著者
當山 日出夫
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.1, pp.1-4, 2009-05-16
被引用文献数
1

人文学では 「文字」 はきわめて重要である。フォント埋め込み PDF の利用は、確かに便利ではある。しかし、フォント (グリフ) とともに文字があつかえるようになることは、新たな問題点を生み出す。現在、デジタル文字を確実に共有できるであろうか。また、将来にわたって、同じ文字を利用できるであろうか。この問題について、『内村鑑三全集』 デジタル版を事例に、考えることにする。Planning of the digital publishing of " UCHIMURA KANZO ZENSHU " is progressing. This is using font embedding PDF. However, the user in the after times can not see the same character. Font embedding PDF invents a new problem about the character. We must proceed with the research about the essence of the character.
著者
八村広三郎
雑誌
情報基礎とアクセス技術(IFAT)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.4, pp.1-1, 2010-10-28

人文科学へのコンピュータの導入は必ずしも新しい話題ではなく,コンピュータの発明とほぼ同時期から応用が始まっているといわれている.しかしながら,相変わらず人文科学はコンピュータとは遠い存在であるとの認識が,少なくとも日本では一般的である.ところが,21世紀に入って,欧米を中心としてデジタル・ヒューマニティーズと呼ばれる学問領域が突然出現している.日本ではこのコンセプトはまだあまり知られていないが,これは,ネット時代の現代社会における人文系研究活動の在り方として,大きな示唆を与えるものである. 本講演では,このデジタル・ヒューマニティーズの考え方と現状を紹介する.
著者
門傳 仁志
出版者
慶應義塾大学
雑誌
哲學 (ISSN:05632099)
巻号頁・発行日
vol.107, pp.277-292, 2002-01

特集文化人類学の現代的課題研究ノート1. はじめに2. 沿革 (1) 昭和20年代から現在まで (2) 「興行文化」の隆盛 (3) 現在の動向3. 興行社会4. 考察5. むすび
著者
泉 吉紀
出版者
富山大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2010

本年度は,多数の遺跡探査(古墳や城郭を対象とした)に取り組み,文化財科学における電磁気調査の発展に力を入れた.まず,富山県砺波市に位置する安川城跡において,城郭の遺構や縄張りの様相を非破壊で探ることを目的に地中レーダ探査を実施した.その結果,主郭の旧地形は高台であり,それらを削平して,現在の平坦面を造成したと考えられる.また,石と見られる反射が得られており,礎石を捉えた可能性がある.三ノ曲輪では,曲輪の形状沿って,土塁状の高まりがあることがわかった.土塁の周囲は,空隙の多い土壌で構成されている可能性が高いことから,盛土を施して平坦面を造成したと考えられる.堀切では,現地形での横断方向,縦断方向それぞれの探査結果に堀と見られる反応が得られ,現地表面から約0.8mに築城時の堀の底があると考えられる.また,古池を対象とした探査では,水による多重反射が得られ,古池を捉えた可能性が高い.今後,分解能の高い500MHzアンテナを用いたレーダ探査や遺物の検知を目的とした磁気探査等の併用による詳細な探査が望まれる.また,雪氷学分野の研究では,融雪型火山泥流の発生機構について実験を行った.積雪地域にある火山が積雪期に噴火した場合,高温の火山噴出物によって融雪型火山泥流が発生する可能性がある.火山噴出物による融雪やその融雪水の積雪への浸透・流下過程は融雪型火山泥流のハザードマップ等を想定する上でも必要であるが,詳細には把握されていない.今回,地中レーダ探査を用いて,その基礎データを取得するため,熱源を積雪表面に置き,融雪過程を把握する実験を行った.実験結果では積雪内部での,融雪水の浸透域が,高精度で検出できた.今後,土壌への水分の移動について研究を進める予定である,
著者
広川 暁生 (2007) 廣川 暁生 (2005-2006)
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2005

本年は、16世紀における風景と地図の密接な相関関係の一端を詳らかにすることを目的に研究を進めた。とりわけピーテル・ブリューゲル(父)の下絵(1558年)による銅版画《アントワープのシント・ヨーリス門前の氷滑り》は冬の情景とアントワープの都市像を結び付けた最も初期の図像と考えられる。8月と2月に行ったベルギー王立図書館、アントワープ市立図書館、ベルリン国立素描館における調査では、要塞の完成した1557年以降、以前の都市図を特徴付けていた河向こうの都市景観ではなく、新しく完成した都市の要塞の側からの都市景観図が著しく増加したことが明らかになった。ブリューゲルの図像はこれらの都市景観図と同様の地誌的な関心をわけあうことから、本版画を地誌的風景画の展開の中に位置づけることが可能となった。また本版画は16世紀後半、アントワープの画家たちに数多く描かれた「雪のアントワープの景観」のプロト・タイプとなる作品である。油彩による「雪のアントワープの景観」の登場は1575年以降というアントワープが事実上衰退していく時期と重なっている。これらの作品を図像的、背景となる歴史的事実から分析した結果、かつて繁栄していた都市の姿を懐かしむ同時代人のノスタルジックな感情の高まり、そしてブリューゲルが1565年以降、油彩において手がけた「雪景色」の流行を背景に生まれてきたことが推察された。さらにこれらの作例は、必ずしも景観の忠実な再現とはいえないが、「地誌的」な概念やその「地域」の時間的、空間的特性という「近代的」風景画の成立に不可欠な構成要素を含んでいるという点において、「ジャンル」としての風景画の成立過程におけるひとつの大きな転換点を示すことが明らかになった。以上の考察結果は、3月に開催された美術史学会東支部例会において口頭発表し、現在その内容を学会誌への論文(6月宋投稿締め切り)として執筆し、投稿を準備中である。
著者
平塚 眞樹
出版者
一般社団法人日本教育学会
雑誌
教育學研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.391-402, 2006-12-29

OECDは、「対日経済審査報告書2006年版」で日本における格差と貧困の広がりを問題化したが、本稿はそこで要請された「質の高い教育への十分なアクセス」の保障とはなにを意味するのかを問うた。その際本稿では、移行期のシステムが分解する過程で台頭しつつあるポスト近代型能力観、その一つであるOECDによるキー・コンピテンシーと、社会関係資本との関連に着目した。複雑な行為のシステムとしてのコンピテンスの学習過程では、これまで以上に社会関係資本との関連性が強まり、その多寡が学習上の有利・不利に結びつくと考えられる。ところが少なくとも英国の調査研究によれば、近年の社会変容は一方でむしろ社会関係資本をめぐる格差を拡大しつつあるという。このジレンマに取り組むことが今日的課題と考えられる。マクロな政策レベル、教育現場・地域レベルでの政策的・実践的アプローチを通して、多様な社会関係資本の平等な形成を社会的に保障することが必要になるだろう。
著者
領家 由希 森田 直子 中島 正洋
出版者
長崎大学
雑誌
長崎醫學會雜誌 : Nagasaki Igakkai zasshi (ISSN:03693228)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.250-252, 2006-09

1945年8月9日,長崎にプルトニウム型原子爆弾が投下され多くの犠牲者が出た。原爆の放射線が人体に及ぼす影響を示すものとしてDS86やDS02という線量推定方式があるが,放射能に汚染された食料を摂取することなどで生じる人体放射能の影響については現在でも厳密な評価が難しいとされている。目的は長崎原爆被爆者の米国返還試料であるホルマリン固定臓器とパラフィンブロックを用いて,原爆放射線が人体に及ぼす内部被ばくの影響を病理学的に検討することであり,今回はその一環として,急性被爆症例における内部放射能の検出法について検討した。米国返還資料は被爆直後,アメリカと日本の科学者によって被爆者の病理標本や記録などが収集されたが,米軍によってアメリカに送られ日本にはほとんどのこらなかった。しかし,1973年,約2000点の資料が返還され,現在,長崎大学原研2号館に保存されている。その中に,旧大村海軍病院の剖検例5例のホルマリン固定臓器とプロトコールを見つけることができた。
著者
森田 健夫 山口 満 田所 嘉昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.87, no.12, pp.2271-2279, 2004-12-01
被引用文献数
19

自動採譜の実現において,音楽信号の音高を推定する処理は最も重要であり,リアルタイムでの処 理が望まれている.本論文では,多重唱を対象とした計算量の少ない音高推定法を提案する.提案法は,1オクターブ12音名に対応するくし形フィルタを並列接続したシステムと,その出力値を利用することで音高を推定する.これは,くし形フィルタが対応する音の全周波成分を除去可能であること,更に,上述のシステムの最小出力を検出することで,入力中の1音を推定できることに基づいており,加減算主体の処理で簡単に実現される.実際の多重音を用いた評価実験を行った結果,従来法(トリー法,SVD法)より,約1/5から1/30の処理時間でほぼ同等の音高推定結果が得られた.
著者
冲志樓主人著
出版者
思明樓
巻号頁・発行日
1872
著者
Chayanin Angthong Wirana Angthong Thos Harnroongroj Thossart Harnroongroj
出版者
Tohoku University Medical Press
雑誌
The Tohoku Journal of Experimental Medicine (ISSN:00408727)
巻号頁・発行日
vol.226, no.2, pp.129-135, 2012 (Released:2012-01-26)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

Little is known about the effect of a subsequent osteoporotic vertebral compression fracture on the survival rate of patients with a previous hip fracture. In this study, we aimed to compare the survival rates of hip fracture patients with and without subsequent osteoporotic vertebral compression fractures and determine the risk factors associated with subsequent fracture. During 2000-2008, 933 initial hip fracture patients were reviewed and divided into two groups: subsequent fracture group (160 patients) and single hip fracture group (i.e., no subsequent fracture; 773 patients). All information pertaining to their most recent fracture event(s), including mortality causes/rates, were recorded. Differences in mortality rates and hazard ratios (HRs) between the two groups were also analyzed. The 1-year and 1-to-5-year mortality rates were 1.3% and 1.9%, respectively, in the subsequent fracture group, and 4.7% and 1.4%, respectively, in the single hip fracture group, with no significant differences observed. Interestingly, the HR for mortality was significantly higher in the single hip fracture group than in the subsequent fracture group (p < 0.05). The significant risk factors for subsequent fractures were identified as knee osteoarthritis, neurological disease, and an initial hip fracture with intertrochanteric involvement. Our findings indicate that the occurrence of a vertebral compression fracture after an initial hip fracture does not greatly impact patient survival. Conversely, patients presenting with a single hip fracture have a significantly higher mortality-HR, indicating that single hip fracture patients without subsequent fracture should be provided with the same standard of care as patients with subsequent fractures.
著者
中山 亮介 納富 一宏 斎藤 恵一
出版者
バイオメディカル・ファジィ・システム学会
雑誌
バイオメディカル・ファジィ・システム学会誌 (ISSN:13451537)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.29-34, 2011-06-30

近年,インターネット利用者やサービス数の増加により,さまざまなサービスにおいて個人認証が用いられるようになった.IDとパスワードによって認証を行う方式が主流であるが,パスワードを他人に知られた場合に安全性を失ってしまう.個人情報をはじめとしたセキュリティ確保のため,より安全性の高い認証方法が求められている.そこで,本稿では,行動的特徴量を用いたバイオメトリクス認証のひとつであるジェスチャー認証手法を提案する.本手法は,加速度センサにより計測されたジェスチャーにおける個人の癖を自己組織化マップにより学習することで認証を行う方式である.また,実験では,複数マップによる多人数対応と認証精度の変化について検証を行った.その結果,90%以上の認証精度が得られたが,1マップあたりの登録ユーザ数が適切でない場合,精度の低下がみられた.しかし,マップサイズや人数を調整することで精度の改善が期待できる.今後は,さまざまなマップサイズや登録人数,経年変化についてさらに検証していく予定である.
著者
大矢 俊明
出版者
筑波大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本奨励研究では,ドイツ語における能格構文(1a,b),中間構文(2),結果構文(3),非人称構文(4)の考察を通じ,ドイツ語では外界をどのように切りとって統語構造にとりいれているのか,具体的には外項ないし内項の選択の根底に潜む認知意味論的原理を明らかにしようと試みた.(1)a.Die Tur offnet sich.ドアが開く b.Das Eis schmilzt.氷がとける(2)Zur Front marschiert es sich noch schwieriger.前線に進軍する方がより困難である(3)Es schneit das Auto zu.雪が降って車が埋まる(4)Das Auto schneit zu.雪が雪に埋まるまず,自発的事態をあらわす(1)であるが,a.では再帰代名詞が用いられているのに,b.では自動詞が用いられている.この相違は事態が外部からのエネルギー(=動作主)がなくても生起可能であるかという点から捉えることができる.すなわち,氷は自然にとけていくことは容易に想定できるが,ドアは放っておいても開くとは考えにくい.すると,ドイツ語では「開ける」という他動詞が基本にあり,「開く」という自発的事態の表現に生起する再帰代名詞は,その主語である動作主の代わりとして具現していると想定できる.また,(2)で用いられている移動様態動詞には方向規定詞が付加されており,このような動詞は(1)と同様に非対格性を有すると指摘されることがある.しかし,一般に非対格動詞からは中間構文を形成することはできず,ドイツ語では移動様態動詞は非能格動詞であると考えられる.この根底には,事態を統御することができる実体は常に外項として,また事態に否応なく巻き込まれてしまう実体は内項として投射されるという規則があると仮定できる.そのため,(3)のような非人称動詞の主語は真の外項としての条件を満たさず,(4)のように非対格動詞に期待される結果構文の形成が可能になると考えられる.