著者
岩見 麻子 後藤 侑哉 増原 直樹 松井 孝典 川久保 俊
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.37(2023年度 環境情報科学研究発表大会)
巻号頁・発行日
pp.175-180, 2023-12-08 (Released:2023-12-08)
参考文献数
8

本研究ではSDGs に関する話題の動向を把握する方法として,新聞記事に対するテキストマイニングの有用性を検討することを目的とした。具体的には朝日新聞を対象に「SDGs」が含まれる記事を収集し,対象記事の件数や分量の時系列推移を把握するとともに,出現語の関係性の可視化を試みた。その結果,SDGs が採択された当初の2015・2016 年はSDGs の紹介や全球規模の問題について扱われていたのに対して,2017 年以降はそれらの話題を残しつつ徐々にSDGs の達成に向けて活用が期待される技術や国内の地域レベルの問題,自治体・企業・学校での具体的な事例・取り組みへと話題が変化していったことを明らかにすることができ,SDGs に関する話題の動向を把握する方法として,新聞記事に対するテキストマイニングの有用性を示すことができた。
著者
高橋 真生 北野 優里 須田 昭夫
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.115-117, 2002-02-28 (Released:2010-03-16)
参考文献数
6

症例は25歳の男性. アルポート症候群による慢性腎不全にて透析歴12年の患者であり, 慢性膵炎を合併している. 1998年ごろよりパニック障害を発症し, 2000年12月より塩酸パロキセチン水和物による治療を開始した. 服用開始21日目の血液検査で膵酵素の急上昇を認めたが自覚症状はなく, 他覚的所見でも異常を認めなかった. 腹部エコーや腹部CTでも軽度の膵腫大を示すのみであった. 2001年5月, 塩酸パロキセチン水和物の中止にて膵酵素は速やかに低下したがパニック障害に対して塩酸トラゾドンを開始したところ, 再び膵酵素の上昇を認め, 塩酸トラゾドンの中止にて膵酵素は低下した. SSRI (selective serotonin reuptake inhibitors) と系統の異なるスルピリドに変更したところ膵酵素の上昇はなかった.SSRIによる慢性膵炎の急性増悪と考えられ, 報告する.
著者
泉 完 杉本 亜里紗 丸居 篤 東 信行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_433-I_438, 2018 (Released:2019-12-05)
参考文献数
18

天然稚アユの河川遡上初期に合わせて当稚魚の臨界遊泳速度を青森県岩木川河口から約11kmにある芦野頭首工地点の現地で計測した.魚道地点の河川敷に小型の長方形断面水路(幅15cm・高さ15cm・長さ100cm)を設置し,水路には断面平均流速9~75cm/sの範囲で河川水を流し,体長5.9~9.9の稚魚を遊泳させた.計測中の水温は10.6~18.5℃で,推定された60分間臨界遊泳速度は,19~49cm/sであり,体長との間に正の相関が認められた.また,体長(BL)の倍数の速度で表すと,3.1~6.5BL/s,(平均4.8BL/s,標準偏差1.0)の速さとなった.計測時の水温の違いによる60分間臨界遊泳速度への影響は少ないと推察された.
著者
前田 智美 京田 亜由美 飯嶋 友美 神田 清子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.273-281, 2023 (Released:2023-12-27)
参考文献数
24

現在のがん看護において,病期の進行に伴い化学療法継続かどうかの意思決定支援が課題である.本研究は外来化学療法室看護師が治療継続を再考する時期と判断する際の視点と行動を明らかにすることを目的に,看護師14名にフォーカスグループインタビューを実施し,内容分析の手法を参考に分析した.判断の視点は[患者の望む生き方が尊重されているか][患者が望む日常生活を送れ,QOLが維持できるか]などの4カテゴリーが形成された.行動は[傾聴を重ね,患者の望む生き方が叶うよう,今後の治療への向き合い方を共に考え検討する][適切な時期に治療中断への介入が行えるように,看護師間で協力する]などの3カテゴリーが形成された.外来化学療法室看護師は,臨床倫理の視点で日々の看護を行い,患者の望む生き方が尊重されているかを判断していた.また,タイミングを逃さず介入するために医療スタッフ間の連携を大切にしていることが示唆された.
著者
土居 海里 竹内 聖悟
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2023論文集
巻号頁・発行日
vol.2023, pp.42-47, 2023-11-10

近年 AI 技術の発展に伴い対戦ゲーム AI の分野においても強さ以外の価値を与えるため、動的な強さの調整などの研究が様々なゲームで行われていた。著者らは以前に対戦テトリスの動的難易度調整を行ったが、その後行った人間との対戦では、AI の操作精度や操作速度の高さ等の影響により不自然かつうまく調整できないという問題があった。本研究では対戦テトリスにおける対戦 AI の人間らしさの影響について、生物学的制約などの人間らしさを導入した AI と従来の動的難易度調整を行う AI の 2 種類の AI と人間プレイヤーとの対戦実験により評価を行った。人間らしさや楽しさの評価については 5 段階評価のアンケートと自由記述の回答などを基に考察を行った。また人間らしさが AI の動作に本当に表れているか確認するために 2 種の AI の動作を人間プレイヤーに確認してもらい評価を行った。本稿では対戦テトリスにおける人間らしさの影響について対戦者自身には影響が少なく、類似ゲームにおける動的難易度調整において自然さを考慮しない AI でも十分な楽しさを与えられる可能性を示した。
著者
石黒 暢
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.137-148, 2014-03-31 (Released:2018-02-01)

市民にアウトリーチする施策の1つであるデンマークの予防的家庭訪問制度を情報という視点から捉え,特質を明らかにするのが本稿の目的である。本制度の全国的な実施状況や事例検討から明らかになったのは,第一に,本制度が公的責任による広範囲なアウトリーチという点である。基礎自治体に実施義務が課せられた制度で原則的にデンマークの75歳以上の国民すべてに提供され,高齢者の自立生活継続を支援している。第二に,本制度では個人情報の保護をしながらも一定ルールのもとで共通処遇の促進機能を発揮して惰報共有し,かつ利用者個人との情報共有を実施している点である。第三に,多くの自治体が予防的家庭訪問にかかわる情報を体系的に収集し活用している点である。第四に,ICTを活用できない高齢者や社会的ネットワークが脆弱な高齢者に対して自治体がアウトリーチして必要な情報を提供し,情報アクセシビリティを保障している点である。
著者
後藤 匡敬
出版者
熊本大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究は、知的障害教育と日本語教育における言語能力育成を志向したデジタル教材開発とWeb公開を通じ、知的障害教育と日本語教育の教材の共通項を明らかにすることを目的としている。まずは、知的障害教育向け及び日本語教育向けに開発された、言語能力育成を志向した既存教材を調査し、その共通項を探る。並行して、既に「Teach U~特別支援教育のためのプレゼン教材サイト~」(以下、Teach U)で開発・公開中の教材について、知的障害教育と日本語教育の指導者にアンケート調査を実施し、双方の専門分野の教材が自らの専門分野において活用できるか、実現可能性を探究し、得られた知見を基に開発した教材をWeb公開する。
著者
鈴木 信孝 杉本 勇人 橋本 慎太郎 許 鳳浩 上馬塲 和夫
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.57-60, 2019-03-31 (Released:2019-04-10)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

ハトムギの外殻・薄皮・渋皮を含む全粒熱水抽出エキス(Coix-seed Reactive Derivatives;CRD)摂取が有用であった両膝から下腿前面の摩擦性黒皮症の1例を経験したので報告した.患者は,58歳男性.柔道整復師という職業柄,両膝をつき衣服で皮膚が擦れることが多く,20年来,両膝蓋部から下腿前面にかけて広範囲に強い色素沈着を認めていたが,CRD含有食品(CRD 4.2g/日)を6ヶ月間摂取したところ,病変は著しく改善した.本例は,通常の業務を行っていたにも関わらず,CRD摂取により摩擦性黒皮症が軽快した例であった.今後は,同様な例についてさらに検討を加えたいと考えている.
著者
樅山 翔哉 荻野 俊寛
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.60-69, 2023 (Released:2023-11-14)
参考文献数
22

受信波形上でS波到達点の決定がしばしば困難となるベンダーエレメント試験において,機械学習による決定支援を行うためのS波到達点予測モデルの高精度化を目的として,サポートベクター回帰,ガウス過程回帰,ニューラルネットワークの3つのアルゴリズムによる機械学習モデルを作成し,予測精度の比較を行った.あらかじめ設定したパラメータの範囲で7240通りの受信波形を計算し,その波形における11次元の特徴量,真のS波到達点を学習させ,S波到達点予測モデルを作成した.学習済みのモデルを用いて実際の実験から得られる受信波形に対してS波到達点の予測を行い,熟練者が判定した値との誤差を比較することで,3つの機械学習アルゴリズムの比較を行った.アルゴリズムごと予測に傾向があり,その中でガウス過程回帰の予測が最も熟練者の判定した値に近いことを示した.
著者
早野 香代
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.172, pp.149-162, 2019 (Released:2021-04-26)
参考文献数
17

現代の多様な社会を生き抜くために,大学における「コミュニケーション力」の養成は重要視されてきている。中でも,大学の留学生や日本人学生からは,敬語の学習のニーズが非常に高い。本稿では,敬語が使われるコミュニケーションを「敬語コミュニケーション」とし,その内容による学生主体のジグソー学習法の実践を報告する。ジグソー学習法は,近年,学習の深化や責任感による意欲向上などの効果が報告されているが,本実践では,人間関係や場を重視した「敬語コミュニケーション」を時代による変化と地域・言語によるバリエーションから学び合うことで,コミュニケーション力を駆使する姿や言語間の比較による異文化の発見や理解の深まりが,受講者によるコメントから多数観察された。これらの結果から,出身・言語による違いを生かしたジグソー学習法は,知識の構成のみならず,異文化理解にも役立つことが示され,扱う内容に関連した学習効果が得られた。
著者
竹田 京子 佐藤 靖彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.12, pp.23-00078, 2023 (Released:2023-12-20)
参考文献数
42

本研究では,繰返し移動輪荷重を受ける道路橋鉄筋コンクリート床版の破壊機構に基づいた疲労寿命予測法の構築を目的として,まず,破壊形式を整理して3つに分類し,破壊形式に応じた疲労寿命評価を行う必要性を示した.その後,実験的手法によりRC床版のはり状化部材の疲労破壊機構に基づく残存せん断耐力低下モデルの構築を行った.さらに,配力筋比,圧縮強度,支持条件の差異を考慮したせん断耐力式とS-N曲線式からなる疲労寿命予測法を提案し,輪荷重走行試験における一定荷重および階段状漸増荷重の評価,RCおよびPC床版の疲労寿命評価を可能とした.過去の輪荷重走行試験の実験データとの比較により,提案する疲労寿命予測法の適用性を確認した.
著者
後山 尚久 新谷 雅史 本庄 英雄 HRTの今後のあり方検討委員会
出版者
近畿産科婦人科学会
雑誌
産婦人科の進歩 (ISSN:03708446)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.373-387, 2003 (Released:2003-12-24)
参考文献数
53
被引用文献数
1

米国国立衛生研究所により一般閉経女性を対象としたホルモン補充療法の大規模前向き臨床試験であるWomen's Health Initiative (WHI) Hormone Programの一部のプロトコールが,乳癌の発生率があらかじめ設定していたリスクを超えたとの理由で,2002年7月の中間集計後にそれ以上の試験継続を中止すると発表された.この報道はわが国でも報道されたために今後のホルモン補充療法の実施に関しては,実際に診療を担当する医師と受療者となる中高年女性の本療法への認識や考え方を調査し,今後の更年期医療の方向性を考えるための情報を得る必要があると思われた. そこで,近畿産科婦人科学会内分泌・生殖研究部会が中心となり,近畿全体での産婦人科医師へのアンケート調査を行うことで,本報道が及ぼした実際の医療現場への影響とホルモン補充療法の捉え方,意識などを検討した.対象は近畿圏で医療を行っている産婦人科医師で,1800名に対しアンケート調査を行った.420名から回答があり,回収率は23.3% (420/1800)であった. 1.アンケート回収率の低さ(23.3%)は産婦人科医師のHRTに対する関心の低さを反映していると思われるが,アンケート回答者の多く(76.6%)は報道内容をよく知っていることがわかった. 2.本報道内容は日本の更年期医療にそのまま適応できないと考えている医師が69.7%であり,その理由として「わが国の乳癌,心臓病の発症リスクが米国と異なる」という意見が3割強に認められた.一方,日本の更年期医療現場にも適応できると30.3%の医師が考えており,すでに32.7%がみずからの診療姿勢や対応を具体的に変える行動をとっていた. 3.WHI報道への医師の最初の印象として,「危険なので患者に勧める治療法ではない」と考えたのは21.4%にすぎず,「自分としてはすぐにやめる」という考えを示したのは5.0%(将来的に徐々にやめる:11.0%)の医師にとどまった. 4.このままHRTを続ける医師が40.2%であったが,このうち血管運動神経障害様症状や性交障害などの限られた症状や疾患のみに適応するとの答えが54.3%に認められた. 5.今後のHRT実施に際しては,そのbenefitの説明とともに,過半数の医師が「乳癌,子宮内膜癌,血栓症などの危険性に関する情報(乳癌:76.0%)を伝えてinformed consentをすべきと考えていることが判明した. 以上より,日本の産婦人科医師はHRTへの関心が必ずしも高くないが,HRTを実施している医師は冷静にWHI報道を受け止め,一部迅速な対応がみられる.6割の医師がこれからのHRT実施についてなんらかの工夫を模索しており,HRTのrisk and benefitをよく理解し,患者へのriskを含めた十分な説明が必要であることを自覚しており,このことから本報道はわが国のHRTの状況あるいは更年期医療そのものに大きな影響を及ぼすものではないと考えられた. 今後,わが国でのHRTの有用性と危険性に関する臨床研究が必要であり,エストロゲン欠乏性疾患の発症予防をend-pointとしたevidenceを集積しての新たなガイドラインの作成が望まれる.〔産婦の進歩55(4):373-387,2003(平成15年11月)〕
著者
牛見 悠奈 宮武 優太 筒井 直昭 坂本 竜哉 中田 和義
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.79-86, 2015-12-28 (Released:2016-02-01)
参考文献数
18
被引用文献数
8 5

北米産外来種のアメリカザリガニは,在来生物の捕食などを通じて,在来生態系に深刻な影響を及ぼしている。 また,本種が掘る巣穴が水田漏水の原因になるなど水田管理上の問題も引き起こしている。このため,本種は緊急対策外来種と日本の侵略的外来種ワースト 100 に指定され,効率的な駆除手法の開発が求められている。 そこで本研究では,水田水域や河川・湖沼等に定着したアメリカザリガニの駆除に用いる人工巣穴の適したサイズを明らかにすることを目的として,本種による人工巣穴サイズ選好性実験を実施した。灰色の直管型の塩ビ管を人工巣穴とし,内径と長さの異なる人工巣穴をアメリカザリガニに室内水槽内で選択させた。その結果,人工巣穴の内径については,全長(X, mm)と好んで選択された内径(Y, mm)の間に Y=0.58X+4.26 という有意な回帰式が得られた。人工巣穴の長さについては,全長の 4 倍の長さの巣穴が好んで選択された。以上の結果をもとに,アメリカザリガニの駆除に用いる体サイズ別の人工巣穴サイズを提案した。
著者
森 祐治
出版者
日本アニメーション学会
雑誌
アニメーション研究 (ISSN:1347300X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.3-13, 2023-01-31 (Released:2023-02-11)
参考文献数
32

日本のアニメ産業の中核であるテレビアニメは、派生商品(デリバティブ)や異メディア間での作品流通(バージョニング)を組み合わせたメディアミックス手法によるビジネス展開を行うことが多い。これまでメディアミックスの起源として、作品性や表現的優位からの説明が行われることが多かった。現実には、テレビアニメはその成り立ちよりテレビ局からの制作費用負担は原価の一部のみで、テレビ放映では経済的に完結せず、メディアミックスからの収益が不可欠なビジネスという経済モデルから説明がなされることはなかった。そこで、本論ではテレビアニメ初期、アニメブーム勃興時、そして製作委員会の成立後の3つの時代の事例から、一貫してテレビアニメであってもテレビ・ビジネスのみに依拠するのではなく、メディアミックスによる事業展開が経済的に前提となっていることを示す。
著者
坂本 昭彦 金子 智之 金谷 淳志 木村 将貴 高橋 さゆり 山田 幸央 三宅 康史 坂本 哲也 中川 徹
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.112, no.2, pp.65-69, 2021-04-20 (Released:2022-04-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1

(目的) 帝京大学附属病院において,過去10年間にフルニエ壊疽と診断・加療された15例の患者背景,臨床的指標および予後に影響を与える因子を明らかにすること. (対象と方法) 2009年5月から2019年4月までの10年間に,帝京大学医学部附属病院においてフルニエ壊疽と診断・加療された15症例を対象とした.患者背景およびFournier Gangrene Severity Indexを含めた臨床的指標を記述した.生存例と死亡例における臨床的指標の比較を行い,予後に影響を与える因子について検討した. (結果) 15例の年齢中央値は67才,全例が男性であった.糖尿病合併例は9例(60%)であった.14例(93%)に対して外科的デブリドマンが施行された.精巣摘出術を要したのは5例(33%),膀胱瘻造設術を要したのは3例(20%),人工肛門造設術を要したのは3例(20%)であった.死亡例は3例(20%)であった.生存例と比較して,死亡例は有意に高齢であり(p=0.043),BMI低値であった(p=0.038).Fournier Gangrene Severity Index等の予後予測指標は死亡例で高い傾向を認めた. (結論) 当院における過去10年間のフルニエ壊疽15例の死亡率は20%であった.2010年代においても,フルニエ壊疽は死亡率の高い疾患であった.