著者
加藤 肇 中尾 茂 中田 悟史 佐藤 礼一郎 大西 守 田島 誉士
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.379-383, 2015

サルモネラ・ティフィムリウム及び同ダブリンの不活化菌体抗原を主成分とし,エンドトキシン中和剤であるポリミキシンB硫酸塩を含む牛サルモネラ症不活化ワクチンを,健常なホルスタイン種育成牛8頭に接種した際の生体の反応を,臨床病理学的に観察した.ワクチン接種後に食欲の低下や一般状態の悪化は認められなかった.注射部位に一過性の腫脹及び硬結が認められた.血液検査所見では,ワクチン接種後24時間以内に,急性炎症の指標となるヘマトクリット値,血清総蛋白質濃度,アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性値,クレアチンキナーゼ活性値及びシアル酸濃度の有意な上昇が認められた.一方,ワクチン接種後にエンドトキシンショックや過敏症反応を疑わせる臨床症状は認められなかった.免疫学的な有効性が認められて市販されている本ワクチンは,接種部位の局所的な急性炎症を起こすが,重篤な副反応を引き起こす可能性は低いと考えられた.
著者
西田 裕子 寺嶋 繁典
出版者
関西大学大学院心理学研究科心理臨床学専攻
雑誌
Psychologist : 関西大学臨床心理専門職大学院紀要
巻号頁・発行日
vol.10, pp.27-37, 2020-03-16

本邦における男性の育児休業取得率は2018年度の調査ではいまだ6.16%であり、厚生労働省が向上を目指しているものの、欧米諸国と比較すると極めて低い。本稿では、男性の育児休業取得率の低さの背景に存在する制度的な課題と共に、文化的・心理的課題を明確にし、男性の育児休業取得の促進に寄与する取り組みについて検討を行った。文化・心理的背景には、性役割分業意識や、集団意識、母性原理、自己主張の仕方などがあり、こうした現状の中で男性労働者が育児休業を取得したいと主張することは非常に困難である。男性の育児休業取得率向上は、企業や労働者への育児休業取得の利点を浸透させ、制度を拡充し、義務化を検討すること、さらには親になる教育を早期に始めることなど、多方面からの政策によってはじめて可能となるであろう。
著者
金 明秀
出版者
大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
no.16, pp.39-56, 1995

本研究は、在日朝鮮人を対象にしたものとしては、初の全国規模のサンプリング調査である「一九九三年在日韓国人青年意識調査」から、本人および父親の教育と職業をとりあげ、その基礎的な分布を紹介する。また、同種の日本人データと簡単な比較をおこない、エスニック・ストラティフィケーションの存在を検討する。結果によると、(1) 在日韓国人の教育達成は、単純集計レベルでは日本人との差異が見られない : (2) しかし上層出身と下層出身とで非一貫的な圧力が示唆される : (3) 親世代の職業構成は圧倒的な比率で自営業に追いやられているのにたいして : (4) 回答者本人の職業構成からは、明確な労働市場の障壁は確認されない。本調査が社会階層の究明を目的としたものではなかったこと、また、純粋に比較可能なデータが存在しなかったことなどのため、以上は今のところ原始的な発見にとどまっている。しかしながら、在日朝鮮人を対象とした実証研究に、はじめて社会階層という概念を導入したことにより、今後の研究の展望を示すとともに、より詳細な調査の必要性を提起できている。
著者
鶏病研究会
出版者
鶏病研究会
雑誌
鶏病研究会報 = Journal of the Japanese Society on Poultry Diseases (ISSN:0285709X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.179-192, 2013

鶏病研究会では,養鶏場の実情に対応した衛生対策として総合ワクチネーションプログラムを策定して,1994年に発表した。その後,発生疾病の多様化や輸入ワクチンの規制緩和等に伴って新たなワクチンが開発あるいは輸入販売されたこと,さらに新たな疾病に対するワクチンや多くの抗原を配合した混合ワクチンが製造販売されたことに対応して,それぞれ1999年および2006年に改訂した。この総合ワクチネーションプログラムは,鶏病研究会の編集による「鳥の病気」にも「鶏のワクチネーションプログラム」として収載されており,2010年5月に発行された「鳥の病気第7版」では2006年の鶏病研究会報第42巻第1号のデータに,新たに2010年1月4日時点で販売されているワクチンのデータを加えた上で若干の改訂を施し収載した。今回の改訂では,「鳥の病気第7版」での改訂も踏まえた上で,現在市販されているものに2012年12月末までに新たに製造販売承認され,2013年に販売予定されているワクチンを加え,総合ワクチネーションプログラムを策定した。それらの中には,マイコプラズマ・シノビエといったこれまでワクチンが適用されていなかった感染症に対するワクチンや,サルモネラ・エンテリティディス抗原やサルモネラ・ティフィムリウム抗原に加えてサルモネラ・インファンティス抗原を含んだ鶏サルモネラ症ワクチンだけではなく,粘膜免疫システムを活性化するアジュバントを用いた粘膜投与型不活化抗原ワクチン,遺伝子欠損弱毒細菌生ワクチンが登場する。また,末尾の鶏用ワクチン一覧に収載するワクチンについても,2012年12月31日現在で承認され2013年以降の販売が予定されているワクチンに再整理した上で,「鶏の病気第7版」と同様に鶏用診断液一覧も収載した。さらに,2008年10月よりワクチン製造用株および製造用ウイルス株を増殖させるための製造用細胞株等についての規格を設定するとともに,その継代に許容制限を設け,GMPに基づく製造および品質管理の下でワクチン製造を行う一連の製造体系であるシードロット(SL)システムが導入された。これにより,SLシステムによって製造されたワクチンの一部については,国家検定の対象から除外されることとなった。(参考文献:日獣会誌,2010,63,234~241)したがって,国家検定の対象外となったワクチンについては,有効期間の起算点が検定合格後から製造後となり,表記が変更されたものもあることから,混乱を避けるために有効期間の記載を削除した上で,それぞれのワクチンの製品名を記載した。また,アジュバントを含む製剤のうち,食鳥処理場へ出荷のため使用してはいけない期間(使用制限期間)が21日以上のものについては,使用制限期間も追加記載した。
著者
工藤 泰雄 楠 淳
出版者
医学書院
雑誌
公衆衛生 (ISSN:03685187)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.563-566, 1999-08
被引用文献数
2
著者
宮本 敬久 川口 穣 下津 智志 河岸 丈太郎 本城 賢一
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.200-208, 2009-04-15
被引用文献数
2 4

<I>S.</I> Enteritidisのマイクロプレートへの付着を阻害する物質の検索を39種の安全性の高い食品添加物および天然色素について行った.一次スクリーニングの結果,コントロールに比べて<I>S.</I> Enteritidisの付着を阻害したのは,アナトー色素,ガーディニアイエロー,モナスカス色素などの天然色素,アナトーAN,サンブラウンAC,サンイエローNo. 2 AU,サンレッドYM,サンレッドRCFU,サンビートL等の天然色素製剤,プロタミン,唐辛子抽出物,ショ糖ステアリン酸エステル,モノグリセリン脂肪酸エステルなどの食品添加物,ケンフェロールのようなフラボノイドであった.このうちで付着阻害効果の高かったのは,アナトーAN,ガーディニアイエロー,モナスカス色素,プロタミン,モノグリセリン脂肪酸エステルおよびショ糖脂肪酸エステルであった.糖脂肪酸エステルではパルミチン酸およびステアリン酸エステルなど脂肪酸鎖長の長いものの方が付着阻害効果も高かった.特にモナスカス色素とショ糖ステアリン酸エステルは0.01%と低濃度でも<I>S.</I> Enteritidisの付着をほぼ完全に阻害したが,この阻害効果は抗菌力に起因するものではなかった.
著者
Akiyo HIRAI Rie KOIZUMI
出版者
Japan Language Testing Association
雑誌
日本言語テスト学会研究紀要 (ISSN:2433006X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.1-20, 2008-09-20 (Released:2017-08-07)
被引用文献数
1

Among different types of rating scales in scoring speaking performance, the EBB (Empirically derived, Binary-choice, Boundary-definition) scale is claimed to be easy to use and highly reliable (Turner & Upshur, 1996; 2002). However, it has been questioned whether the EBB scale can be applied to other tasks. Thus, in this study, an EBB scale was compared with an analytic scale in terms of validity, reliability, and practicality. Fifty-two EFL learners were asked to read and retell four stories in a semi-direct Story Retelling Speaking Test (SRST). Their performances were scored using these two rating scales, and then the scores were compared by using generalizability theory, a multitrait-multimethod approach, and a questionnaire delivered to the raters. As a result, the EBB scale, which consists of four criteria, was found to be more generalizable (i.e., reliable) than those of the analytic scale and generally assessed the intended constructs. However, the present EBB scale turned out to be less practical than the analytic scale due to its binary format and because it had more levels in each criterion. Further revisions seeking a better scale for the SRST are suggested.
著者
砂川 力也 福地 修也 Sunakawa Rikiya Fukuchi Shuya
出版者
琉球大学教育学部
雑誌
琉球大学教育学部紀要 (ISSN:13453319)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.121-129, 2020-02

本研究は,長距離ランナーを対象に短期的なレジスタンストレーニングの介入が走パフォーマンスに与える影響を明らかにすることを目的とした.被験者は,長距離走を専門とする健常な男子大学生9名(Tr群:5名,Cnt群:4名)であった.測定は,5000m走(平均速度,平均ストライド長,平均ストライド頻度),最大挙上重量(スクワット,デッドリフト),最大無酸素パワー,CMJおよびRJとし,それぞれトレーニングの前後で計測し,その変化を比較した.レジスタンストレーニングは,スクワットおよびデットリフトを週2~3回の頻度で6週間実施した.トレーニング負荷は60%1RM×10レップ×3セットとし,トレーニング期間中に10レップ以上の挙上が可能になった場合は状況に応じて負荷を漸増させた.その結果,両群ともに5000m走のタイムに変化は見られなかったものの,Tr群においてトレーニング後に最大筋力,パワー,SSC能力の有意な向上が認められたことから,ランニングエコノミーの向上に寄与する可能性が考えられた.しかし,直接的な影響を与えられなかった要因として有酸素性能力の改善も同時に考慮したトレーニング計画の必要性が示された.
著者
蜂須 貢 大林 真幸 船登 雅彦 落合 裕隆 芳賀 秀郷 上間 裕二 三邊 武幸 向後 麻里
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2188529X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.453-458, 2022-01

デッドリフトはパワーリフティング競技3種目の中で最も重い重量を扱うため,精神統一し試技の終了まで無呼吸で行うことが多く,自律神経活動への影響が大きいと考えられ,デッドリフト直後の自律神経活動は競技者のパフォーマンス発揮を知る上で重要である.一方,デッドリフトは試技の開始から終了まで一般的に歯を噛み締めバーベルを挙上するため,カスタムメイドマウスガード(CMG)の影響を観察するには適していると考えた.被検者は常時ウェイトトレーニングを行っている10名(30.0±15.0歳)とし,心電図から自律神経活動解析ソフト「きりつ名人((株)クロスウエル)」を用い自律神経活動を解析した.測定項目は安静座位(2分間) および立位時の心拍変動係数(CVRR),低頻度と高頻度心拍変動係数比(ccvL/H)および立位継続(1分間)時の高頻度心拍変動係数(ccvHF)である.重量変化による自律神経活動への影響は最大挙上重量の90%を基準とし,これに±5kgの重量を追加した.その後2mmあるいは4mm厚のCMGを口腔内に装着し基準重量である最大挙上重量の90%のデットリフトに対する影響を検討した.CMGは各人の歯列に合わせEthyl vinyl acetate sheetを加熱成形し,第一大臼歯部で厚み2mmおよび4mmとなるように製作した.統計解析は分散分析を行いその後Bonferroniの多重比較を行った.重量依存性の心拍数変化(ΔHR)は90%−5kg時のデッドリフトと比較して,±0kg(90%時)で増加傾向,+5kgで有意な増加を認めた.CMG装着の影響はCMG装着なしに比べCMG 4mm装着の場合ccvHFが増大する傾向を示した.ccvHFの値の低下はトレーニング負荷量やそれによる疲労感と関係することが報告されていることからCMG装着は疲労を軽減する傾向にあると思われる.
著者
桜木 正実
出版者
公益社団法人 日本表面真空学会
雑誌
表面と真空 (ISSN:24335835)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.448-450, 2019-07-10 (Released:2019-07-10)
参考文献数
3
著者
前之園 唯史 成瀬 貫 Maenosono Tadafumi Naruse Tohru
出版者
琉球大学資料館 (風樹館)
雑誌
Fauna Ryukyuana (ISSN:21876657)
巻号頁・発行日
no.23, pp.1-41, 2015-08-25

Six species of terrestrial sesarmid crabs of the genus Parasesarma De Man, 1895, viz. P. dumacense (Rathbun, 1914), P. lepidum (Tweedie, 1950), P. leptosoma (Hilgendorf, 1869), P. liho Koller, Liu & Schubart, 2010, P. pictum (De Haan, 1835), and P. tripectinis (Shen, 1940) were collected from the Ryukyu Archipelago, Japan, of which P. dumacense, P. lepidum and P. liho represent new records for the Japanese fauna. Notes on their morphological features, colorations, ecological aspects, and distributions in the Ryukyu Archipelago are provided. The identification of P. dumacense in the present study is provisional, as the original descripton of the female holotype of P. dumacense is insufficient to confirm the identification of the Ryukyuan specimens as male characters are most important to identify the species. Rahayu & Ng (2010) redescribed P. dumacense, but the present study indicates that Rahayu & Ng's (2010) "P. dumacense" may contain more than two species (Fig. 4). Furthermore, Parasesarma kuekenthali is morphologically very close to P. dumacense. Further taxonomic study is necessary to clarify the systematic status of P. dumacense, P. kuekenthali, and the species studied by the present study and Rahayu & Ng (2010). It has been considered that P. lepidum is distinguished from allied P. palauense (Takeda, 1972) by the fewer number of granules on the upper surface of the movable finger of male chela (17–18 in P. lepidum vs. 19 in P. palauense). Our additional material of P. lepidum expands the range of the number of the granules to 20, which now overlaps with that of P. palauense. Reappraisal of the identity of P. palauense is necessary. Taxonomic problems and distinguishable characters of the other four Parasesarma species are also discussed in detail. Controversial distributional records of P. affine (De Haan, 1837) from the Ryukyu Archipelago are also discussed.琉球列島において採集されたカクベンケイガニ属Parasesarmaの6種 [ヨコスジベンケイガニ (新称) P. dumacense (Rathbun, 1914), ツメナガベンケイガニ (新称) P. lepidum (Tweedie, 1950), キノボリベンケイガニP. leptosoma (Hilgendorf, 1869), ミズギワベンケイガニ (新称) P. liho Koller, Liu & Schubart, 2010, カクベンケイガニP. pictum (De Haan, 1835), ユビアカベンケイガニP. tripectinis (Shen, 1940)] について, 形態や色彩の特徴, 生息環境, 琉球列島における分布記録および分類学的な諸問題を記述した. これらの種のうち, ヨコスジベンケイガニ, ツメナガベンケイガニおよびミズギワベンケイガニは日本初記録となる. P. dumacenseの同定については, 原記載が雌1個体に基づいており, 雄の形質を重視する現在の同定方法には不充分な情報しか得られていない. また, P. dumacenseは形態的にP. kuekenthali (De Man, 1902) に類似することから, これらの種の分類学的位置を確定するためにはさらなる研究が必要である. さらに, P. lepidumとP. palauense (Takeda, 1972) は雄の可動指上面の瘤状顆粒数によって識別されるとされていたが (P. lepidum: 17–18 vs. P. palauense: 19), 本研究によりP. lepidumの瘤状顆粒数は16–20の間で変異することが確認されたため, P. palauenseの分類学的な位置付けについても再検討が必要である. 本報では, 文献情報に基づき, 琉球列島におけるクシテガニP. affine (De Haan, 1837) の分布記録についても言及した.
著者
Davie Peter J.F.
出版者
日本甲殻類学会
雑誌
Crustacean Research (ISSN:02873478)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.65-74, 1993
被引用文献数
4

相模湾以南台湾までの河口域にすむユビアカベンケイガニ(イワガニ科)はSesarma erythrodactylumの学名で知られている.基産地はシドニーである.しかし,日本産とオーストラリア産の標本を比較研究したところ,それぞれ独立した別種であることがわかった.このためユビアカベンケイガニを新種Sesarma actsとして記載した.なお,オーストラリアの種は原記載の綴りに従って,S. erythodactyla(Hess, 1865)とすべきである.
著者
富田 広士
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.183-206, 2011

2007年大カイロ地域(カイロ、ギザ、カルユビア三県)政治意識調査と2008年にエジプト全国規模(カイロ、ポート・サイード、カフルッ・シャイフ、メヌーフィーア、ベニ・スウェーフ、ソハーグ六県)で政治社会意識を探った調査結果の中から、エジプト人は自らが置かれたどの地域枠に最も帰属意識を持つか(およびそれに依拠した政治イデオロギーへの共感)を観る「地域アイデンティティ」に注目する。その上で2008年全国調査結果におけるこの項目と政治意識をはじめとする七つの項目のクロス集計を行い、2007年調査と比較して次の3点を明らかにする。第1に、アラブ主義、エジプト・ナショナリズム、イスラム主義(三つのイズム)への共感度は6調査県によって当然強弱が現れるが、共感する政治イデオロギー・宗教信条を一つでなく三つまで挙げられる条件のもとでエジプト人には、これら三つの政治イデオロギーの重要性を三つとも認める選択傾向が見られる、第2に、2007年に大カイロ地域で行った政治意識調査からは、従来都市民共通の意識として指摘される政治関心、意識の高さ、政治有効性感覚の低さ、現実政治への参加意欲の低さが確認された。しかし2008年全国調査では貧困問題が深刻といわれる上エジプト、ベニ・スウェイフ県、ソハーグ県において下エジプト4県よりも高い政治関心、意識、選挙での投票率などが確認された。第3に、三つのイズムへの共感度には政治意識や所得による変動は全く見られないといってよい。しかし三つのイズムへの共感度には下エジプト四県に比べ上エジプト二県において押しなべて高いという顕著な傾向が見られる。従来中央‐地方関係では、中央都市の市民意識に政治意識の全般的活性化が起こっているとするのが通説である。その意味では、2008年全国調査はこの通説に挑戦する調査結果を提供している。と同時にベニ・スウェーフ、ソハーグ両県で識別された政治意識の全般的活性化状況は、上エジプト(al-sa'īd)が伝統的に中央政府に対して抱いてきた反中央意識を示唆するものである。
著者
石賀 裕明
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.285-297, 1994-07-25
被引用文献数
5

西南日本の層状チャートシークエンス中にはペルム-トリアス紀境界が記録されている.この境界は層状チャートから珪質粘上岩に移化する岩相の変化によって特徴づけられる.この珪質粘上岩には厚さ数十cmにも達する黒色有機質泥岩が挟まれる.この岩石は厚さを減じるとともに,産出頻度も次第に低下するものの,上位のトリアス紀古世珪質岩にも周期的に挟まれる.この有機質黒色泥岩は海洋植物プランクトンに由来する有機物を含み,基礎生産が高かったことが推定される.下部トリアス系の黒色有機質泥岩には黒色チャートが規則的にともなわれることがあり,ペルム-トリアス紀境界で放散虫が絶滅した後の回復に,基礎生産の高い海洋が放散虫のブルーミングに与えた影響は大きいといえる.ペルム紀末の大量絶滅の原因の一つに,一般に考えられている世界的な海退のほかに,古テーチス海東縁に連続した大陸が配列し,古テーチス海とパンサラッサ海とが隔離されたことが指摘できる.そのため海洋循環の悪化および基礎生産の高い古テーチス海の海洋浄化機能の低下が生じたといえる.この大陸の鎖はペルム-トリアス紀境界には切断され,海洋環境の回復とともに爆発的な基礎生産が起こったと考えられる.
著者
松本均 平塚芳隆 徳永靖夫
雑誌
情報処理学会研究報告ソフトウェア工学(SE)
巻号頁・発行日
vol.1981, no.48(1981-SE-022), pp.37-42, 1982-02-09
著者
下里 俊行
出版者
ロシア史研究会
雑誌
ロシア史研究 (ISSN:03869229)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.3-26, 2014

В статье предлагается анализ концепций <<народность>>, предложенных в 1830-х годах С. С. Уваровым, М. П. Погодиным и Н. И. Надеждиным. Все они разделяли учение христианского платонизма, согласно которому в истории человечества действует <<Промысел>> для того, чтобы приближать его к совершенству посредством просвещения народов. В отличие от <<православия>> и <<самодержавия>> для С. С. Уварова введение концепции <<народность>> ь идеологическую составляющую правительства Николая I имело значение установления определенной сферы для добровольной деятельности <<народа>> вне церкви и под покровительством царя для укрепления государственности России. Позтому <<народность>> считалась двигателем истории Российской империи. В связи с этим направлением историк М. П. Погодин понимал <<русскую историю>> как многоэтническое формирование из различных народов Севера, Юга, Запада и Востока. Для него <<народ>> должен образоваться в качестве своего <<образа>><<Провидения>> посредством созерцания своих историков. Поэтому <<народ>> без своей <<Книги бытия>> или исторического самосознания, в сущности, не может иметь своего бытия. Для Н. И. Надеждина русская <<народность>> еще не вполне установлена не только в отношении литературного языка, но и в отношении исторического самосознания. Для того, чтобы достигнуть стадии совершенствования своего <<народа>>, необходимо формировать своеобразную <<народность>> на <<роде>> своего языка, который должен соединить письменный язык с разговорным языком большинства простолюдинов.
著者
平山 育男
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.87, no.791, pp.140-149, 2022-01-30 (Released:2022-01-01)
参考文献数
4

This article considered the export of nails from the middle of the Meiji era to the prewar period. The following points have been clarified. In the middle of the Meiji era, Japan had already exported nails. The breakdown was the export of Japanese nails, the re-export of nail iron and Western nails, which were the raw materials for Japanese nails.After 1921, the export of domestic western nails could be confirmed, and after 1932, the export volume of domestic western nails increased sharply and the re-export of western nails stopped.
出版者
日経BP社
雑誌
D&M日経メカニカル
巻号頁・発行日
no.569, pp.45-50, 2002-02

東芝と松下電器産業が,水面下で繰り広げた先陣争い。それをタッチの差で制し「国内初」の称号を手にしたのは東芝だった—。 それは,炭化水素であるイソブタン(CH(CH3)3)を冷媒に使うノンフロン冷蔵庫の発売日を巡めぐる競争だ。ハイドロフルオロカーボン(HFC-134a)といった現行の代替フロンと比べて,イソブタンは地球温暖化係数が0.23〜0.38%と極めて低い。