著者
岸本 真治 立石 順久 奥 怜子 橋口 直貴 中西 加寿也
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.207-211, 2022-12-28 (Released:2022-12-28)
参考文献数
10

心筋炎など呼吸不全以外のCOVID-19に伴う病態についてはいまだ不明な点が多い。今回, 呼吸不全を伴わない重症心筋炎症例を経験したので報告する。症例は新型コロナウイルスワクチン未接種の47歳, 女性。倦怠感を主訴に来院した。SARS-CoV-2関連検査が陽性で, 血液検査や心臓超音波, 心電図, 冠動脈造影検査の結果からCOVID-19関連心筋炎と臨床的に診断した。来院時ショック状態でVA-ECMOでの補助を要したが, 次第に心機能は回復し離脱できた。なお経過中, 呼吸状態は安定していた。COVID-19には呼吸不全を伴わない心筋炎のみの症例も存在することに留意し, ショックを呈する症例では, 心筋障害を評価する目的で心筋トロポニンを測定することがCOVID-19早期発見のために有用と考えられる。またCOVID-19関連心筋炎は急速に劇症化し得ることから, 早い段階から集学的治療が可能な医療機関での治療が望ましい。
著者
鈴木 隆雄 峰山 巌 三橋 公平
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.87-104, 1984-04-15 (Released:2008-02-26)
参考文献数
34
被引用文献数
3 4

北海道西南部の内浦湾に所在する入江貝塚から出土した,縄文時代後期に属する成人骨格の四肢骨に明らかな病理学的所見が認められたので報告する。この個体(入江9号人骨)は思春期後半に相当する年令段階にあると考えられるが,その四肢長骨は総て著しい横径成熟障害を示し,また長期の筋萎縮に続発したと考えられる骨の著明な廃用萎縮を呈していた。このような長骨の形態異常は長期に経過する筋麻痺を主体とした疾病の罹患によってもたらされるものと考えられるが,そのような疾患について,好発年令,発生頻度,麻痺分布,生命予后などの点から考察した。その結果,この入江9号人骨にみられた四肢骨病変の原疾患として急性灰白髄炎(急性脊髄前角炎,ポリオ,小児マヒ)が最も強く疑われた。
著者
掛谷 英紀 大南 勝
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.617-625, 2019-04-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
21

本論文では,国会会議録を機械学習することで,短命に終わる議員・大臣の発言の特徴を分析する.短命議員については,マスコミ報道の追い風に乗って大量当選したいわゆる「チルドレン議員」を対象に,一期で終わってしまった人物と,その後議員を続けることができた人物の間に,国会質問でどのような違いが見られるかを分析する.短命大臣については,大臣就任後舌禍や不祥事によって辞任した人物と,長期間大臣を務め上げた人物の間に,国会答弁でどのような違いが見られるかを分析する.機械学習には最大エントロピー法による学習と,判別分析の考え方を応用して特徴抽出を行うナイーブ・ベイズ法による学習をそれぞれ実装し,その分類性能を比較する.分析の結果,短命議員の質問には,尊敬語・謙譲語などの丁寧な表現が少ないこと,損得勘定に関する表現の使用が多いことが分かった.また,短命大臣の答弁には,国会の場にふさわしくない砕けた表現が多用されるほか,高い理想や自身の頑張りを主張する発言が多い傾向が見出された.
著者
鷲谷 佳宣 高野 研一
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会誌 (ISSN:09187324)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.13-37, 2022-06-15 (Released:2022-06-24)
参考文献数
52

企業組織では,チームワークがチームパフォーマンス(業績,やりがい)を高めると言われている.一方,デザイナー組織では,個人の専門能力の発揮がチームパフォーマンスを高めるが,チームワークが働かずにチームパフォーマンスを阻害する事態が見られる.そこで本研究では,チームワークの先行要因がチームワークを介してチームパフォーマンスに影響を及ぼす一連の関係を検討し,デザイナー組織を対象としたチームパフォーマンスに影響を及ぼす諸要因を解明することが目的である.方法として,デザイナー350人を対象としたアンケート調査を実施し,共分散構造分析を行った.さらに,事務職組織との比較を行った.その結果,チームパフォーマンスモデルによってデザイナー組織のチームパフォーマンスに影響を及ぼす諸要因の関係が示され,リーダーシップ,フォロワーシップに関するトレーニングによりチームパフォーマンスが向上する可能性が示唆された.
著者
Satsuki Aochi Masaaki Uehara Motohisa Yamamoto
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
Internal Medicine (ISSN:09182918)
巻号頁・発行日
pp.1125-22, (Released:2023-03-08)
参考文献数
22
被引用文献数
1 8

A 78-year-old Japanese woman with no history of rheumatic disease received 2 doses of the BNT162b2 COVID-19 mRNA vaccine. Two weeks later, she noticed bilateral swelling in the submandibular region. Blood tests showed hyper-immunoglobulin (Ig)G4emia, and 18F-fluorodeoxyglucose (FDG)-positron emission tomography (PET) revealed the strong accumulation of FDG in the enlarged pancreas. She was diagnosed with IgG4-related disease (IgG4-RD) according to the American College of Rheumatology (ACR)/the European League Against Rheumatism (EULAR) classification criteria. Treatment was started with prednisolone at 30 mg/day, and the organ enlargement improved. We herein report a case of IgG4-RD that may have been associated with an mRNA vaccine.
著者
Yuki Saito Kohei Yatabe Shogun
出版者
ACOUSTICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
Acoustical Science and Technology (ISSN:13463969)
巻号頁・発行日
pp.e23.67, (Released:2023-12-02)
参考文献数
11

Understanding of gameplay can enhance the experience and entertainment of video game. In this study, we propose to utilize the sound generated by a controller for analyzing the information of gameplay. Controller sound is a user-friendly feature related to gameplay because it can be very easily recorded. As a first step of the research, we performed identification of characters of Super Smash Bros. Ultimate only from controller sound as an example task for examining whether controller sound contains valuable information. The results showed that our model achieved 79% accuracy for identification of five characters only using the controller sound.
著者
渡辺 真由子
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.2_81-2_88, 2012 (Released:2012-12-25)
参考文献数
39

青少年による性的有害情報への接触は、インターネットの普及で容易になった。フィルタリングが必ずしも有効でないスマートフォンの登場がその傾向を後押ししており、新たな対策は急務といえる。本稿は、マス・コミュニケーションの効果研究において、性的有害情報に関する従来メディアの研究を概観した上で、ネット上の性的有害情報をめぐり海外で行なわれている研究の最新動向を伝え、ネットならではの影響特性や影響研究の限界についても分析した。性に関する情報が全て有害なのではなく、問題は、その描写内容に「性暴力」が登場するかどうか、さらには被害女性の反応をどう描くかにあることが示唆される。CGの発達やコミュニティサイトの相互作用性など、ネットの特性が生み出す実態にも目を向けねばならない。ネット上の性的有害情報への対策を技術的な規制のみに頼るのは限界がある。新たな自主規制・法規制の検討や、性情報の歪みやネットならではの特性を批判的に読み解くリテラシー教育が、家庭や学校において今後より求められよう。
著者
松崎 元 大内 一雄 上原 勝 上野 義雪 井村 五郎
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.69-76, 1999-01-31 (Released:2017-07-21)
参考文献数
13
被引用文献数
4

つまみ・水栓金具・ふた等の操作具を前提とした円柱の回転操作において, 使用する指の状況が円柱の直径の変化によって, どのように推移するかを検討するため, 32名(19〜20歳の男性23名, 女性9名)の被験者で実験を行った。実験の方法は以下のようなものである。直径が7mm〜130mmの間で異なる木製の円柱(高さ50mm)を45本用意し, 無作為に選択された各円柱を, 順に台上の回転軸に差し込み, 右手で時計回りに回転させる。操作の状況は, 下方からビデオカメラで撮影し, 得られた画像から各指と円柱の接触状況を判断した。その結果, 回転操作開始時に使用する指の本数が変化する境界値を, 相対的に図示し把握することができた。また, 円柱の直径が増大するのに伴って, 各指の接触位置がどのように推移するかを二次曲線で近似でき, その傾向が明らかになった。この結果は, 回転操作機器の形状デザインに役立てることができる。
著者
浜井 浩一
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.10-26, 2004-10-18 (Released:2017-03-30)
被引用文献数
3

2003年に実施された衆議院議員選挙において,主要政党のほとんどが,犯罪・治安対策を重要な争点として取り上げるなど,日本において,現在ほど,犯罪や治安が大きな社会問題となったことはない.世論調査の結果を待つまでもなく,多くの国民が,疑問の余地のない事実として,日本の治安が大きく悪化していると考えている.本稿では,これを「治安悪化神話」と呼ぶ.本稿では,まず最初に,日本の治安悪化神話の根拠となっている犯罪統計を検証する.そして,治安悪化を示す警察統計の指標は,警察における事件処理方針の変更等による人為的なものであり,人口動態統計等を参照すると,暴力によって死亡するリスクは年々減少しつつあること,つまり,治安悪化神話は,必ずしも客観的な事実に基づいていないことを確認する.次に,治安悪化神話の生成過程について,マスコミによる凶悪犯罪の過剰報道,それによって作られたモラル・パニックを指摘しつつ,さらに,一過性であるはずの治安悪化言説が,マスコミ,犯罪被害者支援運動と支援者(advocates),行政・政治家,専門家の共同作業を通して,単なるパニックを超えて,社会の中に定着していく過程を分析する.
著者
Sadahiko Yamazaki Kunihide Hoshino Masatoshi Kusuhara
出版者
Japanese Society of Anti-Aging Medicine
雑誌
ANTI-AGING MEDICINE (ISSN:18822762)
巻号頁・発行日
vol.7, no.6, pp.60-65, 2010 (Released:2010-05-22)
参考文献数
21
被引用文献数
30 42

Human body odor is generated by waste materials present on the skin surface and secretions from the sweat and sebaceous glands. These waste materials are converted to characteristic odorous compounds through oxidative degradation or metabolism by skin microbes. Changes in body odor due to aging relate to the amount and composition of sweat and sebum secreted, as well as gland activity. 2-Nonenal has an unpleasant, greasy, grassy odor and is mainly detected in people aged over 40 years. Generation of 2-nonenal is related to oxidative degradation of ω7 unsaturated fatty acids. Given that body odor may function as a barometer indicating the body's overall health, further understanding of this odor's makeup is important. Here, we define several types of body odor and describe changes in body odor, with a specific focus on 2-nonenal, an odor characteristically associated with aging.
著者
川西 利昌
出版者
公益社団法人 日本工学教育協会
雑誌
工学教育 (ISSN:13412167)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.5_2-5_7, 2017 (Released:2017-10-01)
参考文献数
5

At the present time circumstances around universities change on a large scale and students are in more severe situations than before. Therefore the problems which students have are complex and more difficult to solve. One professor or one counselor for one truant is beyond his capacity. Plural and trained staffs from various fields must grapple with one truant’s problems. This paper points out truant’s reasons as follows maladjustment to small group, inexperience to laboratory work, uncooperative attitude for professor’s experimentation, etc. Moreover, this paper introduces prevention and treatments for truants through concrete examples.
著者
髙嶋 博
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.536-542, 2018 (Released:2019-04-22)
参考文献数
24

Many patients present with extremely serious problems such as headache, photophobia, acoustic hyperresponsiveness, severe pain, menstrual disorders, various sleep disorders, and POTS after human papillomavirus vaccination (HPV vaccine). In addition, patients exhibit various neurological symptoms such as movement disorders, walking disturbance, involuntary movement, abnormal sensation, memory disturbance, and so on. However, these symptoms are variable and have been considered to be symptoms of hysteria (somatoform disorder, somatic symptoms). Immunosuppressive treatments were not administered because many cases were considered to be of neurological origin. In such cases, the disease condition is objectively evaluated to diagnose and treat patients with neurological symptoms. In conclusion, the wide–ranging symptoms of the central nervous system include those caused by disseminated autoimmune encephalitis and also symptoms of the peripheral small fibers. Thus, according to the obtained findings, the neurological symptoms caused by HPV vaccination are related to immunological diseases, and not psychogenic diseases. In addition, the cause of misdiagnosis has also been described.
著者
石川 伸一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.67, no.8, pp.372-373, 2019-08-20 (Released:2020-08-01)
参考文献数
4

私たちが普段料理やスイーツを食べる前に,その色や形のビジュアルや,漂う香りなどから目の前の料理を評価する。この料理やスイーツのおいしさを決める要因はさまざまで,外観,におい,味,温度,食感などの「食べもの側の要因」はもちろんであるが,空腹具合や健康状態の生理的な要因や,メンタル面の心理的要因などの「食べる人側の要因」も考えなければならない。つまり,おいしいスイーツの秘密を探ったり,おいしいスイーツを開発することを極めていけば,必然的に「食」だけではなく,「人」がおいしく感じることについても分子レベルで調べることに行き着くことになる。その例をいくつか紹介する。