著者
中川 紘明 宮田 靖志
出版者
医学書院
雑誌
JIM (ISSN:0917138X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.902-903, 2014-10-15

Case 患者:12歳の男児. 現病歴:突然,左の胸が痛くなり,不安そうな母親に連れられて受診した.痛みは突き刺すような痛みで,左前胸部に指1本で指せる範囲に限局しており,深呼吸を2回したら1分もせずに突然消失したという.心音・呼吸音・筋骨格・皮膚は異常なし.胸部単純X線写真,心電図は異常なし. 診断:若年者に突然発症した限局性の胸痛で,1分以内に突然軽快し,身体所見,検査で異常がないことからprecordial catch syndromeと診断した.
著者
川野 晃嗣
出版者
医学書院
雑誌
臨床眼科 (ISSN:03705579)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.76-77, 1993-10-30

斜切開について 超音波乳化吸引術および6mm光学部直径眼内レンズ移植の際に強角膜切開の中心を1時半ないし10時半に置いて12時経線を切開しないでおくと(斜切開すなわち後述のベント切開),術後早期から角膜乱視の変化が少なく長期に安定している(図1)。これはこの切開部位が,外眼器(眼瞼,外眼筋)の影響を受けにくいために創傷治癒が起こりやすいことで説明される。 一般に眼球外の病的組織や器官,あるいは外眼手術が角膜乱視と関連をもつことについては過去に多くの報告がある。古くは霰粒腫が一過性に角膜乱視をひき起こすという報告があり,また眼瞼いちご状血管腫が眼球を圧迫することによって,その圧迫方向に角膜乱視強主経線が形成される報告,また先天性眼瞼下垂による角膜乱視が原因で屈折性弱視をひき起こすという報告,さらに眼瞼下垂の手術法によっては角膜乱視が減少したり増強するとした報告など,またさらには斜視手術後の一過性角膜乱視変化の報告などである。

1 0 0 0 ApoM

著者
蔵野 信
出版者
医学書院
雑誌
検査と技術 (ISSN:03012611)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.1395-1397, 2012-11-01

はじめに 細胞・組織の代謝,機能維持に必要なコレステロールや中性脂肪は,疎水性であり,それ単独では循環血液中では存在できない.そのため,生物の循環血液中では,コレステロールや中性脂肪は,蛋白質とともに低比重リポ蛋白(low density lipoprotein,LDL)や高比重リポ蛋白(high density lipoprotein,HDL)のようなリポ蛋白という複合体の形をとって,組織間でやり取りされる.このリポ蛋白の形成に重要な蛋白は,アポ蛋白〔アポリポ蛋白(apolipoprotein,Apo)〕と呼ばれる.すなわち,アポ蛋白は,「血中での存在様式が主にリポ蛋白上である蛋白質」と定義されている.現在,日常臨床において測定されているアポ蛋白は,ApoA-Ⅰ,ApoA-Ⅱ,ApoB,ApoC-Ⅱ,ApoC-Ⅲ,ApoEであるが,その他,日常臨床にはいまだ導入されていないが,現在までに十数種類のアポ蛋白が同定されている. アポ蛋白は,以前はリポ蛋白代謝にのみかかわる蛋白質であると考えられてきたが,多種多様の生物学的作用をもつと考えられてきているアポ蛋白もある.そのなかで本稿では,比較的マイナーなアポ蛋白であるが,特に近年,血管生物学,免疫学をはじめとするさまざまな分野において重要な生理活性をもつリゾリン脂質であるスフィンゴシン1-リン酸(sphingosine-1-phosphate,S1P)との関連が注目を集めているApoMについて概説する.
著者
木村 聡元 大塚 幸喜 八重樫 瑞典 箱崎 将規 松尾 鉄平 藤井 仁志 佐藤 慧 高清水 清治 畑中 智貴 佐々木 章
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.72, no.8, pp.952-957, 2017-08-20

【ポイント】◆現在漢方薬は,西洋医学的解析が進み,少しずつエビデンスが蓄積され,使用しやすくなってきた.◆大腸癌における漢方薬は,おもに周術期の合併症予防と抗癌剤治療の有害事象対策に用いられることが多い.◆漢方薬は,その特性を理解し利用することで,今後も癌治療における重要な役割を担っていくものと考えている.
著者
照井 正 鳥居 秀嗣 黒川 一郎 大田 三代 栗本 沙里奈 山崎 清貴 木村 淳子 林 伸和
出版者
金原出版
雑誌
皮膚科の臨床 (ISSN:00181404)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.353-360, 2018-03-01

化膿性汗腺炎の本邦における罹患率は不明で,診断基準および治療指針も確立されていない。本研究は国内における化膿性汗腺炎の患者像,診療状況の把握のためJMDC Claims Databaseを用いて化膿性汗腺炎の患者背景,併存症および治療状況を検討した。その結果,国内の15歳以上65歳未満の年齢層における化膿性汗腺炎患者数は2921人で有病率は0.0039%と推計された。海外で関連が示唆されている喫煙,肥満,メタボリックシンドロームとの明らかな関連性はなかった。治療には内服抗菌剤,外用ステロイド,外用抗菌剤が主に用いられていた。臀部膿瘍,多発皮下膿瘍,慢性膿皮症などの病名で登録されている症例もあると思われる。今後,診断や治療の指針の作成が望まれる。
著者
田中 修 國嶋 有香 谷口 拓矢 大野 光生 松尾 政之
出版者
金原出版
雑誌
臨床放射線 (ISSN:00099252)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.1117-1120, 2018-10-10

近年の癌治療の進歩に伴い,生存率は以前に比して大幅に改善されるようになってきた。とりわけ放射線治療と化学療法は物理学・生物学の進歩に伴い癌を根治できるようにまで発展した1)。一方,放射線治療や化学療法は以前よりも治療期間が長くなるようになってきた。例えば放射線治療においては強度変調放射線治療(IMRT)によってこれまで以上に癌病巣に対して放射線線量を上げることができるようになった2)。化学療法においても分子標的薬剤などの出現により3rdラインや4thラインの治療まで様々な種類の薬剤を投与することができるようになってきた。このように治療の進歩に伴って患者の治療期間も長くなるようになってきている。
著者
遠藤 正浩
出版者
学研メディカル秀潤社
雑誌
画像診断 (ISSN:02850524)
巻号頁・発行日
vol.34, no.11, 2014-09-10

症例1 60 歳台,女性.検診で胸部異常影を指摘された際に,精査のCT で偶然にすりガラス影を示す結節(以下,すりガラス状結節)を指摘された.症例2 70 歳台,女性.子宮頸癌術後の経過観察のCT で,偶然に異常を指摘された.呼吸器症状などはない.
著者
水野 克己 水野 紀子
出版者
医学書院
雑誌
助産雑誌 (ISSN:13478168)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.727-732, 2016-09-25

オキシトシンは子宮収縮,射乳反射などの作用を司るホルモンであることは広く知られています。本稿では,育児期においても重要な働きをもつオキシトシンに注目し,愛着行動と母乳育児を中心に解説します。
著者
野村 文夫
出版者
医学書院
雑誌
medicina (ISSN:00257699)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.195-196, 2015-04-01

検査の概要 aspartate aminotransferase(AST)とalanine aminotransferase(ALT)は,それぞれaspartic acidとalanineのα-アミノ基をケトグルタール酸のα-ケト基に転移する酵素であり,トランスアミナーゼと総称される.以前はASTはGOT,ALTはGPTと呼ばれていた. 両酵素ともきわめて多くの臓器に存在するが,組織中のAST濃度が最も高いのは肝臓であり,次いで心臓,骨格筋,腎,脳,膵,肺,白血球,赤血球の順である.ALT濃度も肝臓で最も高く,肝特異性はALTのほうがASTよりも高い.肝胆道疾患のスクリーニングや経過観察の目的で用いられることが多いが,特にASTは心疾患,筋疾患,溶血性疾患においても上昇する.ASTは肝細胞では細胞質(sAST)とミトコンドリア(mAST)に存在する.健常人血中では大部分がsASTであり,通常はmASTが上昇するのは重度の肝障害の場合である.
著者
高橋 俊彦 本城 秀次
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.21, no.9, pp.945-952, 1979-09-15

I.はじめに 病者の身近にいる人物が瓜二つであるがまったく別の人物と入れ替っている,と訴える症例については1923年Capgrasら1)がl’illusion des sosiesとして報告して以後,フランス語圏を中心に症例の報告がなされてきたが,最近日本でも報告がいくつかみられるようになった2〜10)。そして諸家は,その症状の特異さの故にカプグラ症候群(syndro—me de Capgras)として特別の単位の如く扱ったり,あるいは精神病の一症状としてのウエイトしか置かなかったりして,一定しない。 ところで「瓜二つ妄想」の発現はある程度年齢が高くなってからといわれている。従来の報告によれば多くは30歳以上であり,10歳台のものはわれわれの知る限りわずかにTodd11)の報告した17歳の少女とMoskowitz, J. A.12)の12歳の症例ぐらいである。 今回われわれは13歳と15歳に「瓜二つ妄想」を発した男女2症例を経験したので,その若年齢であることに注目して報告し,若干の精神病理学的考察を試みたい。
著者
木村 專太郎
出版者
医学書院
雑誌
臨床整形外科 (ISSN:05570433)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.442-445, 2007-05-25

まえがき 今回は福岡黒田藩の分藩秋月藩医,緒方春朔について述べる.彼は漢方医であったが,蘭学が江戸末期に栄えるようになった「キー・パーソン」の1人である.春朔は「人痘による種痘法」を,寛政2年(1790)に秋月藩内で行った.これは,寛政8年(1796)5月14日に英国人エドワード・ジェンナーが,牛痘の種痘を始める前の話である. 春朔の種痘から約40年前の宝暦2年(1552)に,医書「医宗金鑑」が中国から輸入された.その中には「人痘による種痘法」が記述されて,長崎に来た中国人の種痘医李仁山(りじんせん)が,その書に記述されている方法を用いて,長崎の医師たちに「種痘法」を教えた.その後長崎で「種痘」が一時行われた模様であったが,継続されなかった.詳しい様子は不明である.しかし長崎でこの種痘法を学んだ琉球の医師上江州倫完(うえすりんかん)(1732~1812)は,春朔が行ったより24年前の明和3年(1766)に,この「種痘」を沖縄で行い,その後沖繩では継続的に行われていたようである.
著者
帖佐 悦男
出版者
三輪書店
雑誌
脊椎脊髄ジャーナル (ISSN:09144412)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.322-324, 2015-04-25

提唱名 Fabere sign(test),figure-four testと呼ばれることもある
著者
池上 千寿子
出版者
医学書院
雑誌
助産婦雑誌 (ISSN:00471836)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.611-614, 1983-07-25

PMS論争に火をつけた幼児虐待事件 6人の子をもつシャーリー・サントスさん。ふ と気づくと4歳になる末娘が,ソファの上でぐっ たり。脚はミミズばれで,血尿もでています。「ス ワッ,一大事」と救急隊を呼びました。かけつけ た救急隊員が末娘を診察。家の中は物盗りにやら れた気配もなく,家庭内幼児虐待(チャイルド・ アビュースchild abuse)として警察に連絡。4時 間後,当の母親シャーリーさんが虐待犯として逮 捕されてしまいました。シャーリーさんは黒人で 未婚です。 これだけの事件ならば,目下アメリカで社会問 題となっている,幼児虐待の典型的一例(学齢前 の子どもに対する暴行傷害や暴行致死は,年間3 〜35万件と推定されています)として,統計数値 をひとつふやすだけ。未婚であることや,サント ス家の住むニューヨーク・ブルックリンの都市環 境などを問題にする専門家はいるかもしれません が,すぐ忘れられたことでしょう。
著者
武藤 教志
出版者
医学書院
雑誌
精神看護 (ISSN:13432761)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.317-327, 2018-07-15

この特集の目的 毎日の看護記録に何を書けばいいんだろう? これで良い看護記録と言えるだろうか? 悩みますよね。精神科は本当に不思議なことに、あらゆる診療科の中で看護記録の独り立ち時期がすごく早い。新人は、数回、数日、看護記録の書き方(と言うより、その施設の記録に関する公式ルールと暗黙の了解)の手ほどきを受け、見よう見まねでやっていくものの、記録の基本形も、良い記録とはどのようなものなのかもわからないままの独り立ちです。
著者
大鶴 任彦 加藤 義治 森田 裕司
出版者
南江堂
雑誌
臨床雑誌整形外科 (ISSN:00305901)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.1135-1139, 2012-10-01

単純性股関節炎(TS)は自然軽快する予後良好な疾患であるが、化膿性股関節炎(SA)との鑑別が困難な症例や再発例・遷延例またはPerthes病(PD)との関連が推測される症例報告もある。今回、TS50例(男児31例、女児19例)53股を対象に、臨床像、SAとの鑑別、歩行能力別の病態について検討した。その結果、1)発症年齢は2~13歳(平均6.7歳)で、先行病歴は感染性疾患が40%と最も多く、次いで転倒や激しい運動14%、アレルギー疾患9.0%の順であった。2)発症~初診の日数は平均3.1日(0~30日)、発症~症状消失の日数は7.4日(1~35日)であり、再発を1例に同側で認めた。また月別発症数は2月、3月、10月、11月に多かった。3)全例で初診から3ヵ月後まで経過観察したところ、49例52股は症状が自然軽快して関節内水腫は消失したが、1例1股では初診3ヵ月後に骨頭壊死を認め、PDに進展したと考えられた。4)TS群とSA群では体温:38.3℃、CRP:1.23mg/dl、赤沈:45.5mm/時を境界に鑑別が可能と考えられた。尚、TS群の歩行可能例では体温・CRP・赤沈・WBCは相互に正の相関を、年齢とWBCでは負の相関を認め、歩行不能例では相互の相関は認められなかった。
著者
大鶴 任彦 加藤 義治 櫻井 裕之 中塚 栄二 嶋田 耕二郎 久保田 元也 森田 裕司
出版者
南江堂
雑誌
別冊整形外科 (ISSN:02871645)
巻号頁・発行日
vol.1, no.57, pp.135-138, 2010-04-10

難治性化膿性股関節炎(SA)に対する筋皮弁移植術の有用性について検討した。対象は2000年以降に手術的治療を行うも再燃を繰り返し、最終的に筋皮弁移植術を行ったSA 5例(男性2例、女性3例、平均年齢54.6歳)であった。起炎菌はメチシリン耐性表皮ブドウ球菌(MRSE)2例、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、メチシリン感受性ブドウ球菌(MSSA)、Bacteroides fragilis 各1例で、診断から筋皮弁移植術まで平均20.7ヵ月、筋皮弁移植術までの既往手術回数は平均4.4回、使用筋弁は腹直筋1例、外側広筋2例、外側広筋+大腿筋膜張筋1例、外側広筋+大腿直筋1例であった。その結果、術後経過観察期間平均37.2ヵ月の最終時における股関節は全例がGirdlestoneであり、対麻痺の1例以外は捕高靴と杖使用にて自立歩行が可能であった。1例に感染再発が認められたが、抗生物質の点滴投与で軽快した。以上、成人の難治性SAに対する筋皮弁移植術は有効な手術方法と考えられた。
著者
大鶴 任彦 森田 康介 堀内 悠平 島本 周治 森田 裕司 加藤 義治
出版者
金原出版
雑誌
整形・災害外科 (ISSN:03874095)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.111-115, 2016-01-01

発育性股関節形成不全の診断では臼蓋側被覆だけでなく前方被覆の評価も重要である。そこで今回、著者らはトモシンセンス(TS)立位矢状断像を用いて臼蓋前方被覆を計測して、その有用性をfalse profile(FP)像と比較検討した。対象は前、初期変形股関節症で隣接関節に障害がない34例(男性7例、女性27例、平均年齢55.8歳)および健康成人ボランティア30例(男性25例、女性5例、平均年齢36.5歳)であった。これらを対象にTS像とFP像を撮影してvertical center anterior margin(VCA)角を測定し、臼蓋前方被覆を評価した。その結果、1)TS-VCA角はFP-VCA角より有意に大きく、TSの方の再現性が高かった。また、TS-VCA角とFP-VCA角は高い正の相関を示し、臼蓋前方被覆の計測ツールとしてTSは極めて有用であると考えられた。その理由として撮影時の体位設定が容易であること、臼蓋縁の変形があっても臼蓋前縁を明瞭に撮影できることが考えられた。以上より、トモシンセシスは立位で撮影が可能なため骨盤傾斜も考慮でき、放射線の実効線量も低く、汎用性の高いことが長所と考えられた。
著者
武田 厚司 奥 直人
出版者
金原一郎記念医学医療振興財団
雑誌
生体の科学 (ISSN:03709531)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.356-357, 2009-10-15

[用いられた物質/研究対象となった受容体] 亜鉛/NMDA受容体 記憶形成を司る海馬の亜鉛濃度は約300μMであり,他の領域と比べて高い。また,Timm's染色(亜鉛イオンが染まる)では苔状線維が存在する透明層が最も強く染色され,シャーファー側枝が存在するCA1放線層,貫通線維が存在する歯状回分子層も染色される。大脳皮質からの情報は貫通線維シナプス,苔状線維シナプス,シャーファー側枝シナプスの三つのシナプスで処理され,記憶される(図)。これらのシナプスはグルタミン酸作動性であり,グルタミン酸とともに亜鉛が放出される。特に,苔状線維ではすべての終末から亜鉛が放出される(シャーファー側枝では約45%の終末から)。細胞外に放出された亜鉛はグルタミン酸受容体などに作用し,グルタミン酸作動性シナプスの活動を調節する。
著者
平井 利明 福田 隆浩 鈴木 正彦 横地 正之 河村 満 後藤 淳 織茂 智之 藤ヶ﨑 純子
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.201-208, 2012-02-01

症例提示 司会(鈴木) それでは,症例提示をお願いします。 主治医 (平井) この症例は,タイトルにあるように急性の精神病様症状で発症して,いろいろな鑑別を考えながら治療したのですが,完全に袋小路に入ってしまって,何がどうなって進んだのかもよくわからないまま亡くなられました。病理解剖の結果,まさかという結果が出てきまして,自分自身とても勉強になりました。
著者
服部 兼敏 東山 弥生
出版者
医学書院
雑誌
看護研究 (ISSN:00228370)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.315-323, 2010-08-15

看護場面で使われるオノマトペ 「カピカピ」,一体何のことだろう。看護の現場で用いられているこのコトバに初めて接する部外者は,驚くことになるだろう。説明を受けて,「カピカピ」とは,痰というもともと粘稠にあるものが乾燥した傾向に向かうときの状態であることがわかる。では「キンキン」とは。これは,腸閉塞の状態をいう。腸閉塞患者の腹部に当てた聴診器から聞こえる音が,「キンキン」という金属音に聞こえるために,このようにいわれるようになったそうである。さらに,浮腫が現われた状態,これは「プヨってる」と表現される。これらは,言語学でいうオノマトペ(擬音語,擬態語)である。 看護という専門領域では,微妙な患者の状態を表わし,その微妙な状態の変化に対応した手技を喚動(動きを呼び起す)するために,オノマトペが頻繁に用いられているのではないだろうか。患者の生死を左右するという極限状態において,また看護師が自分の生命すらかけなければならないような状況において,極限状態に対峙するに相応しい認知行動がとられているのではないだろうか。看護現場のエキスパートを観察していると,そうとしか考えられない言語行動がみられる。