著者
霜川 修
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

本研究は,正常線維芽細胞のγ-線照射を行った後に細胞をクローニングして,個々の細胞のゲノム変化を定量化することを目的とした。正常男性ヒト線維芽細胞に4グレイのγ-線照射を行い限外希釈して再培養して,細胞クローン10個を得た。また,対照としてγ-線照射を行わないでクローニングした細胞クローン10個を得た。ゲノムコピー数の解析を行うためにaffymetrix社製のGeneChipシステムを用いて,γ-線非照射細胞クローンとγ-線照射細胞クローンを解析してゲノムの大きな構造変化数を比較した。結果,γ-線非照射細胞とγ-線照射細胞クローンの両方にコピー数変化をともなった大きな部位(>1Mb)を検出できたが,γ-線非照射細胞において明らかにコピー数変化部位数が増加している傾向は認められなかった。理由としては,実験に用いたクロンーン化細胞数が少ないことが挙げられるが,明瞭な差異を検出できないのであれば解析細胞数を増やすことは,研究費用内では無理であったので,次の実施計画に移った。DNAの塩基変異を検出して定量化することを試みた。方法は,正常男性ヒト線維芽細胞に4グレイのγ-線照射を行いそのまま10万個の細胞を1日培養して,DNAを抽出してPCR後にプラスミドヘクローニング後シークエンス解析を行い変異部位の数を数えてγ-線非照射群と比較するのである。現在,xxx遺伝子,yyy遺伝子,zzz遺伝子をhigh-fiedility Taq polymeraseで増幅しクローニング後のシーケンス解析を行っている。一遺伝子当たり,500bp/clone x800clone=400,000,のべ400kbを解析している最中である。
著者
井口 泰泉
出版者
大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

周生期のマウスへのエストロゲン投与に、生殖器官に不可逆的な影響が現れる。この誘導には主としてエストロゲン受容体αが関与していることが明らかとなった。さらに、卵巣非依存の細胞増殖を示す膣で不可逆的に高発現している遺伝子を同定した。これらの遺伝子のメチル化状態を調べたところ、細胞増殖に関連する遺伝子のメチル化状態には差が認められなかったが、エストロゲン受容体αの活性を制御すると思われる遺伝子のメチル化状態が高く、この遺伝子の発現は低下していたことから、卵巣非依存の細胞増殖を示す膣ではエストロゲン受容体の働きを抑制する遺伝子にメチル化が入り、この遺伝子の発現が低下することにより、恒久的なエストロゲン受容体αの活性化、リン酸化が起こり、細胞増殖関連の遺伝子が恒久的に発現し、卵巣非依存の細胞増殖が起こっていると考えられる。
著者
坂本 竜哉
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

アユモドキの河川本流と産卵場所である氾濫原の間での回遊を見出した。これは淡水域に限られ、数kmと小規模である。野外調査から遡上と産卵を制御する環境-内分泌要因を示唆し、それを基に飼育下での行動の再現に成功した。現在、水没した陸地から生じる"におい"や、テストステロン、甲状腺ホルモンに絞りつつある。サケ科魚類等との比較から、これらは普遍的な回遊の制御要因である可能性がある。このシンプルかつコンパクトな「非通し回遊」は、回遊研究の魅力的なモデルであると思われる。
著者
松田 恒平 高橋 明義 安東 宏徳
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

哺乳類における最近の知見によれば、摂食行動は、脳の視床下部で発現する多数の脳ペプチドによって促進的あるいは抑制的に制御されていることが判明してきた。しかしながら、摂食行動の複雑な調節を司る神経機構の進化の過程における変遷については、殆ど判っていない。本研究は、キンギョにおける摂食行動の制御機構を明らかにすること、および得られた知見と他の動物における制御機構とを比較検討して、摂食行動の脳制御機構の進化の変遷を考察することを目的とした。キンギョの摂食行動が生殖や情動に関わる脳ペプチドの影響も強く受けながら制御されることを見出した。哺乳類や鳥類の機構と大きく異なる機構の存在も見出され、摂食調節の脳制御機構が進化的に変遷してきた可能性が示唆された。
著者
岩見 雅史 本 賢一 桜井 勝 桜井 勝
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

カイコガの変態時における脳の変態制御の中枢としての機能を探るために,発生過程での使用される遺伝子の網羅的解析を試みた。サブトラクションライブラリーから,エクジソン応答遺伝子を10遺伝子単離し,前胸腺刺激ホルモン産生細胞でのみ発現することを示した。マイクロアレイを用いた網羅的解析では,前終齢特異的発現を示す3遺伝子(ADAMTS様タンパク質,チトクロームP450,Kruppel様タンパク質をコード),終齢脳特異的発現を示す遺伝子(クチクラ様タンパク質をコード)を同定した。
著者
寺山 恭輔
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

スターリン体制確立期にあたる1930年代について、主要な決定機関たる政治局の諸決定を特別ファイルを含めてほぼくまなく収集したが、その他の史料館の史料も利用しながら、最初の事例としてソ連のモンゴル政策について本にまとめた。当該問題に関連して、秘密警察その他これまでアクセスの困難であった史料を利用した多くの著作を収集し、アルヒーフ史料とともに、新疆、ソ連極東地域について著作を準備中である。その他の地域についてもまとめる作業を行っている。
著者
柿澤 昌
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

平成18年度には、主に薬理学的実験により、申請者自身が見出した一酸化窒素(NO)依存的な小脳平行線維-プルキンエ細胞シナプスにおけるLTPが細胞内のカルシウム上昇に依存することが示された。しかもイメージング法を用いた解析により、このCa上昇は、申請者自身の先行研究により示されていた、LTP誘導に必要なNOシグナルと空間的に一致することが示された。これらの結果は、LTP誘導時に小脳プルキンエ細胞内で活性化されるNOシグナルとCaシグナルの間に強い関連性があることを示唆する。そこで平成19年度は、両シグナルの関連性を明らかにすることを目標に研究を行った。先ず、NOシグナルによりCaシグナルが活性化される可能性を検討するため、マウス小脳スライス標本においてNO供与体を細胞外から投与し、プルキンエ細胞内Ca濃度に与える影響をイメージング法によって調べた。その結果、NO供与体投与により、プルキンエ細胞内Ca濃度に上昇がみられることが明らかとなった。引き続き、平行線維刺激により産生される内因性NOによってもプルキンエ細胞内Ca濃度上昇が見られることが明らかとなった。さらに、NOシグナルがプルキンエ細胞内Ca上昇を引き起こす分子機構を解明する一環として、細胞内NO受容タンパクである可溶性グアニル酸シクラーゼの関与を調べた。しかし、可溶性グアニル酸シクラーゼの阻害薬等を投与したところNOシグナルによる細胞内Ca上昇に阻害効果は見られなかった。
著者
斉藤 和義 河野 公俊 田中 良哉
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

転写因子に対する抗体とリウマチ性疾患の臨床病態との関連につき、その網羅的な解析をこころみた。96種類の細胞増殖周期、恒常性維持などに重要な機能をもつ、種々の核内因子をGST融合蛋白として調整し1枚のDEAEシートにブロッティングした。SLE10例をはじめとした患者血清中の対応抗原の検索を行った。血管炎症候群の血清の一部でHMG1に対する抗体が検出された。一方、SLEではPCNAに対する抗体が2例で検出されたが、その他の多数の抗原にも反応しており、疾患特異性や病態への関与などを示す傾向は認められなかった。抗原をアセチル化、メチル化して翻訳後修飾を受けた核内蛋白への血清の反応も検討したが、翻訳後修飾を行うことで新たに得られた陽性結果や陰性化などの変化は認めなかった。
著者
神吉 和夫
出版者
神戸大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

1.四上水の実像について「玉川上水大絵図」(東京都公文書館)、「正徳末頃ノ上水圖」等の絵図史料と江戸の都市図、『東京市史稿上水篇』第一、第二、『復刻 千川上水』、『江戸の上水と三田用水』、『本所区史』等の資料を用い、四上水の実像(配水区域、上水配管、分水断面)を具体的に明らかにした。2.四上水廃止と江戸の災害・防火政策との関係について江戸の災害(火災と水害)について『東京市史稿 変災篇』、吉原健一郎「江戸の災害年表」を基礎資料に用い、また、防火政策については池上彰彦「江戸火消制度の成立と展開」を基礎資料とし、四上水配水区域の災害を分析した。千川上水は江戸城の防火対策、本所上水は水害が廃止の理由として指摘できる。3.四上水廃止と武蔵野台地での新田開発の関係について「正徳末頃ノ上水圖」と『上水記』を比較して、亨保・元文期の武蔵野台地での新規の新田開発が、(1)千川・三田・青山三上水の上流側で行われている、(2)新規の取水量が廃止された三上水のそれより少ないことを明らかにした。この過程で重要な役割を担ったのが大岡越前守忠相であった。4.室鳩巣『献可録』の建言について室鳩巣『献可録』の建言の内容を詳細に検討し、(1)従来いわれてきた水道火災原因説は建言の一部である、(2)火災の原因について的確に把握している、(3)江戸城の火災対策として城の北方の水道、および南方の水道を撤去したいと主張したものであることを明らかにした。また、既往の研究が建言の水道火災原因説のみを取り上げ、その拡大解釈を行ったこと、通説は『中嶋工学博士記念 日本水道史』を嚆矢とし、『東京都水道史』で確立し『日本の上水』で広まったことを明らかにした。
著者
佐藤 比呂志 岩瀬 貴哉 池田 安隆 今泉 俊文 吉田 武義 佐藤 時幸 伊藤 谷生
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

平成16年度には、2003年7月26日に発生した宮城県北部地震の震源域を横断する反射法地震探査を行い、中新世に形成された正断層が逆断層として再活動することによって発生した地震であったことが判明した。この北方の宮城県北部で1900年以降に発生したM6.5を越える内陸地震は、2003年の震源域の北方の領域から、南方に破壊してきたことが明らかになった。この一連の地震は、中新世の日本海の拡大時の最末期に形成された北部本州リフトの東縁のリフト系の再活動によるものであった。このリフト系の延長である水沢地域における石油公団が実施した反射法地震探査データと、現地の活断層調査によって、この地域の活断層はリフト系のハーフグラーベンを限る西傾斜の正断層が逆断層として再活動して形成されたものであることが明らかになった。また、リストリックな形状の正断層の再活動に伴って、浅層の高魚部分をショートカットして形成された、footwall short cut thrustも見いだされた。同様の再活動は、このリフト系の東縁の延長である三戸地域でも見いだされ、地表地質と重力から推定される密度構造から、中新世初期に活動したハーフグラーベンの東縁の断層が鮮新世以降再活動し、現在、活断層として知られる折爪断層はこの再活動によって形成されている。東北日本の太平洋側に分布する活断層は、仙台市周辺の長町-利府断層も含め、こうした中新世の背弧海盆の拡大に伴って形成されたかつての正断層が再活動したものである。したがって、震源断層は均質な物質中で形成される30度前後の傾斜を有するものではなく、50度前後の高角度のものとなる。本研究プロジェクトで検討した、中央構造線活断層系や糸魚川-静岡構造線活断層などの成果も含め、現在の大規模な内陸地震は、既存の断層の再活動によって発生しており、深部の断層の形状は地質学的なプロセスと密接に関連している。
著者
冨岡 卓博
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、就学前幼児の描画での色使用の実態調査とその分析により、幼児における描画特性をとらえるとともに、色彩がもつ表現上の意味を明らかにすることにある。平成7年度8年度に受けた科学研究補助金によって、平成元年度より継続的に行ってきた調査のうち、平成3年度から平成8年度までののべ6年間で得たデータの整理をおこなった。その結果、美術教育においても感覚や性格、嗜好など測定する基礎的研究の可能性と妥当性を示すことができると再確信することができる情報を得ることができた。すなわち今年度は、6年間8学級グループ(年間延べ園児数で381名)のパス使用量測定のデータ整理をおこない、確たる規準値規準値を設定するための作業をし、年少(3歳児)、年中(4歳児)、年長(5歳児)の男児及び女児それぞれの規準値として扱う数値を得ることができた。調査対象の幼稚園が「園児自らが選ぶ活動」を軸としたカリキュラムで、描画することも含めて自由な活動からのデータである。ただ、こうした規準値設定の目的に対し、あらたに障碍となる問題として浮上したのが、測定対象のパスの消費しない、あるいはほんの僅かにとどまる子が予想以上に多い実態が示されたことである。そのため全体として、70%の多くを規準値対象児からはずさざるをえないと判断をした。こうした傾向の結果、各規準値の母数を目標としてきた100以上とすることができなかった。データ処理の上でも「描画活動をする子」の定義が課題となっている。また、規準値設定の対象園児とは別に、異なる教育カリキュラムの実践園を選び調査対象とした園児約50名について同様な調査方法をおこなって今年度末に3年間のデータを得た。今回、そのデータについてもさきに設定した規準値と直接比較研究ができることを確かめることができた。
著者
山口 梅太郎 茂木 源人 山冨 二郎
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1990

わが国の石灰石鉱山では、数100mにも達する長大な立坑を利用した露天採掘が行われる。近年になって、ようやく、この立坑内での岩石塊の挙動が解明されるようになってきたが、これらの研究を踏まえて、立坑に投入された鉱石(石灰石)の品位調整を行うことの可能性を得ることを試みた。鉱石は、立坑ヘトラックで運ばれて投入されるので、トラック毎の品位変動が立坑排出口での品位変動にどう影響するかを、立坑現場での実験とこれをモデル化した実験とによって観測し、さらに立坑内での鉱石の挙動のシミュレ-ションによって解析した。その結果1.垂直立坑システムよりも、斜坑システムにおける方が鉱石の混合が促進される。2.斜坑システムの混合特性は鉱石の粒径によって異なる。これは斜坑内において粒度偏析がおきるためと考えられる。3.斜坑システム内の混合特性は、斜坑内での鉱石の降下挙動、とくに不連続性による混合特性と、シュ-トホッパ-部におけるファンネルフロ-に起因する混合特性の合成したものと考えられる。4.斜坑システム内での鉱石の降下挙動は、単純な速度分布を仮定することによってモデル化することができる。5.これによって、鉱石立坑における鉱石の混合特性の推定が可能になった。6.鉱石立坑が使用年月と共に拡大して、容量が変化した場合の混合特性の変化を求めることができた。7.投入鉱石の品位変動が立坑の排出口でどうなるかのシミュレ-ションを行った。等を結論として得ることができた。
著者
河原 正泰
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ブラウン管ファンネルガラスからの鉛の回収と無害化を目的として、還元溶融による金属鉛の回収と塩化揮発による鉛の除去について検討した。また、鉛を回収した残渣からの鉛の溶出性についても検討を加えた。その結果、ブラウン管ファンネルガラスの最適処理法を見出すことができた。
著者
川田 勲 山本 誠 日浦 啓全 塚本 次郎 西村 武二 有光 一登 細田 豊 岩神 正郎 中山 義雄
出版者
高知大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本年度はこの研究の最後の年であり、各分担者は各自の研究成果の作成に取り組んだ。研究成果に付いては別途製本済みの報告書を提出するが、その内容は森林機能、とりわけ水源環境機能の分析を始め、樹木の下層植生と土壌の関係、森林の管理・施業と林道、地域の経済構造とりわけ山村振興の為の賞品作目の開発、さらに木材をめぐる産地構造や渇水を背景に水資源をめぐって都市と山村との関係等、多岐にわっている。高知大学ではこれまでの成果を地域に還元するため、本研究の対象地域である嶺北において関係者約250名の参加をへてシンポジュウムを開催した。これらの内容・成果も本研究の成果として印刷・公表する。
著者
田村 隆雄
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は入手が容易な河川水位データや地形図データを元に,中小流域以上の河川流域に置いて,雨水流出や物質流出を容易に行うことのできる汎用的な分布型流出モデルを構築することが目的である.平成19年度は,雨水流出については,一級河川吉野川上流域を対象にした流出解析を行い,森林斜面の保水能の評価などを行った.物質流出については,小雨年であったため使用に耐えうる洪水時の水質データを観測することができずモデル解析も行えなかったが,吉野川上流域の本流及び支流(例:貞光川,銅山川など)対象にした,平水時の詳細な水質観測を通して,土地利用状況や地質と水質特性(溶質濃度やヘキサダイヤグラムの形状特性)との関連性を検討し,物質流出を対象とした分布型流出モデル構築のための重要な知見の蓄積に努めた.成果をまとめると以下の通りである.1.雨水流出を対象とした分布型流出モデルを吉野川上流域の洪水時水文データに適用して,小流域毎(1km^2〜25km^2)の保水能の評価を行うことができた.植生の異なる岩木川上流域の森林流域の保水能と比較したところ,スギ人工林である吉野川上流域の保水能とブナ天然林の岩木川上流域の保水能はほぼ等しいという知見を得た.2.貞光川,銅山川,早明浦ダム上流の吉野川の3流域を対象にして,1流域当たり20箇所程度の詳細な平水時水質観測を行い,土地利用状況や地質と水質特性の関連性を検討した.その結果,珪酸は地質地形(崩壊地)及び土地利用(鉱山)の影響を強く受けること.硝酸は田畑や集落の近くで濃度が高いほか,上流での用水取水があるとその下流の濃度が高くなる傾向があることなどが分かった.
著者
井上 貴章
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

口腔癌の手術後は顎骨欠損や歯牙欠損を伴い、咀嚼、嚥下、構音などの重要な口腔機能や審美性が著しく損なわれ、患者の社会復帰の障害となる。そのリハビリテーションの手段として、顎補綴治療が行われるが、特に上顎の顎補綴では、個々の症例に差があり、様々な治療経過、術後経過をたどるため、術者や施設により治療方針、治療評価が異なる。このため、顎補綴治療の限界や可能性が不明確な状況で治療が行われているのが現状であり、的確な診断、治療方針、治療評価を確立することが必要である。上顎顎補綴の研究としては、上顎欠損患者と補綴装置に関する実態調査、顎義歯の設計に関する模型実験、顎義歯の機能時の動態と下顎運動との関係などが行われてきた。また、顎義歯本体の動特性を明らかにするため、振動解析が行われてきた。今回、顎義歯本体の振動解析結果との比較と顎義歯装着時の振動解析を行うための予備実験として、三次元有限要素法を用いて、顎義歯荷重時の応力分布について解析、検討した。実験モデルは上顎右側第一第二小臼歯、第一第二大臼歯欠損を伴う上顎右側部分切除症例を想定した。モデルの物性値ならびに栓塞部の設計はこれまでの報告を参考にした。栓塞部の形態を充実型、中空型、天蓋解放型の3種類とし、床の材質はレジン床のみとした。解析は、パーソナルコンピュータにて、汎用有限要素法解析プログラムCOSMOS/M(SRAC社/(株)大塚商会)を使用し、三次元線形静解析で行った。荷重点は顎義歯の左側第一大臼歯人工歯相当部に設定し、総荷重98Nの垂直荷重を付与した。直接維持装置として右側犬歯部、間接維持装置として左側第一第二小臼歯部、左側第一第二大臼歯部を拘束した。結果は、3種とも維持装置の基部に応力の集中がみられ、特に左側第一第二小臼歯基部への応力の集中が大きかった。今回の実験は解析ソフトに制限があり、モデル上にクラスプを設置することが出来なかった。今後は実験モデルをより詳細に作成するとともに、支持組織の性状、荷重条件、拘束条件、材質などによる影響についても検討していきたい。
著者
成田 滋 長瀬 久明 山城 新吾 中村 哲 棟方 哲弥
出版者
兵庫教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、現在大きな社会問題となっている生徒の「確かな学力」を定着させることを課題としている。学力の向上のためには、保護者も教師と同様に家庭や職場などで我が子の学習成果をフォローすることが肝要である。そこで、保護者と教師が教室外での連絡や連携を深めることを目指し、生徒の学習状況や習熟度を互いにモニターしあい、学習の遅れの兆候を発見し、早期に対応する措置を講じるシステムを提案することとした。2か年の研究を通し、遠隔による学習とコミュニケーション支援システムの設計、開発、実験、検証などの研究課題と取り組んだ。(1)学校-家庭間連携支援システムの構築職場や移動先などどこからでもICTを応用して、自分の生徒の学習状況を把握し、「確かな学力」を支援できるようなシステムを設計した。これを「学校-家庭間連携支援システム」と呼称した。ユビキタス遠隔指導システムの主要構成要素は、携帯によるメーリングリスト、web閲覧用ページ、話題の討議の場、評価ページなどである。(2)「ユビキタス遠隔指導システム」の設計と使いやすさのインターフェイスの改良とその効果の検証保護者と教師の連携を支援する携帯メール、メーリングリスト、動画像・静止画像の配信など、携帯電話を利用したユビキタスなシステムを構築しその機能を検証した。保護者からは、授業内容や子供の学習の様子がわかる、といった評価を得た。(3)電子媒体や印刷媒体を利用した保護者と教師とのコミュニケーション方法の長所や短所に関する多角的な検討生徒の学力の向上における両者のかかわりや果たす役割について、生徒情報の提供という観点から総合的に検討した。保護者はおおむね、電子媒体、例えば通常メールや携帯メール、携帯接続のWeb上の子どもの学習ポートフォリオ閲覧などに好意的な意見を寄せた。(4)教室での授業状況の保護者や学校内の教師らへの同時配信と、モバイル動画メールの組み合わせ実験この実験では、サーバ機能と受信者の回線状況の関係、受信者数や画面の大きさが、画質や音質などに及ぼす影響などを分析した。その結果、保護者への配信情報は、利用に耐えることが判明した。ただ、保護者や教師が容易に利用できるための研修が重要な要素であることも課題として浮かび上がった。
著者
竹田 正幸 篠原 歩 坂内 英夫 瀧本 英二 坂本 比呂志 畑埜 晃平 稲永 俊介
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では,圧縮データ処理に基づいて軽量XMLデータベース管理システム(DBMS)のための基盤技術を確立することを目標とし,主として以下の成果を得た.(1) 高速で軽量なオンライン文法圧縮アルゴリズムの開発. (2) 圧縮データ上で動作するq-グラム頻度計算アルゴリズムの開発. (3) 高速XMLデータストリームフィルタリング技術の開発. この他,DBMSの備えるべき知的データ処理機能として,パターンの効率的な枚挙,分類,オンライン予測等に関する研究を行い,多くの成果を得ている.
著者
GOUTAM Chakraborty
出版者
会津大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

研究の結果本年度では、前年度に引続き,柔らかい知的分散ネットワークに取り組み、次の研究を行ないました。(1)ユーザレベルプロトコルに基づいたマルチメディア通信のための柔らかいネットワークアーキテクチャ,(2)ユーザの要求に応じる柔らかいリソース・リザヴィーション・プロトコル,(3)ファジ-理論を用いたユーザの要求に反映する知的なメタレベルのインタフェース,(4)ユーザの要求の知的表現に適するプロトコルの合成法特に,前年度の研究結果を踏まえて,ユーザレベルプロトコルとそれに基づいたマルチメディア通信のための柔らかいネットワークアーキテクチャの提案それに基づくシステムの構成法,ファジ-論理に基づいた利用者の自然な要求を表現する形式的な方法などを改善したとともに,ユーザの自然要求をなるべく満たし,且つ,最小限にネットワーク資源を使用する資源のReservation方法とそれをサポートするネットワークルーチングアルゴリズムを開発しました。それを使用すれば,サービスの質(QoS)は、なるべく小さいコストで利用者の許容の範囲内で柔軟に保証することができる.それらの結果をまとめて、国際会議や論文誌に発表、掲載しました。その詳細は、別紙の論文リストを参照されたい。