著者
高橋 延匡 SHAPIRO Stua RALSTON Anth KERSHNER Hel SELMAN Alan 中森 眞理雄 大岩 元 都倉 信樹 牛島 和夫 野口 正一
出版者
東京農工大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

わが国の大学の情報処理教育のカリキュラムは米国に比べると著しく遅れているというのが通説であった。本研究代表者および分担者は情報処理学会の「大学等における情報処理教育の改善のための調査研究」で中心的な役割を果たし,コンピュータサイエンスのモデルカリキュラムJ90の作成に貢献した。しかし,J90を各大学で具体化して実現するには,授業時間配分や担当教員の割り振りなど多くの問題を解決しなければならないことが明らかになった。そこで,本年度は,米国で,過去にコンピュータサイエンスのモデルカリキュラムを各大学で具体化して実現する際にどのようにしたかを調査することにした。まず,予備調査として,ACM(米国計算機学会)が1988年に発表したコンピュータサイエンスの見取図である9行3列のマトリクス(以下では「デニング図」と呼)をカリキュラムの評価に使うことが可能かどうかを検討した。デニング図の各行は1アルゴリズムとデータ構造,2計算機アーキテクチャ,3人工知能とロボティックス,4データベースと情報検索,5人間と計算機のコミュニケーション,6数値的計算と記号的計算,7オペレーティングシステム,8プログラミング言語,9ソフトウェアの方法論とソフトウェア工学に対応する。デニング図の各列は(1)理論,(2)抽象化,(3)設計に対応する。個々の大学のコンピュータサイエンスのカリキュラムについて,その各授業科目をデニング図の27(=9×3)の枠にあてはめてみることにより,そのカリキュラムの特徴が明らかとなる。さらに,もう一つの予備調査として,ACMが1991年に発表したコンピュータサイエンスの頻出概念について,カリキュラム評価の手法として使うことが可能かどうかを検討した。ACMの頻出概念は(A)バインディング,(B)大規模問題の複雑,(C)概念的および形式的モデル,(D)一貫性と完全性,(E)効率,(F)進化とその影響,(G)抽象化の諸レベル,(H)空間における順序,(I)時間における順序,(J)再利用,(K)安全性,(L)トレードオフとその結果,の12から成る。検討した結果,ACMの頻出概念はきわめて重要なものを含んでいるが,(a)これら12個の概念は互いに独立であるか,(b)これら12個の概念はコンピューサイエンスを完全に覆っているか,についてさらに詳しく検討する必要があることがわかった。以上の予備調査を行った上で,米国ニューヨーク州立大学バッファロー大学計算機科学科を訪問し,共同研究を行った。研究の方法は,デニング図を含むカリキュラム評価方法やコンピュータサイエンスの頻出概念について,日米双方の研究代表者・分担者が見解を述べ,互いに賛否の意見を出し合う,という形で行った。この過程で,バッファロー大学ではデニング図を用いて自己点検・評価を行っていることが示された。ACMの1991年報告書では「広がり優先方式」(以下,「BF方式」と呼ぶ)によるカリキュラム編成方式が紹介され,それを実現するために多数の「知識ユニット」が提案されている(もちろん,それらの知識ユニットを組み合わせて,学問体系に沿って教える伝統的なカリキュラムを編成することも可能である)。このBF方式カリキュラムについても議論した。米国分担者達はBF方式カリキュラムを試みたが,現在は伝統的なカリキュラムに復帰しつつあるという見解であった。ACMのSIGCSE研究会の研究発表の内容を調べた結果,非BF方式カリキュラムに対する支持が強いことが確かめられた。もっとも,教育は必然的にBF的面を有するものであり,BF方式カリキュラムが妥当であるか否かという問題は,知識ユニットをどの程度の大きさにするのが適切であるかという問題に帰着され,今後の検討課題となった。本研究の期間中に,ACMのSIGCHI研究会から人間と計算機のコミュニケーションを主題とするカリキュラム案が発表された。このカリキュラム案に伴って紹介されている演習課題についても検討した。この分野は日本が大きな貢献をすることが可能な分野であり,今後の研究課題とすることにした。
著者
深見 友紀子 齊藤 忠彦 黒田 卓
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究は、平成11〜12年度科学研究費助成金「パソコン、ネットワークによる音楽活動支援システムの構築」、平成12年度文部科学省Web学習コンテンツ開発事業などの研究の延長線として、すべての教室がブロードバンドに接続された際のモデルとなるウェブサイト『音楽室』の運営と改良、検証実践の実施と、その発展的ポータルサイトの構築を目的としている.2年間で実施したことは以下の通りである。1.ウェブサイト「音楽室」『オンライン音楽室』の実験授業の実施(富山市蜷川小学校 東京都世田谷区上北沢小学校、等) 2.同「音楽室」の調査(活用状況の把握、掲示板の運営補佐) 3.同「音楽室」の教育効果の実証(より効率的な授業展開の実現、教材作成にかかる歓員の負担の軽減、音楽の基礎基本の効率的な習得、音楽への興味関心の向上、メディア活用能力の育成、等)、問題点や今後の課題の抽出(技術面の課題と内容面の課題)、4.同「音楽室」を補完する音楽科担当教員のためのポータルサイト『音楽教育ドットコム』の開設(サイトナビゲーション、音楽の授業に役立つウェブサイト一覧、掲示板、コラムコーナーの作成) 5.同サイトの管理・運営 6.音楽科担当教員に対して、コンピュータ・ネットワークリテラシーに関するアンケートの実施 7.韓国の音楽教育用コンテンツの視察研究成果は、以下に挙げた論文等に記載した他、第17回日本教育工学会全国大会(2001)、第18回日本教育工学会全国大会(2002)、日木音楽教育学会第32回全国大会(2001)等で口頭発表した。また「音楽×ネットワークで大活躍!」(仮題、2003)にて一般に公開する予定である。
著者
安部 原也
出版者
一般財団法人日本自動車研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

追突事故の低減効果を高めるために必要な警報タイミングの在り方について,先行車への追従状態,ドライバの運転状態を考慮した実験検討を踏まえ,理論的整備を行った.ドライバの普段の運転行動を,脇見運転時の警報タイミングの設計に組み込む手法を提案した.また,先行車との車間時間(THW)が長い上に,脇見,ハンズフリー携帯電話によって運転への注意が削がれている場合には,警報による追突リスクの低減効果が高めるために,短いTHWとは異なる警報呈示閾値を用いる等によって早いタイミングの警報を呈示する必要があることを示した.
著者
松嶋 隆弘 工藤 聡一 大久保 拓也 鬼頭 俊泰
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、デット・エクイティ・スワップ(債務の株式化)及びデット・デット・スワップ(負債の劣後化)を中心とする不良債権処理スキーム、ないしは企業のリストラクチャリングのための法的手段につき、会社法、そして広く民事法的観点から考察を加え、その可能性と限界を明らかにしようとするものである。
著者
野口 昌夫
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

トスカーナのティレニア海沿岸とリグーリア海沿岸、さらに島嶼沿岸を含めた歴史的小都市とその後背地域が、各々の小都市のネットワークを介して有機的な関係を保持しながら形成されてきたことと、それがイタリア半島西側の海域の制海権とも関係しつつ、各都市の領域の形成にもつながっていたことを、現地調査と史料・文献の収集、精査を4年間にわたり続け、地形、経済、政治、宗教の要因を具体的に把握することで明らかにした。
著者
小林 宏光 安河内 朗 綿貫 茂喜 中山 栄純
出版者
石川県立看護大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

心拍変動解析の手法は数学的には高度化してきているが,これが必ずしも生理学的指標としての心拍変動測定の精度・信頼性の向上につながっていない。我々は以前から心拍変動測定における呼吸コントロールの必要性を主張してきており,現状では専門の研究者の間では一定の理解が得られていると思われるが,市販されている心拍変動解析ソフトウェアではこの点に配慮したものは存在しない。本課題は、心拍変動測定・解析のためのソフトウェアを開発することを目的とするものであるが,周波数解析の手法などは従来からあるシンプルで確立した手法を用い,一方で呼吸の影響やデータの時間的整合性などに関しては十分な配慮した設計を行い,この指標の実際の測定における信頼性の向上につなげることを目標とする。本課題ではそれぞれに特徴を持つ3種類の心拍変動測定・解析システムを開発した。開発されたソフトウェアは,できるだけハードウェア環境に依存しないよう心がけて作成したが,AD変換を要するシステムでは特定の計測ボードに依存する部分が存在する。しかし,逆に心電計に関しては汎用性を持つので,心電計と解析ソフトウェアが一体となったメーカー製のシステムと比べれば,汎用性の面でもメリットがあると思われる。POLAR S-810を用いたシステムは,特定の心拍計に依存したシステムであるが,この機器の価格が非常に安いため,多人数の同時測定には特に適していると思われる。呼吸の影響やデータの時間的整合性に対する配慮はメーカー製の製品で最も欠けている点であるが,これらの点についても一定の配慮をした設計を行った。今回開発したソフトウェアは,まだ改良の余地を残すものではあるが,現段階でも十分な有用性を持つものであると思われる。
著者
白石 小百合
出版者
横浜市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、幸福度の高い社会の構築との問題意識から、人々の幸福に対するとらえ方を定量的に把握するとともに、人々の幸福度とワーク・ライフ・バランスとの関係を解明すべく、マイクロデータを用いた実証分析を行うことにより、近年注目されるワーク・ライフ・バランスのあり方とその効果的な施策について検討を行うことを目的とする。
著者
畑山 敏夫
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

フランス社会モデルをめぐる右翼陣営内での対立を分析することを通じてフランス政治の抱えている多くの困難や課題を明らかにできた。すなわち、戦後の保守本流であるドゴ-ル主義保守が築いてきた経済社会が息詰まった中でサルコジの代表する新自由主義を中心に、国家の役割や主権を重視する「主権主義」保守や極右などの潮流が台頭してくる。本研究では、サルコジと極右の対立も含めて保守の変容について考察してみる。
著者
平野 満
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

西尾市岩瀬文庫に調査に赴き、小野蘭山門人の山本亡羊の『百品考』を調査した。また、蘭山以後の本草学の一例として、渋江長伯の物産研究を「渋江長伯の本草学研究―物産学の視点から―」として論文化した。さらに、これまでに入手した本草学関係の資料の書誌をデータ化し、本草学通史のなかでの小野蘭山本草学の意義を考察する手段として活用可能にする準備を開始した。この作業は継続中である。
著者
長坂 一郎 本江 正茂 近藤 伸亮 近藤 伸亮
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

生活環境内に存在する様々な不適合・矛盾 (コンフリクト) を解消するデザイン・フレームワーク、行為シーケンスのパタン・ランゲージの構築にむけて、実験室の統制下の環境と、実際に使用されている現実的な環境との両方、複数のカメラを長時間稼働させて、ユーザの行動を撮影し、それらをシンクロさせて統合した動画を作成し、またその動画からスライス画像を作成して、画像内から行動パタンを抽出するシステムを開発した。さらに、行為シーケンスの特徴を視覚的に分析するための表現として、人の行動傾向をベクトル場として表現する方法、およびランドスケープ・ダイアグラムとして表現する方法を提案した。これらの成果に基づいて、生活環境のコンフリクト解消のためのパタン、特に、コンフリクト解消のための設計アイデアを表現する手法について、因果ループ図を用いて最適行為シーケンスと実際のシーケンスの差異を表現することを検討し、ライフサイクル設計問題を例として、因果ループ図を用いたパタンのデータベース化と、これを用いた設計支援手法の開発を行った。
著者
本多 朔郎 長尾 敬介 山元 正継 北 逸郎 高島 勲 秋林 智
出版者
秋田大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1989

タイの地熱は、ヒマラヤ造山帯の後背地の安定地塊上に発達するもので、火山活動を伴っていない。しかし、高い地殻熱流量で特徴づけられ、沸騰泉を含む多数の温泉が認められる。そのような非火山性の地熱活動の熱源・湧出機構等を解明し、火山性地熱で発達した探査法の有効性を検証するため、以下のような項目の調査・研究を行い次のような成果を得た。(1)温泉・土壌ガスの分析ーー第1次の調査では、主要地熱地域について研究を行い、地熱貯留層に関連するとみられる断裂付近では、CO_2ガス中の^<13>C同位体の異常およびラドンガスの濃集が認められ、地下の高温を示すH_2ガスも一部の地域の温泉に伴ってみられるのみで、全体としては少なく、火山性地熱とは異なった傾向を示した。第2次の調査では、広域的なガス特性を求めるため、北部地域全体の約40ケ所の温泉付随ガスを採取し、He同位体比(^4He/^3He)を主体に検討した。分析は現在進行中であり、詳細な議論はできないが、深部断裂が発達する花崗岩体の周辺部でHe同位体比が高いことが確認され、同時にマントル物質の寄与の可能性が指摘された。(2)ガンマ-線による探査ーータイの地熱貯溜層を構成する花崗岩は放射性元素の含有量が高く、地熱流体の上昇通路となる断層の位置検出には最適である。また、典型的な岩相については、地下の地質を推定することもできた。(3)新期火山岩の解析ーー第四紀後期の玄武岩溶岩について、アルカリ元素等の分析を行い、マグマの形態、深さ等の情報の推定を行った。その結果、マグマは基本的に深部の独立したマガマ溜まりからもたらされており、熱源としての寄与はそれほど大きくないと推定された。しかし、層序的な解析から、年代値は既存の70万年(KーAr年代)より若く、年代的に熱の寄与を無視することはできないと思われる。(4)岩石中の放射性元素の分析ーー花崗岩を中心に約100個の試料を採取し、放射性元素(U,Th,K)の分析を行った。その結果、日本の花崗岩の5ー10倍という非常に高い含有量が記録され、その値から計算された発熱量として8ー18HGUが得られた。この値は、地下3ー5kmで300℃という高温を可能にするものである。(5)変質岩の年代測定ーー変質岩は石英脈、方解石脈を主体に年代測定を行い、現在の地熱徴侯地以外では数10ー100万年を超える古い年代が得られ、非火山性地熱が長期間継続することが確かめられた。(6)流体包有物の測定ーー年代測定を行ったのと同じ石英脈、方解石脈試料について測定を行い、ボ-リング・コアでは現在の地下温度とほぼ同じ値が得られた。(7)貯留層モデルの作成ーー最も開発の進んでいる地域について、坑井位置、水位、温度、圧力などのデ-タをもとに貯留層のコンピュ-タモデリングを行い、510,3510,8610年後の貯留層の状態を推定した。また、より広域的なモデル計算のため、可能な地下温度分布、岩石物性の変化等のデ-タを収集した。以上の結果および昭和63年度に実施した現地調査のデ-タを総括すれば、タイの地熱は主として放射性元素の崩壊熱による高温部を通過した水が熱の供給を受け、高温になったものと思われるが、He同位体や、若い玄武岩の存在から火成起源の熱の寄与もあるものと思われる。探査法については、非火山性地熱でも火山性地熱とほぼ同じ手法が利用できることが明らかとなったが、放射能探査が特に注目された。残された問題として、異常に高いHe同位体比の原因、流体包有物から予想される地下温度が地化学温度計で求められた温度より低いことなどがあるが、今回の調査が本研究の最後であり、今後の室内実験結果により最も適切な成因を提示したい。
著者
渡邊 登
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、95年・96年の2カ年に亘って新潟県に焦点を絞って行った「地方」における女性の政治参加現状に関する実態把握調査に基づいて、当該女性議員のライフコースに焦点を当てて、女性が政治参画するための諸条件などを探るとともに、さらに、女性が置かれている状況を明確にするために、男性議員との比較調査を行った。その際に地方議会における女性議員比率の高低に基づく差異(地域的差異或いは女性議員効果)を明確にするために、高比率地域(20%以上の東京都の7議会)と低比率地域(5%以下の新潟5議会、山形4議会)を選択した。全体として見るならば、両者の違いは排出ルートの違いによるところが大きい。男性議員の場合は町内会・自治会等の地域既存集団、地域の経済団体・企業、労働組合が圧倒的であるが、女性議員の場合は政党や、既存集団以外の地域活動(教育・福祉)、消費・環境保護・女性地位向上等の市民活動によるものが多い。属性に関して言うと、まず年齢では女性議員は50代、40代が多く、男性議員は50代、60代が多い。前者の場合は生活上の何らかの課題認識から立候補に至る場合が多いが、後者の場合は一定程度の人生目標を達成した後の「名誉職」として選択される場合が多い。学歴は女性議員の方が相対的に高く、居住歴は男性議員の方が相対的に長かった(地付き層、出戻り層)。ただし、属性に関しては地域差も大きい。政治的杜会化に関しては女性議員の場合に効果が見られるようだ。この場合、女性議員において地域差が大きい。地方では第1次的社会化、大都市では第2次的社会化の側面が強い傾向がある。排出ルートも、大都市圏の場合は問題解決型市民活動が多い。以上の検討から、「地方」において女性の政治参画を促進するためには、地方における各種市民活動の活性化、2次的社会化装置の構築が最も求められる。
著者
荒木田 岳
出版者
福島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

科学研究費の受給最終年である本年は、史料調査および文献調査を実施した。史料調査は、地方財政調整制度の構想者三好重夫の初めての任地である新潟県において、平成16年8月から9月にかけて調査を実施した。調査過程で、新潟県庁文書は新潟県立文書館の現物史料と、新潟県庁所蔵のマイクロフィルムの2つが存在することを知ったが、今回は専ら新潟県立文書館での簿冊分析を実施した。文献調査は、一橋大学付属図書館において、平成16年7月29日および同11月26日に実施した。一橋大学は各地の一次史料を多く所蔵し、地方財政や地方経済に関する多くの書籍を所蔵しているためである。史料調査、文献調査の終了後、それぞれについて、調査結果のとりまとめを実施した。平成16年中に史料のデジタル化およびその整理を終えて、前年度までに渉猟した史料と併せて読み込みを行った。その結果、今回の研究テーマに関しては次のような知見が得られた。つまり、さまざまな地域間格差を調整しようという合意が社会に形成されるにあたっては、地域間格差の存在という「事実」よりも、「格差感」が社会的に認知されていくことが重要であるということである。なお、この事実は、前年までの調査結果を裏付けるものでもあった。現在までに、まとめることができたライトモティーフに相当する部分は、雑誌『地方自治職員研修』に発表した(詳細については、裏面参照)。現在は、上記の調査結果に基づいて研究の総括を行い、雑誌報告を発展させた学術論文を鋭意作成中である。内容としては、対象時期を日露戦後から1940年地方財政制度改革までの約40年間とし、制度確立までの過程を概略し、日本近代における「再配分」と行政の安定化の意味について再考することが目標である。その結果、財政調整制度確立の意味のみならず、戦時体制の歴史的な意味、さらには「平等化」への流れがもたらした「意図せざる結果」の意味について考える手がかりが得られるであろう。なお、現在とりまとめている研究の内容は、平成17年度中に学術雑誌に発表し、公刊される予定である。
著者
芝崎 美和
出版者
新見公立短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,幼児期の謝罪について,親密性が謝罪生起に果たす役割を明らかにし,他者感情理解や罪悪感,違反の繰り返し抑制という観点から謝罪生起のメカニズムを明らかにした。さらに,児童期の謝罪について,罪悪感が謝罪を規定する状況は限られ,違反発覚が不明瞭で謝罪以外の方略想起が可能な場面や,自己と他者が負うべき責任の割合が同程度の場面では,罪悪感は謝罪ではなく補償行動を規定するなど,罪悪感という観点から児童期の謝罪発達メカニズムの一端を明らかにした。
著者
小林 果
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究課題ではもやもや病の多発家系を用いて家族性もやもや病の責任遺伝子を特定すること、細胞生物学的解析と遺伝子改変動物の作成により遺伝子の機能を明らかにすることで発症機構の解明を行うことを目的とする。24年度は、昨年度もやもや病感受性遺伝子として同定したmysterin(RNF213)遺伝子のノックアウトマウスの作成と形質の評価を主に行った。近年のもやもや病と糖尿病の合併性を示す報告より、mysterinの機能を明らかにするために、mysterin欠損が糖尿病モデルマウスに与える影響を検討した。具体的にはmysterinを欠損するノックアウトマウス(mysterin-/-)を作成した後、小胞体ストレスによる糖尿病モデルマウスであるAkitaマウス(Ins2+/C96Y)と交配を行い、mysterin KO/Akitaマウス(mysterin-/-,Ins2+/C96Y)を得て糖尿病に関連する形質の解析を行った。その結果、mysterin欠損はAkitaマウスの血清および膵島インスリン量を増加させることで、摂食量の低下、小胞体ストレスの低下を通じて糖尿病を改善することが示された(Biochem Biophys Res Commun 2013)。小胞体ストレス応答の1つとして、異常タンパク質の分解を促進する小胞体関連分解(ERAD)がよく知られている。Akitaマウスの膵β細胞ではERADにより異常プロインスリンのみならず正常プロインスリンの分解も促進していることが報告されており、mysterin欠損はERADによるプロインスリン分解を抑制する可能性がある。本研究は、mysterinがERADに重要な役割を果たす可能性を示唆しており、今後さらに検討を重ねることでmysterinの機能の一端が明らかにできることが期待できる。
著者
梅野 太輔
出版者
千葉大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では,ランダム変異によって多様化したテルペン酵素の変異体プールの中から,独自技術を用いたハイスループットスクリーニングによって活性を保持した変異体を濃縮・回収する実験を多世代にわたって実施することを目標としている。世代を経るにつれ,テルペン酵素の反応特異性が変化し,その変異体の機能・配列相関をみることによって,このクラスの酵素の進化能を試すとともに,その反応特異性にかかわる部位の網羅的な洗い出しを目指した。最初のアイデアは,カロテノイド合成経路との基質競合によってテルペン酵素の機能保持をコロニー色によって可視化するというシステムであった。これは手法として確立することができ,それをもとに複数の酵素の活性進化工学が可能となった。この手法をもって反応ポケットに集中的に変異を導入し,活性を保持しつつも配列の異なる種々のテルペン酵素変異体を得ることができた。一方,更なるスループットの向上を目指し,蛍光タンパク質と薬剤耐性遺伝子の癒合タンパク質を,更にテルペン酵素に融合する実験を行った。この手法を用いることで,基質消費ではなくフォールディング(タンパク質構造)の保持に対して超高速に淘汰を与えることができるようになった。この技術により,テルペン酵素の配列発散速度を飛躍的に高めることができると期待される。
著者
入江 正之 小松 幸夫 長谷見 雄二 田辺 新一 輿石 直幸 小松 幸夫 長谷見 雄二 田辺 新一 輿石 直幸 田中 彌壽雄 山森 誠 島田 斉 宗田 進史
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

スペイン、カタルニャ州のファッチェス離村集落にある18世紀末建設の伝統的石造民家マジア残存遺構の修復・再生の第二段階の完成、建築材料・工法分析、および温熱環境および室内空気質等の環境工学的計測のまとめ、建築作品「実験装置/masia2008」として紹介し、更にひとつを建築デザインワークショップ棟に、もうひとつをマジア農民資料館棟とした。この研究対象のある当該市庁を介した日本とスペインの国際的学術文化交流の実現を果たした。
著者
太田 美智男 山田 景子 岡本 陽
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

1.黄色ブドウ球菌biofilm形成は菌株によって発現が異なる。Biofilm高度産性株において、ica遺伝子ノックアウト、プロテアーゼ処理、DNase処理のいずれでもbiofilm産生は大幅に低下した。したがってbiofilm高度産生にはica産物であるPIAならびに蛋白、DNAが関与していた。icaノックアウト株ではプロテアーゼ処理、DNase処理の影響はほとんど見られなかった。したがってノックアウト株が形成する少量biofilm形成はc-di-GMPの影響を受けるが、蛋白、DNAが関与せず、恐らく他の多糖体のみによって形成される。このことはc-di-GMPが主に多糖体合成調節に関与することを示唆する。2.A群連鎖球菌はc-di-GMP生合成を行うGGDEFモチーフを持つ蛋白をゲノム配列から見いだすことができない。これは他の連鎖球菌においても同様である。しかし我々はA群連鎖球菌の細胞内にc-di-GMPを検出することに成功した。ゲノム配列を再検索したところ、GGDQVモチーフを持つ蛋白が一種類見いだされた。この蛋白はPAS,DHHドメインを有し、c-di-GMP生合成に関与することが予想された。この蛋白の遺伝子をノックアウトすると、biofilm形成が促進された。またc-di-GMPの産生が失われた。したがってこの蛋白はc-di-GMPの合成を行うことが証明された。GGDQV蛋白はGGDEF蛋白を持たない多くのグラム陽性菌などにおいて広く見いだされた。したがってc-di-GMPは細菌におけるbiofilm合成に関与する普遍的なシグナル分子であることが明らかとなった。
著者
廣本 敏郎 尾畑 裕 挽 文子 横田 絵理 木村 彰吾 中川 優 澤邉 紀生 伊藤 克容 諸藤 裕美 片岡 洋人 藤野 雅史 鳥居 宏史 河田 信 西村 優子 河田 信 西村 優子
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究では組織コンテクスを重視する管理会計研究を行い、日本的管理会計は自律的組織を前提とする学習と創造の経営システムに組み込まれていること、市場志向のイノベーションに対する従業員のコミットメントを強化するシステムであること、カレントな業績の向上を目指すだけでなく適切な組織文化・風土作りと密接に関連していることなどを明らかにした。更に、管理会計は企業のミクロ・マクロ・ループを適切に形成する経営システムの中核的システムであるという新たな命題を提示した。
著者
今井 公俊
出版者
京都大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

当科で体外受精・胚移植を受けた患者で、Veeckの基準による形態良好胚を2回以上子宮腔内に移植したにも拘わらず妊娠に至らなかった者を登録した。その中で次回予定体外受精・胚移植の前の月経周期の分泌期に所定の子宮鏡検査、採血、内膜組織診を行えたのは5名であった。この5名の平均年齢は37.2歳、平均不妊期間12.4年、過去に行った体外受精・胚移植の平均回数は5.4回であった。子宮鏡検査当日に経膣超音波断層装置で測定した子宮内膜の厚さは約10mmであった。子宮鏡検査で異常所見のあったものは1例で、子宮底左に小ポリ-プを認めた。従来通りのH&E染色で子宮内膜日付診をしたところ、out of phaseが4例で、4例共従来の診断基準上子宮内膜不全と考えられた。次の月経周期に体外受精・胚移植を受け、妊娠に成功したものは2例、失敗したものは3例であった。成功症例と非成功症例に分けて、それぞれの検査項目に於いてこの二群間に差が有るか否かを検討したが、症例数が少なく、2群間の差については統計学的に有意差を認めなかった。今回の研究対象は不妊期間も長く過去に施行した体外受精・胚移植の回数も多かったが、5例中2例に子宮鏡検査・子宮内膜掻爬の次周期に妊娠に成功したことは、不妊症を起こす何らかの原因が子宮内膜に存在し、それを掻爬して新しい内膜の再生を促した事が寄与したと考えられる。今後症例数を増やし如何なる因子が関与しているかを検討する予定である。