著者
西迫 貴志
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では,基板上に作製した微細な流路(マイクロ流路)の分岐構造を利用し,異形微粒子の作製に関する研究を行った.互いに混ざり合わない硬化性液体と非硬化性液体をマイクロ流路に送液し,サイズの均一な(単分散)多層構造のエマルション(多相エマルション)滴を生成した後,硬化処理によって,非硬化性液体を鋳型とした形状を有する異形ポリマー微粒子を生成することができた.さらに,微粒子の高機能化を目的とした各種ナノ・マイクロ粒子の複合化,および生産量をスケールアップさせるための装置について検討した.
著者
澤村 理英
出版者
熊本大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

Bcslpは、ミトコンドリア内膜に局在する分子シャペロンである。細胞内のエネルギー産生に重要な呼吸鎖複合体のうち、シトクロムbc1複合体(複合体III)の会合・成熟に必須であり、特にRieske鉄硫黄タンパク質(Rip1p)の未成熟複合体IIIへの組込み(複合体IIIの成熟)に必要であることが分かっている。しかし、詳細なメカニズムについては、ほとんど明らかになっていない。このメカニズムを明らかにするため、昨年に引き続き解析を行った。昨年までの研究で、酵母Bcs1pの膜間部に位置するN末端領域44残基のうち、38残基以降がBcs1pの機能に必須であり、特に38番目の残基がある程度の疎水性を有していることが重要であると分かった。本年度は、38番目の残基を親水性アミノ酸(アスパラギン酸とアスパラギン)に置換した変異株(L38DとL38N)からミトコンドリアを単離し、複合体IIIの成熟への影響や未会合Rip1pの局在について、野生型Bcs1 (Bcs1_<WT>)およびbcs1欠失(△bcs1)と比較した。L38DとL38Nのミトコンドリアでは、Bcs1p自身の複合体形成はBcs1_<WT>と変わりないが、複合体IIIについては△bcs1と同じく成熟不全が起こっていることが分かり、未会合のRip1pが検出された。この未会合Rip1pのミトコンドリア内局在を調べたところ、マトリクスに存在していることが明らかになった。つまり、BcslpのN末端領域は内膜を隔ててRip1pのマトリクスから内膜の未成熟複合体IIIへの組込みに重要であることが分かった。また、Bcs1p自身についてもミトコンドリア内の局在を調べたところ、L38DとL38Nの膜間部のN末端領域がBcs1_<WT>とは異なる構造をとっている可能性が示唆された。また、化学架橋剤を用いて、膜間部のN末端領域における相互作用因子について検討したところ、L38DとL38NではBcs1_<WT>町とは異なるサイズの架橋産物が検出されたことから、相互作用様式に違いがあると考えられた。これらの結果は、国内外の学会で発表を行い、論文はBiochemical and Biohsical Research Communicationsに掲載された。
著者
山下 俊一 大津留 晶 光武 範吏 サエンコ ウラジミール 難波 裕幸
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

甲状腺がんの発症分子機構を解明する為に、手術がん組織ならびに培養細胞を用いた発がんに関連する細胞内情報伝達系異常と遺伝子不安定性の詳細を明らかにすることを研究目的としている。BRAF遺伝子との相互関連分子であるARAFやRAPA1、GNAQなどの点突然変異の有無を検索し、いずれも異常がないことを証明した。さらに遺伝子導入発がん誘発候補遺伝子群の探索成果からはARAF異常の関与をin vitroでは証明したが、in vivoサンプルではその異常は見出されなかった。染色体再配列異常や点突然変異の蓄積による細胞死や細胞死逸脱機構について解析し、DNA損傷応答と細胞周期調節機序の関連について研究成果をまとめた。放射線誘発甲状腺乳頭癌のSNPs解析は不安定かつ不確実なデータの為、現在症例数を増やしその正否を確認中であるが、甲状腺特異的転写因子の一つである染色体9番目のFOXOE1(TTF2)のSNPs関連遺伝子異常がチェルノブイリ放射線誘発がんでも関連することを証明した。さらに遺伝子多型に関するSNPs解析結果をDNA損傷応答関連遺伝子群において取り纏め一定の相関を見出すことができた。以上に対して、甲状腺進行癌の分子標的治療の臨床応用は遅々として進まない現状である。p53を標的とする治療法の有用性は証明されたが、他の細胞増殖情報伝達系を標的とする有効な分子標的薬は臨床治験が実施されず欧米の情報に依存している。グリベックを中心に放射線照射療法との併用効果について臨床治験を進め進行癌、未分化癌の一部に有効性を証明した。
著者
大坪 英臣 北村 欧 鈴木 克幸
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1989年のアラスカ沖のエクソンバルデス号の座礁事故後、相次ぎ発生するタンカーからの油流出事故は、海洋環境に甚大な影響を与えるとともにその対策の必要性を強く認識させた。タンカーの構造に対しても、国際海事機関(IMO)において二重殻またはそれと同等な効果を持つことが義務づけられた。しかし、その後もタンカーからの油流出事故は引き続き起こっている。96年2月にはシーエンプレス号がイギリスで座礁事故を起こし、6万5千トンの原油の流出事故を起こし大規模な環境汚染を引き起こした。日本でも、97年1月に発生したナホトカ号の事故は、日本近海で発生した油流出事故としては最大の被害を与え、97年7月には東京湾でダイアモンドグレース号が座礁事故を起こし、国民に油流出事故の脅威及びその対策の必要性を強く認識させた。本研究では、この事故時の油流出を低減する技術等の研究を行い、将来の基準化、MARPOL条約の改正に向けてその妥当性を検討した。緩衝型船首構造の有効性を検討した。詳細FEM解析、模型試験により衝突の簡易評価式を作成し、試設計した緩衝型船首構造に対してシリーズ計算を行った。最後に、緩衝型船首構造を設計する際の指針を示した。今後、緩衝型船首構造が真に有効性を発揮するためには基準化が必要となる。その際には、船首構造を具体的に規定するのではなく、船首構造が持つべき単位面積あたりの圧潰強度の上限、下限(船首構造が柔らかすぎる場合は逆に吸収エネルギーが小さくなり、危険側になる)を規定する必要がある。本研究では基準案における具体的な強度の策定まで行うことはできなかったが、試設計した緩衝型船首構造の有効性をシリーズ計算により確認し、基準となるべき具体的な設計指針を示した。
著者
井口 征士 奥山 雅則 加藤 博一 佐藤 宏介 沼田 卓久 千原 国宏
出版者
大阪大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1991

研究計画調書・研究交付申請書に基づき、三次元立体物の画像認識のために非常に有効なデータである三次元画像を超高速に計測するICチップセンサを回路シミュレーションとディスクリート回路によるプロトタイプ計測装置でその構成技術を確立した。昨年度購入したシミュレーション用コンピュータ(Apple-MacIIfx一式)およびSPICEシュミレーショタソフト(Microsim-PSpice)、回路図入力CADソフト(Capilano-DesignWorks)により、回路図入力CADソフトで入力したセンサの回路構成をアナログ電子動特性シミュレーションを行った。その結果、昨年度の成果である、2つのホトディテクタを相補的に用いて素子のばらつきを補正させる点やDRAMのセンスアンプに似た電流比較回路が、通常のデジタルCMOS-ICの製作プロセスで製作可能な素子(CMOSインバータ、アナログスイッチ、ダイオード等)を用いて最終的な回路構成が決定できた。これにより実際に製作可能なことを確認できた。さらに、昨年度購入した制御用コンピュータ(Apple-MacIIci一式)およびデジタルストレージスコープ(日立電子VC-6045一台)、レーザダイオード、ガルバノミラーで、16×8画素のCMOS-ICを基本デバイスレベルとしたディスクリート回路によるプロトタイプ計測装置を開発した。120ヘルツ以上の動作を確認した。同時に、キャリブレーション方やこのシステムで得られる距離画像の時系列データから動く物体の認識を効率よく行うアルゴリズム、動距離画像の差分に基づく追跡アルゴリズムを開発した。
著者
正田 誠 北 宜裕 北 宣裕
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1.殺菌剤(ネビジン)耐性菌を収得することに成功した。この菌のiturin生産性は安定していたが、surfactin生産性は低下した。2.この耐性菌を農地に用いて植物病抑制試験を行ったところ、育苗の段階で使用することが有効であることが判明した。3.農業モンカット耐性は元株RB14Cが保持していることが明らかになった。4.RB14Cとモンカットの併用試験をポットにより実施し、使用するモンカットの量を1/5に減らすことができることを証明した。5.トマトの苗立枯病に対する効果をテストした結果、菌体かん注あるいは発芽種子処理と農薬フルトラニルのかん注を組み合わせると高い効果がみられた。6.キュウリホモプシス根腐病の抑制テストを実施した。キュウリの菌を移植する時、RB14Cの菌体懸濁液を根に浸す処理によって顕著な病害抑制がみられた。7.キチナーゼ遺伝子をRB14Cおよび枯草菌M1113に導入し、キチナーゼを生産することを確認した。各種の病原菌とキチナーゼ遺伝子保育菌を混合すると病原菌の菌糸の成長が抑制されることが実証された。8.iturin生合成遺伝子のクローニングに成功した。iturin合成遺伝子は約30kbpからなる巨大分子であり、上流部分に側鎖である脂肪酸合成に関与すると考えられる遺伝子が思い出された。9.surfactin耐性遺伝子をクローニングし、その特性を明らかにした。今まで知られている多剤耐性遺伝子と相関性を示した。この遺伝子の増幅はsurfactinの生産性の向上にはつながらなかった。10.iturinおよびsurfactinの高生産条件元株によるiturinおよびsurfactinuの生産量は数100ppmであったが培地組成を検討した結果、surfactinでは20g/l、iturinは38/lまで生産量を向上させることに成功した。こうして生産性が向上した培養液による植物病抑制効果を検討し、その有効性が証明された。
著者
佐藤 寛晃
出版者
産業医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

重症度の異なる4群の出血性ショックモデルを作製し,同ショック時の肺障害の重症度と好中球の出現頻度との関係について検討を行った。出血後,炎症性サイトカインである tumor- necrosis factor(TNF)-αおよびinterleukin(IL)-1βのmRNAの肺実質における発現および肺静脈血中濃度が出血量の増加に応じて強く上昇し,出血5時間後の肺実質における好中球の出現頻度も増加した。また,機能的肺障害を反映するpartial pressure of arterial oxygen (PaO_2)およびalveolar-arterial oxygen tension difference (A-aDO_2)は出血量に応じて増悪し,器質的肺障害を反映する血清lactic dehydrogenase-3 isozyme (LDH-3)濃度は出血量の増加に応じて上昇した。出血5時間後では好中球の出現頻度と血清LDH-3濃度とに正の相関関係が認められ,出血性ショック後の肺障害の重症度と好中球の出現頻度との関連性を明らかにすることができ,出血量の増加に応じた炎症性サイトカインの上昇が一連の病態に関与することが明らかとなった。
著者
金子 えつこ
出版者
四国学院大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

シニャフスキーも指摘しているプーシキンの言語の「軽さ」の第一要因としては、一文の短縮傾向があげられる。軽快性を保つため、カラムジンら先行の作家と比較しても一文に含む語数が少なく、しかもその傾向は後期により顕著となる。例えば『スペードの女王』では六語以下から成る短文が全体の実に34.7%を占める。また第二要因として、プーシキン散文における動詞の割合が高く総語数の40%であること、さらに完了体の含有率が異常と言ってもよいほど高く、例えば『スペードの女王』では52%にもなることにも注目すべきである。このような動詞中心の短文中に二語ばかりか三語も新情報(レーマ)が含まれる、といった手法により、場面転換、視点転移が迅速になり、叙述に自由闊達な軽快性が加味されると考えられる。さらに韻律性の要因が第三にあげられる。散文でありながら随所に韻律パターンが見られることをボンディが指摘しているが、独特のリズムと押韻を伴うS音等の「軽い」子音の配置、また、ある音韻が至近距離で呼応することで特定の雰囲気をテクストにかもし出す技法が見られる。例えば『スペードの女王』で主人公と賭博勝負をするチェカリンスキーは、物語の終結部分のみに繰り返し名前が登場するが、チェカリンスキーという語感は、発音の類似する単語чек,чеканкаなどにより金属的、金融的と言え、冷たく不安をあおる響きを持つため、主人公の暗い決死の賭博事情を語る時の伴奏のような効果がある。また、彼の登場するテクスト部分にчеловекなどчеで始まる語がちりばめられ、彼の台詞の中にもче,кという音が響く(я не могу метать иначе, какна чистые деньги.)など、音の呼応が場面全体の緊張感や主人公の発狂前の高揚を表現する一助となっている、と言える。
著者
新保 史生
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

行政機関が個人情報を取り扱う情報システムを構築する際に、プライバシーの権利侵害を予防するため事前に影響評価を実施する手法(プライバシー影響評価: PIA)に関する研究を、諸外国におけるPIAの先行事例の調査など比較法的観点から調査研究を中心に行った。本研究の成果は、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案(マイナンバー法)」において、プライバシー影響評価の実施について「特定個人情報保護評価」として明記され、現実の制度として導入すべく検討がなされるに至っている。
著者
杉田 篤生 稲富 久人 藤本 直浩
出版者
産業医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

1.ヒトにおけるPlasma Fibronectin(pFN)の測定。正常人24名、尿路悪性腫瘍患者61名において免疫比濁法によるpFN値の測定を行った。1)治療前におけるpFN値。正常人のpFN値は、平均379μg/ml、患者群では、356μg/mlであり、有意差を認めなかった。転移の有無によってもpFN値に有意差を認めなかった。予後良好群と不良群では、各々410μg/ml、300μg/mlであり、有意差を認めた。2)保存的治療中の患者群におけるpFN値。腫瘍の進行が遅い群と速い群におけるpFN値は、各々372μg/ml、287μg/mlであり、有意差を認めた。よって、pFN値と腫瘍の進行、予後との関連性が示唆された。3)各種治療に於けるpFN値の変動。化学療法中は7例中3例でpFN値の低下(50〜180μg/ml)を認めた。少数例ではあるが、温熱療法、放射線療法、IFN療法では変動はみられなかった。2.担癌マウスにおけるpFN値。移行上皮癌、腎細胞癌、乳癌細胞株をヌ-ドマウスに皮下移植し、pFN値を測定した。1)各細胞株による差はなかった。2)controlのpFN値は712μg/ml、移植後2、4、9、14週では各々652、844、902、730μg/mlであり多少の変動はみられるものの有意差はなかった。転移の有無、悪液質状態の有無によっても差はなかった。マウスの場合測定値のばらつきが大きく、その原因として、FN測定キットがロットによりFN活性に差があり、マウスでは検体量が限られ複数回の測定ができない場合があった事、血清に近い検体があった事などがあげられる。これが、臨床例との相違の一つの要因であろう。今後は測定法の改良、他のパラメ-タ-を加えての総合的な検討が必要である。3.温熱療法について。継代した膀胱癌細胞において、至適温度における生存細胞数は加温前の10^<ー1>前後で熱感受性はあると思われた。ヌ-ドマウス移植腫瘍に対するTHERMOTRON・RF・I.Vを用いたRF加温実験では、マウスの死亡等により複数回の加温が困難であり、今後の課題と思われた。
著者
小野塚 和人
出版者
一橋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

平成24年度は3年目にあたり、主として(1)研究成果の発信にむけた準備、(2)先行する成果の整理、(3)関連する理論的文献の考察、(4)オーストラリア国内における客員研究員としての研究派遣への参加、(5)オーストラリア国内での現地調査、を軸として考察を行った。時系列にそって研究内容を以下報告する:4月~7月:1)オーストラリア国内において、これまでに獲得した研究協力者に対して聞き取り調査を継続し、執筆内容に対する反映を行った。2)理論的な考察は、第一に、近代性の変化と資本主義の構造転換に関して、ウルリッヒ・ベックによる考察を元にして、分析を行った。第二に、人の移動に伴う国家の統治形態の変遷をニール・ブレナーとデヴィッド・ハーヴェイに代表される批判的経済地理学派による研究成果を参考にしながら考察を継続した。8月:『オーストラリア研究』掲載論文の執筆と投稿に向けた作業を行った。9月~12月:研究成果の発信に向けた準備を行った。11月に開催された「オーストラリア社会学会(The Australian Sociological Association)大会において、研究成果の報告を行った。1月~3月:この時期は、本研究論文の単著としての成果発行に向けて、電子メールやスカイプ、国際電話を用いて、研究協力者に対する研究の完成の報告と共に、さらなる聞き取りを行った。全体として、当初の研究計画に記載した研究内容はすべて完了することが出来た。各研究成果は審査を受けている段階にある。心
著者
若穂井 透 塚本 恵美 高橋 幸成
出版者
日本社会事業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

2007年の改正少年法によって、重大触法事件の家庭裁判所への原則送致が導入され、児童相談所先議の原則が変容し、児童福祉優先の理念が後退するのではないかと危惧されたが、児童相談所の家庭裁判所への送致事例及び非送致事例(同年11月1日~翌年10月31日)を調査し分析した結果、大勢としては変容し後退していない現状が示唆されるとともに、児童福祉優先の理念を再構築するための課題もあることが明らかになった。
著者
江田 司
出版者
和歌山大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

【研究目的】1.ディズニー音楽映画「ファンタジア2000」(DVD)を起点に、聴いて楽しい20世紀の音楽作品を収集し、子どもたちに音楽を聴く喜びをいっそう深めること。2.ICT環境を充実するとともに関連鑑賞教材の指導法を開発することで,どの子どもにも音楽を味わって聴く態度を身に付けること。【研究方法】これらの2点について平成23年1月~3月まで、和歌山大学教育学部附属小学校5/6年生児童(5学級)を被研対象とした。《火の鳥》(『ファンタジア2000』収録/ストラヴィンスキー/1919年版)のアニメーション映像を見せて関心を高め、4曲から「カスチェイの凶暴な踊り」の音楽に焦点化し、1.オリジナル(1910年全曲版)の音源(CD:デュトワ指揮:モントリオール)、2.同管弦楽演奏映像(DVD:ラトル指揮ベルリン)、3.同バレエ映像(DVD:ゲルギエフ指揮マリインスキー&バレエ)と、広範な関連鑑賞資料を駆使して鑑賞活動を行った。とくに1の活動ではこの楽曲特有のモチーフの「反復」に着目させることで、2での楽器による音色の変化の認知に効果が表れた。本研究の有意性を確かめるために、3授業についてそれぞれ研究協力本学教員,初等音楽科教育法受講学生(150名)及び現職教員による参観レポート及び被研全児童からのワークシートを回収し分析した。【研究成果】子どもたちは4種類の『火の鳥』すべてに興味を示し、とりわけバレエ音楽への興味は、後日、強い要望で被験者全員が3(約50分)を鑑賞するまでになった。考察の結果、楽曲のドラマティックな魅力とともに、旋律と楽曲の構造を捉えた1、2の鑑賞の活動がこのような効果を生んだと考えられる。
著者
塚田 泰彦
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、「創発的綴り(invented spelling)」の生産的な事例を体系的に記述研究することと、その記述のための基礎研究として、日本語表記体系の習得過程の実態を発達段階を想定して捉えることである。この2つの研究については、先行研究がなく、本研究はこの方面のパイロット的な研究となる。はじめに、準備研究として試行的に収集したデータに基づき7段階の日本語綴りの能力の発達段階(仮説)を設定し、日本語綴りの習得の実態を把握する体系的な調査問題を作成した。この調査問題について、幼稚園・小学校1年生を対象に、調査協力校でデータ収集を行い、その分析結果に基づいて、発達段階の確認と創発的綴りの生産的な側面について、言語学的・教育学的視点で考察を行った。調査協力校の実績は、幼稚園1校(1カ年1回)、小学校3校(2カ年2回、6月前後と12月前後)である。結果として、次の点が確認された。1) 仮説的に設定した7段階の発達段階は基本的に支持された。2) 複数の協力校での比較によって、学校ごとに発達段階上の実態の差異も確認された。3) 創発的綴りについては生産的側面と非生産的側面について相対的な評価が難しい例が確認されたが、これらの解釈を「教育的意義」の視点で検討することが、重要であることが明らかになった。4) 幼稚園での実態、特に習得段階の個別差の大きい点が明らかになった。創発的綴りの体系的記述については記述方法など、課題も残された。
著者
柏木 恭典
出版者
千葉経済大学短期大学部
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の成果として、まず2013年5月に、『赤ちゃんポストと緊急下の女性-未完の母子救済プロジェクト-』を完成させ、上梓した。20万字以上にのぼる研究書として、公的な研究成果を残すことができた。本研究を通じて、ドイツにおける赤ちゃんポストの実情、そしてその背景、また赤ちゃんポストの是非を巡る議論をまとめ、その根源に「緊急下の女性」への支援の問題が潜んでいることを明らかにできた。
著者
吉井 邦恒 大山 達雄 長谷部 正 勝又 健太郎 長友 謙治
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

地域インデックスタイプの収入保険については、①収量と価格の両方が負の相関をもって変動する状況下では、収量保険に比べて保険金の支払いが少なくなるものの、収量と価格の両方が下落する年には、収入の大幅な低下を緩和すること、②価格が低下傾向にある状況下では、収量と価格の相関関係が小さい地域における支払いが特に大きくなることから、その制度設計に当たっては、収量と価格の相関関係に留意した保険料率の設定が必要であることを明らかにした。
著者
草間 博之
出版者
東京工業大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-04-01

遷移金属触媒によるアルキンの求電子的活性化を基盤とする同一時空間集積化反応に関するこれまでの検討により、o-アルキニルアニリンから調製したイミンに対してビニルエーテル類の存在下で塩化白金触媒を作用させると、金属含有アゾメチンイリドの生成を経てピロロ[1,2-a]インドール骨格を一挙に構築できることを明らかとしている。この反応は様々に官能基化された基質に適用可能な優れた手法である。本年度は、この反応を利用してインドールアルカロイドの一種であるyuremamineの全合成研究を行った。上述の金属含有アゾメチンイリドの付加環化反応によりyuremamineの基本骨格を構築した後、水酸基ならびにレゾルシノール基の立体選択的導入を経て効率良くyuremamineの提案構造を構築することに成功した。上記の反応とは異なり、アルキン部位をプロパルギルエーテル誘導体とし、求核部位をアミンとした基質を用いると、これまで報告例のほとんどない触媒的なα,β-不飽和カルベン錯体中間体の発生が可能であることを見いだした。すなわち、プロパルギルメチルエーテルに対し、電子豊富ジエンの存在下で適切な白金触媒を作用させると、アルキン部位へのアミンの付加とメタノールの脱離によりα,β-不飽和カルベン錯体中間体が生成し、これが電子豊富ジエンと[3+4]型の付加環化を起こすことで7員環の縮環した三環性インドールを一挙に与える。この反応はこれまでに合成例のないambiguine類の合成に有効と期待し、モデル化合物を用いたambiguine骨格の構築を試みた。その結果、シクロヘキセン部位をもつシロキシジエンを基質とすることで、四環性インドールを一挙に構築することに成功した。本研究で開発した同一時空間集積化による多環性インドール骨格構築法は、より多様な生物活性物質の高効率合成に適用可能と考えられる。
著者
奥村 史朗 齋藤 浩之 斎藤 浩之
出版者
福岡県工業技術センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

パラスポリン4はCACO-2細胞をはじめとする哺乳動物ガン細胞由来の培養細胞に対して高い細胞傷害活性を示す一方で、正常細胞に対しては細胞傷害活性を示さないことから、その作用機構を解明することでガン治療薬・ガン診断薬としての利用化が期待できる。本研究においては、パラスポリン4をヒト培養ガン細胞に投与した際のパラスポリン4や細胞内外の物質の挙動をいろいろと検討し、パラスポリン4が細胞膜に対する穴空けトキシンであることを解明した。
著者
渡辺 克昭
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

未来を常に既に先取りし、進歩を追求し続けてきたアメリカ的想像力が、その例外主義的なヴィジョンを根底から揺るがす惨劇といかに向き合ってきたか。このような視座から、アメリカ文化を特徴づける進歩のデザインと技術を唐突に打ち砕く死の表象を相関的に分析しようとする試みは従前なされていなかった。本研究は、20世紀アメリカの日常に浸透する進歩の言説と、度重なる惨事や破局によって前景化される死への眼差しがいかに交錯してきたか、そのダイナミズムを多様な表象分析を通して描出した。その結果、互いにフィードバックし合う両者の間には、互いにエネルギーを供給し、新たな関係を生成する界面が存在することが明らかになった。
著者
西田 正規 マブラ オグックス スプレイグ デービッド MABULA Audax マブラ オダックス 伊藤 太一 マゴリ C.C. 安仁屋 政武
出版者
筑波大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

今日のアフリカ狩猟採集社会は原初的人類社会の理解に不可欠の情報源である。だがこれらの社会は農耕・牧畜社会と接触し変容してきた歴史があり、原初的社会のモデルにすることに疑いがある。本研究は農耕・牧畜以前のサバンナ狩猟採集社会を復元することでこの問題に解答する。またこの目的を果たすため、タンザニアのセレンゲティ国立公園の地表面に散乱している後期石器時代の石器の分布状況を把握することから約1万年前の狩猟採集社会の空間と資源利用パターンを復元する方法を開発する.3年間の調査でおよそ10000平方キロの範囲を踏査し、50メートル四方の方形区を126ヶ所、それ以外のポイントを約200ヶ所設定し、位置をGPS測量し、地表の石器を採集し、地形、植生、土壌特性を記録した。採集した石器約1万点を筑波大学に持ち帰り分析中である。諸データをGISデータベースに入力中である.すでに把握した点は以下のとおり。1)公園の地表面には前期石器時代から金属器時代までの数十万年にわたる文化遺物が散乱しており、中期および後期石器時代石器の密度が高い。2)前期および中期石器時代石器には公園内に産出するクオ-ツァイトが、後期石器時代石器には黒曜石とクオ-ツが主に使われている。黒曜石の原石は公園内になく、大地溝帯の火山帯から運ばれたと推定できる。3)後期石器時代の石器の分布密度は平方kmあたりおよそ1万点である。4)石器密度は調査方形区により0点から500点以上まで大きく変化する。5)特に高密度に分布する場所を4カ所発見した。いずれも大きな岩に囲まれた場所であり頻繁に人の訪れるキャンプサイトと予想できる。6)河川や池に近い場所の石器密度は比較的高い。7、地表水から遠く離れた場所にも比較的低い密度の分布がある。以上の点を手がかりにGIS上でさらに解析を進め初期の目的を達成する。