著者
田原 誠 柴田 篤 桂 紳矢
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.147, no.5, pp.311-318, 2016 (Released:2016-05-13)
参考文献数
27

慢性骨髄性白血病(CML)患者の95%以上で発現しているBcr-Abl融合遺伝子は,その恒常的な活性化が白血病細胞の増殖に関与しており,Bcr-AblチロシンキナーゼはCMLの治療における分子標的と考えられている.ボスチニブ水和物(以下ボスチニブと記す)はCMLの治療薬として開発された,AblおよびSrcを選択的に阻害する経口チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)である.ボスチニブは酵素レベルではAblおよびSrcに加えて数種のイマチニブ耐性型Bcr-Ablに対しても阻害作用を示し,細胞レベルでは種々の野生型およびイマチニブ耐性のCML細胞株に対して増殖阻害作用並びにシグナル伝達阻害作用を示した.一方ボスチニブは,イマチニブ,ダサチニブおよびニロチニブと異なり,c-Kitおよび血小板由来成長因子受容体(PDGFR)に対しては阻害作用を示さず,骨髄抑制および体液貯留に起因する副作用の軽減が期待された.In vivoにおいてもボスチニブはCMLを始めとする種々の異種移植モデルにおいて,臨床的に到達可能な血漿中濃度で抗腫瘍作用を示した.臨床試験では,2次治療および3次治療のCML患者を対象として国内外で実施した第Ⅰ/Ⅱ相試験の第Ⅱ相部分(有効性検討試験)で主要評価項目に設定した2次治療の慢性期CML患者の24週時点での細胞遺伝学的大寛解(MCyR)率は,海外試験では35.5%,国内試験では35.7%であった.また忍容性は全般的に良好であり,安全性プロファイルは許容可能であった.さらに骨髄抑制および体液貯留に起因するボスチニブの副作用の発現率はイマチニブ,ダサチニブおよびニロチニブより低く,非臨床試験で示された標的阻害プロファイルの違いが臨床的に裏付けられた.これらの非臨床および臨床試験成績からボスチニブの有用性が確認され,本邦では前治療薬に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病を適応症として2014年9月に承認された.
著者
Shigeto Morita So Sugiyama Yoshihiro Nomura Takehiro Masumura Shigeru Satoh
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
The Horticulture Journal (ISSN:21890102)
巻号頁・発行日
pp.OKD-007, (Released:2017-02-22)
被引用文献数
3

2,4-Pyridinedicarboxylic acid (2,4-PDCA) extends the vase life of cut flowers of spray-type carnations by accelerating flower opening as well as retarding senescence. Since 2,4-PDCA can inhibit 2-oxoglutarate-dependent dioxygenases, which include enzymes for gibberellin (GA) biosynthesis and catabolism, we hypothesized that GA might be involved in the enhancing effect of 2,4-PDCA on the flower opening of carnation. In this study, we tested this possibility by examining the changes in gene expression of DELLA protein (GAI), a negative regulator of GA signaling, and GA levels in carnation (Dianthus caryophyllus L. ‘Light Pink Barbara (LPB)’) flowers treated with 2,4-PDCA. We also analyzed the expression of cell expansion-related genes, xyloglucan endotransglucosylase/hydrolase (XTH), and expansin genes as markers of flower opening in the treated flowers. The transcript level of GAI gene was increased, whereas that of expansin was decreased, in petals of the 2,4-PDCA-treated flowers compared to those of the control, which was contrary to the enhancement of flower opening. Our results suggest that the changes in the expression of these genes are not associated with the enhancing effects of 2,4-PDCA. In addition, GA3 content tended to be decreased by 2,4-PDCA treatment in the petals of opening flowers. Flower opening was not accelerated, but rather delayed, by treatment of flower buds with exogenous GA3 and not affected by paclobutrazol, an inhibitor of GA biosynthesis, in ‘LPB’ carnation. These results suggest that endogenous GA is not associated with the enhancement of flower opening by 2,4-PDCA in carnation.
著者
亀井 隆幸 八木 保樹
出版者
公益財団法人 パブリックヘルスリサーチセンター
雑誌
ストレス科学研究 (ISSN:13419986)
巻号頁・発行日
pp.2016004, (Released:2016-12-29)
参考文献数
15

Consistent with the concept of security priming, it was hypothesized that reminders of significant others providing sense of security would invite individuals to be tolerant of a romantic partner’s lies. Two experiments were conducted to test this hypothesis. Security priming was performed by asking participants to recall a real life experience suggesting their own significant others’ supportiveness. Dependent variables were the responses to hypothetical situations in which a romantic partner had lied and the deception had been discovered. Experiment 1 showed that security priming could reduce the degree of ungenerosity interference in forgiving a partner, after the deception had been discovered. Experiment 2 showed that this effect did not result from the mildness of threat stimuli attributed to the fact that hypothetical situations were written in third person. Taken together, these results suggested that the effect of security priming ease a self-threat produced by a romantic partner’s lies.
著者
川田 学
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.157-167, 2011-06-20

乳児期における他者理解のひとつの形式とされる同一化(identification)について検討するため,擬似酸味反応(virtual acid responses)と呼ばれる現象について実験的に検討した。擬似酸味反応とは,例えば他者が梅干を食べようとしているところを見るだけで,(他者が酸っぱそうな顔をしていないのに)自分が酸っぱそうな顔になってしまうといった現象で,久保田(1981)によって6か月児の一事例が報告されていた。本研究には,43名の乳児(生後5か月〜14か月の乳児をyounger群[5〜9か月]22名,older群[9〜14か月]21名に分割)が実験に参加した。材料にレモンを用い,事前にレモンを食する経験をした乳児(Le群)とそうでない群(N-Le群)に分け,両群に対して実験者が真顔のままレモンを食する場面を呈示した。最終的に9個の行動カテゴリを抽出した。主要な結果として,(1)Le群>N-Le群でより多くの行動カテゴリの生起が見られること,(2)顔をしかめたり,口唇の動きが活発になるなどの典型的な擬似酸味反応はLe-younger群で多く見られるが,Le-older群では手のばしや発声のような外作用系の活動が多いこと,(3)他者が真顔のままレモンを食す場面を呈示されたLe群と,他者がいかにも酸っぱそうな表情でレモンを食す場面を呈示されたN-Le群では,反応が変わらないかむしろLe群においてより活発であった。以上の結果に基づき,生後1年目後半の乳児の意図理解や三項関係の発達と関連づけて議論した。
著者
田畑 武夫 篠原 寿子
出版者
東九州短期大学
雑誌
研究紀要 (ISSN:0918323X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.97-103, 1992-03-20

冬虫夏草とは,昆虫のサナギや幼虫あるいは成虫に寄生する特性をもつ菌類を総称して言う。フユムシナツクサタケ(中国名 : 冬虫夏草)は,古来から漢方薬において著名な強壮薬として珍重されてきた。著者らは,中国で得た昆虫に寄生した冬虫夏草の子実体の一部から菌糸を分離した。この分離した冬虫夏草菌(Cordyceps sp.)の人工培養に関する基礎的なデーターを得ようとして菌糸の生長に対する各種培地,pHおよび温度等の影響について検討した。又,冬虫夏草の培養菌体が腐敗しにくいということから抗生物質の産生が考えられるので,培地の抽出物について抗菌活性試験を実施した。以上の実験結果から,各種培地では,マルトース培地とサナギエキス培地が良好な菌糸の生長を示した。又,菌糸の生長の至適pHは,7,8のアルカリ側で,至適温度は25℃であった。冬虫夏草のフスマ培養菌体のエタノール抽出物はグラム陽性細菌に顕著な抗菌活性を示した。
著者
土山 明
出版者
日本宇宙生物科学会
雑誌
Biological Sciences in Space (ISSN:09149201)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.262-270, 1996
被引用文献数
4

Possible relic biogenic activity in martian meteorite ALH84001 was proposed by McKay et al. (Science, 273,924-930, 1996). This ancient meteorite of 4.5 billion years old contains abundant carbonates as secondary minerals precipitated from a fluid on the martian surface. They showed the following lines of evidence for the ancient life; (1 ) unique mineral compositions and biominerals, (2) polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs) in association with the carbonates, and (3) unique structures and morphologies typical of nannobacteria or microfossils. This review is divided into two parts; one is on the martian meteorites in general and ALH84001, which has many features unlike other martian meteorites, and the other is on mineralogical (biomineralogical) and geochemical features of the carbonates and microfossil-like structures. There is little doubt that ALH84001 is from Mars as well as eleven other SNC meteorites. However, the mineralogical and biomineralogical evidence for martian bacteria given by McKay et al. (1996) is controversial, and could be formed by non-biogenic processes. Thus, further study of ALH84001 and other martian meteorites is required. We also need to consider the future Mars mission especially sample return mission.
著者
坂田 霞 薮田 ひかる 池原 実 近藤 忠
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.60, 2013

地球誕生後まもなく形成し今日に至り広く分布する海洋地殻は,地球最古の生態系が存在する環境として着目されていると同時に,初期地球,また地球外惑星における生命存在可能性についての示唆を与える(Edwards et al. 2012).海洋地殻では,海底下を循環する海水と岩石との反応で溶出した様々な元素を栄養源とする微生物が存在すると考えられ(Edwards et al. 2005),そのような岩石-水プロセスが観察できる,貧栄養,低温(10-15℃),速い海水循環が特徴的な北大西洋中央海嶺西翼部North Pondでの地下生命圏探査を行った。本研究では,玄武岩掘削試料中の微生物活動の記録を明らかにする目的で有機物の検出と炭素同位体分析を試みた。
著者
多田 泰紘
巻号頁・発行日
2013-02-18

アカデミック・サポートセンター×附属図書館によるスキルアップセミナー「論文・レポートを書く前に : 第1回」. 平成25年2月18日(月). 北海道大学附属図書館本館2階リテラシールーム, 札幌市.
著者
丸茂 雄一
出版者
GRIPS Policy Information Center
雑誌
GRIPS Discussion Papers
巻号頁・発行日
vol.9, 2009-10-19

米軍飛行場周辺に居住する住民から、数次にわたり基地騒音訴訟が提起されている。本稿は、損害賠償請求(過去分)を検討する過程において論点となる飛行場の「公共性」の評価と「危険への接近の法理」について着目し、判例の動向を分析するものである。米軍飛行場の有する「公共性」に関する近年の判例に共通する認識は、①公共用飛行場と同程度であるとか、②受忍限度を判断する際の一要素に過ぎないというものである。損害賠償請求訴訟において、被告国は「公共性」を過度に強調することはできない。「危険への接近の法理」は、2つに区分される。国が損害賠償を免責される「免責の法理としての危険への接近」の適用については、周辺住民が違法状態を利用して損害賠償を請求するような、周辺住民が特に非難されるべき事情がある場合に限られるであろう。一方、国の損害賠償額が減額される「減額の法理としての危険への接近」を適用については、第五次~第七次横田騒音訴訟控訴審判決が厳しく指摘するように、①米軍飛行場の違法状態が継続し、②最高裁判決後においても違法状態を国が放置していることを考慮すると、国が今後抜本的な騒音対策を施さない限り、裁判所が損害賠償額の減額を認定することはないだろう。
著者
井上 克己 山中 将 増山 知也 成田 幸仁
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

歯車の損傷は大きい経済的損失をもたらし,人命に直接関わる事故に繋がる恐れがある.したがって,そのリスクマネージメントは極めて重要である.一方で,エネルギー消費の低減やリデュース設計のため,歯車装置には小型軽量化と長期信頼性の確保という,相反する要求が科せられている.これに応えるために,使用状態における歯車の損傷確率を評価し,信頼性を考慮した寿命を推定することが不可欠である.本研究は,平成16年度から3ヵ年にわたり,浸炭歯車へのリスクマネージメントの適用を目指して以下の項目を実施した.1.材料中の介在物分布から寿命を推定するシミュレーション法の開発2.歯車試験に基づくシミュレーション法の妥当性の確認3.損傷確率を考慮して浸炭歯車の伝達荷重と寿命を評価し保証する方法の確立.最終年度である今年度は,浸炭歯車のピッチング強度を推定する方法の確立を目的とした研究を行った.歯面の損傷事例に関するこれまでの報告を精査し,面圧強度を律するクライテリオンとして,材料中の介在物に加わるせん断応力とモードIIの応力拡大係数の2種類を導入した.また,かみ合いによる歯面上の負荷点の移動に基づいて歯の応力分布を計算する有限要素プログラムを発展させ,ピッチング強度とピッチング発生位置をシミュレートするためのプログラムを開発した.このプログラムを用いてピッチング強度シミュレーションを行い,クライテリオンとしてせん断応力が適することを明らかにした.シミュレーションの結果,これまでの損傷事例報告に近いピッチング強度が得られた.この成果は近く学会発表する予定である.
著者
Ghosn Carlos 井上 裕
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1286, pp.50-52, 2005-04-04

問 最近、高い業績を残している会社をよく見ると、社員のモチベーションが高く、トップもその重要性を強く認識している。社員がしっかり動機づけされた「モチベーテッド・カンパニー」でなくては成功はない、ということですね。 答 モチベーションは実は、最も重要な会社の資産です。どんな事業であれ、利益を出し、成長するには社員の高いモチベーションが必要です。
著者
福盛 貴弘
出版者
筑波一般言語学研究会
雑誌
一般言語学論叢 (ISSN:13443046)
巻号頁・発行日
no.6, pp.1-16, 2003-12-31

本稿は、福盛・池田(2002)で示した文字の一般文字学的分類をふまえて、日本語で用いられる文字という個別文字学への適用を主たる目的としている。従って、本稿の用語は福盛・池田(2002)に従う。ただし、一部見解が変わったものは、付記および改訂を行った。また、本稿では主に ... This paper first discusses the graphic nature of the writing in general (Section 1), and reexamines the graphic units and the criteria for classifying the world's writing systems that Fukumori & Ikeda (2002) introduced (Section 2 and 3 respectively). Based on these theoretical assumptions, it classifies various jusetsu ("graph," or the basic graphic unit in general graphology) ...
著者
福盛 貴弘 池田 潤
出版者
筑波一般言語学研究会
雑誌
一般言語学論叢 (ISSN:13443046)
巻号頁・発行日
no.4, pp.35-58, 2002-12-31

文字は音声と並ぶ言語記号ではあるが、文字の研究は音声に比べて大幅に立ち遅れている。言語学の入門書を見ても、音声に関してはページが割いてあるのに対し、文字は無視されるか、補足程度の解説しかない場合がほとんどである。その理由は言語学がアルファベット文化圏で成立 ... This paper discusses various issues concerning the nomenclature and typology of the world's writing systems, and proposes a new system of classifying writing systems based on the language they convey, the linguistic unit(s) they represent (i.e. words, syllables, consonants, segments, and semantic classes), their graphic shapes, and if evident, their genealogy. We thus classify ...
著者
田村 百代
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
地理学評論. Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.253-268, 1993
被引用文献数
1

フンボルトは晩年の著書『コスモス(第1巻)』 (1845)の中で,宇宙の自然をその壮大な規模で描写する自然的宇宙記述を論じ,宇宙の諸力と諸現象を「自然画」として概観している.天空の星雲から,地上の植物・動物・人類までを包括する「自然画」は,ゲーテ自然研究の精神を踏襲しつつ,近代科学の成果をもとに描写されている.とくに宇宙全体像の究明,恒星系への重力の法則の拡大,諸力の変換に関する研究は,「自然画」の思想の枠組みを決定する役割を果たしていた.自然的宇宙記述すなわち「比較地理学および天文学」は,宇宙の諸力と諸現象を,宇宙のすべての創造物を生命ある自然全体として考察し,天空・地球のいずれの場合においても,諸力と諸現象の空間的分布から普遍的な法則を追究したところに,独立した科学としての固有の性格をそなえていた.自然的宇宙記述の中で,地球の諸力と諸現象に関する記述を行なう比較地理学は,「フンボルトの一般地理学」であることが明らかとなった.
著者
朴 杓允 西村 正暘 甲元 啓介 尾谷 浩
出版者
日本植物病理学会
雑誌
日本植物病理學會報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.488-500, 1981-09-25
被引用文献数
1

イチゴ黒斑病菌, ナシ黒斑病菌, トマトstem canker病菌およびリンゴ斑点落葉病菌の宿主特異的毒素(それぞれAF-toxin I, II, AK-toxin, AL-toxinおよびAM-toxin I)によってひきおこされた各宿主細胞の初期変性を電顕によって比較観察した。これら毒素による変性像は, 3つの型に分けられた。1つは, 透過性機能の崩壊を伴う原形質膜の陥入・断片化・小胞化, 原形質連絡糸の変形そして細胞壁の崩壊であった。これはAK-toxin-感受性ナシ花弁, AM-toxin I-感受性リンゴおよびナシ葉, AF-toxin I-感受性イチゴおよびナシ葉, AF-toxin II-感受性ナシ葉の各組み合せで見られた。なお, AF-toxin II-感受性イチゴ葉の組み合せでは, 肉眼的な毒性は認められなかったが, 電顕下では維管束細胞の崩壊が観察された。2番目の型は, 葉緑素含量の減少を伴う葉緑体グラナの小胞化であった。これはAM-toxin I-感受性リンゴおよびナシ葉の光合成組織細胞だけで認められた。3番目の型は, ミトコンドリアと粗面小胞体の変性であった。両者とも膨潤・小胞化した。ミトコンドリアでは, その基質は漏出し, クリステの数は減少した。これはAL-toxin-感受性トマト葉で認められた。上記各毒素を処理したすべての抵抗性宿主細胞では, なんらの変性も認められなかった。以上の結果から, AK-toxinとAF-toxin IおよびIIの作用点は, 感受性宿主細胞の原形質膜や細胞壁上に, AL-toxinのそれは, 感受性細胞のミトコンドリアや粗面小胞体上にあると考えられる。なお, AM-toxin Iの作用点は, 葉緑体を持っ感受性細胞では原形質膜・細胞壁および葉緑体グラナ上に存在し, 葉緑体を持たない細胞では, 原形質膜・細胞壁上に存在するものと考えられる。
著者
江木 盛時 内野 滋彦 森松 博史 後藤 幸子 中 敏夫
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.21-26, 2009-01-01 (Released:2009-07-25)
参考文献数
30
被引用文献数
2 1

過去に報告された無作為化比較試験(randomized controlled trial, RCT)で有効であるとされた治療法が,その後に行われたRCTで否定されることがある。その原因として,過去のRCTが有意差の得られやすい条件で施行されていることが挙げられる。RCTは,この条件を踏まえた上で考察することが重要である。その三要素として,(1)subgroup analysis, (2)single center open label study, (3)early terminationが挙げられる。(1)Subgroup analysisは,統計学的検討回数を増やすことで,(2)single center open label studyは,ホーソン効果と治療の浸透性により,(3)early terminationは,random highと統計学的検討回数の増加により,偽陽性の確率を高める。これらの手法を用いて得られたRCTの結果は,慎重に吟味する必要がある。
著者
跡部 恵子 井田 茂 伊藤 孝士
出版者
日本惑星科学会
雑誌
日本惑星科学会秋季講演会予稿集
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.57-57, 2003

観測限界から、これまでに発見されている系外惑星は全て巨大ガス惑星と考えられているが、地球型惑星も存在しているだろう。惑星において、生命、特に陸上生命が誕生、進化するためには、ハビタブル・ゾーン(液体の水が存在できる軌道領域)での軌道安定性に加え、惑星表面の気候が安定に保たれる必要があると考えられる。惑星自転軸傾斜角の変動は、気候に多大な影響を与える。一般的に自転軸傾斜角の変動は数度であるが、自転・軌道共鳴によって数十度に達する場合がある(Ward 1974, Laskar et al. 1993)。実際、現在火星の自転軸は共鳴の影響で十数度の変動をしており、このような大変動は惑星の居住可能性に影響を与えるであろう。<BR> 本研究では、系外惑星系のハビタブル・ゾーンにある仮想的地球型惑星の自転軸傾斜角変動について調べた。自転軸の振幅を表す解析式を用いて計算を行った結果、巨大惑星が地球型惑星の軌道をかろうじて安定に保てる場所にある場合、地球型惑星は共鳴の影響を受けやすいことがわかった。つまり、軌道的に安定であっても、自転軸傾斜角の大変動が引き起こされる可能性がある。<BR> さらに実際の系外惑星系において、仮想的地球型惑星の自転軸変動を評価した。その結果、地球型惑星が、安定軌道、かつ小さな自転軸変動を示す可能性のある系は稀であることを示唆する結果を得た。しかし、惑星の逆行自転や、近接した巨大衛星の存在は自転軸変動を抑える傾向があり、これらが陸上生命発達の鍵を握っているかもしれない。