著者
井上 博之 岩田 祐子
出版者
科学警察研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

:直接導入型質量分析計を用いて、エクスタシー錠(MDMA含有錠剤、アンフェタミン及びカフェイン含有錠剤等)や医薬品錠剤(アセトアミノフェン、ジアゼパム等含有)中の成分を迅速に判定する手法を開発した。また、薬物添加尿についても適用可能であった。本法は、遺留試料や尿試料からの薬毒物スクリーニング法として利用可能であると考えられた。また、シルデナフィル関連化合物の分析法や覚せい剤の迅速な定量分析法を開発した。
著者
佐藤 哲彦
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

薬物政策は国によって異なっているが、本研究は日本、イギリス、アメリカ、オランダの政策の違いが何に根ざすのかを分析した。その結果、かつてのイギリスや現在のオランダの政策が薬物使用者を社会の成員として認める近代的な秩序を構想し、医療やリハビリテーションなどを中心として使用者を処遇する一方、日本やアメリカは成員の同質化を基にした社会秩序を志向し、使用者を秩序外に隔離排除する処遇をしていることが明らかになった。
著者
河村 智也
出版者
浜松医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、胎生期ストレスを与えられたラットの依存性薬物に対する感受性の変化を、脳内における生化学的・形態学的変化と関連することを目的とした。そこで本年度は、胎生期ストレスが仔に及ぼす影響のうち、脳形成に及ぼす影響と、成長後のストレスに対するコルチコステロン反応およびコカイン報酬効果に及ぼす影響を検討した。胎生期ストレスとして、妊娠13日目から17日目まで、1日3回母親を強い光の下で拘束した。生後10日で仔を灌流し、ストレス期間中の細胞新生の様子をBrdU免疫組織化学染色により観察した。また、同じくストレスを受けた母親から生まれた仔について、成長後のコカイン報酬効果に違いがあるかをコカイン誘発性条件性場所選好法を用いて測定した。加えて、ベースラインレベル、30分の拘束ストレス終了直後、1時間後、2時間後における血漿中コルチコステロン放出量を測定した。その結果、胎生期ストレスを受けた群は、受けなかった群に比べて側坐核、海馬で著しい細胞新生の減少を示したが、扁桃体では大きな違いを示さなかった。成長後、胎生期ストレス群のラットは、ベースラインレベルとストレス終了2時間後において、非胎生期ストレス群よりも高いコルチコステロン放出量を示した。しかしながらコカイン誘発性条件性場所選好の成立に両群間の違いは見られなかった。以上の結果より、胎生期ストレスは成長中の脳形成と成長後のコルチコステロン反応に影響を及ぼすが、コカイン誘発性条件性場所選好には影響を及ぼさないことが示唆された。
著者
鈴木 修 渡部 加奈子 野澤 秀樹 権守 邦夫
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

1. LC-TOFMS装置の立ち上げと習熟: 導入したLC-TOFMS装置は、最新鋭のもので、制御システムはかなり進化している。TOFMS装置自体も従来の四重極型やイオントラップ型とは原理的に異なっている。最近になって、ようやく本装置を自由に使いこなせるようになった。2. マジックマッシュルームからのサイロシンとサイロシビンの検出: きのこ毒の中で、低分子かつ強力な有害活性を有す物質である。まずこれらの物質の抽出法を確立し、LC-TOFMSとLC-Qq-TOFMSの両モードで分析比較したところ、両モードにおける検出限界に余り差はなく、いずれも注入量で約20pgであった。現在異性体であるブフォテニンを内部標準とし、実験を継続しているところである。3. 強力きのこ毒アマニチン類のLC-TOFMSによる分析: ドクツルタケやシロタマゴテングタケに含まれるアマニチン類は、特に毒性が強く、数ミリグラムでヒトを死亡させるほどである。従って、この毒素を生物学的化学兵器として使用する事も可能と考えられる。この毒素類は分子量900以上の環状ペプチドで独特の構造を持つ。従って、同じく環状ペプチド構造を持つシクロスポリンAを内部標準物質として用い、まずはα-アマニチンの分析法を構築した。検出限界は注入量で、50pgと高感度であった。4. MALDI質量分析イメージングシステムの立ち上げと法医学的応用: 本科学研究費補助金で導入したABI社製QSTAR XL TOFMS装置にはオプションとして、イメージングシステムを立ち上げる事が可能であるため、そのシステムを立ち上げた。現在慢性覚せい剤やコカイン中毒モデルラットを作製し、慢性中毒症状発現メカニズムを解明すべく、鋭意実験を行っている。
著者
十川 千春
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は、モノアミントランスポーター発現動態の解析を申心に、疼痛に関わる下行性抑制系神経におけるモノアミントランスポーターの役割と疼痛制御への関与について検討し、歯科領域で問題となっている神経因性疼痛の有効な治療法の開発基盤を得ることを目的とする。われわれはこれまでに、ヒトDAT(hDAT)およびヒトNET(hNET>には、末梢組織においてエクソン6を欠失する新規のスプライシングバリアントが存在することを見出してきた。さらに、今年度はこれらのバリアントの発現および機能調節について検討を行った。hDAT、hNETの野生型(FL)およびエクソン6欠失バリアント(-EX6)をCOS-7細胞にそれぞれ形質導入し、3^Hラベルした基質の取り込みにより基質輸送活性を、また、ウエスタンブロッティング法および免疫染色法にて細胞局在について検討を行った。さらに免疫沈降法によりFLと-EX6の相互作用についても検討を行った。hDAT-EX6およびhNET-EX6はいずれも、基質輸送活性が著しく低下しており、hDAT-EX6はコカインのアナログであるWIN35,428の特異的結合がみられなかった。また、ウエスタンブロッティングの結果より、両バリアントともに膜への移行が著しく低下しており、hDAT-EX6はFL-hDATよりも膜への移行が著しく遅いことが分かった。さらに、hDATについて免疫染色の結果より、FL-hDATはC末端領域が細胞内へ存在するが、hDAT-EX6はC末端領域が細胞外へ局在していることが示唆された。次に、FLと-EX6の相互作用について調べるため、FL-hDATとhDAT-EX6を共発現させた場合、基質輸送活性のVmaxが著しく低下し、km値も低下していた。また、膜への発現も低下しており、FL-hDATとhDAT-EX6は細胞内でヘテロ二量体を形成することが明らかとなった。以上の結果より、ヒトカテコラミントランスポーターのエクソン6欠失バリアントは野生型と結合して野生型の膜移行を制御し、発現・機能調節に関与していることが明らかとなった。神経伝達物質であるノルエピネフリンおよびドパミンの再取り込み機構をつかさどるNETおよびDATの発現調櫛がアイソマーム間の相互作用により制御されている可能性が示唆された。
著者
石黒 浩毅
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は神経細胞接着因子NrCAM低発現が依存易形成性にnegativeに働くというヒト死後脳や遺伝子改変マウスの先行研究成果を発展させたものであり、依存形成の阻害に働く分子ネットの一部を明らかにすることにより病態解明と治療法の確立等に寄与することを目的とした。まずはNrCAM以外の神経i接着因子についても遣伝子多型と依存症との関連が示され、これら神経ネットワーキングに関わる分子が依存形成に重要な役割を果たすことがわかった。さらに、ニューロン由来およびグリア由来の培養細胞におけるNrCAM遺伝子に対してsiRNAを用いて発現抑制を行うこと、ならびにNrcamノックアウトマウスの脳の遺伝子発現解析を行うことにより、NrCAMが影響を与える分子群の遺伝子発現を網羅的に検討した。ヒト死後脳を用いたNrCAM遺伝子多型が及ぼす遺伝子発現変化の割合は約50%であると定量できたので、50%程度の遺伝子発現抑制効果を得たsiRNA実験系組織ならびにheterozygoteノックアウトマウス脳を解析した。それぞれの組織に対するイルミナビーズァレイ解析装置による網羅的遺伝子発現解析では、主にグルタミン酸系やGABA系、その他の神経系の分子をコードする遺伝子の発現変化が認められた。その内、培養細胞系およびノックアウトマウス脳において共に遺伝子発現変化が確認されたグルタミン酸系酵素分子は、その阻害剤がモルヒネをはじめとする依存性薬物への形成阻害を起こすことから、治療薬としての可能性を示唆するもめと考えられた。
著者
高安 達典
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

マウスにおけるコカイン誘導肝障害時の障害機序の解析を行った。フェノバルビタールで前処理後コカインは腹腔内投与された。肝障害の指標として血清ALT値を測定したところ,コカイン投与直前67.4,コカイン投与6時間後11300,同10時間後13600,同24時間後10600,同48時間後3920であった。肝障害は門脈領域を中心とする白血球の浸潤と,著明な肝細胞壊死像が観察された。肝臓mRNAの発現を観察したところ,iNOSが増強されていることから,iNOSによる酸化ストレス関与が示唆された。さらに,N-アセチルシステインおよびcarboxyPTIOを投与したところ,10時間後で血清ALT値は各々40%と80%に減少した。N^G-モノメチルアルギニンで31%に減少した。これらの結果は過酸化物がコカイン誘導肝障害と密接に関係し,その一端としてNOの関与した酸化ストレスも強く示唆された。次に,コカイン誘導肝障害時において,TNF-αおよびTNFレセプターp55(TNFRI)の役割を明らかにする目的で,TNFRIを欠損するマウス(KO)を用いて,その役割を解析した。その結果,ALTおよびAST値において,野生型(WT)およびKOマウスの間にコカイン投与後6および10時間で有意差が見られ,明らかにKOマウスの障害は強かった。肝臓組織のHE染色像でもALTの指標と同様の傾向が示された。更に,肝臓組織の抗MPO抗体及び抗F4/80抗体を用いた免疫染色像の結果は肝臓組織において両者とも,KOマウスの方がWTマウスよりも有意に強く染色され,何れも,ALTの指標と類似した傾向が見られた。以上の結果から,コカインによる肝障害においてTNFα-TNF receptorI系はコカインによる肝障害時に防御的に作用していることが示された。この研究はコカイン誘導肝障害時の障害機構を解析する一端を開いた。
著者
浅野 泰一 田部井 久男 伏貫 義十 正留 隆
出版者
八戸工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

警察白書によれば,覚醒剤事犯大きな社会問題の一つであり,現在は1950年代の第一次乱用,1980年代の第二次乱用に続き第三次乱用期とされ,早急に解決しなければならない社会問題とされている。この問題を解決するためには,捜査現場において様々な生体試料から,覚醒剤メチルアンフェタミンを簡便,迅速,正確に検出し,陽性であれば,被疑者を即現行犯逮捕することが最も効果的であり,この目的に沿った科学捜査用覚醒剤簡易計測器を開発することへの要望が高まっている。近年,新規な有機物計測法として注目を集めているSPRに基づく生体膜相互作用解析装置は,測定原理の多様性から科学捜査用のドラッグセンサ化が容易な最新のセンシング技術として有効であると考えられる。裁判化学用の機器に求められる条件は,得られた計測データが裁判における証拠にされるるので測定結果は2重,3重の確からしさに基づく信頼性の高い方法でなけれなならない。本研究では測定結果の信頼性を高めるために,まず試料からメチルアンフェタミンンを分離した後に免疫反応を行わせ,この際生じる表面プラズモン共鳴現象による入射光の角度変化を検出することによって,尿中に含まれる覚醒剤を簡便・迅速・選択的に計測するための基礎技術の検討を行った。その結果,覚醒剤の保持時間は,尿中に共存する可能性の高いカフェインやエフェドリンの保持時間と明らかに異なり,保持時間を計測項目に取り入れることにより,覚醒剤のSPR計測結果の信頼性が一層高り,測定値の信頼性の向上という観点から裁判化学用機器におけるSPRクロマトグラフィの有効性が明らかのなった。
著者
田山 典男 浅利 英吉
出版者
岩手大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

本研究は, 筆者の提唱する『コンピュータ人体解剖技術CAT』を実現すべく, 人体のような3次元ディジタル物体像(3D像)をコンピュータ上に再構成し, 領域分割等の3次元処理を施し, 人体解剖のように3D像を実時間で任意に切出して立体表示するという技術の開発研究を行うものである.1.3D像の再構成実験:高分解能のX線撮影装置を一時借用してX線射影データの収集を行なった. それを特殊なサンプリング方法でコンピュータに取込み, 座標系統の変換処理を行ない, 3D像の再構成を試みた. 種々実験の結果, 対象物体が均質なボクセルから構成されている場合には, 理論に近づくことがわかった. そこで対象物体の周囲を細かなボクセルで扱えるように理論の修正が必要である.2.3次元並列処理コンピュータPIPE-IIのハードウェア増設:3方向からの平面状の並列アクセス機能と, ブロック組立てによるメモリ容量増設機能をもった4次元画像メモリQMUの方式設計を行ない, 64メモリモジュールからなるQMUを製作し, 所期の動作を確認した. 更に, アドレスレジスタを3D像処理向きに自動カウントするように改造した.3.PIPE-IIの図式マイクロプログラム作成ツールの拡張と命令開発:PIPE-IIは, 3次元データの並列処理をする特有のハードウェア機構をもっており, 対角型の語長が長いマイクロプログラムで制御される. 今回, 64ビットのマイクロフィールドを追加増設したので, そのマイクロプログラム作成ツールFADETの機能を拡張した. これで10個の専用命令を作成した.4.3D像の表示:従来のZバッファアルゴリズムを3次元生データの探査用に拡張する方法により, プログラムを作成し立体画像の生成を試みた. 一応の画像が得られたが, リアリティに乏しい. 高速化の面からも, もう少し工夫が必要と思われる.
著者
加藤 内蔵進 松本 淳 武田 喬男
出版者
名古屋大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

1.梅雨前線帯付近の広域水収支過程の解析の一環として、人工衛星のマイクロ波放射計データ(SSM/Iの19.35GHzと85.5GHz)に基づき、Liu and Curry(1992)のアルゴリズムを用いて、海上も含めた前線帯付近の降水量分布を評価した。日本列島で冷夏・大雨だった1993年と猛暑・渇水に見舞われた1994年暖候期等を例に解析を行ない、次の点が明らかになった。(1)梅雨前線が日本付近で特に活発であった93年7月初めには、東シナ海〜日本列島で5日雨量140ミリを越える大雨域が南北約300kmと広域に広がり、その南北の少雨域との間のきわだったコントラストが明らかになった。気象庁のレーダーアメダス合成データのある日本近傍で比較すると、それと良く一致していた。(2)このような特徴を持つ降雨分布が、93年には8月も含めて出現しやすかったのに加え、台風に伴う降水量も多かったが、94年は梅雨前線帯の位置が93年に比べ北偏したのみでなく、そこでの降水量自体も少ない傾向にあったことが分かった。(3)93年は、平年に比べて梅雨前線帯付近での下層の頃圧性は大変強く、前線帯での降水の強化と集中に関しては、南からの多量の水蒸気輸送に加えて、なんらかの傾圧性の役割も大きかったものと考えられる。2.前線帯スケール水収支過程におけるメソα降水系の役割評価の前段階として、1996年6〜7月における種子島周辺域での別途経費による集中豪雨特別観測データも利用して、期間中の前線帯とメソα降水系の振舞いの概要を調べた。その結果、(1)梅雨期にしては希なぐらい発達した低気圧に伴う寒冷前線付近の現象、(2)九州南部で発生・発達した積乱雲群の集団から、メソα低気圧の種が形成され中部日本の前線帯の水循環にも大きな影響を与えた例、等、今後の相互比較解析のための特に興味深い事例を抽出できた。
著者
小野 英哲
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

本研究では、塗床,張り床における床下地面および床仕上面凹凸の評価方法に関する研究を行った。始めに直径・深さの異なる2種の凹部を設けたアクリル製床下地に、メタクリル樹脂・エポキシ樹脂・ウレタン樹脂をそれぞれ3種の塗厚で施工し、硬化後に塗床表面に生じた凹凸量を測定し、床下地の凹部直径・深さおよび塗厚との関係を示した。次にエポキシ樹脂について官能検査を行い、塗床表面の凹凸量に関する視覚的観点から気になるか・気にならないかの尺度を構成し、この尺度を用いて床下地凹量の限界値を推定できる可能性を示した。さらに、床凹凸試料上をキャスターが走行した際にキャスターに生じる鉛直方向の加速度による床凹凸試料の序列の相関を、キャスターの仕様(重量,車輪の径,走行速度,車輪のかたさ)間で検討し、加速度により床凹凸に相対的序列をつけることが可能であること、加速度の観点から床凹凸を評価する際には床凹凸の断面形状のみでなく、かたさの要因も含めて評価する必要があることを示した。さらに欠陥に起因する床の不具合を調査し、欠陥のないコンクリート床下地の重要性を確認した。次に、コンクリート床下地表層部分の欠陥を発生させる施工における不適正の現状を把握し、さらに不適正に起因する欠陥を実験的に検証した。以上より、適正な計画,管理下における床下地コンクリート施工の重要性を再確認および指摘した。
著者
平野 宗夫 森山 聡之 橋本 晴行
出版者
九州大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1994

本研究の目的は、雲仙において、リアルタイムに土石流の予測を行う手法を開発し、予警報システムの確立を計ることである。まず土石流の現地観測を行い、ハイドログラフのデータの蓄積を行う。また建設省九州北部レーダなどのデータを収集し、降水レーダデータベースを構築する。次に、得られたハイドログラフ、水位と雨量などのデータをニューラルネットワークに与えて学習させ、予測システムの開発を行う。本研究で得られた結果は以下のとおりである。(1)普賢岳周辺の中尾川、湯江川において、超音波水位計、電波流速計などからなる計測システムを設置し、流下してくる土石流を観測した。'94年、'95年は例年にくらべて雨が少なく、得られたハイドログラフは小規模であった。(2)雲仙の時間雨量データの累加値と総雨量を入力とし、土石流による堆積土砂量を出力とするニューラルネットワーク・モデルを構築した。そのモデルの検証のために、水無川における雨量-土石流堆砂量の関係を土石流発生毎に、過去の事例を学習-次の事例に対して予測させた。予測結果は、本モデルが水無川における土石流堆砂量の予測に有益であることがわかった。(3)ニューラルネットワークを用いて水無川における土石流の流出解析を行った。土石流の流出に関する土砂水理学的式をもとにしたニューラルネットワーク・流出モデルは1993年6月12-13日の実測ハイドログラフをモデリングすることができた。さらに、その流出モデルは、1991年から1993年に発生した土石流の堆積土砂量を推算し、実測堆積土砂量と比較を行い、有効性を示した。(4)土石流の発生予測は降雨パターンを土石流発生パターンと不発生パターンに判別することと考え、クラス分類を目的としたLVQ・モデルを利用し、土石流の発生予測精度の向上を試みた。発生予測に用いたLVQは従来の階層型ネットワークに比べて、単純なアルゴリズムでありながら、高い精度で発生と不発生の判定が可能であった。また、従来の階層型ネットワークについては、その関数近似の特性を利用した土石流の発生限界降雨の評価手法を提案し、累加雨量と発生限界理論をもとに、その妥当性を示した。
著者
師岡 友紀 谷浦 葉子 三木 佐登美
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

看護基礎教育の臨地実習で「身体侵襲を伴う看護技術」を実施することは、新卒看護師にとってどのような意義があるか検討した。対象者175名のうち103名の同意を得、3ヵ月後・6ヵ月後・1年後に調査を行った。結果、身体侵襲を伴う看護技術を実施した場合、実施した技術に対する自己評価が高まるが、その傾向は全ての技術に当てはまらないこと、身体侵襲看護技術の経験のない場合はある場合と比較し就職1年後の離職願望が強いことが示された。実施の意義として「技術向上のための学習意欲が増す」と評価する割合が大きかった。
著者
南野 森
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

研究期間の全般にわたり、最新のフランス憲法学・原理論に関する文献を多数収集するとともに、現代フランスにおけるもっとも重要な法理論家であるミシェル・トロペールの論攷を5本翻訳し発表した。また、研究テーマに関連する雑誌論文を邦語・仏語で7本、図書も邦語・仏語で7冊刊行することができた。さらに、日仏の研究者交流にもつとめ、数回の共同研究会を日仏両国(うち一回は研究代表者の勤務校)において開催することもできた。
著者
高橋 浩二郎 柳原 延章 豊平 由美子
出版者
産業医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

交感神経系のモデル実験である培養ウシ副腎髄質細胞を用いて植物由来化合物のカテコールアミン(CA)動態について検討した。その結果、蜜柑の果皮成分のノビレチン、タバコの葉の成分ニコチン及び大豆成分のゲニステインは、それぞれCA生合成-分泌や再取り込みに影響を及ぼすことが明らかとなった。これらの化合物は、日常生活において食物や嗜好品として摂取しており、その薬理学的な影響については今後注意深く見守らなければならない。
著者
名倉 仁
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

バクテリア由来のNaチャネルであるNaChBacの変異体解析によって、電位センサーに位置するT110にシステインを導入した際に自発的なチャネルの失活が観察されており、この事実はT110C同士の結合が強く示唆されていた。これについて、4つのサブユニットを結合させた変異体の解析によって、T110間の近接は一つのチャネル内部で起こりうる事を示すことが出来た。また、今までの様々な変異体の解析から得られた知見を統合し、これをNaChBac以外のチャネルで見られる現象とも比較しながら実験結果を解釈して、電位依存性イオンチャネルに対する議論を深めることが出来た。まず、4量体型のNaChBac変異体に導入したシステインの影響を解析した結果から、24回膜貫通型のイオンチャネルのサプユニット配置を議論し、これらのチャネルのサブユニットが周回状の配置を取らない可能性を示唆した。また、T110C変異体の電流減衰の挙動を解析した結果から、電位センサーの側方への可動性は、脂質膜の性質変化などの膜電位とは別の機構によって制御されているのではないかという仮説を提起した。電位依存性イオンチャネルの開閉と脂質2重膜の性質との関係は、電位依存性のKチャネルでも報告されており、本研究で見出された電位センサーの側方への動きはこういった性質の基礎となっている可能性を示唆した。本研究の結果は、Biochemical and Biophysical Research Communications (399巻341-346頁)に投稿して発表した。
著者
寺井 隆幸 鈴木 晶大 田中 照也 星野 毅 久保 俊晴 志村 憲一郎
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

核融合炉ブランケットでの使用が検討されている各種トリチウム増殖材料候補中でのトリチウム挙動及びブランケット配管におけるトリチウム漏洩防止についての研究を実施し、液体リチウム及び流動下液体リチウム鉛中水素同位体の配管を通しての漏洩速度及び移行メカニズム、さまざまな酸化還元状態の溶融塩候補材料中のトリチウム化学形変化、固体酸化物候補材からの蒸発挙動を明らかにするとともに、トリチウム透過防止コーティング中のトリチウム移行メカニズム解明とコーティング作成手法の最適化を行った。
著者
山口 茂弘
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(S)
巻号頁・発行日
2007

有機エレクトロニクス分野の発展を担う鍵材料の創出を目指し,優れた光・電子物性をもつ新奇π電子系分子の開発に取り組んだ.典型元素に特徴を生かした分子設計,新反応の開発,分子配向制御を機軸に取り組み,新奇な骨格をもつ一連のπ電子系分子の合成を達成した.高効率固体発光,白色発光,高電荷移動度などの標的物性を実現するとともに,安定ホウ素材料や反芳香族性π電子系の設計指針などの新たな分子設計指針を確立した.
著者
岡 美智代 恩幣 宏美 川村 佐和子 村上 みち子 山名 栄子 上星 浩子 高橋 さつき 越井 英美子
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

患者、看護職、医療費削減という3方向に効果のある患者教育プログラムを学ぶための、看護職向けの学習システムの開発と評価を目的とした研究を行った。その結果、6ステップからなるEASE(イーズ)プログラムの学習システムを開発した。またその学習システムの効果として、患者のセルフマネジメント行動の向上、看護職の適切な発話内容が明らかになった。医療費の試算では、676億6144万円の削減効果が見いだされた。
著者
田渕 祥恵 小板橋 喜久代 柳 奈津子 小林 しのぶ
出版者
群馬大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

リラクセーション法(呼吸法)による睡眠改善効果を検証することを目的に基礎研究を実施した。健常成人を対象に腹式呼吸法を実施する対象者(実験群)と実施しない対象者(対照群)を無作為に振り分け、腹式呼吸法の有用性について検討した。その結果、5日間の腹式呼吸法の練習を実施した後、就寝直前に腹式呼吸法を実施した場合には入眠潜時(就床から入眠までの時間)が短縮されることが示唆された。