著者
高橋 慎一朗 末柄 豊 及川 亘 川本 慎自 加藤 玄
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

日本中世の大寺院が都市・社会とどのように連携し、いかなる教育普及活動を展開したのか?という問題を、一次史料の調査収集のうえに追究し、中世ヨーロッパとの比較の視点を加えつつ考察した。長期にわたって宗教者・学者の再生産機能を果たした大寺院は「大学」としての性質を備えていたが、個々の宗教者・学者の拠る子院・塔頭が主要な教場であり、個人の活動に依拠する点が大きい点で、近代的「大学」とは異なっていた。その反面、そうした宗教者と都市知識人層との個人的な交誼関係によって、社会一般への柔軟な教育普及活動も可能となっていたことが明らかになった。
著者
大河内 二郎
出版者
産業医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

目的:1.痴呆、歩行障害、食事、排泄機能障害等のADLデータを用いて、65歳以上の高齢者がどのようなプロセスを経て機能障害や死に至るかをマルコフモデルにより明らかにする。2.機能低下のリスクファクターを明らかにする。3.マルコフモデルの予測精度を明らかにし、性や年齢毎の介護サービス量の予測モデルを作成する。方法:(対象)愛媛県大三島町の全高齢者のうち文書にて同意が得られた65歳以上の高齢者を対象に年1回ADLをTypology of the Aged with illustrationを用いて評価した。これまでの9年のデータの蓄積に加え本研究費を用いて高齢者に対して、疾病や生活習慣等のアンケートを行なった。さらにTAI指標の再現性の調査を行なった。(分析方法)1.高齢者を自立・軽度障害・重度障害・死亡の4状態に区分し、状態間の推移確率を計算した。2.疾病データを用いて、多項ロジスティック回帰モデルにより、軽度ADL低下、重度ADL低下それぞれの関連因子を明らかにした。3.TAIの信頼性について評価者間の再現性、繰り返し再現性について検討した。結果高齢になるほど虚弱・要介護・死亡のいずれの状態になる確率が高いが、男性は女性に比べて死亡する確率が高く、女性は軽度障害・重度障害となる確率が高かった。得られた推移確率をマルコフモデルのパラメータとすると、3年目までは適合度は高いが4年目以後は適合度が低かった。これは加齢とともに、推移確率が変化するためであると考えられた。リスクファクターの検討では男女共通して慢性関節疾患が軽度障害の関連因子、脳血管障害が重度障害の関連因子であった。さらに男性では慢性肺疾患、悪性腫瘍、女性では糖尿病が機能低下の関連因子であった。TAIの繰り返し再現性は良好であった。結論本研究では男女における機能低下の推移確率およびリスクファクターの検討を行った。さらに調査に用いた評価尺度の信頼性を明らかにした。
著者
松村 勲
出版者
鹿屋体育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

競技スポーツ選手のコンディショニングにおける総合的な評価基準を構築するため,陸上競技長距離選手を対象に,練習前後の疲労感,簡易な身体能力の測定,血液検査を実施し,それぞれの関連性や独自性を探った.現段階では総合的な評価基準の構築には至っていないが,疲労感が競技実施(継続)期間の経過とともに漸増すること,主に脚を主動力として使う競技種目ではリバウンドジャンプのRJ指数がコンディション評価に有用な可能性があること,血液検査においては前日の練習は実施しないこともしくは実施してもごく軽くに留めることが正確なコンディション把握に繋がることが考えられた.
著者
デアウカンタラ マルセロ
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

自然生殖を前提とした「分娩者=法律上の母」には本来「卵子由来者=法律上の母」も含まれているため、分娩者が必ずしも卵子由来者とは限らない生殖補助医療において「分娩者=法律上の母」を母子関係確定の基準として適用すれば、首尾一貫性の問題が生じるという議論の整理を行い、問題点を明確にした。また、この首尾一貫性の問題を避けるために、生殖補助医療において「分娩者=法律上の母」および「卵子由来者=法律上の母」を同時に採用する余地があることが明らかになった。
著者
新井 清美
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

アルコールに起因する問題が生じてから連続飲酒までの状態であるプレアルコホリックをどのように認識しており、どう変化していったのかを明らかにすることを目的に、アルコール依存症患者と当時の同居家族に対して半構成的面接を行い、質的記述的に分析した。その結果、プレアルコホリックの認識と変化には飲酒による高揚感といった効果を求めて飲んでいる段階、社会的な困難事といった直視し難い現実から逃れるために飲んでいた段階、飲酒量や頻度の増加に伴い健康上の障害が出現するようになった段階の3つの段階があり、医療従事者も適正飲酒の指導、問題飲酒者の抽出や経過観察、短期介入と、段階に合わせた支援をしていく必要性が示唆された。プレアルコホリックの段階では簡単な治療介入により良好な予後が期待できるため、対象がコーピングを図れるような環境調整や、医療従事者による短期の介入によりアルコール関連問題の改善していくこが求められる。
著者
田巻 帝子
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

一般市民が日常生活のトラブルを未然に防ぐためや法的な問題に直面した際に適切な対応を自らとるために、その行動を支援するカナダや英国のPublic Legal Education(以下、PLE)の制度と実態について調査を行った。その結果、PLEとして多種多様な機関による活動が行われていること、カナダと英国では異なること、活動資金獲得などの問題を抱えていること等がわかった。国民が「自分のため」に司法参加する手段としてPLEは有効であり、既存のPLE活動類似の機関に考慮し、グローバル化する社会に対応するため外国人居住者や社会的弱者をも射程にいれて、日本独自のPLEを促進する必要があると思われる。
著者
坪倉 誠
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

以下の6つの研究課題に取り組んだ.(1)簡易形状車体モデルを対象とした空力抵抗発生メカニズムの解明(2)吹き出し&吸い込み等の要素制御技術の数理モデル化(3)後ひき渦対の不安定性成長(4)簡易形状車体モデルを対象とした空力抵抗低減制御技術の提案(5)実走行状態における制御技術の効果検討(6)実車両形状モデルを対象とした戦略的空力抵抗低減制御技術の提案.簡易形状車体に対して,車両姿勢の動的変化を与えて,その空力応答特性を渦構造の非定常変化から明らかにした.この知見を実車セダン形状車体に適用し,抵抗や揚力の非定常変動と車両側面境界層や車体周りの渦構造を明らかにし,その抵抗抑制効果について考察した.
著者
森田 憲一 ALHAZOV Artiom
出版者
広島大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

細胞膜計算システム(Pシステム)は、細胞内の物質の結合・解離や細胞間の物質の移動などを抽象化した計算モデルであり、自然計算(Natural computing)の一分野である。昨年度に続きこのシステムの諸性質、特に計算万能性に関する性質を明らかにするとともに、やはり自然計算の分野に属する可逆コンピューティングや保存的コンピューティングとの接点についての研究も行い、以下の結果を得た。1.Pシステム、特に多重集合書換システムと、それに対する可逆性の導入細胞膜が1つであるようなPシステムは、多重集合書換システムとして定式化できる。このようなシステムを計算万能性を保持したままどのように単純化できるかをいくつかの視点から明らかにした。一方、そのようなシステムに対して物理的な可逆性に相当する制約や決定性制約を加えた場合に計算万能となるための十分条件を与えた。2.可逆論理素子の計算万能性昨年度に示した、14種類の2状態3記号可逆論理素子がすべて計算万能になるという成果を大幅に拡張し、k>2の場合にはあらゆる2状態k記号可逆論理素子がすべて計算万能になるという結果を導いた。3.保存的セルオートマトンの近傍半径の縮小物質やエネルギーの保存則に相当する性質を持つセルオートマトンの近傍半径を1/2にまで縮小できることを証明した。これにより、この種のセルオートマトンも計算万能性を有することが結論できる。
著者
上掛 利博
出版者
京都府立大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
2000

ノルウェー法務省警察局のリーネ・ナースネス氏によれば、個人番号は、住民統計をはじめ、納税、福祉、年金、医療のカルテ、保険、銀行口座、事業主、学校などで使われている。「個人番号のない人はノルウェーでは人ではない」といってもよい程、公的な部分の生活をカバーしている。警察は、あまり使っていない。名前と住所の他は、守秘義務があるのでアクセスすることは難しい。プライバシーを守る法律がある。ダイレクトメールにも決まりがある。個人番号は行政には便利なシステムである。市民の側は、個人番号の弊害にも「慣れた」といえる。また、家庭内暴力(DV)と個人番号制度には深い関係があって、離婚したり別居中の男性が、銀行や福祉事務所から女性の個人番号を聞きだしてシェルターに押しかけてきた例もあるので、本人があらかじめ住所を隠せるように手直ししたし、さらに、暴力を受けた女性や裁判中の犯人については、新しい番号に変えることができるように法律の改正を検討している。児童家庭省のアンネ・ハブノール氏によれば、1976年のブリュッセルの女性会議で、ノルウェーの女性運動家が参加して家庭内暴力に光を当て社会問題化した。シェルターにきた利用者は、名前や住所や個人番号を明かさなくても良い。弁護士、警察、福祉事務所がサポートする。子どもの権利と親の権利が対立し、母親が子どもの情報を出さないこともある。また、DVシェルター全国事務局のトーベ・スモダール氏によれば、1995年からの5年間にDVやレイプで40人の女性が殺され、恐怖を感じて自分の生命を守るために移動している女性が、彼女の元にも1,000人いるという。ノルウェーでの聞き取りで、個人番号制度は極秘の部分が多く、資料を送るのでそれを検討してから質問を受けるとされたこと、また福祉政策との関連ではDVの問題が大きいことは分かったが、税金や福祉事務所などでの実際の運用面の調査は今後の課題である。
著者
遠藤 登
出版者
岐阜工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

Mizarシステムを用いて既存の数理工学理論の形式化を行い、計算機証明検証システムの構築を目指し研究を行った。平成18年度は特にファジィ理論とルベーグ積分論に焦点を絞って形式化を行う予定であったが,予想以上にルベーグ積分論を構築するための予備定理が不足しており,これらの形式化に多くの労力を費やした。結果として,ファジィ理論の形式化については十分な成果を挙げることが出来なかったが,平成18年9月に開催された日本Mizar学会秋季総会に参加の折,国内研究者より多くの有益な助言を頂き,これをもとに現在,ファジィ位相空間の形式化の実現に向け研究を行っている。ルベーグ積分論については1変数可測関数の理論が本研究により,ほぼ形式化された。また,これに関連して多次元のノルム線形空間の形式化を行い,多変数関数の積分論に対する基礎理論の形式化を行った。具体的な研究実績として,前年度までに得られたルベーグ積分の適用範囲を,単純関数から可測関数まで拡張すると共に,Mizarシステムが内包していた実数と拡張実数の互換性について問題提起を行い,通常の実数値を取る可測関数のルベーグ積分論の形式化を行った。さらに,これらの結果を纏め,2件の国際論文誌と1件の国内発表を行った。関連した実績として,リーマン積分論の精微化を行い1件の国際論文誌に発表,実ノルム空間を中心とした形式化を行い1件の国際論文誌と1件の国内発表を行った。
著者
山本 和雄
出版者
岡山市立岡山後楽館高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

1研究目的(1)郷土出身の文学者坪田譲治を媒体として高校教育において生徒に<郷土への愛着>を育成し、現在の自分と地域との関わりを考えさせ、学習者個々人の<郷土愛と郷土理解>を深めさせる。(2)<地域文化の伝承>を啓蒙し、<生涯学習>の場での応用活用を模索する。(3)坪田譲治周辺の<地域文化資源>についても調査・発掘し、記録する。2研究方法(1)市民講座「坪田譲治研究」、公開市民講座、授業、文芸部活動の連携・融合をはかった。(2)岡山市立の図書館2館と連携し、生涯学習施設での公開講座を実施した。(10.24-土,11.1-日,11.22-日,11.29-日-うち、10月24日は、新型インフルエンザ流行のため中止とした。)(3)岡山市主宰の「岡山文学フェスティバル」に協力した。とくにノートルダム清心女子大学教授山根知子氏の企画に協力し、譲治実家の現在の当主である坪田醇氏への取材を行い、具体的資料が残されていない生家の家屋・庭などについて、建築模型としての復元に尽力した。また、高校教育と大学教育との連携を視野に入れ、模型製作の依頼先として岡山県立岡山工業高等学校建築科科長三好教諭を紹介し、工業高等学校長の許可のもと、建築科生徒による模型製作を実現した。この成果は、坪田譲治生誕120年を記念して行われる清心女子大学と岡山市との共催行事で発表された。(新聞記事参照)(4)夏季休暇を利用して東京に譲治子息坪田理基男氏を訪ね、取材した。また、譲治著作物の使用についても許可をいただいた。取材後、国立国会図書館で資料調査を行った。3研究成果(1)市民講座での作品研究で、今日まで指摘されていない点が明らかになった。具体例として、キリスト教関係の雑誌に発表しながらも仏典からの引用がある作品での、仏典の出典が「親鸞」の著述であることが明確になった。また、従来作品の舞台は郷里岡山が多いと漠然と考えられていたが、作中の植物の科学的分布状況から推測して、必ずしも岡山が舞台となっていない作品群が最初期に存在することが判明した。これらの事柄は、高校での授業で即時的に活用した。(2)国立国会図書館の調査において、公の記録から漏れている作品の存在が多数確認された。その位置づけ、評価については今後の課題としたい。(3)坪田理基男氏、坪田醇氏の取材を通して、人間坪田譲治の一面を知ることができた。今後の教材開発に活用できればと考える。同時に、<郷土の先人>としての譲治に対して一般市民・高校生が親近感を覚えるものとして利用できればと思っている。さらに、生家の模型の完成は、譲治の作品世界をより具体的に知る契機となるものである。
著者
宮脇 幸生 石原 美奈子 佐川 徹 田川 玄 藤本 武 眞城 百華 増田 研 松田 凡 松村 圭一郎
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究によって明らかになったことは、エチオピアでは(1)開発の主体が政府から、政府だけでなく、国内外の企業家、国際機関およびそれと連携したNGOと、複数化しているということ、(2)一部でNGOと政府の間に密接な政治的関係が観察されたこと、(3)開発プロジェクトが実践された地域では、一部の地域住民の開発への参画と包摂、地域や世代による地域集団の分裂と対立、そして民族集団間の紛争に至るまで、それぞれの地域の社会的条件に応じて多様な形で地域社会の再編が進行しているということである。
著者
佐倉 統
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は、科学コミュニケーションにおけるメディアの役割と影響を明らかにし、今後の科学コミュニケーションのあり方を提言することであった。とくに、メディアと科学者とがどのような関係を構築することが科学コミュニケーションにとって健全かつ生産的なのか、モデルケースを提案し、マニュアルやハンドブックのような形で成果をまとめる作業が積み残されていたが、研究費の年度繰り越しによって、その成果をある程度達成することができた。具体的には、「科学者のためのコミュニケーション・ハンドブック-メディアの活用『話せる科学者』になろう-」というタイトルでパンフレットをまとめ、印刷製本した。部数は90部と多くはないが、学会やシンポジウムなどの機会に関係諸氏に手渡しで配布することを想定しており、科学とメディア、あるいは科学と社会のコミュニケーションにおいてキー(ハブ)となる研究者、メディア関係者に行き渡るには十分な部数であると考えている。このハンドブックの内容は、マスメディアやインターネットなどの特徴を分析した理論的考察と、実際にマスメディアと接触した科学者の経験に基づいた考察の二部からなる。理論的考察と実践的活動の融合を目指した。当初は、より汎用性の高いモデル構築を目指していたが、実際に事例を分析してみると、さまざまな要因が複雑に絡みあっており、単純なモデル化は困難であるばかりか、むしろ危険であることが判明した。そのため、安易なモデル化は避け、まずは現状の理論的考察と実際の活動との相互作用を地道に促進する作業を完成させるべきと判断した。
著者
宇野 勝博 山根 宏之 今野 一宏 臼井 三平 飛田 明彦 脇 克志
出版者
大阪大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

以下の場合に、群環のいわゆるワイルドな表現型をもつブロック多元環上の既約加群は、アウスランダーライテングラフの端に位置することが証明できた。(1)有限シュバレー群に対し、素数が定義体の標数の場合(2)有限シュバレー群に対し、素数が定義体の標数でなく、かつ、いわゆるリニアである場合(3)対称群、交代群とその被覆群の場合(4)いくつかの散在型有限単純群の場合しかし、F4型の有限シュバレー群で定義体の標数が2で群環の標数がリニアでないとき、また、ラドバリスの散在型単純群の被覆群のときには、アウスランダーライテングラフの端に位置しない既約加群が存在することも分かった。なお、これらのときは、いずれもその既約加群は、アウスランダーライテングラフにおいて端から2番目の場所に位置する。一方、一般の有限群の場合に有限単純群、あるいは、その被覆群の場合に問題を帰着できることも証明されており、有限単純群の分類定理を用いると上記の結果により一般の場合にも、ほとんどの場合(上の二つの群が関与しない場合)既約加群は、アウスランダーライテングラフの端に位置することが期待できる。以下の場合に群環のアウスランダーライテングラフの各連結成分における既約加群の個数が高々1個であることが証明できた。(1)有限シュバレー群に対し、素数が定義体の標数の場合(2)群のシロー2部分群が可換で素数が2の場合(3)対称群の場合また、群環の不足群の位数が4であるブロック多元環について、アウスランダーライテングラフの端に位置し、かつ、剛性をもつ加群の特徴付けを行い、それを用いてこのようなブロック多元環の間の導来同値の再構成を行った。
著者
古川 宏 野田 和恵 渡邊 信 白川 卓
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、切断者が自ら気にしているソケットの悪臭と断端部の湿疹の改善を目的に消臭・抗菌ソケットの開発を2年間で行う、切断者のQOLを高めるための研究である。平成17年度は金属フタロシアニン処理の断端袋(KSS)の抗菌性、他の断端袋との抗菌性の比較、水分吸収性、臭気試験の検討および金属フタロシアニンをソケットの材料・材質であるリゴラック、リボキシとどの様に混合させるのかの検討を行った。平成18年度は以下の検討を行った。1.消臭抗菌ソケット(金属フタロシアニン処理含有ソケット)の試作金属フタロシアニン処理の断端袋(KSS)の枚数を変えた材質を基盤にソケットを3種試作した。2.消臭抗菌ソケット(金属フタロシアニン処理含有ソケット)の抗菌作用の検討「JIS L 1902:繊維製品の抗菌性試験方法・抗菌効果」に準拠し、混釈平板法で行った。検定用菌株はStaphylococcus aureus NBRC(ATCC6538P)およびKlebsiella pnumoniae NBRC13277(ATCC4352)を用いた。消臭ソケットは金属フタロシアニン含有と非含有のものを作成した。各ソケットを4cm角に切断し、その上に3cm角の標準布を置き、菌液を接種して18時間後に菌量を測定した。その結果、金属フタロシアニン含有ソケットで両菌に対して静菌作用があることが確認されたが、殺菌活性は認められなかった。金属フタロシアニン非含有ソケットでもS.aureusでは弱い静菌作用が認められた。3.臭気試験日本防菌防黴学会臭気試験検定法に従い、ハンディーにおいモニターおよびポータブル型ニオイセンサーを用いて臭気の測定を行った。試験菌体はProteus vulgalis(ATCC13315,NBRC3815)を用いた。3種類の布を規定のバイアルビンに入れ、菌液を接種し18時間後に各バイアル中の臭気をニオイセンサーで測定した。その結果、漂白布および生成布に比較してKSSで臭気の減少が認められ、E減少幅はアンモニア臭以外の臭気で顕著であった。
著者
問山 裕二
出版者
三重大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

大腸癌遠隔転移形成を誘導する液性因子のサイトカインアレイを用いた網羅的解析により、癌部ならびに癌間質のHGF発現と血清中のHGF濃度が有意に正の相関を認め、血清中のHGF濃度を測定することが、大腸癌根治術後再発を規定する因子として、現在確定している因子に比べ、高いspecificityとsensitivityを示した。また腫瘍局所浸潤性リンパ球に関与することが知られている複数のケモカインも新規大腸癌予後規定因子として確認され、EMT(上皮間葉移行)を誘導した。それらは遠隔転移臓器に発現しているため、そのレセプターを持つ癌細胞の臓器特異性転移に関与する可能性を示した。
著者
金子 哲 牧田 満知子 岡本 洋之 湯瀬 昌文
出版者
兵庫大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

平民が強い土地所有権を有し、定住志向を持つ日本社会は、東アジアの中で特異だ。平安時代の「良き死を支え合う仲間」からこの社会が始まったが、肉親の付き合いが弱くなった。グローバル経済のため、人間関係が弱くなった日本社会では、孤独死の不安が強まっている。インターネットを活用し、「看取り仲間」を増やすことで、死を積極的に受け入れられる社会となり、生の充実と無駄な医療費の削減が可能となる。
著者
土佐 光司
出版者
金沢工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

下水の臭素消毒副生成物質による化学物質リスクの変化と消毒効果を検討した。臭素消毒の場合、消毒条件が高濃度になるにつれ、消毒副生成物の検出量は、塩素消毒よりも高濃度になった。次に、臭素消毒下水を水道原水と混合し、塩素または塩素代替消毒を行い、その飲用におけるリスク評価を行った。上水消毒においてオゾン消毒は塩素消毒よりトリハロメタンの生成量が少なく、効果的であるといえた。
著者
小池 文人
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ニホンジカの増加により,北海道から九州までの奥山から里山に至るさまざまな地域で植生が変化しつつある.シカが少ない状態でも好まれて食害される植物と,被食圧が高まった場合のみ被食される種が存在する.このような選択的な被食は植物の種どうしの競争関係に影響を与え植生が変化する.この研究ではシカの嗜好性も植物種の種特性のひとつとして取り入れることにより,極相の植物群集をアセンブリールールで予測した.
著者
花見 健志 伊藤 昌可
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

5-hmdCを含むDNAオリゴマーを長鎖アルキルアンモニウム塩が共存する状態でアプロティックな溶媒に溶解させたうえで、5-hmdC選択的な保護反応を行った。その結果、4位のアミンと5位のヒドロキシメチル基を架橋する形で保護する試薬と選択的に反応していることを示唆する結果を得ることが出来た。さらに、この保護基は脱アミン反応に対して安定であった。