著者
高原 景滋 銘苅 壮宏 新城 文博 石原 孟 松浦 真一
出版者
一般社団法人 日本風力エネルギー学会
雑誌
風力エネルギー (ISSN:03876217)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.40-47, 2004 (Released:2011-01-27)
参考文献数
15

2003年9月11日に沖縄県宮古島を直撃した台風14号 (マエミー) は、中心気圧912hPa (全国歴代4位) の過去30年間で最大級の台風であった。宮古島地方気象台では、最大風速38.4m/s、最大瞬間風速74.1m/sを記録した。当社が保有する6基 (2, 900kW) の風力発電設備のうち、3基が倒壊、2基がブレード破損、1基がナセル損傷等の被害を受けた。平良市の宮古風力発電実証研究設備では、3号機と5号機の風車はタワーの入口扉上部で座屈して倒壊した。倒壊を免れた4号機はナセルを損傷し、6号機はブレード折損等の損傷を受けた。また、城辺町の七又風力発電実証研究設備では、1号機は基礎破壊により倒壊し、2号機はブレード折損等の損傷を受けた。風車倒壊等事故時の風速解析結果から、台風14号が通過した際の風力発電サイトでの最大風速は60m/sに達し、また、最大瞬間風速については90m/sに達したことを確認した。一方、構造解析の結果、タワーの座屈倒壊や基礎の破壊について、そのメカニズムを解明することができた。
著者
今村 賢治 越前谷 博 江原 暉将 後藤 功雄 須藤 克仁 園尾 聡 綱川 隆司 中澤 敏明 二宮 崇 王 向莉
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.925-985, 2022 (Released:2022-09-15)
参考文献数
203

本解説論文では,特許を対象とした機械翻訳における種々の課題に対する関連技術の解説を行う.特許に対する機械翻訳は実用的にも学術的にも長い歴史を持つが,ニューラル機械翻訳の登場で新たな段階に進んできたと言える.そうした動向を踏まえ,訳抜け・過剰訳への対策,用語訳の統一,長文対策,低リソース言語対対策,評価,翻訳の高速化・省メモリ化,の6項目に分けて近年の関連技術を紹介し,今後の方向性を論じる.
著者
庄司 香
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.93-103, 2012 (Released:2017-08-04)
参考文献数
48

近年,世界で急速に予備選挙の実施事例が増え,それに伴い予備選挙研究も活性化してきているが,予備選挙の定義には混乱がみられ,比較分析のための枠組の精緻化もまだ進んでいない。本稿では,まず,予備選挙の類型とこれまでの研究の論点を,民主化という尺度を軸に整理し,予備選挙導入と政党の強さの関係について,オーストラリアを題材に考える。さらに,「参加」という尺度から逸脱していく台湾の事例や,政党候補者指名という行為そのものの否定へと行き着いたカリフォルニアの事例を通じて,予備選挙がもつ指名制度の「開放」というインペラティヴについて考察する。最後に,ナイジェリアとアルゼンチンの事例をもとに,それぞれ,政党候補者指名制度の法制化や予備選挙実施の全党義務化が示唆する,予備選挙研究の新しい視角を提示する。
著者
木村 美也子 尾島 俊之 近藤 克則
出版者
一般財団法人 日本健康開発財団
雑誌
日本健康開発雑誌 (ISSN:2432602X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.3-13, 2020-06-19 (Released:2020-06-19)
参考文献数
51
被引用文献数
2

背景・目的 新型コロナウイルス感染症がパンデミック(世界的な大流行)となり、外出や人との交流が難しくなっている。こうした状況の長期化は、閉じこもりや社会的孤立の増加につながりうるが、それによる健康への弊害にはどのようなものが予想されるであろうか。本稿では、日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study: JAGES)で蓄積されてきた研究から、高齢者の社会的行動と健康に関する知見を概括し、新型コロナウイルス感染症流行時の高齢者の健康の維持・向上に望ましい生活への示唆を得ることを目的とした。方法 JAGESによる研究の中から、高齢者の社会的行動と健康の関連を示した46件の論文(2009年~2020年発表)を抽出し、その知見を概括し、新型コロナウイルス感染症流行時に可能な健康対策について考察した。結果 介護、認知症、転倒、うつなどを予防し、高齢者の健康を維持・向上するためには、外出や他者との交流、運動や社会参加が重要であることが示された。それらの機会が制限されることで、要介護、認知症、早期死亡へのリスクが高まり、また要介護状態も重症化することが予測された。考察 社会的行動制限は感染リスクを抑えるために必要なことではあるものの、健康を損なうデメリットもあるため、感染リスクを抑えつつ、人との交流、社会参加の機会を設ける必要があると考えられた。密閉、密接、密集を回避しつつ、他者との交流を続けることで、感染リスクと将来の健康リスクが減じ得るだろう。
著者
山本 昇 長谷川 紘司 末田 武 木下 四郎
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.258-264, 1975-09-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
13
被引用文献数
4 1

This study was carried out to compare the effects in open interproximal areas on the plaque-removing ability of 1) toothbrushing plus the use of the interdental brush (Denticator Co.), and 2) toothbrushing plus the unwaxed dental floss (Gudebrod Bros. Silk Co.). Ten adults, without prosthetic restorations within or adjacent to the test areas and abnormal arrangement of the teeth, were devided into two groups.The participants performed either interdental cleaning procedure alternately at one week interval. The test teeth were consisting of first molars, lateral incisors and were in contact normally with neighbouring teeth and had open interdental spaces. The bucco-menial surfaces of the test teeth were estimated.The toothbrushing alone by modified Stillman's method removed 58% of interproximal plaque deposited at test areas, however notciable reduction of dental plaque were achieved by additional use of interdental cleaning devices (interdental brush 95%, dental floss 86%). There was no statistically significant difference between two.It has been concluded that it is difficult to clean the interproximal areas only using the toothbrush, and that the use of interdental brusn is effective for the interdental cleaning in open interproximal areas.
著者
宗臺 秀明
出版者
鶴見大学
雑誌
鶴見大学紀要. 第4部, 人文・社会・自然科学篇 = The bulletin of Tsurumi University. Pt. 4, Studies in humanities, social and natural sciences (ISSN:03898032)
巻号頁・発行日
no.56, pp.39-96, 2019-03

かわらけの型式分類とその変遷を遺跡内層序と遺跡間年代差から探り、かわらけは土師質土器が器種単純化と法量の二分化をとげる12 世紀前半から中頃に生じたと考えた。12 世紀第3 四半期までには在地土器がかわらけに収斂するのと併行して器種ごとに産地が異なる焼物を搬入する中世土器様式が成立した。その背景には京都における院政の開始と同様に東国社会に家の成立があり、惣領を核とする武士団が海上と陸上の物資流通に大きくかかわっていたことが要因としてあげられる。また、かわらけの変遷に年代を与えるには、共伴遺物よりも伴出遺物の最新年代が有効で、それも生産から廃棄までの期間が短い消耗品である東海系の山茶碗や瀬戸・常滑窯製品の内、碗・皿や鉢の年代を用いた。これらの検討を経て、かつて筆者が示したかわらけの編年に大きな変更を加える必要のないことを確認する一方で、土師質土器からかわらけが生じる点を重視して、かつてのⅠ期とⅡ期をⅠ期のab 小期に統合し、以後Ⅲ期をⅡ期へと一段階づつ段階を減少させた。鎌倉におけるかわらけの変遷において、大きな意味をもつのが「薄手丸深」と呼称されていたG型である。G 型はそれまでの皿形から埦形への移行と大・中・小の法量の3 分化を特徴とする。この特徴は併存する他型式のかわらけにも影響を与えた。13 世紀第3 四半期に登場し、1300 年前後に確立して14 世紀いっぱい生産され続けるG 型を「東国の武家政権のかわらけ」と措定した。ただし、G 型の形成には従来あまり注視されていなかったX 型が影響を与えていたのではないかと考えられるが、今回その証跡を確認することはできなかった。
著者
藤田 和生
出版者
日本動物心理学会
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.11-21, 2016 (Released:2016-06-27)
参考文献数
37

Dogs are known to be extremely sensitive to human behavior. They use human gestures such as pointing as a cue better than great apes. A question here is whether this wonderful human companion simply reads apparent "behavior" of us, or, like humans, more deeply some sort of indirect information the behavior implies. In three separate tests, including pointing games with a non-trustworthy person, inference of the door function from human behavior toward it, and third-party affective evaluation of human interactions, we show that dogs often utilize more than superficial actions they observe. Dogs are at least somewhat "cognitivists" rather than pure "behaviorists" that learn everything by simple association with observable stimuli.
著者
柏葉 武秀
出版者
北海道大学大学院文学研究科応用倫理研究教育センター
雑誌
応用倫理 (ISSN:18830110)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.34-44, 2010-03

本稿では、分析的伝統に立脚する現代の倫理学、とりわけリベラリズム政治哲学は障害者を公正に扱いえないという通説を検討する。たとえば、ロールズの社会契約論は正義の名にふさわしいまっとうな社会についての構想から障害者を排除していると強く批判されてきた。本稿の目的は、このリベラリズム政治哲学と障害学を架橋する可能性を探究することにある。本稿は以下の4節に分けられる。まず、障害者への財の分配をめぐって戦わされたロールズとセンの論争を瞥見する。次に、ロールズの政治的人格論こそが政治領域で障害者を不公正にあつかってしまう原因であると示したい。3節では、障害者の政治的・道徳的地位を基礎づけるには、自身の「ケイパビリティ・アプローチ」がロールズ正義論への最善の代替案だというヌスバウムの主張を跡づける。最後にケイパビリティ・アプローチが直面せざるをえない二つの問題を指摘する。

10 0 0 0 OA 本草綱目

著者
(明)李時珍//撰, (明)李建中//図
出版者
胡承竜
巻号頁・発行日
vol.第6冊(第5-7巻), 1590
著者
刈間 理介
出版者
日本安全教育学会
雑誌
安全教育学研究 (ISSN:13465171)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.15-27, 2006-03-31 (Released:2012-11-13)
参考文献数
31

The present society is surrounded with a variety of risks. Although the remarkable development of technology provides us with various benefits, risks are coincidentally augmented, requiring us to think about the coexistence with these risks. In this sense, risk communication is one of the critical measures that support us to decide how to face and mitigate the risks.Risk comm unication can be defined as the process which builds the consensus about the manner to cope with problematic risks through bi-directional exchange of information between those who inflict the risks and the recipient of them. When risk communication is held, the following attitudes will be required for those who are exposed with risks; 1) appropriate control of preconceived idea and emotion,2) the effort to collect and comprehend multilateral information,3) awareness about the existence of counter risks against the intended risk,4) preparedness to feed back the opinions and questions against the provided information about the risks. The intervention by education will be needed to nurture these attitudes for effective risk communication. Moreover, such education will contribute to the development of the ability for trust formation, which is essential to live in the volatile situation of the modem society.The purpose of this paper is to propose how the education for risk communication should be construc ted in schools and what should be intended in the teaching.
著者
齋藤 仁志
出版者
日本野鳥の会 神奈川支部
雑誌
BINOS (ISSN:13451227)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-6, 2014-11-10 (Released:2016-12-01)
参考文献数
20

1 2013年5月から2014年7月に金沢八景駅から相武隧道のバス停間で設定した調査ルートを路線バスで移動し、バスの中から目視でカラスによるゴミ集積所の食い散らかしと、集積所に集まるカラスの個体数を記録した。 2 収集所を「ポリ袋」、「ネット」、「容器」の3タイプに分けて記録した。調査終了時にはポリ袋0か所(0%)、ネット30か所(53.6%)、容器26か所(46.4%)であり、この結果と2000年の東京都と川崎市の収集所のタイプと比較してみたところ、調査地の方がはるかにネットと容器の普及が進んでいた。 3 ゴミの食い散らかしとカラスの数の季節変動は、それぞれ同じような傾向があり、夏は少なく、秋に増加、春に急増した。これらは、繁殖個体によるなわばり防衛行動の強化や、非繁殖個体の行動圏の変化、カラスの採餌内容の変化、周辺住民によるゴミ排出状況の変化などが関係している可能性があると考えられた。 4 ゴミの食い散らかしとカラスの数の曜日変動についても季節変動同様に類似した傾向があり、可燃ごみの日の火、土曜日が特に多かった。また、水~土曜日にかけて徐々に増加する傾向が見られた。可燃ゴミ収集日の翌日の水曜日と日曜日のカラスによる食い散らかしの数を比較したところ、日曜日の方が有意に多かった。これらの結果から、周辺住民がゴミ出しの日時をしっかりと守らないことが考えられ、特に週末はそれが顕著にみられた。
著者
吉川 徹
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.429-435, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
5

近年, 発達障害のある成人に対する就労支援のニーズが飛躍的に高まっている. しかし彼らの就労支援において, どのような支援が必要とされているかという点については, いまだ十分なコンセンサスが得られていない. 自閉スペクトラム症においては, 社会的動機づけの障害が中心的な役割を果たしていると考えられるようになってきている. また注意欠如・多動症においても遅延報酬障害が実行機能障害と並んで, 重要な役割を果たしていると考えられている. 本稿では成人発達障害者への就労支援の領域における, 動機づけの支援の必要性について考察する.
著者
暦本 純一
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.734-735, 2015-07-15
著者
高田 式久
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.745-749, 2012 (Released:2014-02-14)
参考文献数
16
被引用文献数
1
著者
落合 裕隆 白澤 貴子 島田 直樹 大津 忠弘 星野 祐美 小風 暁
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.452-457, 2010-12-28 (Released:2011-06-30)
参考文献数
28
被引用文献数
1
著者
舟津 昌平
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.48-61, 2020-12-20 (Released:2021-01-14)
参考文献数
37

本研究の目的は,産学連携プロジェクトを題材として,制度ロジック多元性下において組織がどのように多元な制度ロジックを両立すべくコンフリクトに対応するのかについて明らかにすることにある.本研究は事例研究を通じて,科学ロジックと事業ロジックが構成する制度ロジック多元性が生み出すコンフリクトに対し,組織が科学とも事業とも異なる「第3のロジック」を道具的に活用して制度ロジックを両立することを明らかにした.
著者
Keita Fujiwara Ryuichi Kawamura
出版者
公益社団法人 日本気象学会
雑誌
SOLA (ISSN:13496476)
巻号頁・発行日
pp.2022-029, (Released:2022-07-25)
被引用文献数
2

This study investigated a recent tendency of interannual precipitation variations during the Baiu season (June–July) in southern Kyushu, Japan. Long-term satellite precipitation observations revealed a significant amplification of the interannual variability of Baiu precipitation after the beginning of this century and the appearance of a quasi-quadrennial variation (QQV). Composite analyses with respect to the unstable regime of Baiu activity when the QQV prevailed suggested a possible link between the Indo-western Pacific Ocean Capacitor (IPOC) mode and the QQV. Regression analyses with an IPOC index showed the dominance of an anomalous anticyclone in the lower troposphere centered over the South China Sea and the Philippine Sea and enhanced poleward moisture transport along its western periphery. The interdecadal shift in remote IPOC influence seen around the year 2000 featured the westward (northward) extension of the low-level anomalous anticyclone toward the Bay of Bengal (southern Japan); consequently, the significant moisture flux convergence area covered southern Kyushu during the unstable Baiu regime, consistent with the QQV appearance during the same period. It is also inferred that the IPOC mode modulation may come from the increased impact of central Pacific El Niño/Southern Oscillation on the IPOC in recent decades.