著者
正田 備也
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

この研究は規模の大きなデータの要約を目指しています。主に扱うのは文字で書かれたデータ、つまりテキストデータです。ニュース記事、学術論文、小説などがこれにあたります。テキストデータも量が多くなってくると、ひとつひとつ人間が目を通すわけにいかなくなります。そこで要約を作ります。この研究が作る要約は単語リストです。例えば「試合、ヒット、ピッチャー、トレード」という単語リストを見ると、私たちはこれが野球というトピックを表していると分かります。このような単語リストを膨大なテキストデータから自動的にいくつも取り出し、文章をひとつひとつ読まなくても何が書いてあるか分かるようにするのが、この研究の目的です。
著者
下林 典正
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

奈良県吉野郡天川村より採集された,イリデッセンスによって虹色に輝く"レインボーガーネット"を試料に用いて電子顕微鏡観察を行った結果,本産地のレインボーガーネットが通常のガーネットでは見られない波状のラメラ組織および数百nmオーダーの微細なラメラ組織をもつことを示し,後者の微細ラメラによる光の干渉がイリデッセンスを引き起こすことを明らかにした。しかし,電子顕微鏡による観察だけでは,作製試料に依存した局所的な情報のみに限られてしまい,例えば試料全体の歪みの分布などの情報を得ることは困難である。そこで,これまで電子顕微鏡を用いて観察してきたレインボーガーネット中のラメラ組織の形成に格子欠陥等の結晶不整が関連しているのかを検証するために,放射光を用いたX線トポグラフィーによる結晶評価を行なった。実験はSPring-8のBL28B2に設置された白色X線トポグラフカメラを用いて,室温で撮影を行なった。その結果,得られたトポグラフ像においては,ほとんどの回折斑点内に結晶外形に垂直方向に伸長した2または4本の筋が確認できた。これまでの電子顕微鏡による観察から確認されている累帯構造・波状ラメラ組織・微細ラメラ構造のうち,累帯構造および微細ラメラ構造は結晶外形に平行な構造を持っており,本実験で得られた結晶外形に垂直方向に伸びた筋の成因としては考えにくい。そのため,波状ラメラ組織がこの筋の成因だと考えられる。前年度の報告書に「レインボーガーネットの構造色の原因は,初生的には微細ラメらによる多層膜干渉による」が、「その副次的な効果を波状組織が担っている」と仮説した。今回観察された波状組織による僅かな方位のズレがその副次的な効果を与える要因である可能性が示唆された。
著者
鈴木 勉
出版者
星薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では比較的選択的NR2Bサブユニット構築型N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体拮抗薬であるイフェンプロジルおよび新規κオピオイド受容体作動薬であるTRK-820の覚せい剤依存症治療薬としての可能性を検討した。覚せい剤であるメタンフェタミンを慢性処置し、その後休薬期間を設けると、通常では精神依存を示さない用量のメタンフェタミンにより有意な精神依存の増強、すなわちヒトにおけるフラッシュバック現象を一部反映した逆耐性現象が認められる。そこで、こうした現象に対するイフェンプロジルならびにTRK-820の影響について検討したところ、それぞれの皮下あるいは脳室内へ慢性併用処置することにより、メタンフェタミン慢性処置による精神依存の逆耐性形成は著明かつ有意に抑制された。また、TRK-820の前処置においてはメタンフェタミン慢性投与による側坐核でのドパミン遊離に対する逆耐性形成を有意に抑制した。これらのことから、NMDA受容体拮抗薬イフェンプロジルと新規κオピオイド受容体作動薬TRK-820は、覚せい剤依存症の治療薬として有用である可能性が示唆された。一方本研究では、メタンフェタミン慢性処置による逆耐性形成の分子機構として、側坐核におけるドパミン神経終末のプレシナプス側において、PKCによる促進的なドパミン放出機構の修飾とポストシナプス側におけるNR2Bサブユニット構築型NMDA受容体の増加に伴う細胞内情報伝達機構の変化によって引き起こされている可能性を明らかにした。さらに本研究では、メタンフェタミンが単に神経だけでなく、グリア細胞の中でも特にアストロサイトに対しても作用していることが明らかとなり、これに伴い、メタンフェタミンの逆耐性形成時には、側坐核および帯状回のアストロサイトの形態変化を伴う活性化が顕著であり、アストロサイトの活性化はPKC依存的に引き起こされ、長期に持続することも明らかとなった。以上の結果は、今後、薬物依存患者の治療や乱用の撲滅に繋がる治療薬の開発と治療法の確立に貢献できるものと考えられる。
著者
藤澤 和子
出版者
大和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、公共図書館において知的障害者の図書館利用や読書支援を進めるための合理的配慮のあり方について、公共図書館で実証的に検証し、具体的内容と方法を明らかにすることである。本研究の2年目にあたる平成29年度は、スウェーデンの公共図書館等で取り組まれている知的障害者への読書支援サービスについての先行事例を収集した。さらに、28年度に調査した図書館利用についての当事者のニーズ調査をもとに検討した合理的配慮の事項を協力図書館4館において検証を進めながら実践した。①図書館利用のためのわかりやすい配慮については、知的障害のある利用者が声が出たり落ち着けないときや代読に利用できる個室の設置、ピクトグラムによる配架表示、わかりやすい利用案内の制作、図書館に来館する知的障害者に対する一般利用者の理解を促すためのポスター制作を行っている。②わかりやすい図書や視聴覚メディア資料については、LLブック等を収集したわかりやすい図書コーナーを設置して、利用状況の調査等を実施した。コーナーの設置によりLLブック等の貸し出し件数の増加が示され、コーナーの効果が明らかになった。③職員によるわかりやすい対応やサービスについては、読書サポート講座を実施して参加者へのアンケート調査を行った。講座は、図書館、福祉施設や事業所、学校、一般市民を対象に、知的障害者の読書支援のための基礎的知識と代読や読み聞かせの技能を学ぶ内容で、大阪と奈良の3館、東京1館で開催し、1館につき6講座を設けた。講座を受講して知的障害者への読書支援についての関心が深まったという参加者の回答が99%に及び、講座の必要性が明らかになった。知的障害者に図書館見学と読み聞かせ等のサービスを行う図書館体験ツアーを実施し、当事者から好評を得た。
著者
粟生 修司 大村 実 大嶋 雄治 長谷川 健 河合 啓介 片渕 俊彦
出版者
九州工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1)ビスフェノールAやトリブチルスズの周産期や胎生期曝露の行動の性分化に及ぼす影響を調べた。探索行動の性差は周産期間曝露と同様に消失した。強制水泳試験では、ストレス対処行動の指標であるstruggling時間の性差(雌>雄)が、出産前1週間曝露で消失した。うつ反応の指標であるimmobility時間は、対照群および曝露群ともに性差はなかったが、ビスフェノールA曝露群で有意に延長した。本研究により、内分泌撹乱物質が、探索行動、ストレス対処行動、青斑核、扁桃体内側核領域の喚覚応答の性差を消失させることが明らかになった。さらに、ビスフェノールAがうつおよび不安を増強し、捕食者のニオイに対する警戒応答を増強することを見い出した。2)みどりの香りのストレス応答に対する作用を調べた。捕食者のニオイに曝露した時には、みどりの香りは高架十字迷路試験において総移動距離、平均移動速度を増加させ、活動性を上げた。心理的ストレスに関しては、ストレスに曝露した翌日の飲水量をみどりの香りが著しく減らしていた。高架プラス迷路試験による不安レベルや活動性には差はなかった。身体的ストレスに関しては、ストレスに曝露した翌日の摂食量および飲水量は減少していた。さらに翌々日の摂食量および飲水量も減少していた。高架プラス迷路試験による不安レベルや活動性には差はなかった。以上のことからみどりの香りは、活動性を上昇すること、摂食、飲水量をストレス強度に依存して抑制することがわかった。3)内界環境に応じて変動する摂食調節物質であるオレキシンA、レプチン、2-buten-4-olideが摂食行動だけでなく、学習記憶機能を調節する作用を示すことを水迷路試験や海馬長期増強試験で明らかにした。
著者
福井 勝義 宮脇 幸生 松田 凡 佐藤 廉也 藤本 武 増田 研
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、平成17年以来、北東アフリカのエチオピアを主要な対象とし、国民国家の形成過程で頻発してきた民族紛争について、その発生・拡大・和解のプロセスを歴史的に検証することを目的としている。昨年に引き続き本年度も、研究代表者をはじめ研究分担者および研究協力者がそれぞれエチオピア西南部の各民族集団において、民族紛争の発生・拡大・和解に関する聞き取り調査を実施する一方、各地方行政府に収められている行政文書のアーカイブ調査を試みることで、現地で得た情報との整合性を確認し、民族紛争と国家政策との関連性を示した。例えば、研究代表者である福井は、攻撃する側である農牧民メ・エンと攻撃される側である農耕民コンタ双方において戦いとその被害状況に関して情報収集を行った結果、エチオピア帝政期・デルグ社会主義政権期・EPRDF現政権期という20世紀のエチオピアにおける3つの政権の交代期に民族間の戦いが頻発していることが明らかにされた。こうして現地で収集、整理された情報は、国内で年3回開催された研究会合において統合的に分析が進められた。また、空中写真・衛星画像を用いて戦いや環境の変化に伴う各民族の居住領域の変化を時系列的に復元し、これを生態環境データと照らし合わせ比較検討した。これらの情報は今後、各民族における紛争に関する情報収集を継続的に行うことで、より広範な地域における民族間関係を歴史的に明らかにすることが可能になる。また、昨年度より着手したアーカイブ調査を実施していくことで、民族紛争と国民国家への統合のプロセスとの関連性を理解することができるようになる、と考える。
著者
小林 亜津子
出版者
鳥取環境大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2000

G.W.F.ヘーゲルの「宗教哲学」の新資料に関する図書や、その他の関連書籍等を購入し、また、ヘーゲル研究会等に出席して「宗教哲学」資料についての情報収集を行ないながら、研究を進めた結果、つぎの二点を明らかにすることができた。1.全四回の講義のうち、1821年「宗教哲学」草稿の記述には、キリスト教精神の世俗世界での実現と言う思想的モティーフガ展開され、キリスト教の歴史を世俗史のなかに移し入れるという発想が登場してくる。こうした発想は、キリスト教救済史の時間性を損なう可能性がある。なぜならキリスト教の聖なる歴史を世俗史に移し入れてしまうことによって、ヘーゲルはキリスト教固有の救済史観を骨抜きにしてしまうことになるからである。21年草稿にみられるへ一ゲルの歴史意識を検討することによって、ヘーゲルの歴史意識と現代終末論によって再興されたキリスト教救済史の時間意識とのあいだに現前している埋めがたい決裂点が浮かび上がってくる。2.ヘーゲルもルターも共に、聖餐における神との直接的で、主体的な接触を介して初めて宗教性がなりたつという核心を共有しながら、その核心の内部では、神との直接的な一体感を享受するという神秘主義そのものと、否定を媒介することで神との合一に達するという神秘主義の精神化といった、二つの対立する態度を示している。これらの研究成果のうち、1については、4月に日本哲学会の学会誌『哲学』上に論文として発表した。2については、京都哲学会の学会誌『哲学研究』に掲載された。
著者
土原 和子
出版者
国立研究開発法人 森林総合研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2013-04-01

・昨年度タンニンとの結合を確認した候補タンパク質のうちN末端がブロックされていた3種タンパク質の構造決定する為に酵素消化して解析した。酵素で切断して質量分析(MARDI-TOF-MASS)をおこなったところ、3種類とも全く別の解析パターンを示したが、タンニン結合性候補タンパク質Proline Rich Proteins (PRPs)と相同性があったのは、静岡産の2サンプルであった。また、メインの分画であるアカネズミ(盛岡産)30kDとアカネズミ(静岡産)30kDのタンパク質を酵素消化してアミノ酸シークエンスをおこなった。その結果、タンニン結合タンパク質ではなかった。・森林げっ歯類のうち、ドングリ食であるアカネズミ、ドングリ食と草食の混合食であるヒメネズミ・シマリス・ニホンリス、樹皮を主とする草食のエゾヤチネズミ、完全草食のハタネズミの6種の唾液からタンパク質を抽出単離して、PRPs量の測定、およびSDS-PAGEによる分画と、その分画のタンパク質の精製をおこなった。その結果、PRPsの含有量が最も多かったのは混合食であるヒメネズミで、その次はドングリ食のアカネズミ、そして混合食のシマリス・ニホンリス、そして最も少なかったのは、草食性のエゾヤチネズミ・ハタネズミであった。この結果は、食餌と唾液中のPRPs量との相関はリーズナブルであったといえるが、完全ドングリ食のアカネズミより混合食のヒメネズミのPRPs量が多いのは予想外であった。また、草食性のエゾヤチネズミ・ハタネズミの唾液中にもかなりのPRPsを含んでいたことより、以前はこの2種もタンニンを含むドングリ等を食べていた可能性が高いが、現在は必要なくなったといえる。このように森林性齧歯類は、基本的にはタンニン結合タンパク質であるPRPsを唾液中にもっており、現在ではそれぞれの生活様式にあわせて食餌を変化させてきたといえる。
著者
山崎 大輔
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

Mg2+輸送体CNNM4はMg2+を細胞の内側から外側へと排出することで細胞内Mg2+の恒常性を維持しており、Cnnm4遺伝子を欠損した細胞では細胞内のMg2+量が増加する。マウスモデルを用いた解析から、Cnnm4遺伝子の欠損が大腸での発がんや腸管に形成される腫瘍の悪性化を促進することが明らかとなり、CNNM4は細胞内Mg2+量の恒常性を維持することで腸での発がんやがんの悪性化を抑制していることが示唆される。
著者
犬塚 正智
出版者
創価大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本年度研究テーマは,「日韓台韓の半導体企業の特許がイノベーションの創出についてどのような関係があるのか」であった。昨年と同様な方法で,資料収集とデータ分析(米国ボストンのハーバード大学での研究者との交流会,研究会や個人的なコンタクト)を通して多くの知識を得ることができた。具体的な活動として①米国への研究会,研究セッション,TC2800CustomerPartnershipなどにに参加した。2017年8月にボストンとニューヨークでセッションに参加。USPTO主催の国際シンポジウム,ハーバード大学研究者との個別のやり取り,NBER(米国経済研究所)からの経済,特許データの収集を行った。数社ベンチャー企業の経営者との面談や大学研究会では,特許がスタートアップ資金として活用されている仕組みやその実績などについて多くの知見を積むことができた。Boston Univ.,Harvard Univ.,Northwestern Univ.などの知的財産に関する講義資料やデータを入手したことは,日本の半導体研究開発や応用技術に活用できる可能性がある。②日本での調査研究は,日本半導体装置協会を約5カ月おきに訪問,最新の半導体,半導体装置に関するデータと情報,さらにトップとの懇談,インタビューを行った。特に会員様企業役員,開発者とのインタビューは貴重な資料作成となった。イノベーションに関するデータの裏図けについて,現場と分析結果から理論化を進めるうえで大変に役に立った。③企業再生に関する活動として,JETROや日本台湾協会から論文,資料などから関連データを収集することができた。また,これまでの資料やデータをもとに,2017年11月に『半導体企業の組織構造,知財戦略および競争力』同文館出版,という単著に纏めて発刊することができた。今後は資料,データをもとに理論的な考察と仮説-検証のモデル化を進める。今後の計画として,半導体企業へのインタビューとデータ収集・分析を引き続き実施する。
著者
堀口 淳 宮岡 剛 岡崎 四方 安田 英彰 和氣 玲 新野 秀人 宇谷 悦子
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

研究期間の入院患者総数は132人のうちDSM-IVに基づく診断基準で統合失調症と診断された27人、うち入院加療中にアカシジアが発現した患者は4人である。研究期間の統合失調症患者総数55人(平均年齢37歳)のうちアカシジアの発現した患者総数は11人でアカシジアの発現率は20. 0%である。アカシジアが改善しなかった患者3人に抑肝散(7. 5g/日、分3食前)を投与したが、3例ともアカシジアは改善しなかった。終夜睡眠ポリグラフ検査実施例は24例(13歳~75歳、平均年齢36. 7歳±11. 7歳)であり、うちビデオカメラ撮影可能であったのは3例である。従って抽出できた「覚醒時」ミオクローヌス患者は3例のみである。当初の計画及び目的に対する達成度は遅れてしまった理由として、研究期間前に全ての対象患者が多種類の抗精神病薬で既に治療開始されていた症例であったためアカシジアの発現率と「覚醒時ミオクローヌス」の有症率とを単純には比較できなかったことによる。
著者
岸田 拓士
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

ウミヘビ類の持つ嗅覚受容体遺伝子のレパートリーを網羅的に解読した結果、海洋環境への適応度合が上がるにつれて嗅覚能力が衰退することが解明された。しかし、完全な海洋性のウミヘビでも副嗅覚系(鋤鼻嗅覚系)の機能は維持されていることが示唆された。さらには、同所的種分化の分子的基盤の解明のために、同所的に生息する2種の近縁なウミヘビであるバヌアツアオマダラウミヘビとアオマダラウミヘビの嗅覚受容体遺伝子の比較を行ったが、現時点で顕著な違いは発見できていない。
著者
近藤 悠介 中野 美知子 吉田 諭史 石井 雄隆
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では発話能力の育成に焦点を当てた大規模な英語教育プログラムにおける自動採点システム導入の可能性を検討した。導入を検討したプログラムは、発話能力の育成に焦点を当てたプログラムであり、学習の対象となる表現が適切に使用できるかどうかを判定するタスクを作成し、このタスクにおける発話を英語教員が採点し、この点数を予測する発話自動採点システムを開発した。システムの予測精度を検証したところ、教師による点数との一致どは74%であった。本研究で提案した枠組みを用いてクラス分け試験および到達度試験を自動採点システムによって行うことができる可能性は高いと判断した。
著者
遠藤 由香 庄司 知隆 福土 審
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

過敏性腸症候群(IBS)は代表的な思春期心身症である。成人IBSでは幼児期の虐待などのトラウマが発症リスクの一つと報告されているが、思春期IBSでは発症要因の解明は不十分である。そこで本調査では宮城県内の中学校で疫学調査を施行し、東日本大震災のトラウマ的体験がIBS発症率を増加させ、その影響は年余におよぶという仮説を検証する。疫学調査を施行すべく県教育委員会や養護教諭会に調査協力を依頼したが、教育現場では未だ混乱が続いており、協力を得がたい状況であった。そこで海外の疫学調査専門家と討議を重ね、調査法の変更や規模の縮小をして再度協力を依頼したが、最終的に調査を断念せざるを得なかった。
著者
坂井 美日
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

従来、日本語の格については、諸方言を含め、対格型以外の型は無いと言われてきたが、申請者は、現代方言に対格型とは異なる型が存在すること、具体的には、三立型や、活格的な特殊な型(仮に「分裂S型」。九州方言等に観察される現象で、主語の標示が意志性で分裂し、他動詞文主語と意志自動詞文主語が同標示、非意志自動詞文主語が異標示、他動詞文目的語も異標示となるもの)があることを証明してきた。特に分裂S型は、世界言語にみられる「活格型」とも異なり、「日本語=対格型」という固定概念を変えるばかりでなく、一般言語学にも議論を提示しうる。平成29年度は、九州を中心に調査を進め、前年度までの成果を発展させ、口頭発表および論文の執筆を行なった。昨年度までの調査を通し、九州方言には伝統的に2種の有形主語標示(「ガ」「ノ」)があること、主語はこれらの標示を必須とすること(無助詞が基本的に許容されない)、そして有形主語標示2者の対立により活格性(分裂S型)が見られること確認した。本年度は更に、九州若年層の方言が、無形主語標示(「ガ」も「ノ」も付けない)を獲得しつつあること、その出現の仕方が、活格性(分裂S型)を帯びることを発見した。その成果は、成城学園創立100周年・大学院文学研究科創設50周年記念シンポジウム「私たちの知らない〈日本語〉―琉球・九州・本州の方言と格標示―」(2017/7/2、於成城大学)にて、講演した(「九州の方言と格標示―熊本方言の分裂自動詞性を中心に―」)。また、その成果に基づく論文を、竹内史郎・下地理則編『日本語のケースマーキング』くろしお出版に執筆し、2018年5月現在印刷中である(「熊本市方言の格配列と自動詞分裂(仮題)」)。上記を含め、当該年度の成果を含む論文は3本(2018年5月現在印刷中を含む)、当該年度内の口頭発表3件、2018年5月現在確定している口頭発表2件である。
著者
堀畑 正臣
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

室町後期の古記録〔言継卿記〔トキツグキャウキ〕(記録期間1527~76)、兼見卿記〔カネミキャウキ〕(1570~1610)、上井覚兼日記〔ウワイカクケンニッキ〕 (1574-86) 、言経卿記〔トキツネキャウキ〕(1576~1608)〕の記録語・記録語法を調査し、1)中世古記録・古文書への宋代以降の中国口語の影響として「得境〔トクキャウ〕」と「生涯〔シャウガイ〕」の論考をまとめ、2)『上井覚兼日記』の「被賜・被給(タマハレル)」を考究し、3)「生涯(シャウガイ)」の意味変遷と構文の関係を考察、4)研究成果報告書を作成し、5)記録語・記録語法を収集し今後の研究に利用できるようにした。
著者
八木 君人 伊藤 愉 大石 雅彦 安達 大輔
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、20世紀前半のロシア・ソ連文化、とりわけロシア・アヴァンギャルドという芸術運動における、文化現象としてあらわれる「音」を横断的に検証し、それを可能とした感覚・知覚の時代的布置を明らかにすることを目的とします。そのことを通して、たとえば、音の複製技術の登場、電子音楽等の音楽装置の発明、環境音への自覚化など、技術革新や音の概念の拡張が、同時代の社会及び諸芸術や文化に与えた影響を詳らかにします。また、積極的に、ここで得られた研究成果のアウトリーチにつとめ、当時の音響実験装置や電子楽器等の実物展覧会やそれにあわせたシンポジウムの開催なども予定しています。
著者
遠山 紗矢香
出版者
静岡大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の目的は, 学習ポートフォリオシステム(以下PFシステム)に蓄積されたログデータを, 大学生の授業内外の学びを包括的に促進するための手がかりとして活用する方法論を提案することである. 近年では個々の学習者を中心として授業外の学びも一連の学びとして評価することで学習の形成的評価やキャリア教育につなげようとする試みが盛んである. そこで本研究では, 大学での授業と日常生活が, 大学生の学習目標を設定し達成度を記録する場としてのPFシステムでどのように関連付けられているかを評価することとした.本研究では2つの分析を行った. 1つ目は, 大学生がPFシステムに書き込んだ学習目標と書き込み場所の関連性についての調査である. 静岡大学情報学部生のうち特にPFシステムの利用が多かった1年生約200名のデータを主に分析した結果, 学外の場所で記載された学習目標はボランティアやアルバイトといった大学外での生活に関係しており, 授業関係の学習目標の多くは大学内にて書き込まれていた. 2つ目は, PFシステムの大学内外での利用における事例分析である. PFシステムを恒常的に利用している就職活動中の大学生1名に対して1週間のPFシステム利用目的・回数等を尋ねるインタビューを行った. その結果, PFシステムへの書き込みは閲覧者からの反応が得られる場合に活発になり, 就職活動中は企業が閲覧・評価者としての役目を果たしていたことがわかった.以上より, 大学内外での大学生の学び・生活を一連の学びとしてPFシステムにまとめるには, (1)相互に閲覧し刺激し合うコミュニティをPFシステム上に用意すること, (2)大学外からもPFシステムに書き込みを行うよう動機づけること, が重要だと言える. 逆に言えば, これら条件を満たすことが, PFシステムに有意味なログデータを蓄積する上で必要不可欠だと考えられるため, いかに大学生の日常にPFシステムを組み込むかの工夫が急がれていると言える.
著者
杉本 健
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

炎症性腸疾患において粘膜のバリア機構はその病勢に大きく関与する。我々は、過去に腸管バリア機構を増強すると報告されてきた腸管アルカリフォスファターゼ(IAP)に着目した。遺伝子操作により IAP をマウスの腸管粘膜局所で増減させる実験系の確立を探索した。炎症性腸疾患のモデルマウスとしては、過去の報告では安定した病気の作成が困難とされたクローン病類似モデルであるマウス TNBS 腸炎を腹腔麻酔の代りに吸入麻酔を使用することにより安定したモデルにすることに成功した。これらの系を用いて、今後 IAP の粘膜防御におけるメカニズムをさらに検討していく予定である。