著者
伊藤 裕子 後藤 智美 三上 栄一 猪飼 誉友 林 留美子 棚橋 高志 大島 晴美
出版者
愛知県衛生研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

食品中に残留する動物用医薬品の分析法は、もっぱら未加工非加熱の食品を対象としており、変性した脂質やタンパク質、調味料などから構成された加工食品を分析する方法はほとんどない。そこで、日本食を中心とした加工食品中の残留動物用医薬品について、向流クロマトグラフィーや固相抽出を前処理にLC-MS/MSを分離検出に用いた分析法を検討し、トリフェニルメタン系合成殺菌剤とその代謝物、ベンズイミダゾール系寄生虫駆除剤とその代謝物、サルファ剤、キノロン剤について、効率的かつ実用的な分析法を確立した。
著者
宮竹 貴久 松本 顕 富岡 憲治 谷村 禎一 松山 隆志
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

開花、サンゴの配偶子放出、昆虫の交尾など生殖を行う時刻や季節が決まっている生物は多い。1つの集団内に生息する個体どうしでも、おたがいが生殖するタイミングがずれると交配が妨げられ生殖的な隔離が生じる。このような時間的生殖隔離に関与すると考えられる生態分子遺伝基盤を解明した。具体的には交尾時刻が5時間異なるミバエの集団間で体内時計を支配する遺伝子を調べた結果、クリプトクローム遺伝子のアミノ酸置換サイトに変異が生じていた。
著者
水田 岳志
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本年度は、2006年の日本経済を対象として、全貿易財産業を対象とした貿易障壁の発生要因を明らかにするため、Protection for Sale(以下、PFS)モデルの検証を行った。PFSモデルとは全産業において発生している貿易障壁を産業ごとの利益団体による政府への政治献金行動によって説明する枠組みである。このモデルの推定及び検証作業には産業別政治献金データ、産業別貿易障壁指標及び産業別輸入価格弾力性の情報が必須である。本稿は第44回衆議院議員総選挙の翌年を分析期間とし、2005年度及び2006年度政治資金収支報告書を収集、各政党・資金団体および政治団体への企業献金・団体献金を整理した。その献金名簿から、「TSR企業情報ファイル」を用いて企業名を業種コード(JSIC.Rev.11.4桁分類)へ分類作業を行った。さらに、総務省政策統括官部局」のご厚意により。国際比較が可能な産業別データ系列も作成した。産業別貿易障壁指標に関しては、非関税障壁の度合いを反映し、かつ、経済理論的な基礎を持つ「産業別TRI」を定義し、Kee,et.al(2009)の推定結果を用い、産業別TRIを推定した。産業別輸入価格弾力性はKee,et.al(2008)が推定した貿易品目(HS88の6桁分類)ごとの輸入価格弾力性を産業レベルに集計した。全貿易産業(JIP産業分類)を対象にPFSモデルの検証を行った結果、PFSモデルが要求する符号条件を確認した。また、貿易障壁を発生させる政治構造パラメータである「政府の経済厚生ウェイト」と「貿易に関わる利益団体組織率」を計算した結果、米国等を対象とした既存研究と比較し、経済厚生ウェイトが大きく、利益団体組織率が小さいという結果を得た。以上のことから、2006年の日本政府の貿易政策決定において利益団体の与えた影響は国際比較という観点から比較的小さいと言える。
著者
清水 康行 馬場 仁志 泉 典洋 関根 正人
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1.混合粒径の材料で構成された一様湾曲流路が外岸方向ヘシフトしていく過程に関する数値計算モデルの構築を行った.流路の変動とリンクする形で土砂の分級が生じ,内岸側に細流土砂が堆積することでテラス状の地形ができることを確認し,考察を行った.2.1999年8月に発生した阿武隈川洪水の後,福島盆地下流端の梁川橋付近の河川敷において現地観測を実施し洪水による高水敷上への細粒土砂分の堆積量を調べた.それによると堆積している土砂は0.1mm程度の通常はウォッシュロードと呼ばれるような非常に細かい砂であり,低水路側から堤防側に行くにつれて粒径が小さくなっていることがわかった.また堆積のピークは低水路から10m程度離れたところに流れと平行方向に帯状に分布していることが明らかとなった.これによって洪水時に輸送される浮遊砂あるいはウォッシュロードの堆積が洪水敷の発達及び川幅維持に大きな影響を与えていることが示唆された.3.混合粒径河道で、緩やかに蛇行している実河川(一級河川鵡川、穂別橋地点)において、融雪期と夏期の洪水観測を行い、掃流砂および浮遊砂の移動実態を観測した。流速についても、ADCPを用いた洪水中の観測に初めて成功し、蛇行による二次流の発生を3次元的にとらえることができた。4.粘性河岸による自由蛇行の模型実験を行い,河床および河岸材料に粘性土が混入した場合の耐侵食性および河岸侵食形態の変化について考察を行った.5.河床と河岸の両方の変化を同時に扱うことが可能な数値計算モデルの開癸を行った.計算モデルの検証は,自由蛇行の模型実験を用いて行った.この結果,計算モデルは実験結果における,河岸侵食を伴った自由蛇行の時間経過を精度良く再現可能であることが示され,砂質河道の自由蛇行を定量的に解析可能なモデルであることが確かめられた.
著者
本田 亜紀子
出版者
独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

骨と運動特性(力学的負荷)の関連を検討するため、トップアスリートを対象にMRIを用いた大腿中央部の骨形態および力学的指標の解析と骨代謝マーカーを測定した。力学的負荷の相違から、アスリートを5群に分けた。その結果、男女とも骨に加わる衝撃が高い群ほど低い群と比較して、皮質骨面積や皮質骨外周囲が増加し、力学的指標が大きいことが明らかとなった。一方、骨代謝マーカーには群間の差はほとんどみられなかった。
著者
八巻 和彦 矢内 義顕 川添 信介 山我 哲雄 松本 耿郎 司馬 春英 小杉 泰 佐藤 直子 降旗 芳彦 橋川 裕之 岩田 靖男 芝元 航平 比留間 亮平
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

<文明の衝突>から<文明の対話>への道は、各社会が己の価値観を絶対視することなく、互いの相違を外的表現の相違であって本質的な相違ではないことを認識することによって確保されうる。たとえば宗教において教義と儀礼を冷静に区別した上で、儀礼は各社会の文化によって表現形式が異なることを認識して、儀礼の間に相違が存在するから教義も異なるに違いないとする誤った推論を避けることである。キリスト教ユニテリアニズムとイスラームの間の教義には本質において相違がないが、儀礼形式は大いに異なることでしばしば紛争が生じ、他方、カトリックとユニテリアニズムの間では教義は大いに異なるにもかかわらず、儀礼が類似しているとみなされることで、ほとんど紛争が生じない、という事実に着目すれば、われわれの主張が裏付けられるであろう。
著者
チョルパン アスリ
出版者
京都大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

ビジネス・グループは、特に開発途上市場において、巨大企業の競争力の向上に大きな役割を果たし、それを通じて当該国の長期の経済成長に多大な貢献をしてきた。このビジネス・グループは非関連多角化を製品戦略として追求し、持株会社と子会社という組織構造を維持してきた。従来のビジネス・グループに関する研究が経済環境をその重要性の主要因と見なしてきたのとは異なり、本研究は企業内に蓄積された競争資源とその資源を動的に活用する能力に注目して、その要素がビジネス・グループを国際市場においても競争可能な経済主体に引き上げたことを議論した。これらの資源あるいは能力は、成熟工業経済における大企業が保有する製品に固有のものとは異なり、製品のカテゴリーを越えた、より機能的な要素、例えば金融・財務、人的資源、マーケティング、とりわけ組織マネジメントといった要素に関連するものであった。
著者
石原 孟 山口 敦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究では、まず鉄道沿線の建物と植物の影響を予測できる一般化キャノピーモデルを開発すると共に、風洞実験と現地観測により、その精度を明らかにした。次に、数値竜巻発生装置を開発し、竜巻に伴う強風特性を明らかにすると共に、竜巻の中心付近に瞬間風速が大きくなっていることを明らかにした。最後に、数値流体解析および現地観測データを利用した鉄道沿線における強風予測手法を提案し、複数地点における最大風速の記録と比較することにより、予測手法の精度を検証すると共に、徐行運転と防風フェンス等の横風対策の効果を定量的に評価した。
著者
渡辺 信 馬場 繁幸 馬場 繁幸
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

生態ニッチ確立の初期段階において、マングローブ実生が生存するためには通気層が未発達な根における無酸素呼吸によるエネルギー獲得が重要と考えられた。樹種によっては実生が水没してから早い段階で根の通気層が形成されることから、無酸素呼吸から有酸素呼吸に移行するタイミングが樹種間の生存競争に影響を及ぼすと考えられた。一方で、壮齢期のオヒルギが優先するマングローブ林では一年を通じた湛水頻度は低く、樹種間相互の被陰による光不足がマングローブ樹種間の競争に大きな影響を及ぼすことが示唆された。
著者
坂田 五月
出版者
聖隷クリストファー大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、ゴム製湯たんぽと電気毛布の違いによる保温と安楽の効果を、性別に注目して比較検討した。研究の同意を得た健康な成人17名(平成13年度は9名、平成14年度は8名)を対象に2種類の温罨法を実施し、生理学的指標、主観的評価、寝床気候の変化を検証し、以下の結果を得た。1.ゴム製湯たんぽの足趾の皮膚温・皮膚血流量・冷感は、電気毛布より早期に改善し、実験の60分以降でほぼ平衡状態を保った。また、迷走神経活動を亢進させ交感神経活動を抑制する傾向がみられ、これらの結果は平成13年度のものと一致していた。男女の比較では、ゴム製湯たんぽの足趾の皮膚温・皮膚血流量・冷感・口渇感・快適感に性別による相違は認められなかった。2.電気毛布は足趾の皮膚血流量(p<0.01)、全身温冷感(p<0.01)に性別による相違が認められ、25分以降で女性が男性よりも高値となった。また、全身温冷感は120分間を通して男性の方が高値であった。しかし、ゴム製湯たんぽと同様に、足趾の皮膚温・口渇感・快適感では性別による相違が認められなかった。3.温罨法を実施しないコントロールでは、足趾の皮膚温(p<0.01)および皮膚血流量(pく0.01)、口渇感(p<0.01)、快適感(p<0.05)に有意差が認められ、それぞれの120分値は女性の方が男性よりも高値となった。電気毛布の継続的使用による交換神経活動の亢進、ゴム製湯たんぽの安楽の効果については、平成13年度の結果と一致していた。これに加えて、本研究で得た性別に関する結果も、看護者が温罨法の器具を選択する上で有効な基礎的資料と成りえる事が示唆された。
著者
小栗 克弥 中野 秀俊 日比野 浩樹 加藤 景子 関根 佳明
出版者
日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

我々は、次世代の超高速デバイス材料として有望な大面積エピタキシャルグラフェンの超高速緩和ダイナミクスを明らかにすることを目的として、原子層一層レベルの表面の光励起キャリア緩和ダイナミクス計測が可能な高次高調波光源を用いたフェムト秒時間分解表面光電子分光法を実現した。また、30倍程度の信号強度増強効果を有する表面増強ラマン散乱分光法を確立し、基板のからのラマンピークと重畳することなく、エピタキシャルグラフェンのラマンピークの詳細な分析に成功した。更に、超高速過渡回折法を用いることにより、グラフェンの電子位相緩和計測に成功し、緩和時間をおよそ50 fsと見積もることができた。
著者
鈴木 良弥
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では,新聞記事を対象とした自動要約に注目し,高精度な複数記事の要約をおこなうための第一歩として,(1)大規模コーパスから話題テンプレートを作成し,その話題テンプレートを利用して新聞記事から注目する記事の続報記事を高精度で抽出する.抽出した続報記事を話題クラスタごとに分類する(2)話題クラスタごとの要約を行い,クラスタ間のつながりを考慮し,続報記事全体の要約を行う。ことを目的とし,研究を行った.(1)では話題テンプレートや機械学習(Support Vector Machines)を用いて続報記事を抽出する手法を提案した.提案手法を用いて大規模コーパス(Topic Detection and Trackingのコーパスや毎日新聞コーパス)から続報記事を抽出する実験を行い,本手法が続報記事を高精度で抽出できることを示した(論文4,5).(2)に関しては,具体的にはクラスタ内の要約のために,クラスタに集められた文中の類似単語を検出する必要があることがわかり,類似名詞の抽出を行った(論文3,4).類似名詞の抽出のためにHindleの手法とLinの手法を比較し,日本語文書に対してはLinの手法がHindleの手法より勝っていることを示した.またLinの手法を日本語記事に適応させた類似名詞抽出手法を提案した.また,抽出された類似単語と記事のタイトルを利用して重要文抽出を行った(論文1,2).Linの手法を基に(論文3,4)で提案した手法を用いて記事のタイトル中の単語の類似単語を本文中より抽出し,重要文抽出に利用した.毎日新聞の記事とNTCIR2の重要文抽出タスクの解答を利用して重要文抽出実験を行い,本研究で抽出した類似単語の情報が重要文抽出に有用であることを示した.
著者
岩永 忠康 白武 義治 諸泉 俊介 宮崎 卓朗 西島 博樹 柳 純
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

日本の小売業の経営は現在では大きく変化している。流通外資もその変化を促進している要因の一つである。日本では近年、流通外資の参入が活発化しているが、しかし近隣のアジア諸国ではより早い時期から流通外資が参入していた。これを研究することが日本での流通外資の展開方向を予測するうえで重要であると思われる。台湾での聞き取り調査では、中国と同様に欧米系の小売企業が好調な業績を残していることがわかった。また一方で日本国内とは逆に日系の小売企業が好調であることも明らかとなった。しかしいわゆる欧米系の流通外資と日系の小売企業はでは異なるところが多く、成功の要因は同じではない。現地化と標準化という点でみれば一般に日系の小売企業は標準化を強く指向しており、日本国内での店舗運営やコンセプトを多く台湾に持ち込んでいる。また欧米系の小売企業は取扱商品については現地化を進めており、店舗運営も現地のスタッフに依存することも多く見られる。日系小売企業で低価格業態を持ち込んではいる企業は少なく、またその成功・不成功も現時点では見極められない。しかし欧米系の小売企業は低価格を武器に現地資本の小売企業と直接的な競争を繰り広げている。この違いは母国での競争力の源泉が低価格にあるかどうかということに由来すると思われる点では中国での調査と同様である。つまり日系小売企業は低価格業態ではない形で標準化を基本に進出を果たしていることは確実であり、欧米系小売企業は現地消費者の低価格指向に対応する形で現地化を進めているのである。しかし日本の消費者の嗜好は台湾と比較すると必ずしも低価格のみに向かっているとはいえない。低価格業態の参入が地域の流通構造に与える影響はその意味では限定的で、流通外資の経営不振がそのことを物語っている。
著者
佐保 美奈子(井端美奈子) 古山 美穂 工藤 里香 島田 憲次
出版者
大阪府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

性分化疾患や総排泄腔遺残症などにより、膣形成術予定の思春期以後の女性と家族が、恋愛・結婚へと夢をつなぐためのセクシュアリティ支援について、検討した。毎月のストーマ・セクシュアリティ外来において性に関するカウンセリングをし、カンファレンスに参加し、意見を述べた。国内学会での情報収集・情報発信を活発に行ない、韓国の大学病院にて性別適合手術を見学した。障がい者用衣服についての講演会・排泄障がい者の女子会を開催した。研究成果物として、『こころとからだBook』『おつきあいのマナーかるた』『膣拡張用樹脂製ダイレーター』『女性オストメイト用おしゃれ下着』各種パンフレット・小冊子などがある。
著者
出水 力 高橋 泰隆 林田 治男 渡邉 輝幸
出版者
大阪産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

インドにあるホンダ系のアッセンブリーメーカーHMSIと、その関連するパーツサプライヤーを調査した。インド1999年に自動車生産が自由化されたことで、沢山の日系二輪・四輪部品企業が生産に踏み切った。1990年代から発展を遂げた二輪生産のインドと他の東南アジア諸国との大きな違いは、二輪生産の技術的基盤が整った中でスタートが切られた。そのため外資との合弁生産とは別に民族的な二輪企業が自立的に誕生していた。部品企業を育てながら外資に技術と資本を頼るインド、タイなど東南アジア諸国の国産化と違うのが、インドの二輪産業の特徴で台湾の二輪産業に近いと考えることができる。中国の二輪生産で、天津摩托集団はドイツのツンダップの工場設備と製品技術を買収して生まれた二輪では古いメーカーであった。しかし、経営的な行き詰まりからホンダとの合弁で息を吹き返しながら、次なる根本的な戦略を見出せず、その中国側の持分を民営の新大洲摩托に売り払い、新大洲本田摩托(天津)分公司が新たに発足した。上海にある本工場の分工場という位置づけである。部品の調達は上海の本工場が持つ、中国全土に張り巡らされた安く品質の保証された購買ルートに依拠することで、コストダウンを達成していた。新大洲本田摩托(天津)分公司の工場設備のうち工作器械は欧米のものが、日中の合弁が成立する前に導入されていた。この台数が多いのでかなり目がつくが、現在はほとんどの機械類はリプレイスする際には中国製に置き換えられつつあった。中国・東南アジア・インドなどで生産されているローエンドバイクの生産には、高性能な工作機械はコストの点から経験的に不必要なことに依拠している。
著者
山本 定博 AHMAD Zahoor AHMAD ZAHOOR
出版者
鳥取大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

世界各地で家畜糞などの有機性廃棄物の不適切な農地還元による環境汚染が深刻化しており,とくにリンの非点源汚染は,富栄養化による水圏の深刻な汚染要因となっている.本研究は土壌からのリン溶脱抑制のために,別セクターで産する廃棄物のリン保持特性に着目し,2種類の資材(高炉砕;BFS,上水処理沈殿残渣;WTR)とリン吸着資材として注目を集めるハイドロタルサイト(HYD)を土壌に添加してトウモロコシを栽培し,リンの溶脱抑制と作物への利用効率との関係からリン保持資材の効果を検討した.土壌は砂質マサ土とローム質土壌を供試し,WTR,BFSを5%,HYDを0.25%相当量土壌に添加した.リン源は,牛ふん堆肥(堆肥区)とリン酸二水素カリウム(化学肥料区)を各300kgP/ha相当添加した,播種後7週間ポット栽培し,収穫後作物体を分析した.作物体乾物重は,土壌よりもリン源の影響を受け,堆肥区では化学肥料区より大きく劣った.リン吸着資材(以下PRM)添加効果は土壌によって異なった.マサ土では,すべてのPRM添加により,リン吸収が抑制され乾物重が低下したが,ローム質土壌ではBFS添加により乾物重の増加が認められた.ポットからのリン溶出も土壌によって異なった.マサ土では高濃度のリンが排出され,とくに化成肥料区の栽培初期で顕著であったが,PRM添加によって大きく低減できた.ローム質土壌では,マサ土とは異なりPRMによる明確なリン溶脱抑制効果は認められなかった.以上,PRM添加効果は土性によって異なり,砂質土壌ではリン溶脱抑制効果は大きいが,逆に作物へのリン可給度を低下させるマイナス面が明らかになった.今後,リンの溶脱と肥効のバランスを考慮した資材利用方法とPRM吸着リンの長期的スパンでの可給化等の検討が必要であるが,廃棄物をリン保持資材として環境保全と食料生産の両面で有効活用できる可能性,方向性を示すことができた.
著者
佐藤 淳也
出版者
岩手医科大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

現在、医療従事者の尿中から抗癌剤が検出されたとする人的被曝や調製室、安全キャビネット内に抗癌剤が残留するとした環境被曝の報告が相次いでいる。医療従事者における職業的抗癌剤被曝は、微量であるが長期にわたるため生殖毒性や発癌のリスク増加につながる。そこで、光エネルギーを利用して活性酸素を生じ、あらゆる有機物を分解する特性を有した光触媒を利用して、医療環境に残留する抗癌剤を分解し、医療従事者の職業的抗癌剤被曝を低減することが本研究の目的である。これまでの研究において、安全キャビネット内のステンレス板上に抗癌剤(シクロポスファミド)を実際の飛散状況同様に塗布し、ブルッカイト型二酸化チタン水溶液を噴霧した。これに、近紫外線を12時間照射した結果、シクロポスファミドの分解(分解率83%)を認めていた(佐藤淳也他,医療薬学37(1)57-61,2011)。しかし、シクロポスファミド以外の抗癌剤についての分解能については、不明であった。そこで、23年芝の研究にて、複数種の抗癌剤(5-フルオロウラシル、メソトレキセート、パクリタキセルおよびイリノテカン)での分解特性を評価した。その結果、上記の各抗癌剤において、既報に準じた方法によって、それぞれ分解率は、86%,97%,99%以上(定量限界以下)および87%の分解率が得られた。以上より、光触媒は、シクロポスファミド以外のあらゆる抗癌剤についても普遍的に分解する可能性が高く、医療現場における抗癌剤分解の有用な方法になると考えられた。
著者
高森 昭光
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、地球上で用いる地震計や傾斜計、地球観測用人工衛星で用いる加速度計(重力計)などの観測機器で必要とされるフィードバックのために光の輻射圧を利用する「光アクチュエータ」についての研究開発を行った。具体的には、数ワット程度のレーザー光源を用いることによって磁気浮上支持した小型回転体の姿勢制御が可能であることを示し、光アクチュエータが地球観測装置の参照マス制御手段として有効であることを明らかにした。
著者
田中 圭
出版者
大分大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、「接着剤と棒状接合具を併用した木質構造接合法」とその類似の接合法において、既往の研究を整理した上で、樹種の違いや剛性の差異、使用する接合具の種類や径、使用する接着剤の強度特性の把握、縁距離や接合具間隔による強度性能への影響などについて、実験を行い、データを蓄積・整理を行った。また、接着剤依存型の接合法の性能評価方法及び設計用特性値の取り方について検討し、いくつかの新しい提案を行った。
著者
成瀬 治興 内田 季延 松本 泰尚 深田 宰史 塩田 正純 北村 泰壽 国松 直 伊藤 和也
出版者
愛知工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、平坦道路を対象とするエネルギーベースに準拠した道路交通振動予測式(INCE/J RTV-MODEL2003)の適用道路構造種別の拡大を目的として、3mプロフィル計に代わる路面平坦性の計測方法として、車載型IRI評価システムの適用を検証し、利用可能であることを確認した。次いで、試験車輛を用いた盛土・切土道路での実測調査により、平坦道路予測式を他の道路構造に適用するための基礎データを蓄積した。