度を測定しながら適宜増量する必要がある. またC/D比 (血中濃度/投与量) は1歳未満の乳児では他の年齢群よりも高く, そのばらつきも大きかった. 以上からテオフィリン徐放製剤は, 年齢を考慮したきめ細かい投与が必要と考えた.
著者
佐藤 好範 関根 邦夫 渡辺 博子 大橋 裕美子 青柳 正彦 三之宮 愛雄 西牟田 敏之
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.276-281, 1997-12-25 (Released:2010-04-30)
参考文献数
11

テオフィリン (TP) は, 気管支喘息治療薬として主要な薬剤の一つである. しかし, TPの代謝, クリアランスは種々の条件により影響を受け中毒症状を来しやすいことが知られている.今回我々は, 診断が明らかなインフルエンザウィルス (Inf) 感染時の, TPクリアランスの変化を経時的に検討した. その結果, 発熱に伴いTP血中濃度は約2倍に上昇し, クリアランスは2分の1に低下した. この変化は解熱後3日目に平常に戻った. またTP代謝産物の検討から発熱時にTPの代謝が抑制されている可能性が示唆された. Inf感染時には, 発熱と同時にTPの投与量を1/2に減量し, 解熱後3日目より, もとの投与量に戻すことによって, TP中毒を予防できうるものと考えられた.
著者
森川 みき 市川 邦男 岩崎 栄作 伊藤 わか 在津 正文 渡邊 美砂 増田 敬 宮林 容子 山口 公一 遠山 歓 向山 徳子 馬場 實
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.46-53, 1995-03-25 (Released:2010-04-30)
参考文献数
14

アミノフィリン持続点滴療法を施行した2歳未満 (2カ月~23カ月) の乳幼児気管支喘息96例 (気管支喘息疑い, 細気管支炎を含む) を対象に, テオフィリンクリアランスに影響を与える諸因子について検討した. テオフィリンクリアランスは加齢とともに上昇し, 6カ月以下の児では7カ月以上の児に比較して有意に低値であった. テオフィリンクリアランスの単変量解析の結果, 下痢を合併する群に有意に低値であった. 発熱群, 嘔吐群ではクリアランスの低下が認められたが統計学的には有意でなかった. アイテムに性別, 月齢, 体重, 発熱, 下痢, 嘔吐の6項目を選択した多変量解析の結果, テオフィリンクリアランスに影響を与える重要な因子は, 月齢, 下痢, 発熱の有無であると考えられ, 低月齢, 下痢, 発熱を有する症例ではテオフィリンクリアランスが低値を示す傾向が認められた.2歳未満の児にアミノフィリン持続点滴療法を施行する際は, 血中濃度のモニタリングを十分に行い, 患児の月齢, さらに下痢, 発熱の有無について考慮する必要があると考えられた.
著者
井口 拓海 宮本 征一
出版者
人間‐生活環境系学会
雑誌
人間‐生活環境系シンポジウム報告集 第43回人間−生活環境系シンポジウム報告集 (ISSN:24348007)
巻号頁・発行日
pp.59-62, 2019 (Released:2021-04-23)
参考文献数
5

恒温恒湿室を、室温 26℃、相対湿度 50%で制御した熱的中立な環境下において、温冷覚閾値計を用いて青 年被験者 11 名の身体 13 部位の局所に温刺激を与える被験者実験を行った。温刺激を知覚するときの皮膚の温度 と熱流束および不快を知覚する温度と熱流束を測定した。その結果、温覚の感度が良い部位は、額、前腕、手背 など頭部や上肢部であり、温覚の感覚が悪い部位は、大腿前、大腿後、下腿前、下腿後、足背などの下肢部と胸 であった。不快知覚温度差は、知覚開始温度差と殆ど同様な部位間差が見られた。標準偏差は被験者間のバラツ キと考えられる。知覚開始温度の標準偏差は前腕 0.4℃、額 0.5℃、大腿後 0.5℃の順に小さく、足背 2.2℃、下腿 前 1.9℃、下腿部後 1.3℃の順に大きかった。
著者
向井 將 向井 千珈子 浅岡 一之
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.84, no.12, pp.1753-1762, 1991-12-01 (Released:2011-11-04)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

We have treated 38 adults with ankyloglossia with deviation of the epiglottis and larynx.1) The patients had type III occlusion of Angle's and had irregular teeth in the upper jaw.2) The patients' chief complaints were shoulder stiffness, cold extremities, feeling of obstruction in the throat, insomnia, fatigue, snoring, irritated, dry skin, incorrect articulation and muscle cramps during physical activity, pregnancy and/or sleep.3) Correction of the ankyloglossia and deviation of the epiglottis and larynx resulted in great relief of their chief complaints as well as their respiratory function.4) In addition, patients said that they breathed more easily, could bite well, and that their joints could bend better. They also remarked that they were less angry.However there were no significant changes in their incorrect articulations.
著者
森 健 八幡 悠里子 築根 豊
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.283-289, 2011 (Released:2011-11-28)
参考文献数
20
被引用文献数
5 5
著者
谷口 正信 山下 智志 青嶋 誠 阿部 俊弘
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2018-06-11

広汎な観測に対して、一般化因果性指標の導入と、その最適推測論の構築、その膨大な応用をもくろむ研究推進である。本年度は、まず、2次モーメントを持たない安定過程からの因果性解析について、応答行列を用いて、一般化因果性を導入し、経験尤度統計量に基づいた因果性検定を提案し、その漸近分布を明らかにして、有用性を数値的にも検証した。また、安定過程も含む確率過程に対して L^p ノルムでの予測子、補間子を求めることができ、安定過程に対するL^p ノルムでの、因果性導入の基礎研究も前進させた。位相データに対しては、まず、パーシステントランドスケープに基づく位相指標を用いた実際の金融解析で、国内、米国、欧州の総合指標に適用し、金融危機以前に、この位相指標が、大きく動くことを観測した。この結果は、位相指標に基づいた因果性解析は、将来の予期できない危機への因果性抽出のポテンシャルが期待できることを意味し、今後の該当分野の研究発展への一里塚となった。高次元時系列解析においては、種々の設定での自己共分散行列の推定や、Whittle 推定量の漸近性質を明らかにした。またこの設定での時系列判別解析での基礎理論構築や、時系列分散分析における古典的検定統計量の漸近分布の導出もでき、福島県の多地域の放射線データに適用された。これらの諸結果は、高次元時系列に対する因果性研究の基礎となる。高次元観測においては縮小推定量が有用であるので、時系列縮小推定量の諸性質も明らかにされた。時系列観測を 0 と 1 の2値に変換したデータに基づき時系列解析を行うことができる。この場合、情報を失うので、推測の効率は失われるが、種々の頑健性を示すことができた。この流れで、スペクトルに基づく離反度を導入し、これに基づく因果性指標の推定量から因果性検定統計量が導入できる、これにより、この検定は、外れ値に対して頑健性を持つ。