著者
福岡 豊
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は「ニューラルネットを用いることによって生体信号からストレスの客観的評価が可能であることをラットの拘束水浸ストレス負荷実験によって示すこと」であった.ストレス負荷の際は、ラットを3群に分け、それぞれのストレス負荷時間を0(対照群)、2時間、6時間とした。4週間にわたってストレスを負荷した後に,ニューラルネットの入力信号用として心電図,血圧,直腸温を記録した。その後、副腎および胸腺重量を計測し、これらの値から5層砂時計型ニューラルネットによりストレス指標を算出した。3層ニューラルネットにこの指標を与えて学習を行い、学習用とは別のラットから記録した評価用データを入力したときに,どの程度の推定精度が得られるかを検討した.また、心電図、血圧、直腸温をどのように組み合わせて入力した場合に、高い推定精度が得られるかを検討した。その結果・ストレスを負荷したラットと負荷しないラットでは、副腎・胸腺の重量が異なること(ただし、2時間と6時間の群では有意な差が認められなかった。この理由により、対照群と6時間負荷群のみの比較を行うこととした。)・上記の生理指標から算出したストレス評価値が有意(危険率0.1%以下)に異なること・ニューラルネットにより生体信号とストレス評価値の対応付けが可能であること・心電図のRR間隔の変動のみを用いるだけで、高い推定精度が得られること・未学習データに対しても良好な推定結果が得られることを確認し、ニューラルネットを用いることにより生体信号によるストレスの客観的評価が可能であることを示した。
著者
畑江 敬子 戸田 貞子 香西 みどり
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

われわれは保存した食物の安全性を確認したり、食べられるか否かの判断をする際に、しばしば味やにおいを手がかりにする。苦味および酸味はそれぞれタンパク質およびデンプンの腐敗のシグナルである。また、変敗臭やかすかな異臭も変質や腐敗のシグナルである。高齢者はこのような判断の機能がどの程度保持されているかについては、明確なデータは得られていない。そこで、65才以上の高齢者のべ248名の協力を得て、いくつかの味の閾値、ならびに腐敗のシグナルとなるにおいの閾値を官能検査によってしらべ、20才前後の若年者のべ127名と比較した。塩味についてはNaCl水溶液(8段階)、甘味についてはスクロース水溶液(7段階)、酸味についてはクエン酸水溶液(6段階)を用い水を対照として、濃度上昇法による2点比較法でしらべた。水と区別できる検知閾値を求めた後に、濃度を上昇させて何の味かわかる認知閾値の濃度を求めた。その結果、塩味の検知閾値と認知閾値、および甘味の検知閾値には、高齢者と若年者の間に有意の差(p<0.05)あり、高齢者は感度が低下していることがわかった。しかし、個人差が大きかった。においの閾値については、酢酸(10段階)、トリメチルアミン(11段階)、メチルメルカプタン(13段階)を用い、水を対照として官能検査を行った。いずれの試料についても高齢者は若年者より有意に閾値が高く、においにたいする感度が低下していることがわかった。しかし、高齢者の70%は自分のにおいに対する感度が低下しているという自覚がまったくなかった。以上のように高齢者は味にもにおいにも感度が低下しており、食物の腐敗や変質に対する直感的な識別能力が低下しているので、高齢者自身も自覚して注意を払う必要がある。
著者
佐藤 猛
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、15・16世紀フランス王国において、いくつもの高等法院(王国の最高裁判所)が設立された過程を検討することを通じ、当時の国王支配の特質を明らかにするものである。時々の王権はパリからの距離、王領編入時における当該地域と王権との関係、そして裁判組織に関する在地諸身分の要望などを考慮して、地方高等法院導入の是非を決定した。こうして王は、各地で長い伝統をもつ裁判慣行を維持、調整しながら、統一的な裁判体系の確立を目指したことを明らかにした。
著者
阿部 博友
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究によりブラジル会社法の特質を明らかにすることができた。特に支配株主の責任と義務規定は、強大な外資がブラジル企業を支配してきた社会的現実に焦点をあてた注目すべき規定であり、本研究によりその詳細が本邦にはじめて紹介されたものである。また同国資本市場法は、我が国では先行研究が乏しい。本研究は、その概要をはじめて紹介した先駆者的試みであり、今後さらに継続した研究が望まれる。
著者
寺岡 徹 有江 力 鎌倉 高志
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

(1)我々が構築したdifferential cDNA libraryから、付着器形成時、侵入時に特異的に強く発現している病原性関連候補遺伝子をマクロアレイ、RT-PCRにより選抜した。その中から特異性の高かった、FMI1(Functional gene of Magnaporthe Infection 1; クローン#B19)、FMI2(クローン#B48)、MGH61A(Magnaporthe Glycoside Hydrase family 61A;クローン#B59)を選抜して、それら遺伝子の構造解析、ゲノム解析を行い、当該遺伝子の破壊株を作出して、付着器の形態形成ならびにイネ葉への感染過程における機能を解析した。いずれも既報の遺伝子と高い相同性を示すものはなかったものの、部分的にいくつかのドメインを保持していた。FMI1はN末端にセリン残基に富んだ配列と核局在性シグナル様配列をコードし、そのC末端側にsucrase/ferredoxinと部分的相同配列をコードしていた。当該遺伝子の破端株は付着器形成の異常、侵入の遅延をもたらした。FMI2はdual specificity phosphataseの活性ドメインを一部コードしていた。当該遺伝子破壊株は付着器形成の異常をもたらしたが、両遺伝子とも顕著な病斑形成能の低下はもたらさず、その発現も接種後3-4日以内の肉眼的病斑形成以前に限られていた。MGH61Aはシグナル配列を持つ分泌型タンパク質で、5'側の一部にglycoside hydrase family 61と相同性の高いドメインを保持していた。当該遺伝子の破壊株は付着器形成、侵入、病斑形成の低下をもたらした。(2)ベトナムを中心として、世界各地で分離されたイネいもち病菌の病原性レースと交配能について、自然交配能を有する雲南産ならびにアメリカ産イネいもち病菌を基準に調査したところ、ベトナム菌株は病原性レースは多様性に富むものの、交配能を保持している菌株は見いだせなかった。ただ、今まで報告されたことのない二本鎖RNAウイルスを見出した。本ウイルスは容易に水平移動し、いもち病菌の生育、病原性を低下させた。
著者
神田 晶申
出版者
筑波大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では、グラファイト超薄膜に各種原子分子のインターカレーションや表面吸着を施すことによって新機能性を発現させ、それをゲート電圧によって制御することを最終目標としている。インターカレーション(表面吸着)させる物質として、アルカリ金属であるカリウムを選定した。カリウムは、バルクのグラファイトにインターカレート(C8K)すると極低温で超伝導となり劇的な物性変化をもたらすことが知られている。グラファイトを原子レベルまで薄くしたグラフェンでは、低次元化とゲート電界印加により、C8Kからの物性変調が期待される。特に、超伝導転移温度の上昇やゲート変調が観測されると興味深い。一方で、単体カリウムやC8Kは空気中で不安定であるために、電気伝導測定用グラフェン試料の作製プロセス、測定プロセスをカリウム試料に最適化する必要がある。本研究では、以下に示す手順によって、試料作製・極低温測定を行う方法を確立した。(1)配線済みグラフェン試料上面にカリウムを蒸着、(2)不活性ガスで満たしたグローブボックスに試料を搬送し、必要に応じてチューブ炉でアニール(3)紫外線硬化接着剤を用いて試料を不活性ガスでシール、(4)試料を低温冷却装置まで搬送、(5)低温冷却装置を真空にし、冷却・測定を実行。4Kまでの測定で、カリウム蒸着によって移動度が減少すること、電荷中性点(キャリア密度が最小になるゲート電圧値)がマイナスに移動することが観測された。これらのことは、カリウムによって電子がドープされるとともに、荷電不純物が増えることで散乱、電荷中性点での状態密度が増えたことに起因すると考えられる。今後、希釈冷凍機を用いて極低温測定を行うとともに、試料作製プロセスの更なる改良を行う予定である。
著者
坂本 祐子
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,術後せん妄を予測する尺度を開発した。この尺度は,睡眠 2 項目,基本属性 5 項目からなる.尺度項目は,術後患者の睡眠測定と看護師を対象とした質問紙調査から作成した。睡眠に関する項目は「日中の熟睡」「夜間覚醒」,基本属性に関する項目は「脳血管障害の既往」「睡眠剤服用」「向精神薬服用」「介護保険施設入所」「通所サービスに利用」であった.評価は,各項目を「有:1 点」「無:0 点」で行う.我々の評価では,基本属性 1 点以上かつ睡眠項目が 1 点以上になった場合に,せん妄を発症する可能性が高いとみなすことができた.
著者
田中 美保子 鳥巣 哲朗 田中 利佳 生駒 明子
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

全顎的なインプラント補綴患者で咬合接触面積、最大咬合力、咀嚼能率、硬さ認知能を測定した。縦断研究でインプラント手術前、上部構造装着日、装着1-2週間後、装着3か月後の4回分析した結果、咬合接触の増加と並行して咬合力は短期的に回復したが、咀嚼効率は咬合力と連動していないことが示唆された。横断研究では、歯牙対歯牙、歯牙対インプラント、インプラント対インプラント、義歯対インプラントの4群で比較し、咀嚼機能には歯根膜の関与が、硬さ感覚にはOsseoperceptionの関与が示唆された。本研究の成果は、インプラント治療後の咀嚼適応に対する指標の明示や咀嚼力発現メカニズムの解明に貢献するものと考える。
著者
石田 久之
出版者
筑波技術短期大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

■点訳或いは音訳(対面朗読などを含む)ボランティア活動を行なっている団体に、会員数、活動形態、養成、活動の問題点などを対面或いは電話によりインタビューした。■【ボランティア団体への入会に際して】ボランティアというものは、その能力に左右されず、ただ個人の自発的な意志によってのみ、活動が保障されるものであると思われるが、残念ながら誰でもが自由にボランティア活動に参加できるものではない。それは、活動の質というものが問われるからである。点訳・音訳活動については、点字図書館や社会福祉協議会などでボランティア養成講座が開講されている。これら養成講座の受講をボランティア団体への入会の条件としている場合がある。点訳の場合、点の打ち方や、分かち書きを知る必要がある。音訳の場合、発声の仕方、読み方など普通の会話とは違った、聞き易い読み方があり、それらをある程度自分のものにしておかなければならないのである。養成講座の受講が必要な団体、必要でない団体の数は、音訳、点訳を問わず、ほぼ半々となっている。それぞれの主張するところは、必要とする場合、先に挙げた理由の他に、現在では、点訳物・録音物の貸し借りは全国規模に広がっており、全国水準の力量が必要であり、それに合わせるためには、入門講座の受講は最低限必要というものである。他方、必要としないという団体の主張は、善意を基礎としての活動であり、入りたいと考える人には、是非来て頂きたいとの理由である。しかし技量がどうでも良いというわけではなく、入ってからの勉強の重要性は十分認識されている。■【養成講座主催者側から見た課題】点訳・音訳養成講座は、ボランティア団体への入会窓口という側面を持っている。そのような立場から養成講座受講者をみると、(1)定着率の低さ、(2)若い人の少なさ、(3)有償で働きたいという人が少なくないというような課題がある。
著者
岡田 洋子 井上 ひとみ 茎津 智子 菅野 予史季 三田村 保 佐藤 雅子
出版者
旭川医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本研究の目的は、死をタブー視し子どもとの会話を避ける傾向が強い日本社会において、命の大切さや生きること、死についてどのように教え学ぶか、その方略の開発と実践・評価である。対象は協力の得られた小学校の低学年78名、高学年80名、中学生112名の合計270名である。方法は各学年用に作成したDeath-Educationプログラムの実施前および実施後に、「命」「生きること」について原稿用紙1枚程度に記載、提出を願った。分析は提出レポートから(1)コード化を行い、データがどのカテゴリーに属するか(2)サブカテゴリー化(仮説設定過程)を推定し、(3)カテゴリー化を試みた帰納的・記述的方法である。Death-Educationプログラムの作成は、小児看護の立場で行なう目的・指針と認知的発達段階を考慮し作成した。低学年は作成した「命」について考える視聴覚アニメを、高学年は生徒に身近で具体性に富む少年の闘病生活ドキュメンタリーを、中学生は先天性疾患で入退院の経験・障害を有する高校1年生自身による体験談と、骨腫瘍の少年の闘病生活ドキュメンタリーを併用した。倫理的配慮は、中学生には成績に一切関係がない、参加するか否か(途中で出ても)自由である、本人および家族から承諾書にサインを頂き実施した。結果は各学年とも実施前より後の方が1)記載内容が増加、2)一般的知識から感情を伴った表現内容に変化、高学年以上ではさらに3)死と対峙する仲間の闘病生活から(1)そういう仲間の存在をしらないで生きていた自分の発見、(2)健康は当たり前なことではなく、とても大切なことの実感、(3)健康・命の大切さと親への感謝の気持ち、と多くの学び(衝撃)を得ていた。さらに4)死の否定的側面ではなく、生きることに目が向けられていることが確認できた(From Death to Life)。
著者
塚本 明
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

近世伊勢神宮の門前町、宇治・山田の社会構造を、神社特有の触穢意識の規定性と、穢れを忌避するシステムに注目して分析を加えた。近世の宇治・山田では、中世以来の神社の触穢規定に反して、実生活においては触穢の影響を回避する工夫がなされている。また穢れの判定には、幕府の遠国奉行・山田奉行に比べて神宮はむしろ軽く済ませる志向を示した。宇治・山田という都市が諸国からの参宮客によって経済的に成り立っており、参宮を規制する触穢規定の適用が好まれなかったことが背景にある。だが同時に清浄さを重んじる伊勢神宮は世間の見方に影響を受け、触穢を蔑ろにすることも許されなかった。宇治・山田の社会が死穢の影響を避けるためには、これらを処理する専業者、拝田・牛谷と呼ばれた被差別民を不可欠な存在とした。なお、外来の被差別民を含め、彼らへの忌避意識は江戸時代前期において強くはない、だが中期以降に、山田奉行、朝廷世界からの働き掛けにより、次第に触穢意識も変容を迫られる。特に幕末期には、被差別民、仏教、異国人が一体となって排除されるようになり、直接・間接的に近代以降の触穢意識を規定していくこととなる。なお、報告書においては伊勢神宮長官機構で作成された公務日誌中の触穢関係記事の一覧、宇治・山田の基礎的な資料である『宇治山田市史資料』の年次一覧、神宮領の基礎的な文献である『大神宮史要』の江戸時代中の記事について編年にした一覧表を付した。
著者
松本 尚子
出版者
国立天文台
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究の目的は、高精度天体位置計測のための望遠鏡VERAを用いた位相補償VLBI観測により、銀河系中心から約3kpcまでの領域の晩期型星および星形成領域に付随するメーザー源の絶対3次元運動を高精度で計測し、その測定結果と銀河系の動力学的な理論モデルとを比較することで、銀河系のバーポテンシャルの深さ・太陽系に対するバーの傾斜角など、銀河系の棒状構造に制限をつける事である。特に、運動学的に議論可能な精度で銀河系内のガスの絶対3次元運動を得るには、現時点において星形成領域に付随するメーザー源を用いた位相補償VLBI観測が唯一であり、運動学的な観点からのアプローチの一つとして重要な意味を持つ。この目的のために、昨年度は国内初の試みである6.7GHz帯メタノールメーザー源を用いた位相補償観測の試験として、もっとも明るい6.7GHz帯メタノールメーザー源の一つである大質量星形成領域W3(OH)に付随するメーザー源の年周視差・固有運動を得た。本年度はその成果をPASJから出版し、国内外の研究会でも成果発表を行った。本成果には、まだ観測例の少ない6.7GHz帯メタノールメーザー源の内部固有運動の検出も含まれており、大質量星形成領域の周辺環境を探るという観点でも重要な意味を持つ成果である。上記の経験を元に、2009年11月よりVERAを用いて、銀河系バー周辺領域の6.7GHz帯メタノールメーザー源を10天体観測してきた。2011年秋までの時点で、10天体中6天体の絶対3次元固有運動を3σ以上の精度で求めることができた。これらのデータ解析結果から得られた3次元運動と銀河の棒状構造モデル等と照らし合わせて非円運動成分を導き、これまでの銀河系に関する研究結果と矛盾しないバーの傾斜角~35°が得られ、棒状構造の存在が3次元運動からも示唆される事を、国内外の研究会にて発表した。
著者
高橋 正道 山田 敏弘 長谷川 卓 安藤 寿男
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

これまでに、2009~2011年の間、5回にわたるモンゴルの白亜紀についての野外調査を行った。主な調査地は、バガヌール、フレンドホ、テブシンゴビ、ツグルグ、シーブオーボ、シネフダク、バヤン、エルヘートなどのウランバートルの東南のゴビ地域である。この調査に参加した人数は、モンゴル古生物学研究所、エール大学、シカゴ植物園、金沢大学、新潟大学のメンバーである。これらの調査によってモンゴルの白亜紀の地層から初めて、3次元的構造を残している小型炭化化石を発見し、被子植物の初期進化と地球環境の変遷解明に有効な手掛かりを得ることができた。分担者の長谷川は,フレンドホ地域のフフテグ層において地質柱状図を作成し,植物化石試料採集露頭周辺についての地質学的な記載を行った。また、シネフダク地域のシネフダク層に関して柱状図を作成の上、採集した試料について有機炭素の同位体比を測定した.その結果,7‰程度の変動があることが明らかになった.この結果は,湖堆積物への植物プランクトン類と高等植物の相対的な含有率の変動を示していると考えられ,湖の成層状態や河川による高等植物遺体の流入量など,気候に関連する要因の変動読み取れることが判ってきた。また、マレー大学のLee教授と筑波大学の久田教授の協力を得て、モンゴルと対比可能なマレーシアで、熱帯地域での白亜紀の地層からの小型炭化化石の探索の可能性を探った。
著者
江頭 祐亮
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

最終年度である平成24年度は,前年度で高精度化した陽子線線量分布計算アルゴリズムの実験的な検証を行なった。元来電子線治療に対する線量分布計算法であるPBRA (Pencil Beam Redefinition Algorithm)法を陽子線治療に応用することによって高精度線量分布計算アルゴリズムの実装を行ない、実験的に検証を行なった。PBRA計算法の最大の特徴は,側方向の位相空間の変化に加えて,エネルギーの位相空間の変化を考慮した六次元の位相変化を評価することによって輸送計算毎にPBを再定義することが可能である点である.このPBRA計算法における物理的特性によって,再定義によって再発生したPBは,従来のPBの軌跡が考慮することのできないビームの軌跡を描くことが可能であることを示している。また,PBRA計算法のアルゴリズムとしての妥当性を確認した上で,PBを分割することによる不均質媒体に対する線量分布への影響の評価を行った。この評価では,人体の不均質を模擬した異なる2つのファントムを作成し,PBの深さ毎の分割数が増加するにつれ計算値と測定値の相違が小さくなることを確認し,更に不均質媒体の直上でPBを分けることによって精度が向上することを示した。続いて,PBRA計算法による計算結果とファントム測定の結果の比較による精度向上に対する評価を行った.この評価では,上記の不均質スラブファントムに加えて,より人体の構造に近い模擬人体ファントムを用いており,PBRA計算法がPBA法に対して,より人体に近い体系に対して計算精度が向上することを示した。更に,アルゴリズムの高速化と,高速PBRA計算法を搭載した陽子線治療計画システムの開発を行った。
著者
寺本 時靖
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

日本で導入が始まった研究支援部門であるリサーチアドミニストレーション組織(RA組織)のモデル構築を試みるために、導入定着が進んでいる米国の大学と日本の大学の組織の調査を行った。米国ではRA 組織の機能としては、主に「Pre-award 業務」「Post-award業務」「Compliance業 務 」「Data Management業務」があり、それぞれに対応する組織が設置されている。また、研究力が高い大学ほど、RAの人数が充実していることが明らかになった。また日本型では研究戦略を中心とした組織形態が多くみられ、アメリカではResearch Development部門と類似の機能を持っていることが明らかになった。
著者
横田 裕輔
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本研究では、地殻内地震の本震から余震活動や余効変動へと移行する時間発展の様子をハイレートGPSを用いた震源インバージョンによって解析し、余効変動への進展の様子を明らかにする。さらに、2011年東北地方太平洋沖地震に関して、その本震の震源過程とバックスリップ・余効すべりの詳細な解析を実施する。これらの解析から、東北沖のプレート境界に関する固着とすべりの時空間発展の描像を得る。さらに一連の時空間発展を再現可能な物理モデル、シミュレーションについて議論を行う。このような解析と議論によって、地震の始まりと進展だけではなく、地震の終焉とその後の中・長期的な時空間発展の概観を知ることを目的とする。本年度は、2011年東北地方太平洋沖地震(Mw:9.0)について強震波形データを用いたインバージョンを行い震源過程を推定した。さらにハイレートGPSデータを使用した解析によりこの地震直後の余効すべり過程を推定し、巨大地震の終焉過程についての考察を実施した。また、過去のGPSの1日サンプルデータについて過去の研究より詳細に時系列解析を行い、北海道から房総沖にかけての太平洋プレートの沈む込み帯におけるバックスリップ過程の詳細な時空間発展を調べた。海底地殻変動データも含めた解析も実施し、同じデータセットを使った本震の解析結果と非常に似た領域が固着を蓄積し続けてきたことも明らかにした。さらに、詳細な本震の震源領域・地震前のバックスリップ領域・地震後の余効すべり領域を比較し、一連の時空間発展を再現可能な物理モデルについて議論を行った。これらの研究の結果、2011年東北地方太平洋沖地震の前後約15年間にわたる詳細な物理過程の全容を推定し、その物理モデルに関する示唆を得た。
著者
林 勉 水島 義治 曽倉 岑 小野 寛 遠藤 宏 岩下 武彦
出版者
帝京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1991

1萬葉集の古写本を『校本萬葉集』未収のものも含めて全体を総覧できる,表を中心とした解説にさらに改訂を加え充実したものを発表した。2特に西本願寺本について,新しいポジカラーフィルムによる調査を重ねて疑問点を明らかにし,原本の巻六〜十を再度直接に調査できた。3西本願寺本の無修正モノクロ影印の作成を始め,巻一〜五を刊行し,従来の竹柏会や主婦の友社版複製の修正に伴う誤りを正した。4また西本願寺本の翻刻を,本文や訓のほかヲコト点や声点,さらに見せ消ち,削訂,重書も注記することにし,漢字の字体も原本をなるべく生かすよにし,巻第一〜五を影印に添えて刊行することができた。5仙覚改訓を示す青訓が変褪色し,朱・墨等で重書しているのに注意し,三度の重書の箇所も多く指摘できた。竹柏会複製では全て青色に復元,主婦の友社複製は,記号や書入を修正する誤りを避けることができた。6影印,特に翻刻とその注記は極めて高度な内容であるので,フィルムや原本で確かめ,また印刷上の誤植などにも細心の注意を払い,若い研究者や大学院生達の協力を得て,万全を期することに精力をこめた。7他の新点本についても神宮文庫本,陽明本,大矢本,近衛本,京大本等の調査を重ねて,西本願寺本底本の校異を,ほぼ全巻につけた。『校本萬葉集』の誤脱の指摘も,特に神宮文庫本においてかなり進んだ。8古次点本の調査は従って余り進めることができなかったが,広瀬本等新出資料についても調べねばならないが伝冷泉為頼筆本に近い。9全体の研究集約は基本となる西本願寺本複製の完成を待たねばならない。次年度中には全巻完成を見,その上に立って校異編を別冊として刊行を予定しているが,これもかなり細かな注意と忍耐が必要である。10西本願寺本複製刊行が中心となったので,そのための資料・コピー代や連絡代が必要となり,調査のための旅費が減ったのは止むを得ない。
著者
岸本 文紅 米村 正一郎 内田 雅己
出版者
独立行政法人農業環境技術研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

土壌有機物分解の温暖化に対するフィードバックとその制御メカニズムの解明は、農耕地土壌の炭素隔離の気候変動に対する将来予測を行う上で緊急な課題である。本研究は、土壌を温める野外操作実験による土壌有機物の分解に及ぼす温度上昇の効果を定量的評価し、その制御メカニズムの解明を目的とした。その結果、圃場スケールでの実験的加温(深さ5cmで+2℃)により、土壌有機物分解によるCO_2発生は冬春のコムギ作で2~13%促進され、夏秋のダイズ作では10~18%低下した(新しい知見)。夏の高温乾燥条件下では土壌水分ストレスによるCO_2発生の低下が加温区でより大きかったためと考えられ、土壌有機物分解に及ぼす温暖化の影響予測には土壌水分との複合作用を考慮することが重要であることが示された。
著者
竹内 勝徳
出版者
鹿児島大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本研究ではVXMLについてはテレフォニーディバイスを購入する余裕がなかったため、既存のフリーVXMLサーバを利用して実験を継続することにした。音声ディバイスは電話を用いることになる。VXML文書は学習者にサーバ側の音声が質問をしそれに学習者が応答し、あらかじめ登録した選択肢にあてはまったら再度サーバ側が応答するという形式にした。例:サーバ:What sport do you like?学習者:Swimming.サーバ:How do you train in summer?この形式を発展させて別ファイルへ切り替えながら、様々な形式の会話を続けることが可能である。接続も非常に早くネットワーク構築の面では問題はない。ただ、サーバからの音声が合成音であるため会話としては非常に不自然であり、やはり現状ではリスニング教材としては不完全であると言わざるを得ない。これは既存の人工音声利用CD-ROM教材にも言えることである。今後の人工音声の質の向上が望まれる。本研究では、さらに、ローカルで音声認識エンジンを用い、スピーチ・トゥ・テキスト・チャット・ページやアニメ画像を音声によって動かす、エンタテイメント型教材の開発目標を立てた。まず、英語用の音声認識ソフトとしてはIBMのViaVoiceなどがあるため、音声入力についてはこれを使用することを前提とする。ViaVoiceではブラウザーへの音声入力にも対応しているので、あとはそれを入力するフィールドをもったチャットとエンタテイメントを統合したHTMLベースのアプリケーションを制作することが課題となる。当初計画どおりこれはマクロメディアのFLASHで行った。レイヤー1に画像、レイヤー2に音楽とモデル・スピーチ、レイヤー3に音声入力フィールドとボタンを配置し、レイヤー3は発音のタイミングのみに表示されるように設定した。学生アルバイトにより、様々な場所とシチュエーションでこのアニメーションの通信速度、並びにRealファイルに変換したときの動きをチェックしたが、いずれも良好であるということであった。
著者
長塚 仁 LEFEUVRE M.B.
出版者
岡山大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

我々の研究グループは、頭頸部扁平上皮癌における新規癌抑制遺伝子候補の同定のために、ヘテロ接合性消失解析(LOH解析)を行ってきた。これまでの研究成果では、染色体1p36において高頻度にLOHが生じている3つの領域を新たに同定し、新規癌抑制遺伝子候補としてp73、DFFB、UBE4B、RIZ、Rap1GAP、EphB2、RUNX3を同定した。本研究ではこれらの新規癌抑制遺伝子候補について機能解析を行う。平成23年度はRIZ遺伝子について継続して研究を行うとともに、LOH解析で11p15.2領域に新たに同定したDkk-3遺伝子の機能解析を行った。RIZ遺伝子についての研究では、頭頸部扁平上皮癌組織を用いて、これまで他臓器で報告されていたP704 polym OrphismとAsp283Glu polymorphismの二種類の遺伝子多形が頭頸部扁平上皮癌でも生じていることが明らかとなった。polymorphismの有無と臨床データとの相関を検討したところ、P704polymorphismを有する群は、wild type群よりも無疾患生存率、期間生存率ともに長い傾向を示した。また、Asp283Glu polymporphism群は、wild type群に比較して、無疾患生存率、期間生存率ともに短い傾向を示した。RIZの頭頸部扁平上皮癌における詳細な機能については今後さらなる研究が必要であるが、癌抑制遺伝子以外の機能を有する可能性が考えられた。本研究結果は国際英文誌に投稿中である。Dkk-3遺伝子についての研究では、頭頸部扁平上皮癌90症例を用いて。Dkk-3タンパク発現と生存解析を行った。その結果、Dkk-3はLOHで高頻度に欠失している遺伝子であるにも関わらず、腫瘍細胞で84.4%(76/90例)と非常に高頻度に発現していた。さらに興味深いことに、Dkk-3を発現する患者は有意に無疾患生存率が短く(p=0.038)、特に遠隔転移を生じるまでの期間(metastasis free survival)が有意に低い(p=0.013)ことが示された。この結果からは、Dkk-3遺伝子は頭頸部扁平上皮癌では癌抑制遺伝子として機能するのではなく、むしろ転移を促進しているかのような結果であった。この現象については考察を加え、国際英文雑誌Oncology Lettersに掲載された。本研究で得られた成果は、頭頸部扁平上皮癌における抑制遺伝子の理解を深めるものである。