著者
植木 昭紀 磯 博行 佐藤 典子
出版者
兵庫医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

アルツハイマー型認知症における神経病理学的変化がプレパルスインヒビションを制御する神経回路に影響すると考えられ、プレパルスインヒビションの測定がアルツハイマー型認知症の前駆段階と考えられる健忘型軽度認知障害、軽度アルツハイマー型認知症、正常加齢を判別するための簡便な非侵襲的検査として応用できる可能性がある。
著者
友野 春久
出版者
鹿児島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2011

一般に弗素化合物の原材料を200~500℃以上に加熱すると,弗化水素ガスが大量に発生する。このガスは金と白金以外の全ての金属を溶かす強い腐食性と,毒性が極めて高いため,溶融精錬を非常に困難にさせている。その結果,現状の弗素化合物では多くの不純物が単結晶中に混入し透明性が大きく損なわれている。そこで本研究では弗素化合物磁性体専用の溶融炉を作製し,溶融精錬手法を確立することで,優れた透明弗素化合物磁性体を作製する事を目的とした。発生するフッ化水素ガスによる発熱体への腐食などの問題により,弗素化合物磁性体専用の溶融炉は市販されていない。そこで常用1300℃の内熱型発熱体,最大電流30A用サイリスタレギュレータ電源,温度コントローラ,温度計としてR型シース熱電対をそれぞれ用意して組み立てた。一方,炉心体はある程度弗化水素ガスに対して耐性を持つ高純度緻密質アルミナパイプを使用した。さらに高真空下(<10^<-3>Pa)における弗素化合物磁性体の溶融が行えるように,フランジには非磁性・耐熱性・耐腐食性・溶接性にすぐれたSUS316を使用し,バイトン製O-リングでシールして,フランジ本体を小型ファンで空冷した。本研究では手はじめに,透明強磁性体として有名なK_2CuF_4の作製を行った。本化合物は僅かな水分や酸素が溶融体と反応すると,単結晶試料が酸化銅の影響によって赤褐色に変色し,透明度が落ちる事がよく知られている。そこで本研究では,溶融体の前駆物質に注目して,化学的・物理的処理を施すことによって,ほぼ完全に透明と呼べるような超高純度な弗化物磁性体の作製に成功した。今後,本装置を利用した様々なフッ素化合物磁石の作製が期待される。
著者
岩瀬 真生 石井 良平 高橋 秀俊 武田 雅俊 橋本 亮太 橋本 亮太
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

統合失調症を初めとする精神疾患に対して経頭蓋磁気刺激治療を行い、近赤外分光法を用いて治療中の血流同時測定を行ったところ、治療中に血流変化がみられることが観察されたが、何人かの被験者では磁気刺激による刺激のアーチファクトが測定に混入することが判明した。近赤外分光法により課題施行中の血流変化により、健常者と疾患群の判別解析が可能なことが明らかになり、磁気刺激治療への反応性予測に応用できる可能性がある。
著者
二宮 啓子 丸山 浩枝 宮内 環 岡崎 裕子
出版者
神戸市看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

生活習慣に関連した健康障害をもつ学童と親に自己管理技術を高める1年間の看護介入プログラムを実施し、学童の生活習慣に関する認識・行動・肥満度の改善への効果について検討することを目的に研究を行った。小学1〜6年生37名(男子17名、女子20名)と母親を対象に、子どもにはプログラム前後に自己効力感とソーシャルサポートの質問紙調査、健康状態の認識、日常生活行動に関する面接調査を行った。一方、親にはプログラム前後に健康の定義、健康状態の認識、日常生活行動に関する面接、または質問紙調査を行った。介入方法としては、面接調査時に自作のパンフレットを用いて生活改善の方法を指導した。その後、月1回放課後に2時間の生活改善プログラムを10回実施した。その結果、肥満度は介入1カ月後に有意に減少していた(t=4.09,p<0.001)が、その後上昇し、プログラム終了時には有意差は見られなかった。プログラム前後では、やせ1→0名、標準20→24名、軽度肥満9→5名、中等度肥満5→7名、高度月満2→1名に変化していた。自己効力感は、プログラム後に有意な増加は見られなかった。ソーシャルサポートは、親の得点がプログラム後に有意に増加する傾向が見られた(Z=-1.64,P=0.10)。プログラムの子どもへの効果として、「運動するようになった」「食事・おやつの量が減った」「栄養のバランスがよくなった」等の運動、食事行動の変化、「走ってもしんどくなくなった」「体重が減った」等の身体の変化、「低カロリーのおやつを選択」「体重測定をする」「自分の食べる量が分かる」「運動と食事のカロリー消費との関係を考える」等の健康の自己管理の認識の変化、「前向きになった」「決めた目標に向かって張れた」等の自己効力感の変化に加え、「親子の会話が増えた」が抽出された。本プログラムは肥満度の改善に対する短期・長期効果があると言えよう。
著者
梶原 武久
出版者
小樽商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

電子機器メーカーのA社を対象とするフィールドスタディを実施した。とりわけ、同社において過去に蓄積されてきた品質コストデータの分析に取り組んだ。現状は暫定的な分析段階であるが、分析結果は概ね以下の通りである。品質の作り込みと継続的学習が重視される日本的品質管理のもとでは、予防コストと評価コストを維持するか、もしくは削減しながら、失敗コストの削減が可能であると考えられてきた。しかし分析結果によれば、品質コストデータの蓄積が開始された1992年から1996年までは、上記の関係がみられるが、それ以降においては、予防コストや評価コストに減少がみられる一方で、失敗コストが横ばい、もしくは上昇傾向にあることが明らかになった。この分析結果は、従来の定説とは大きく異なるものであることから、今後、なぜこうした分析結果が得られたのかについて検討を進めていく必要があると考えられる。また過去の失敗コストが、将来の出荷額に及ぼす影響についても検証を行った。暫定的な分析結果によれば、5期前の内部失敗コストが、現在の出荷額にマイナスの影響を及ぼすことが示された。一方、外部失敗コストが出荷額に及ぼす影響については検出することは出来なかった。これらの分析結果が得られた理由としては、内部失敗コストが増加することによって、手直しや補修が発生するために、通常の生産活動が制約されると考えられる。また外部失敗コストが出荷額に及ぼす影響を検出することが出来なかったのは、同社の主要製品が、産業材であること、また外部クレームについては、手直しや補修が行われないことが主要な原因であると考えられるが、今後さらに検討が必要である。
著者
村木 美貴
出版者
東京工業大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

バブル経済期に地価の高騰から都心の居住空間は駆逐され、それへの対処方法として住宅付置義務要綱、都心居住推進のための総合設計制度、中高層階住居専用地区などが導入された。これらの方法により都心に住宅確保することは可能となったものの、望ましい住環境の確保、都心居住のあり方は明らかではない。そこで本研究は、都心居住推進のためのミクストユースのあり方、とりわけ義務・商業と住機能の共存方法を明らかにすることを目的として東京とロンドン都心区の都市マスタープランの取り組みと、ミクストユースの実態について明らかにした。イギリスでは、都市計画の基本文書であるデベロップメントプランに住宅供給の必要性と実現方法が明確に位置づけられていた。方法としても、他用途との共存方法が同一ビル内では別アクセス路の確保による、居住アメニティの確保という形で表れ、また、共存しうる業種の指定という方法が採られていた。とりわけ同一建物内での共存方法は、立地場所、階数、業種を明確に提示することで、他用途と住宅との共存を可能とさせていた。現在、サステイナビリティの必要性から、都心部での住宅供給は高く必要性が問われているものの、オフィスビル建設については、住環境の確保という観点からも、飛び地による住宅供給も行われていることが明らかとなった。昨年度の研究との比較を通して、我が国における望ましい複合用途の確保、住宅と他用途との共存のためには、ただ特別用途地区の指定や容積ボーナスによる住宅供給に留まらず、都市計画マスタープランにその必要性を位置づけた上で、居住アメニティを実現させるための詳細なガイドラインの策定とその運用の必要性がある。望ましい住環境を都心部でも確保するためには、用途地域制だけではなく、業種内容をより詳細に分類し、住宅と共存しうる業種、業態を明確化していくことが必要と思われる。
著者
及川 清昭 槻橋 修 藤井 明 大野 秀敏
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究は日本の都市空問における特徴のひとつである建物間の隙間に焦点を当て,隙間の定量化手法を提案し,市街地における隙間の面積と分布様態の特性を明らかにすることを目的としている。建物間の隙間は,建物配置図において半径rの円が掃過できない領域として定義する。円の直径が隙間の幅に相当する。隙間の領域を抽出する方法として,建物配置図を画像化(1画素50cm角)し,画像処理技法における図形の収縮(erosion)と拡大(dilation)という操作を援用する。すなわち,半径rの円に対応するディジタル図形によって建物平面を拡大し,その後収縮するという方法を用いる。これはモルフォロジーにおけるclosingと呼ばれる操作に相当し,画像処理の結果,隙間が抽出可能となる。この計量手法を東京都23区と大阪市24区における建物配置全体に適用し,以下のような知見を得た。(1)隙間率(グロスの面積比)は東京都においては,隙間の幅1.5mの場合は0.5%,幅2.5mでは1.4%,幅3.5mでは2.4%,大阪ではそれぞれ0.6%,1.3%,2.0%と計量された。局所的には10%を超える地域も多く,隙間の面積は市街地形成上無視し得ない量となっている。(2)隙間率と建物の密度指標(棟数密度・周長率・建蔽率)の値とは高い相関を示す。(3)隙間率の高い地域は,東京都ではJR山手線外周沿いに,大阪市ではJR大阪環状線外周沿いに環状に連担する。(4)隙間率の高い地域は住宅密集地域であり,人口密度が高く,緑被率は低い。震災対策重点地域とも重なり,都市の安全上の問題を抱えている。なお,本研究は数理的考察に加えて,隙間の生成過程について歴史文化的な面からも考察することを目的としていたが,建物配置に関する法令・慣習なとの資料をもとに若干の考察を加えるに留めた。また,隙間の利用状況に関する現地調査を行い,隙間のもつ機能についても検証した。
著者
藤江 真也
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

<1.顔表情認識システムの構築>昨年度の研究結果を踏まえ,本年度は,まず顔表情認識システムを構築した.認識対象とする表情としては,「笑顔」「しかめ」「見開き」と,平常を含む4表情とした.顔領域の中で,上記の表情で特に変化の大きかった眉間,眉毛を含む目,頬,口の部分画像を切り出し,主成分分析(PCA)や線形識別分析(LDA)などに基づき次元圧縮を施したベクトルを特徴量とし,サポートベクターマシンを用いて認識を行った,その結果,80%を超える認識率が得られた.<2.顔方向・視線認識システムの構築>上記に述べた顔表情システムは,基本的にユーザの顔が対話ロボットに正面を向けている場合を想定している.実際の対話では,ユーザの顔向きは様々に変化する.また,顔向きや視線はユーザとシステムとの間での発話権(発話の順番)のやり取りに大きな影響を与えるため,これらを認識することは顔表情と同様に適切な対話制御のために不可欠である.本研究では,画像のテンプレートマッチングの一手法であるLucas-Kanadeアルゴリズムを用いて,顔画像テンプレートマッチング問題を3次元情報を考慮して解くことで顔向きの推定を行った.また,ここで得られた結果から目の部分面像を切り出し,PCAやLDAなどを用いて得られた特徴ベクトルを,部分空間法を用いた識別器にかけることによって視線認識を行った.これらの結果,顔向き認識は平均誤差約5度,視線認識は76%の認識率という結果が得られた.これらのリアルタイムのデモンストレーションをノートPC上に実装した.
著者
橋本 博公
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

コンテナ船や自動車運搬船で問題となっているパラメトリック横揺れの定量的予測のため,時々刻々の没水断面に対して流体力を計算する数値予測モデルを構築し,このモデルに強制横揺れ試験から得た横揺れ減衰力を用いることで,規則波中パラメトリック横揺れの定量的予測が可能であることを確認した.また,パラメトリック横揺れ防止効果に及ぼすアンチローリングタンク形状の影響,船首・船尾形状の影響を調査し,それぞれについての設計指針を得た.
著者
真鍋 陸太郎
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本年度は、1つの共通するインターネット上の地図を複数の団体が使用でき、必要に応じて複数の団体の情報、すなわち異なるテーマの情報を重ね合わせて表示して議論できるようなシステムとした(=18年度成果)、インターネット上の双方向・開放型の地理情報システムである「カキコまっぷ」(以下、新カキコまっぷ)を、複数の団体で試用して、システムの意義・課題を検討した。具体的には、東京都23区全域を対象とするベースマップ(地図)を用意し、子育て支援関連の情報を発信している「ママパパぶりっじ(せたがや子育てネット)」、世田谷区若林地区でまちづくり活動をおこなっている「若林マップを作ろう!」プロジェクト、東京山手線程度の広さを対象として自転車に関する情報交換をおこなっている「東京バイカーズ」の3つの既存のカキコまっぷ使用団体の情報を「新カキコまっぷ」に再掲載し、さらに範囲全域を対象とした「何でも投稿」、文京区本郷地区を対象とした「本郷マップ」の2つの新しいレイヤー(=テーマ)も設定し、東京23区を対象とした多層型のインターネット地図型掲示板の運用実験をおこなった。結論として次の3点が明らかとなった。1点目は趣味的な自転車とベビーカーといった日常では同じ場面で議論することが少ないテーマが1つの地図上に掲示され投稿者が相互の情報に触れることで特定の場所・事象に関してこれまでには発想しづらかった新しい観点からの考察が可能となった。2点目は、対象範囲が共通でテーマが異なるインターネット地図掲示板を想定して研究を進めたが、個別テーマを扱う団体にとっては他の情報に触れたいという動機が低く、本システムに対する満足度は高くなかった。また、3点目として、使用できる地図の範囲は東京23区全域であったが、個別団体が扱う範囲はそれぞれ異なることから、システム利用初期に表示される地理的範囲の設定についての自由度が課題となった。
著者
菊地 正 椎名 健 森田 ひろみ
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

スクロール提示とは,限られたスペースに文字を右から左(あるいは下から上)に移動させることで,文章を提示する情報伝達手段を意味する。本研究では,観察者が読みやすいと感じるスクロール提示条件を明らかにするため,以下の研究を行った。1)同時に表示可能な文字数(以後,表示文字数)を1〜15文字の間で操作し,最も読みやすいと感じるスクロール速度(以後,快適速度)に調整するよう観察者に求めた。快適速度は表示文字数に伴って増加するが,表示文字数が5文字以上ではほぼ一定となった。また,街頭に実在するスクロール提示装置の平均スクロール速度(調査対象数242)は,本実験の各表示文字数条件の快適速度と比較して,およそ2倍遅いことが確認された。2)スクロール提示条件における,表示文字数(2,5,15文字)および速度(上記実験結果に基づき,快適速度,その2倍,あるいは1/2倍の速度のいずれかに設定)が操作された。観察者は,それぞれの提示条件から受ける印象について,14項目を7件法で評定するよう求められた。実験の結果,5および15文字条件では,観察者がほぼ同様の印象を受けることが明らかにされた。また全ての表示文字条件において,2倍速条件では,より"理解しにくいと"と評価されやすく,1/2倍速条件では,より"いらいらする"と評価されやすいことが明らかにされた。3)スクロール提示枠の,中央,左端,右端のいずれかの上または下に車仮名一文字が短時間提示された。観察者の課題は,文字刺激に対する無視または弁別反応を行いながら,スクロール提示文を快適速度に調整することであった。実験の結果,文字刺激が提示枠右端に提示される場合,文字刺激に対する課題の有無に関わらず,快適速度が低下することが明らかにされた。このことは,スクロール提示文の読みの最中の有効視野が,提示枠の右側に広く分布している可能性を示している。
著者
伊藤 誠悟
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

無線LANを用いた位置推定手法に関して,受信電波強度の変化量を考慮し近接性方式(Proximity)および環境分析方式(Scene Analysis)を組み合わせた無線LANハイブリット位置推定手法について提案した.本手法では位置推定の際に,第一段階として,受信電波強度から近接性に基づき位置推定に使用するアクセスポイントを選択し,選択されたアクセスポイントを利用しベイズ推定により位置推定を行った.本手法を用いる事により,無線LANアダプタを保持する端末ならば,屋内環境において2m〜10m程度の精度で位置推定が可能となった.また,市中の実環境において無線LANを用いた位置推定システムに関する基礎検討を行った.無線LAN位置情報システムで利用するための基準点情報を住居地域及び商業地域において収集し,収集方法に関して収集効率と位置推定精度及びカバー率の観点から検討および評価を行った.実験結果より,屋外環境において基準点情報を用いた位置情報システムの推定精度は約30m〜50mであり,名古屋,大阪,東京の商業地域,住居地域等において全ての街路の半分の経路による収集でもカバー率が80%程度になることが分かった.この推定精度は,基準点情報の誤差に,無線LANによる屋外位置推定誤差が相加された精度である.また,収集時間は1平方キロメートルあたり5000秒程度であることが分かった.例えば,東京のJR山手線内側(総面積約65平方キロメートル)において,80%程度のカバ「率の広域な位置情報システムを構築する場合,162500秒(約45時間)程度の収集時間が必要である.我々の検討がこのような概算を行う際の指針となる.
著者
西川 栄一
出版者
神戸商船大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

デイ-ゼル主機の排熱回収の蒸気発生器である排ガスエコノマイザの伝熱面は、排ガス中に含まれるス-トで汚され、種々の障害に悩まされる。とくに問題なのは堆積したス-トが燃焼し、ひどい場合には伝熱面がメルトダウンに至る「ス-トファイア」と呼ばれる深刻な事故が生じることである。本研究によりス-トファイアの機構を解明し、防止のための方策を提示できた。1 事故実態の調査分析・・・・ス-トファイア事故データを集めて分析し、主な関係因子は運転状態、循環条件、伝熱面の形状であることを明らかにした。2 ス-トファイアのシミュレーションモデルの構築・・・・ス-トファイアの計算機シミュレーションモデルを構築した。モデルは実際の現象をうまく再現していることが確認され、伝熱面に堆積したス-トが燃焼する諸条件、伝熱面の上昇温度などが推定可能になった。3 鉄鋼材料の酸化速度に関する分析・・・・上のシミュレーションモデルにより、堆積したス-トの燃焼熱だけでは伝熱面が溶融するまでには到らないことがわかった。そこで伝熱面フィンなど鉄鋼材料の酸化速度に関する諸条件を調べた。その結果実用されているフィンの場合、一定の条件ではメルトダウンを引き起こす熱源となり得ることが明らかになった。4 メルトダウンの機構・・・・メルトダウンに到る過程は以下のようであることが解明された。ス-ト燃焼発生→→不均等加熱のためドライアウト発生→→熱除去効果喪失のためフィン温度急上昇→→フィン材の酸化速度急上昇による酸化熱のためフィン温度さらに上昇→→メルトダウン5 水循環設計条件の分析・・・・排エコは、強制循環の並列水平管で構成され、しかも低圧なので水側がドライアウトしやすく、水循環設計条件が重要である。国内排エコの設計条件を調査した。その結果ドライアウトの可能性の高い設計がなされている排エコも存在することが明らかになった。6 本研究の結果に基づいて一連のス-トファイア防止策を提言し、海運、造船、排エコメーカなどでそれが採用され、現在ス-トファイア事故は急減することとなり、大きな成果を得た。
著者
河田 惠昭 田中 聡 林 春男
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

プレート境界型巨大地震として南海地震を取り上げ,これによる地震・津波災害の被害軽減策を危機管理の立場から考究した.まず,南海地震津波が広域に西日本太平洋沿岸を襲い,臨海大都市で大きな被害を起こす恐れがあることから,最終年度に大阪市を取り上げ,そこでの氾濫シミュレーションを実施し,氾濫水の特徴を見いだした.すなわち,大阪市北区梅田地区を対象に,M8.4の南海地震を想定し,地震動によって堤防が沈下し,その部分から津波が市街地に流入したという条件の下でシミュレーションを行った.その結果,氾濫水の市街地氾濫は面的に広がるために浸水深の距離的減少が大きいために,津波の場合が破堤点と地下空間の距離が短く,地下空間への浸水量は洪水の氾濫の場合よりも大きくなることがわかった.そこで,津波や高潮氾濫の被害軽減を図る危機管理上の項目を,2000年東海豪雨災害を参照して整理した.その結果,高潮氾濫の場合には路上浸水が始まり,床下浸水,床上浸水,地下空間浸水というような時系列によって被害が段階的に進行し,それぞれに対して防災対策が存在することを明らかにした.一方,津波氾濫を想定した場合,まず地震が起こることが先行するから,二次災害対策として津波防災が存在することがわかった.したがって,地震とのセットで防災対策を立てる必要があり,しかも高潮に比べて時間的余裕があまりないので,選択的に対策を進めざるを得ないことを指摘した.さらに,津波,高潮災害の危機管理上,最大の問題は超過外力に対してどのような考え方を採用するかということである.そこで,受容リスクと受忍リスを新しく定義して対処する方法を提案した.これらを参照して,浸水ハザードマップを防災地理情報システム上で展開する場合に情報を集約するプログラムを開発し,その有用性を明らかにした.
著者
中島 章光
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

太陽活動の影響によって磁気嵐やサブストームなどの擾乱現象が発生すると、太陽風エネルギーが磁気圏を介し電離圏に流入する。このエネルギー流入過程を解明するためには、地磁気擾乱時のオーロラ粒子の加速・加熱過程について調べることが重要である。昨年度は、磁気嵐中のサブストーム発生時に、広いエネルギー範囲(50eV-30keV)にわたって降り込み電子が増大する現象"broadband electrons(BBEs)"について調査を行った。本研究によって、BBEsは磁気赤道面で加熱された高エネルギー電子と、より地球近傍で加速された低エネルギー成分により構成されていることが示唆された。磁気嵐中のサブストーム発生時に観測されるBBEsの研究に加え、本年度は、サブストーム回復相において数秒から数十秒の周期で点滅するオーロラ現象である、パルセイティングオーロラについて、その原因となるオーロラ粒子降り込みについての調査を行った。パルセイティングオーロラの生成については、磁気赤道面で粒子が散乱され、数keV~100keVの高エネルギー電子が電離圏へ降り込むというモデルが提案されてきた。しかし、近年では磁気赤道面より地球に近い領域からの粒子降り込みであることが示唆されている。先行研究のほとんどが低高度衛星のデータを用いていたのに対し、本研究ではTHEMIS衛星のデータを用いて、パルセイティングオーロラ発生時の磁気赤道面付近における電子のピッチ角分布の特徴を初めて明らかにした。パルセイティングオーロラ発生時に磁気赤道面付近で1-10keVの電子フラックスが沿磁力線方向に大きく変動し、特に1-5keVの電子のフラックスは、地上から観測したオーロラの点滅とほぼ同じ周期で振動していることを示した。本研究の結果から、パルセイティングオーロラに寄与するオーロラ電子の一部が磁気赤道面付近から電離圏へ降り込んでいる可能性が示唆された。
著者
坂井 淳一
出版者
新潟大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

新潟県特産ユキツバキ(Camellia rusticana)の資源としての可能性を検討するため、その種子オイルからの搾油、精製、構成脂肪酸、抗酸化性物質などの含有成分の分析を行い、"雪椿オイル"としての可能性を検証した。合わせて、ヤブツバキ(Camellia japonica L.)の成分検索の報告を参考にしながら搾油滓について、サポニン類等含有成分の検索、単離を行い、搾油滓の有効利用を検討した。原材料となる雪椿種子については、新潟県東蒲原郡阿賀町役場の協力により、同町鹿瀬地区の角神原生種雪椿園(面積約5,000m^2)から種子の採取を行った。その結果、ユキツバキ果実22.9Kg、同乾燥種子4.0Kgを得ることが出来た。この種子を圧搾法による搾油を行った所、粗油0.5Lを得ることができた。一方、採取ならびに搾油データを比較するため、本学五十嵐キャンパスに植栽されているヤブツバキからも同様に採取を行い、果実41.8Kg、同乾燥種子9.8Kgを得、これからヤブツバキ粗油2.6Lを得た。先行してこのヤブツバキ粗油を用いて種々精製方法を検討した結果、吸着剤(白土、シリカゲル等)を用いず、荒ろ過とメンブランフィルターを用いる精密ろ過により、粗油の香りやα-トコフェロール(ビタミンE)を損なうこと無く精製できることがわかった。この結果を雪椿粗油についても同様に適用して精製を行ない、成分分析、試供用サンプルに供した。分析の結果、雪椿精製油はヤブ椿由来の市販椿油と同等以上のオレイン酸を含有し、α-トコフェロールの存在も確認した。一方、雪椿搾油残渣3.43Kgについてはそのメタノール分画からサポニン類混合物130.9gを得ており、ODSカラムクロマト、HPLC分取によりこれまでに8種類の存在を確認した。現在も単離、同定を続けており、今後、生理活性等の試験に供する予定である。
著者
酒井 寿郎 田中 十志也 川村 猛
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

脂肪細胞分化において、分化誘導のマスターレギュレータPPARγが分化を完成させるメカニズムの一端として、ヒストン修飾酵素の発現を制御し、エピジェネティックな制御機構を担うことを解明した。また、Wntが脂肪細胞分化を抑制する機構として、核内受容体COUP-TFIIの転写を促進し、これがPPARγの転写調節領域に結合し、ヒストン脱アセチル化複合体を介してPPARγ発現を抑制するメカニズムを解明した。
著者
油井 信弘
出版者
岩手大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究では、PP2C機能研究のためのPP2C阻害剤と活性化剤を提供することと、その分子メカニズムを明らかにし、真核細胞におけるPP2Cの機能を解明することを目的とした。昨年度ではPP2Cを活性化するPisiferdiol(1)と阻害するSanguinarine(2)を見出し、そのin vitroにおける各種ホスファターゼに対する作用とHL60細胞に対するアポトーシス誘導活性を調べたが、今年度では、それらを論文としてまとめるとともに、1のカルシウムシグナル伝達に関わる遺伝子変異酵母(zds1 Δerg3Δpdr1/3Δ)に対する生育円活性について調べた。1は、0.3M CaCl_2を含むYPD培地での遺伝子変異酵母株に対してCa^<2+>依存的、濃度依存的に生育円活性を示した(0,5μg/disc,11.0mm)。また、FACS解析により、1のCa^<2+>によるG_2期遅延の抑圧が観察された。さらに、cnb1Δ株とmpk1Δ株に対する合成致死作用でmpk1Δに特異的に作用し、WT株に対するLi感受性の増大を示すことから、カルシニューリン経路に作用することが示唆されたが、直接の酵素阻害は300μMでも認められなかった。そこで、遺伝子変異酵母株におけるCa^<2+>シグナル伝達に関わるタンパク質のリン酸化状態と発現を調べたところ、1は0.1M CaCl_2によって亢進されたリン酸化Cdc28を脱リン酸化すると同時に、Cdc28pのチロシンキナーゼSwelpとカルシニューリンCnblpの減少を引き起こした。これまでに、酵母のPP2CホモログPtc1の抑制がカルシニューリンの活性化に関わると推定されており、1は遺伝子変異酵母株においてPP2Cを活性化させることで、カルシニューリンを抑制することが示唆される。
著者
中條 直樹 佐藤 昭裕 神山 孝夫 岡本 崇男 酒井 純 塚原 信行 山口 巌 山田 勇 今村 栄一 水野 晶子 田中 大
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

2008年度には、本プロジェクトにおいて正本と位置づけた『ラヴレンチー版原初年代記』のコンコーダンス(CD)を作成し、2009年度には、その異本の一つである『ラジヴィル年代記』のコンコーダンス(CD)を作成した。最終年度においては前年度に電子化を終えていた『トロイツァ年代記』について徹底した校正を行い、そのコンコーダンスを作成し、これら三つの年代記のコンコーダンスを一枚のCDに収めることにより、共通する語の文脈等の環境の差異の検証を飛躍的に容易に可能にした。
著者
丸毛 啓史 黒坂 大三郎 小谷野 康彦
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

再建靱帯組織由来線維芽細胞に対する低出力超音波パルス(以下LIPUSと略す)照射は、出力強度依存的にコラーゲンの量を増加させるのみならず、靱帯型の架橋パターンを変えることなく、生理的架橋の量を増加させること、さらには、コラーゲン基質の成熟速度を促進することが明らかになった。従って、LIPUS刺激は、術後療法の短縮を計るための手段の一つとして、臨床応用可能と考える。