著者
杉田 昭栄
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.143-149, 2007 (Released:2008-08-31)
参考文献数
24
被引用文献数
4 1

鳥類は,視覚が発達した動物である.彼らは,すみやかに遠くに焦点を合わせることも,近くのものに焦点を合わせることも自由に行なえる.また,色の弁別能力も高い.このように視覚に優れる仕掛けは眼球のつくりにある.その優れた視力は,水晶体および角膜の形を変え,高度にレンズ機能を調節することにより行なう.このために,哺乳類とは異なるレンズ系を調節する毛様体の特殊な発達や哺乳類には無い網膜櫛もみられる.また,網膜の視細胞には光波長を精度高く選別する油球を備えているばかりでなく,各波長に反応する視物質の種類がヒトのそれより多い.したがって,ヒトが見ることのできない紫外線域の光波長を感受することもできる.さらには,この視細胞から情報を受けて脳に送る神経節細胞もヒトの数倍の数を有する鳥類が多い.このような仕組が鳥類の高次の視覚を形成している.
著者
和田 正信 三島 隆章 山田 崇史
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.229-239, 2006 (Released:2008-01-25)
参考文献数
37
被引用文献数
4 3

Repeated intense skeletal muscle contraction leads to a progressive loss of force-generating capacity. This decline in function is generally referred to as muscular fatigue. Since the work of Fletcher and Hopkins (1907), it has been known that fatigued muscles accumulate lactic acid. Intracellular acidosis due to lactic acid accumulation has been regarded as the most important cause of fatigue during intense exercise. Recent challenges to the traditional view, however, have suggested that lactic acid plays a role in muscle contraction distinct from that implied by earlier studies. This brief review presents (1) a short history of our understanding about lactic acid that explains the early acceptance of a causal relationship between lactic acid and fatigue, (2) evidence to show the temperature dependence of acidosis-induced changes and the beneficial effect of acidosis, and (3) a proposal that lactate production retards, not causes, acidosis. These findings require us to reevaluate our notions of lactic acid, acidosis and muscular fatigue.
著者
柴原 裕亮
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.571, 2008-11-15 (Released:2008-12-31)
参考文献数
2

甲殻類アレルギーは,エビ,カニといった甲殻類を摂食することにより,蕁麻疹,呼吸困難,眼瞼浮腫,嘔吐,咽頭瘙痒感に加え様々な全身症状を呈するもので,時にアナフィラキシーショック症状を発現する.甲殻類の主要なアレルギー誘発物質(アレルゲン)であるトロポミオシンは分子量3.5~3.8万のサブユニット2つからなる2量体で,アクチン,トロポニンとともに細い筋原繊維を構成している熱に安定なタンパク質である.各種甲殻類のトロポミオシンはお互いに抗原交差性を示すが1),これは甲殻類間におけるトロポミオシンのアミノ酸配列の相同性が高いためでえび類のブラウンシュリンプを,クルマエビ(えび類),アメリカンロブスター(ざりがに類),シマイシガニ(かに類)とそれぞれ比較すると,すべて90%以上と非常に高い値を示している.さらに,ブラウンシュリンプのトロポミオシンについては,全配列をカバーするペプチドとエビアレルギー患者の血清IgEを用いた評価から主要なIgE結合エピトープが報告されている.これらのエピトープの部分配列は他の甲殻類においてもよく保存されており,抗原交差性を裏付けている.また,甲殻類以外とのアミノ酸配列の相同性は,上記と同じくブラウンシュリンプとの比較で,甲殻類と同じ節足動物に属するゴキブリ類,ダニ類が約80%,軟体動物のたこ類,いか類,貝類が60%程度で,いずれも抗原交差性が確認されている.一方,脊椎動物の鳥類,哺乳類もアミノ酸配列の相同性は60%程度なものの,抗原交差性は確認されていない.これらの抗原交差性の違いは節足動物および軟体動物では甲殻類とIgE結合エピトープのアミノ酸配列の相同性が高いが,脊椎動物では低いことに起因すると考えられる.平成14年4月より本格的に開始されたアレルギー物質を含む食品表示制度において,甲殻類(えび・かに)は過去に一定の頻度でアレルギーの発症が確認され,引き続き調査を必要とする品目であることから,特定原材料に準ずる20品目に含まれた.その後も調査は継続され,平成17年度の調査ではアナフィラキシーショック症状を誘発した食品として「えび」は特定原材料に次ぐ6位であった2).一方,「かに」は13位で「えび」と比較して頻度は少ないものの,エビアレルギー患者の65%が「かに」に対しても反応することから,「えび」と「かに」との交差性の頻度の高いことが確認された.このような新たな知見によりアレルギー表示対象品目の見直しが行われ,「えび」「かに」は平成20年6月より特定原材料に追加された.さらに表示の範囲も,従来の「えび」の範囲である日本標準商品分類の分類番号7133 えび類(いせえび・ざりがに類を除く)に加えて,7134 いせえび・うちわえび・ざりがに類が追加された.また,「かに」については7135 かに類を範囲としており,「えび」「かに」は生物学的に十脚目に分類される甲殻類を表示の範囲としている.
著者
篠田 謙一
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.118, no.2, pp.311-319, 2009-04-25 (Released:2010-04-01)
参考文献数
29
被引用文献数
1 3

Modern DNA—maternally inherited mitochondrial DNA and paternally inherited Y-chromosomal DNA in particular—is now routinely used to trace ancient human routes. It appears that genetic data can actually offer a means of better understanding ancient population movements. The DNA patterns of present-day world populations indicate that modern humans emerged from Africa at least 150,000 years ago. These populations dispersed from Africa to most other parts of the world at least 60,000 years ago along the tropical coasts of the Indian Ocean to Southeast Asia and Australasia. Genetic data support a model for the peopling of the New World in which Native American ancestors diverged from the Asian gene pool and experienced a gradual population expansion as they moved into Beringia. After a long period in greater Beringia, these ancestors rapidly spread into the Americas at least 15,000 years ago. Examinations of ancient human bones using molecular genetic techniques provide direct access to genetic information on past populations. The retrieval and analysis of ancient DNA is more difficult than that of modern DNA. However, this technique holds great potential for inferring the origins of the Japanese people. The distribution of mitochondrial DNA haplogroups among the Jomon, Yayoi, and modern Japanese populations suggests that the formation of the Japanese population was not the result of a population expansion. Distinctively different frequencies of mitochondrial DNA haplogroups among Jomon and Yayoi populations indicate significantly different population histories for these groups. However, both populations have contributed to the formation of the modern Japanese population. An eastward population expansion from the Asian Continent during the Yayoi period resulted in the admixture of these people with the indigenous Jomon people and led to the formation of the basic pattern seen in modern Japanese people.
著者
矢島 博文
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.228-231, 2015-05-20 (Released:2017-06-16)
被引用文献数
1

「ヨウ素デンプン反応の発色のしくみ」は長い間の謎であった。この謎を解くには,分光法と電子論的解析が欠かせない。すなわち,「なぜ青く呈色するか?」は裏を返せば,「なぜ赤い光を吸収するか?」の電子論的選択則の解明が必須である。「ヨウ素デンプン反応」の主要因はデンプンの直鎖状成分であるアミロースであり,この「アミロース・ヨウ素錯体」に対する物理化学的特性を究明した結果,「錯体の色は,左巻きアミロースらせん糖類中のピラノース環およびグルコシド結合酸素とヨウ素の間での電荷移動およびCH-π相互作用に由来して,結合ヨウ素種I_3^-,I_2各々が折れ曲がり/ねじれ(bent/torque)構造を取り,全体として左巻き配列を取りながらアミロースに内包された発色ヨウ素種I_3^-dimer(I_6^<2->)およびI_3^-・I_2(I_5^-)の励起子間相互作用(exciton-coupling)に起因する」と結論された。口絵11ページ参照。2
著者
三浦 洋子 Yoko Miura 千葉経済大学 Chiba Keizai University
出版者
千葉経済大学
雑誌
千葉経済論叢 = The Chiba-Keizai ronso (ISSN:0915972X)
巻号頁・発行日
no.29, pp.45-77,

朝鮮半島の人口問題を食料事情との関連させながら、戦前の李朝時代、植民地時代から現在の韓国と北朝鮮まで比較検討を試みた。すなわち、総人口、人口変動要因である合計特殊出生率、平均寿命、国内移動、国際移動、人口政策も交えて検討し、さらに戦後の人口移動が引き起こした問題点として、年齢構造の変化、経済活動参加状況、産業別労働人口を考察した。李朝時代は食料不足が人口増加の歯止めとなったことが、人口低迷の理由であろうし、植民地時代の人口倍増は、1人1日当りの供給熱量が2,700キロカロリーという水準に到達したことと、衛生状態の改善等が主な理由である。戦後は韓国では70年代の「続の革命」まで人口増加圧力による食料不足は継続した。北朝鮮は当初人口が1000万人に満たなかったため韓国のような食料不足はなかったが、旧ソ連の崩壊とともに支援国を失い、1990年代中半から食料危機が叫ばれ餓死者まででてきた。したがって北朝鮮は人口変動のあらゆる局面に食料不足と経済難が影響している状況にある。
著者
川端 晶子 澤山 茂 瓜生 恵子
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.9-18, 1974-01-25 (Released:2010-10-29)
参考文献数
19
被引用文献数
7 6

44種の果実類, 3種の果菜類および3種の種実類のべクチンを定量した結果, 新鮮物可食部に対するペクチン酸カルシウムとしての全ペクチン含有量は, 次のようであった。1) かんきつ類4%以上: 温州みかん果皮3.00~3.99%: きんかんパルプ, ぶんたんパルプおよび果皮, ゆずパルプ。2.00~2.99%: ぶしゅかん, ゆず果皮。1.00~1.99%: きんかん果皮, 温州みかんパルプ。0.99%以下: きんかん果汁, 温州みかん果汁, ぶんたん果汁, ゆず果汁。2) その他の果実類2.00~2.99%: ポポー, アボカード。1.00~1.99%: かりん, いちじく, 赤すぐり。0.50~0.99%: りんご (紅玉, スターキング, デリシャス, ふじ, インド, 国光), すぐり, バナナ (エクアドル産, フィリピン産, 台湾産), かき, いちご, キィウィ, マンゴー, パパイア, まるめろ。0.49%以下: 和なし (二十世紀, 長十郎, 幸水), 洋なし, さくらんぼ, プラム, あんず, もも, うめ, クッキンダバナナ, りんご (むつ), びわ, レンブ, ぶどう (キャンベル, デラウェア, ネオ・マスカット, 巨峰), パイナップル。3) 果菜類0.50~0.99%: れいし。0.49%以下: トマト, 西瓜。4) 種実類5%以上: くるみ, らっかせい。1.00~1.99%: くり。全ペクチン中の各抽出区分の比率について, かんきつ類の果汁では, きんかん以外, W-S区がもっとも高く, 果皮およびパルプでは, きんかん以外は, P-S区がもっとも高く, つづいてH-S区であった。その他の果実類, 果菜類および種実類45種のうち, 28種はH-S区がもっとも高く, W-S区のもっとも高いものは9種, P-S区のもっとも高いものは8種であった。総体的に, 熱帯果実にW-S区の高いのが目立つ。
著者
江間 三恵子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.247-258, 2013-03-30 (Released:2013-04-30)
参考文献数
34
被引用文献数
1 3

In this paper, the beast, chicken and egg types as food during the Edo period were evaluated. Our results are summarized as follows:1) The habit was used to eat salted whale meat in the juice from December in Edo period.2) Deer meat and seal meat were made dry and were salted foods.3) The meats of whales and birds were salted foods, and were kept in one year. And then they were used as special event foods.4) The meat ball and soup were used with rice and vegetables, and used as a side dish.5) Wild boar meat and deer meat were cooked in their juice in a pot in winter time as “Botan Nabe” (boiled boar food) and “Momizi Nabe” (boiled deer meat food) .6) As for eating roasted meat, a person in Edo period ate dog, rabbit, otter, deer, etc. They also ate boiled swan and crane chicken.7) “Senba cooking” (fisherman cooked food) and roast bird were also ate by the general population.8) Eggs were used rice, called rice gruel, the porridge of rice and vegetables etc. It was used for dishes with juices, cooked food and steamed and broiled foods.

30 0 0 0 OA 国史大系

著者
経済雑誌社 編
出版者
経済雑誌社
巻号頁・発行日
vol.第9巻 公卿補任前編, 1901
著者
白土(堀越) 東子 武田 直和
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.181-189, 2007 (Released:2008-06-05)
参考文献数
27
被引用文献数
4 2

ノロウイルス(NoV)は世界各地で発生しているウイルス性下痢症の主たる原因ウイルスである.少なくとも33遺伝子型を有し,極めて多様性を持った集団として存在する.近年,NoVのプロトタイプであるNorwalk/68(NV/68)株が血液型抗原であるH(O),A,Leb型抗原に吸着することが明らかになった.血液型抗原とは抗原構造をもった糖鎖の総称であり,ヒトの赤血球表面だけでなく,NoVが標的とするであろう腸管上皮細胞にも発現されている.血液型抗原の合成に関与するフコース転位酵素の一つであるFUT2(Se)酵素をコードするFUT2遺伝子が活性型のヒトでは血液型抗原が腸管上皮細胞に発現されている(分泌型個体).これに対しSe遺伝子が変異により不活化すると,血液型抗原は上皮細胞に発現されなくなる(非分泌型個体).NV/68株をボランティアに感染させると分泌型個体で感染が成立し非分泌型個体では成立しない.さらに血液型間で感染率を比較検討すると,O型のヒトでの感染率が高くB型では感染率が低いことが報告されている.しかし,その一方でNoVに属するすべてのウイルス株がNV/68と同じ血液型抗原を認識するわけではないことが明らかになってきた.GII/4遺伝子型は他の遺伝子型に比べ結合できる血液型抗原の種類が多く,またそれぞれの血液型抗原への結合力も強いことがin vitro binding assay,疫学研究の両面から証明されている.この遺伝子型は,日本も含め世界中で流行している株であるが,その伝播力についても答えが出ていない.直接的な証明はまだなされていないものの,GII/4遺伝子型株の血液型抗原への結合力の強さが伝播力の強さに結びついている可能性が大きい.血液型抗原への吸着をスタートとしたNoVの感染が,その後,どの様なメカニズムによって下痢症発症にまで結びつくのか,解明が待たれる.
著者
海老沢 功 本間 れい子
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.59, no.7, pp.701-707, 1985-07-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
6
被引用文献数
1

日本に於ける破傷風患者は減少し過去の疾患と考えられやすい. 日本の破傷風の実態を把握するために人口動態統計に基づく破傷風死亡率及び自験例を中心に破傷風致死率について検討した. 1947~1982年までの破傷風死亡総数は21,916人であり1947年の破傷風死亡率は人口10万対2.84であったが1955年に10万対0.98, 1982年に10万対0.02と著しく減少した. 新生児破傷風死亡率は1947年に生産児10万対36.1であったが1966年ごろより減少の速度をはやめ1979年には死者0となった. 破傷風死亡者の年齢別分布の推移をみると1955年ごろまでは新生児破傷風が40%以上をしめ次いで0~9歳の患者が20%近くをしめており若年患者が多く高齢者の割合が少なかった. 1966年ごろより著しく減少した新生児破傷風にかわって60歳以上の患者の増加がめだち破傷風患者の高齢化現象が認められた. この原因として施設内出生率の増加に伴う新生児破傷風の減少, DTP三種混合ワクチン普及による若年層患者の減少及び平均寿命の延びに伴う高齢患者の相対的増加等が考えられる. 自験例593人について破傷風の致死率の変遷を検討したところ1970年までは40%以上の患者が死亡したが1971年以後の致死率の低下はめざましく20%以下となった. 特にOnsettime48時間以内の重症例における1976年以後の致死率の低下が著しく, 集中治療の普及と進歩によるものと考えられた.
著者
島岡 章 町田 和彦 熊江 隆 菅原 和夫 倉掛 重精 岡村 典慶 末宗 淳二郎
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.3-8, 1987-04-01 (Released:2010-10-13)
参考文献数
17
被引用文献数
4

Seasonal variation of basal metabolism was measured on seven young male (the Ground Self-Defence Force Officials) aged 19-26 for twelve months (from March 1983 through February 1984) at the Beppu Post in Oita. The results are as follows:The basal metabolism fluctuates like sine curve. The highest value (5.2% higher than the annual mean) is obtained in April and the lowest (5.8% lower) is in October. Therefore, the annual deviation in the basal metabolism was 11.0% from the annual mean. The annual mean basal metabolism corrected to twenties, is 39.9 kcal/m2/hr, and this value is 6.6% higher than the reference value (37.5 kcal/m2/hr) . In Japanese, it has been accepted that basal metabolism is lower in summer and higher in winter, and the reasons of the seasonal variation are explained by the wide range of the temperature throughout the year, and by the lower ratio in fat intake. Our results generally agree them.