著者
塚田 全彦 岡本 美津子 田中 眞奈子 貴田 啓子 小椋 聡子
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2023-04-01

日本国内ではこれまでに多数のセル・アニメーションが制作され、その過程で制作されたセル画は膨大な数に上る。近年アニメーションの文化的価値が認知され、セル画を含む中間制作物の保存の重要性が認識されている。しかし、合成樹脂を含む複合材料で制作されたセル画の保存に必要な各構成材料の劣化の機序、各材料が劣化した際の他の材料への相互影響については十分に検証されているとは言い難い。本研究ではセル画の保存に関する現況を調査するとともに、各材料に対して周辺環境がおよぼす影響と材料間の相互影響を評価し、セル画の長期保存に最適な環境の条件の解明を目指す。これを基にセル画を保存する際の環境の指針の提案を試みる。
著者
張 英裕 宮崎 清
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.63-72, 2001-11-30 (Released:2017-07-19)
参考文献数
27

「剪黏」とは、割れた茶碗の破片や色ガラスなどを利用して必要な形に刻み、作品の表面に一つ一つ丁寧に貼ることによって制作される、寺廟建築の屋根装飾である。本稿では、文献調査ならびに中国南部沿岸地域および台湾における現地調査に基き、「剪黏」の起源・変遷・制作過程について考察した。その結果、次の諸点を明らかにした。(1)中国大陸における「剪黏」は、南部沿岸の泉州地域において、清時代1700年前後に生誕したと思われる。また、ほぼ同時代に、その制作方法が台湾に伝えられた。(2)「剪黏」制作の主たる素材は、かつては茶碗や花瓶などの破片であったが、最近では、専用陶片が使用されるようになっている。専用陶片の出現は、「剪(切る)」と「黏(貼る)」からなる本来の「剪黏」造形における「剪(切る)」の作業を不要にし、職人の即興的創作性を喪失させた。この傾向は、台湾において著しい。(3)「剪黏」の主たる制作過程は、針金による原形制作、筋肉材の原形への付着、外観材の粘着に分けられる。
著者
瀬野 信子
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.388-393, 1977-05-01 (Released:2009-11-13)
参考文献数
42

Typical ester sulfates found in nature are sulfated mucopolysaccharides from animal sources and sulfated glycans from seaweeds. This article deals with the distribution, variation of chemical structures and functions of sulfated mucopolysaccharides, such as chondroitin sulfates A, C, D, E, K, dermatan sulfate and dermatan polysulfates, heparin, heparan sulfate and keratan sulfates.
著者
平凡社 [編]
出版者
平凡社
巻号頁・発行日
1980
著者
山本 晶友 入江 ひとみ 大石 有里花 上杉 優 樋口 匡貴
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.33-39, 2023-06-30 (Released:2023-07-28)
参考文献数
29

Zero-sum belief is the belief that someone’s gains are another’s losses. Assuming that beneficiaries’ zero-sum beliefs let them perceive benefactors’ cost resulting from giving benefits, this study examined whether the zero-sum belief increases the occurrences of grateful feelings and expression in apologetic form, which is represented by “sumimasen” in Japanese. We manipulated participants’ zero-sum beliefs and rewarded them for the task. Thereafter, we asked participants what they wanted to say, how they felt, and how much they perceived our (i.e., benefactors’) cost. The results revealed that participants whose zero-sum beliefs were experimentally strengthened were inclined to select the grateful expression in apologetic form from some options to convey what they wanted to say, though grateful feelings in apologetic form and perceived costs were not significantly affected. These results suggested the possibility that individuals’ zero-sum beliefs let them express their gratitude in apologetic form independently from the extent to which they have such feelings or perceive benefactors’ cost.
著者
山田 順也 竹林 崇 福山 千愛
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.539-546, 2023-08-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
15

身体機能障害に加え,アパシーによる意欲低下や抑うつ症状が出現した脳卒中患者を経験した.事例は介入初期より意欲低下を認め,具体的な目標設定が困難であった.また,経時的に抑うつ感・不安感が出現し,精神機能の評価結果が悪化した.これらの症状に対し,複数のポジティブな視覚フィードバックを用いて,身体機能に対する介入の効果が分かりやすくなるように提示した.結果,アパシーや抑うつの改善とともに言動変化を認め,具体的な目標共有が可能となった.本事例報告において,脳卒中後にアパシーや抑うつを呈した事例に対し,ポジティブな視覚フィードバックを用いた介入は,精神機能の改善や行動変容を促進する可能性が示された.
著者
新屋 徳明 田中 翔太 山内 康太 後藤 圭 鈴木 裕也
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.524-531, 2023-08-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
20

今回,重症熱傷後に両下腿切断となり,不安・抑うつやPTSDの危険性が高まっている高齢患者を経験した.さらに,コロナ禍による面会制限によって,家族の不安感も増強していた.そのため,本事例と家族双方への精神的支援の目的として交換日記を開始した.その結果,本人の不安・抑うつの改善やPTSDの危険性は低下し,また家族の不安感の軽減にもつながっていた.その後は,リハビリに対して前向きに取り組むことが可能となり,良好な経過を辿り,最終的に自宅退院に至った.交換日記は,熱傷後の精神・心理的状態における精神的支援や,コロナ禍による面会制限がある中での情報共有の手段の一つとして有用な可能性が示唆された.
著者
木島 隆秀 武藤(砥上) 若菜 萩野 光香 徳田 和彦 小山 雄二郎 宮本 健史
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.509-516, 2023-08-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
24

上腕骨骨幹部の病的骨折を有する高齢がん患者に対し,骨折部の安定性を保持しながら日常生活動作(以下,ADL)および生活の質(以下,QOL)を高める事を目的に,3Dプリンタ製肘継手を用いた上肢スプリントを作業療法士にて作製した.上肢スプリントを用いた結果,除痛や装着アドヒアランス向上,ADLならびにQOL向上に寄与する事が可能であった.患者の予後や活動性,使用期間などを適切に考慮し本スプリントを装着する事は,患者の更なるADLやQOL向上の一助となりうる.
著者
舞田 大輔 西野 星陽
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.501-508, 2023-08-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
20

ギランバレー症候群(以下,GBS)を発症した70代男性を担当した.入院時の事例は,GBSの機能障害により日常生活は全介助を必要とし,不安や鬱など精神症状も認められた.そこで,本人にとって「意味のある作業」を話し合い,多職種で統一した支援を行ったところ,作業遂行能力や満足度の指標は臨床上意味のある最小変化量を超える結果が得られ,心理・健康状態の改善も図ることができた.また,患者が医療者の共感を評価する指標も,先行研究以上の結果を得ることができた.これらの結果より,「意味のある作業」に基づく実践は,予後不良所見を認めたGBS患者の心理・健康状態や多職種連携促進の一助となる可能性が考えられた.
著者
木村 大介 塩津 裕康 備前 宏紀 今井 あい子 冨山 直輝
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.491-500, 2023-08-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
27

本研究では,16名のアルツハイマー型認知症高齢者の心理的ウェルビーイングが高値傾向および低値傾向を示した場合の行動パターンと,その特徴を示すことを目的とした.分析では,心理的ウェルビーイングの中央値で対象者を高値傾向群と低値傾向群に分類,各群の対象者に装着したウェアラブル型センサーで収集した位置情報にグラフ理論に基づくネットワーク解析を実施し,行動パターンを可視化,加えて各群のクラスタリング係数を算出した.その結果,心理的ウェルビーイングが高い傾向にある者は「ハブ」となる行動の中心が存在していることが特徴であり,心理的ウェルビーイングが低い傾向にある者は行動の中心がないことが特徴と考えられた.
著者
阿部 真理奈 渡部 喬之 迫 力太郎 小笹 佳史
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.485-490, 2023-08-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
10

大脳性運動失調により,日常生活で左上肢の使用が困難となった50歳代男性に対し,視覚遮断を用いた訓練を実施したため報告する.症例は右前頭葉から頭頂連合野の皮質下出血により左片麻痺,高次脳機能障害を呈し,特に視認下で左上肢の運動失調が増悪した.視認下での運動失調の増悪は,運動前野の損傷による影響が大きいと推論し,視覚遮断を用いた身体ポインティングや把持動作の作業療法を開始した.その結果,左上肢機能は改善し,日常生活でも麻痺側上肢で茶碗を把持することが可能となった.大脳性運動失調症例への視覚遮断を用いた作業療法は,上肢機能改善や日常生活での麻痺側上肢の使用頻度の向上に寄与する可能性が示唆された.
著者
今井 忠則 赤塚 望
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.469-477, 2023-08-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
22

作業的公正の視点から労働者の健康と職場環境を是正する支援は,産業保健分野における作業療法の新しい役割と期待されるが,そのニーズは不明である.精神科医療・福祉従事者における作業的不公正の統計的実態と職業性ストレスとの関係性を明らかにすることを目的に,北関東のある医療法人の全職員466名に質問紙調査を実施した.測定は作業的公正質問紙と新職業性ストレス簡易調査票を使用した.385名が回答し,各不公正状態を明確に感じている人は0.5割~1割程度,軽度まで含めると2~3割程度が存在すること,また不公正は職業性ストレスの多くの側面と相関し,不公正状態が強い人ほど職業性ストレスも全般的に不良の傾向が見られた.
著者
清水 雅裕 小口 和代 後藤 進一郎 太田 有人 渡邉 郁人
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.446-451, 2023-08-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
22

CI療法原法は療法士の時間を集中的に使用するため,実施に限界があった.そこで,時間的コスト軽減を図ったmCI療法(自主練習を併用し,1日3時間2名ペアで実施)を考案し,脳卒中発症後180日以内の回復期症例31名に対して実施した.実施前,実施後,6ヵ月後に評価し,推移を観察したところ,STEF,FMA-UE,MAL-AOUの平均値は,実施後,6ヵ月後共に有意に改善.変化量は,MAL-AOUは実施後にMCIDを上回り,FMA-UEは6ヵ月後にMCIDを上回った.mCI療法はペアの難易度調整が随時可能という利点がある.ペアで実施することにより,対象者間で会話が生まれ,動機づけの向上や心理的な支援につながる可能性が示唆された.
著者
陳 信良
出版者
大東文化大学
巻号頁・発行日
2020

本論文は秦漢簡牘文字の字形変遷とその背景を論じる。戦国後期から後漢に至るまでの期間に書写されたと思われる簡牘文字(ただし、戦国後期の資料は出土地域から秦簡と判断されるものに限定し、楚簡などは含めない)と、それに見える字形の変遷とその原因を分析する。具体的に字形の変遷を検証できるよう、字形データベースも構築し、統計的な傾向についても考察した。
著者
重田 優子 笹田 哲
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.426-434, 2023-08-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
32

【背景と方法】我が国の地域在住脳卒中者は社会参加の機会に乏しく,男性高齢者の社会参加・交流には特に課題が多いとされる.そこで,男性脳卒中者が社会参加を経験するプロセスを複線径路等至性アプローチに基づいて分析した.【結果】3名の参加者は,入院中も途切れることなく社会参加を継続し,発症による様々な変化に向き合う中で『ありたい自分のイメージ』という価値に基づき,その価値観を体現できる社会参加という行為を選択していくプロセスを語った.【結論】男性脳卒中者の社会参加促進には,その人の持っている価値観を捉え,その価値観に依拠して将来の見通しを持つことができるよう支援することの重要性が示唆された.
著者
濱田 匠 笹田 哲
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.416-425, 2023-08-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
20

医療機関に所属する作業療法士が,重症心身障害児の自立活動に対してコンサルテーションを実施する場合の,作業療法士の専門性を学校教諭と共有するための方略について,混合研究法の説明的順次デザインで検討した.まず,作業療法士と学校教諭に同一の質問項目による調査を実施した.結果,「身体の動き」で共通認識が,「自立活動6区分を包括する支援」で認識の相違が認められた(研究1).研究1の結果から質問項目を設定し,熟練の作業療法士を対象に半構造化インタビューを実施し,SCATによる分析を行った.結果,学校の文化や制度の視点を考慮した,学校教諭との認識の相違に留意した協働のプロセスが示唆された(研究2).
著者
学術誌編集委員会
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.413-415, 2023-08-15 (Released:2023-08-15)

このたび,「学術誌『作業療法』掲載論文の表彰に関する規程」に基づいて,学術誌編集委員会が厳正・公平に選考し,同委員会の推薦を受け会長に承認された第9回の受賞論文が決定したので,以下に掲示する.