著者
バロリ レオナルド
出版者
福岡工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

Wireless Sensor Networks(WSNs)では、センサ・ノードに電力制限があるので、電力の消費を抑える必要がある。さらに、センサ・ノード、アクタ・ノードは移動により、ネットワークのトポロジーは変化する。そのため経路制御および電力制御が重要である。しかし、経路制御を行うためには複数のパラメータが必要となり、NP完全問題となる。本研究では、知的アルゴリズムを用いたWSANの経路制御と電力制御を行い、WSANのシミュレーション・システムを実装した。提案ミステムはエネルギー使用量を最適化できることを示した。
著者
田村 耕一
出版者
広島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

地域金融機関の中小企業に対するビジネスモデルである地域密着型金融(リレーションシップ貸出)では、資産を引当てとするトランザクション貸出における担保像(換価処分目的)は妥当しない。具体的な譲渡担保の機能は、(1)在庫や債権管理の情報を一体的に共有するため、(2)取引や事業展開に積極的に関わる経営関与のため、(3)M & Aや事業譲渡の際に事業の一体性を保全するためである。九州の金融機関へのアンケート調査においても、上記の傾向を確認することができた。今後、実態に応じた法的認識を行う必要がある
著者
介川 裕章
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

半導体Siへの高効率スピン注入を実現するためには,高スピン分極材料の利用が有効である。本研究ではCo_2FeAl_<0.5>Si_<0.5>(CFAS)ホイスラー合金薄膜に注目して,その作製方法を検討した。その結果,CFAS層を含む積層膜の伝導特性の解析により,作製したCFAS薄膜は実際に非常に高いスピン分極率を有することが示された。また,同時に,CFASと格子整合がよいMgAl_2O_4極薄膜が作製可能であることも明らかにした。MgAl_2O_4はバリア層として高い特性を示し,Si上への作製技術が確立できればスピン注入に利用できると考えられる。
著者
手嶋 泰伸
出版者
東北大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究員の研究目的は、現在まで本格的な分析の行われてこなかった戦時期における日本海軍の政治史的動向を、特にその期間内の大部分で海相及び首相を務めた米内光政に着目することで解明し、戦時期の政治史研究の深化に実証的な貢献をなすことである。平成22年度においては、対米開戦の政治過程における海軍の役割と、ポツダム宣言受諾時の政治過程における海軍の役割について分析を行う予定であったため、防衛省防衛研究所図書館・国立国会図書館憲政資料室を中心に、戦前期陸海軍の関係文書を調査した結果、以下2点が明らかになった。(1)対米開戦の政治過程における海軍の役割について第3次近衛文麿内閣において対米戦に消極的であった海軍が、何故東条英機内閣において急速に開戦に傾斜するのかということを、海軍の内部史料を収集・分析した。その結果、この問題における海軍の態度決定要因が「管掌範囲認識」と「執行責任のジレンマ」という2点にあることを明らかにし、それらが東条英機内閣で開催された大本営政府連絡会議により解消することで、海軍が開戦に傾斜するということを明らかにした。それにより、当該時期の意思決定システムが、消極的な海軍の影響を受けて曖昧になっていく過程が抽出された。(2)ポツダム宣言受諾時の政治過程における海軍の役割についてポツダム宣言受諾時の政治過程において、海軍(米内光政)の果たした役割について分析した。その際、米内の行動の基礎となる海軍内部の情勢を詳細に把握するとともに、陸軍内部の状況も同様の調査を行い比較検討することで、米内の行動の背景や要因を考察した。その結果、ポツダム宣言受諾時の混乱は主管大臣を尊重する米内の政治スタンスと、部下統制を非常に重視しつつも楽観する、米内の特殊な職掌認識にあったということが明らかになった。それにより、宮中グループを中心に分析されてきたポツダム宣言受諾時の政治過程の混乱の理解が、海軍の視点から深められた。
著者
福嶋 正巳 倉光 英樹 長尾 誠也
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

鉄ポルフィリン触媒による臭素系難燃剤テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)の酸化分解に及ぼす腐植酸の影響について検討を行った。これまで研究を行ってきた塩素化フェノール類とは異なり、TBBPAは鉄ポルフィリン触媒による脱ハロゲン化が起こりにくく、主としてオリゴマーが生成する酸化重合が優先的に起こることがわかった。したがって、腐植酸を共存させたときには、TBBPAやBPsの酸化生成物と腐植酸とのカップリング化合物が生成し、その転化率は50-60%程度であった。また、藻類(P.subcapitata)成長阻害試験によりTBBPAのみを酸化した場合と腐植酸を共存させた場合に関する毒性評価を行ったが、腐植酸の共存によりTBBPAの毒性が低減することを明らかにした。
著者
斉藤 貢一
出版者
星薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

LC/TOFMSを用いた,痩身薬α-リポ酸のキラル分析法を構築した。本分析法は痩身目的のサプリメント製品の表示違反を判定することが可能となった。DART-TOF-MSによる脱法ハーブ製品中の合成カンナビノイド系および合成カチノン系薬物の迅速スクリーニング法を検討した。本分析法は,大麻との識別も可能であった。乱用の恐れのある医療用薬物として鎮痛薬・鎮痛補助薬30種を選定し、LC/TOFMSを用いた分析法を構築した。前処理に新規に開発した固相分散抽出法を選択することで、除タンパクを必要とせずに試料精製を迅速に行えるようになった。
著者
内村 太郎
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2009

斜面崩壊事例の大部分を占める小規模な表層崩壊に対象を絞り、安価で簡便な無線モニタリング装置を開発し、斜面災害の前兆を監視して警報を発する実用的なシステムを構築した。これまでに開発してきた、土壌水分量と斜面地表面および内部の傾斜変位に基づく斜面の無線センサーネットワーク機器の機能、信頼性を向上し、国内および中国四川省の地すべり、崖崩れ、堀削工事の斜面に適用し、実証を行った。実測データの分析から、傾斜変位に基づく警報基準を検討した。また、斜面の土壌水分量の増加や、不安定化を検知するための指標として、弾性波速度の低下を利用する手法について基礎実験を行った。また、室内実験に基づき、斜面の降雨と土壌水分量の推移を関係づける水理特性のモデル化、土壌水分量と変位・崩壊危険度を関係づける変形特性のモデル化を行った。
著者
丸中 良典 新里 直美 中島 謙一 楠崎 克之 芦原 英司 細木 誠之 宮崎 裕明 山田 敏樹
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アルドステロンが、管腔側膜結合型プロテアーゼ発現・活性を亢進させることにより、ENaCの管腔側膜上滞在時間を増大させることを明らかにした。1)アルドステロンの投与の有無により管腔側膜結合型プロテアーゼ(channel activating protease : CAP)の発現が促進されることをウエスタンブロッティング法を用いて確認した。この結果、アルドステロン投与により、CAPの発現および活性とも、増大することが明らかにした。2)上記の結果、アルドステロン投与によりENaCのクリベッジが促進され、リサイクル効率を増大させることを明らかにした。
著者
BRINE John ヴァジェニン アレクサンダー 岡本 清美 モズゴヴォイ マキシム
出版者
会津大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、コンピュータ理工学の学生が複雑な専門的文章を読む際に助けとなる、モバイルデバイス上での読解注解ツールを開発した。WikiGlossは学生が文書をインプットして、読解の話題と関連するWikipediaにリンクし、情報を増加する。タブレット上で注解が読解内の選択した文章上で立ち上がり、学生に文脈内の意味を与えて理解を助ける。モバイルデバイス上で使用中、読解文章に付随したWikiGlossツールは、文章と他のアプリケーション、例えば意味検索の辞書等との置き換えを回避することができる。
著者
菅原 一幸 北川 裕之 山田 修平 三上 雅久 浅野 雅秀 BAO Xingfeng LI Fuchuan
出版者
神戸薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

(1)ヒトの先天性脊椎・骨端異形成症(spondyloepiphyseal dysplasia, SED)がコンドロイチン6-O硫酸基転移酵素-1(C6ST-1)の変異によって発症することを証明した。(2)コンドロイチンの基本骨格の生合成に関わるコンドロイチン重合化酵素(ChPF)の線虫のオルソログPAR2.4をクローニングし、その機能低下により、線虫の胚発生初期の細胞質分裂が異常になることが分かった。(3)サメ皮膚のCS/デルマタン硫酸(DS)ハイブリッド糖鎖の種々の生物活性を証明し、治療薬への応用の可能性を示した。(4)ブタ胎児脳のCS/DS鎖の神経突起伸長促進作用が増殖因子プレイオトロフィンとの結合を介することを証明し、さらに機能ドメインである硫酸化十糖を単離し、配列を決定した。(5)海産ホヤの果肉から海馬ニューロンの突起伸長促進活性をもつ高硫酸化デルマタン硫酸を精製し、これでマウスを免疫し、抗デルマタン硫酸単クローン抗体を調製した。この抗体は海馬ニューロンを染色し、免疫源であるデルマタン硫酸の神経突起伸長促進活性を阻害した。(6)ヘルペス単純ウイルス(HSV-1、HSV-2)は細胞表面のヘパラン硫酸への結合を介して感染するとされてきたが、今回我々は、感染細胞のコンドロイチン硫酸のE構造を認識して感染しうることを証明した。
著者
小泉 雄一郎
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(A)
巻号頁・発行日
2004

Ti-Al金属間化合物の逆位相領域(APD)組織と層状組織を同時に制御し、層状組織制御のみでは得られない特性を実現するための研究を行ってきた。昨年度の研究の結果、熱処理のみで組織制御した場合、γ板析出前にAPDが粗大化するため、層状組織と共存するAPDのサイズは最小で400nmであった。また、APDとγ板の組織複合化の効果を引き出すには、従来の不規則α単相温度からの急冷とその後のα_2+γ二相温度での等焼鈍で得られるより微細なγ板・APD複合ナノ組織が必要であることが示された。本年度は、そのような組織を得るため、γ板の優先核生成サイトとしての転位の役割に注目し、二相化焼鈍前の塑性加工の効果を調べた。具体的には、焼鈍前に圧延あるいは押し込み加工により塑性変形を加えることで優先核生成サイトとなる転位を導入してγ板析出を促進し、昨年度得られたよりも微細なγ板・逆位相領域・転位複合ナノ組織を得ることを試みた。焼鈍前に10%圧延加工した結果、加工なしの場合にはγ板が析出しない条件(1073K 1×10^4s)での焼鈍でも平均間隔(L)88nmの層状組織が得られた。その際の平均APDサイズ(1)は214nnと微細であり、これまでで最も微細な複合ナノ組織が得ることができた。そのような組織を有する結晶の硬さはHV464と、熱処理のみで得られた同程度のL(94nm)を有する結晶の硬さHV366に比べて大幅に向上していた。また、10%圧延後1073Kで5×10^4s焼鈍した試料では、L=49nmとなった。これは、焼鈍前加工なしでさらに長時間焼鈍て得られる最小の五の約1/2であったことから、焼鈍前加工はγ板析出の早期化だけでなく、層状組織をさらに微細にする効果も有することを見出した。押し込み加工によりさらに大きな加工を加えた場合にはL=77nm、1=90nmと共に100nm以下の組織も得られた。
著者
伊藤 昭 寺田 和憲
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.「心を読む」ことをアルゴリズムとしてとらえ、利害の輻輳する状況下での人の「心を読む」行動の分析と、学習アルゴリズムとしての実現手法の研究を行った。具体的には、協調と競合が絡み合った問題として1・2・5じゃんけんや3カード問題を作成し、相手がこちらの行動を読むことを予想して、それを自己の目的を達成のために利用するという、再帰的な心を読む行動の発現を調べた。また上記と並行して、自己の利益を最大化することと矛盾しない形で、最適な行動を計算機が自動的に生成(学習)するアルゴリズムを検討した。その結果、履歴を考慮した適切な学習アルゴリズムを用いることで、利益が輻輳する状況下で、双方が納得できる良い解を発見できることを示した。2.コミュニケーションにおける視線や表情の果たす役割に注目し、そのメカニズムの解明と人とロボットのコミュニケーションへの応用を目指した研究を行った。具体的には、人の視線方向を検出し、また自ら視線を制御できるロボットと人とのインタラクション実験を通して人の振る舞いを分析、視線を適切に制御することで、人がロボットに対して「意図スタンス」を取りやすくなることを確認した。また表情を単に基本表情に分類するのではなく、表情を目の動きを含めて顔の与える「心の状態」へのメッセージととらえ、その検出方法を検討した。3.人工物を「心を持つもの」とみなして、その意図を読むことでコミュニケーションを実現することを目指した研究を行った。最初のステップとして、Dennettの物理、設計、意図スタンスの分類に従い、人のとるスタンスの評価方法を検討した。具体的には、自律移動椅子、自律移動立方体を用いて、人がそのような未知な物体と出会ったとき、どのように行動するのかを観察、分析して、人の採るスタンスを評価すると共に、人が人工物に対して意図スタンスをとるための条件を明らかにした。
著者
相場 芳憲 戸田 浩人 小池 孝良 生原 喜久雄
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究は大きく次の3つの課題について調査した。1. 降水の移動に伴う溶存元素の垂直的変化森林にインプットされた林外雨は樹冠に遮断されるために、土壌へ到達する水量は林外雨量の80%に減少し、水質も大きく変化することを、スギ・ヒノキの壮齢林、ミズナラおよびコナラの優占する落葉広葉樹林で調査した。また、下層植生による影響も大きいことを明らかにした。樹冠を通過することによる濃度増加の要因を樹体に付着した物質からの(乾性沈着)の洗脱と樹体からの溶脱の割合から解析した。2. 土壌水の水質形成土壌系での水質変化を明らかにするため、イオン交換樹脂を用いて、水溶性塩基の移動量を調査した。また、土壌中の窒素無機化が土壌水質に及ぼす影響を調査した。3. 渓流の水質形成渓流の水質形成のメカニズムを明らかにするため、枝打ちや間伐が渓流水の水質形成に及ぼす影響を調査した。また、降水量と渓流水の水質の関係を調査した。森林生態系での主に流出経路としての渓流水質は、土壌層および母材を通過する過程で、溶存物質の吸着や溶出によって物理化学的な平衡状態になる。森林は降雨量の変化にかかわらず水質を一定に保つ機能があることを明らかにした。
著者
辻本 実央
出版者
上智大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、9世紀後半から13世紀のクメール遺跡を飾る浮彫に描かれた人物彫刻の様式と遺跡等との関連性の変遷について明らかにし、クメール美術史全体をつらぬく大きなフレームワークとして人物彫刻を題材とした自律的な東南アジア美術史観を提示することである。本研究で具体的に明らかにしようとすることは次の2点である.各点について研究成果をまとめる。第一に、アンコール王朝が興隆したおよそ9世紀から13世紀までを網羅するクメール遺跡(計35)の建築装飾に用いられた人物彫刻の特徴的な様式、所属する建築物とそこにおける配置関係の歴史的展開を明らかにする、そのために全クメール史を網羅する人物像彫刻の独白データベースを構築したその分析から、2つの先行研究にない新たな事実を発見した。第一に、穏やかな表情をしたドゥバラパラ像を対で置く設置方法の出現である,第二に、中央祠堂における女性立像の専有が特定の遺跡でみられることである。第一の点については、壁面浮彫から憤怒相のドゥバラパラ像が切り離されたと考えられる。この間一貫してドゥバラパラ像の役割は守門神であったといえる、第二の点については、女性立像が2つの役割を果たしていると考えられる。第一に守門神としての役割、第二に建物自体を荘厳するための装飾的な要素としての機能である.サンスクリットでは前者は「ドヴァラパリカ」、後者は「スラスンダリ」に相当する。後者では、国家鎮護寺院として設置された建物が選択的に女性立像を中央祠堂に配置している。第二に、上記で明らかになった特徴的な様式とその展開が、クメール文明内で独自に起きた表現様式の模倣・拡大・変容といえるのか、域外文明からの影響によるものなのかを明らかにする。現段階では明示的な結果は得られていないが継続的に分析を続ける。
著者
小峯 和明 渡辺 憲司 金 文京 増尾 伸一郎
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

日本中世の物語類を中心に、<予言文学>に関わる表現やモチーフの資料集を作成し、さらに予言書、未来記、託宣書、夢記、起請文、遺言、遺訓などの文書類のリストを作成、資料集としてまとめた。東アジアに関しては、北京、ソウル、ハノイ、パリ、ロンドン、ボストンなどで資料調査を行い、貴重な資料を収集した。それらの成果をもとに、北京、ハノイ、パリで<予言文学>をめぐる国際学会や研究会を主催し、論文集としてまとめた。
著者
落合 恵美子 TOIVONEN T.H. TOIVONEN Tuukka
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

2010年度においては研究計画通り、論文執筆・出版に向けての書籍執筆や修正を中心に活動し、『A Sociology of Japanese Youth : From Returnees to NEETs』共著書籍の出版が決定(2011年夏)、『Getthing Japanese Youth Back to Work : Negotiating Policy in a Post-Industrial Society』をRoutledgeと出版契約を結ぶことができた(2011年末)。研究論文については、『Social Politics』ゲンダーと福祉政策の分野で著名な雑誌に投稿。また、同じく家族政策やワークライフバランスをテーマにIs There Life after Work for Japan? Political 'Work-Life Balance' Research Begins to Address the Hard Questionsをまとめた。また、6月に「若者問題」についてのワークショップを開催。心理学社と社会学者、そしてMichael Zielenzigerアメリカの著名な記者の討論により成果の多いイベントになった。http://www.tuukkatoivonen.com/Events_files/Workshop2010.pdf
著者
山村 則男 辻 宣行
出版者
佐賀医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

平成四年度では4つの保護形式、両親保護、オス保護、メス保護と無保護のいづれが純粋戦略になるかを、性比、両親保護と片親保護の場合の子供の数の比、片親保護と無保護の場合の子供の数の比の3つのパラメータで記述した。保護形式を決定する重要なパラメータは性比であることがわかった。また父性の不確かさがメス保護が多い理由のひとつであろうと思われた。オス保護とメス保護が重なったり、両親保護と無保護が重なったりする場合もある。どちらになるかは過去からの進化の歴史が決定する(3つのうちのどのパラメータが変化したか)。これらの結果はBehavioral Ecologyに掲載された。平成五年度は保護形式の多型に論点を移した。同一種内に複数の保育パターンが存在するもの(例えば地中海のクジャクベラ)、あるいは近縁種のグループ内に多種の保育パターンが存在するもの(例えば、一夫多妻の鳥、カエル類)等の実際の生物と、我々のモデルとの比較対応を行った。各分類の専門の生態学者からの情報をもとにして、モデルの予測と、その実際の保護形式を比較検討中である。また我々のモデルにおいては、実効性比が一番重要であったが、はたして性比が本当に一番影響が大きいのかを実際の生物で検討中である。また、保育行動の進化の統一的理論として遺伝的、生態的な総合的考察はその問題の大きさのために完了していない。一方、保育とは血縁関係のある親と子供の利益の対立である。保育することで親は繁殖の機会を失うが、子供は生存率が増す。即ち、親はできるならば保育はやりたくなく、子供は親にやらせたい。このような血縁のあるもの同士での利害の対立を、京都大学・阿部琢哉、東正彦らと共に数理モデルで検討した。この結果はEvolutionに掲載された。
著者
西村 一朗 畠山 絹江 中山 徹 小城 勝相 水野 弘之 小野木 禎彦 阿部 登茂子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

3年間の個々の研究を総括し、以下のような内容から、高齢者の状況、生活各側面での要求、問題点、将来への課題等についてまとめた。(1)食物関係高齢者は加齢に伴い、確実に骨密度の低下が進行していた。低骨密度、骨粗鬆症の高齢者が骨折を起こさないための環境づくり、支援が課題である。買い物、調理の楽しみを持続させ、高齢者の希望に叶った配食サービスなどの生活支援体制を整える必要がある。(2)衣服関係高齢者の体型分布の幅の広さから、高齢者用既製服の衣服サイズ、デザインが乏しいことが指摘される。高齢者の体型と既製服サイズの適正化について更なる研究が必要である。また、高齢者向けの衣服の売り場展開の検討も必要である。(3)住居関係マンションの共用部分において、手すり、エレベーターの設置が少なく、今後改善が望まれる。高齢期にはできるだけ住み慣れた自宅で過ごしたいと考える高齢者が多かったが、身体が不自由になったとき、看護・介護・ひとりで生活できないこと・体力に不安を感じていることがわかった。持ち家一戸建住宅において、居住者の高齢化に伴う家族人数の減少により、相対的に広い住宅の空洞化が進んでいる。高齢者の住環境への要求には、高齢期を反映した独特の住環境要求があるが、それらの要求と住空間との間に乖離が進展する中、それを取り除いていくことが重要である。
著者
畑山 満則
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

災害のイメージを共有し,災害後の対応も含めたリスク・コミュニケーションを実現にするため,災害想定下での訓練として各地で盛んに行われている防災訓練が有効であると考える.現状の防災訓練では,災害想定自体が参加者にとってわかりにくいものであり,さらに長期にわたって固定化されている場合が多いため,有効なリスク・コミュニケーションにつながりにくい状況にある.本研究では,この災害想定から住民参加型で行うことを提案する.このためには動的なシミュレーションと,その時空間での分析が必要となる.そこで,従来のGISでは対象とされていなかった動的なオブジェクトの記述と,時空間での接続関係のハンドリングを可能にし,さらに,複数の災害想定をパラレルワールドとして書き込める時空間GISの開発を目的とし以下の研究を行った.1)時空間地理情報スキーマの定義と概念モデルの構築空間スキーマ,時間スキーマについては,国際標準化がすでになされているが,時空間スキーマに関しては未だ検討段階である.時空間スキーマの理論的考察を行い,時空間情報の概念モデルを構築した.2)時空間接続関係のデータベースへの記述形式とソフトウエアへの実装1)での研究結果をうけて,時空間スキーマを構成する重要な要素である時空間の接続関係について,課題抽出を行った.3)時空間地理情報データ構造:KIWI+に関する考察時空間GISを構築するためのデータ構造として,提案しているKIWI+フォーマットに関して,上記の1)2)の結果を踏まえた見直しを行い,実装上の課題に関する知見をまとめた.
著者
田口 正樹 石川 武 山田 欣吾 石部 雅亮 村上 淳一 石井 紫郎
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、西洋と日本の歴史の中で法が有した統合作用を、そのさまざまな側面について検討した。その際、法そのものの持つ内実よりも、法が表出される様式、広い意味での法の「かたち」に注目するという視角を採用し、史料論および文化史の手法を参照しつつ、研究を進めた。史料論との関係では、古代末期・中世初期イタリアの文書史料、ドイツ中世中期の法書史料、西洋中世中期から初期近代(近世)にかけての法学文献とその体系、日本中世の日記を取り上げて、文字記録が支配と統合にとって有した意味、法書の国制像におけるラント法とレーン法の関係、lnstitutiones体系による法素材の整理と統合、京都を舞台とした「政治」の諸相などを解明した。文化史的研究に対しては、中世ドイツ人の国家像、中世中期ドイツの国王裁判、中世後期ドイツの貴族の実力行使(フェーデ)を考察対象として応接し、ローマ帝国を最終帝国とする歴史神学的世界観の意義、貴族間の紛争解決ルールの変容、フェーデにおける名誉や公衆の意義、などの問題が論じられた。更に転換期における法の「かたち」を、古代末期ローマ帝国の贈与に関する皇帝勅答、近世ドイツ都市における法類型、近世ドイツの大学における法学教育などを取り上げて検討し、皇帝政府による勅答を通じた諸利害の調整、中間権力と雑多な法を組み込んだ領邦君主の支配体制、近世の法学入門文献による法学諸分野の関連づけと歴史法学によるその改変などを明らかにした。最後に、「統合」そのものが現代世界において持つ意味と、日本の歴史上現れる「統合」の特徴的なパターンを、ドイツの社会学者ニクラス・ルーマンの後期の思考と日本古代から近代に至るまでの、公的ないし半公的な歴史叙述を対象として考察し、統合が構造的に生み出す排斥や、中心権力に奉仕する者たちの由緒の歴史という統合パターンを論じた。