著者
太田 保之
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

1990年11月に始まった雲仙岳噴火災害は、1996年6月に噴火終息宣言が出されるまでに、44人の死者と広大な農耕地や多数の・家屋の焼失・埋没をもたらした。1991年9月から1995年9月までの期間に行われた被災住民の精神的健康に対する支援活動の中で、総計5回の健康調査が実施された。調査によって、次の諸点が明らかになった。(1)General Health Questionnaire30項目版(GHQ)の所見から、(1)GHQ得点8点以上(GHQ高得点者)のハイリスク群は、被災から8年間で66.9%から32.4%へと低下したが、被災地と同じ島原半島にあり、社会・経済状況が類似した対照地域の住民のGHQ高得点者率(12.3%)よりも明らかに高い水準にあった。しかし、(2)「不安感・緊張感」関連症状や「社会的無能力感」関連症状などは、避難生活開始から12ヶ月で改善した。(3)「抑うつ感」関連症状は、避難生活開始から3年〜4年以上も継続していた。(4)「対人関係困難感」関連症状は、被災から8年後にも継続していた。このように、被災住民の精神状態は時間経過と共に変化することが明らかになった。(2)自宅に戻った後の被災住民の生活実態と精神状態との関連でみると、(1)生活リズムの顕著な変化、(2)家族内役割の顕著な変化、(4)馴染みの人との付き合い減少、(5)健康感の喪失、などは精神的不健康と有意な関係にあった。(3)被災住民の精神的不健康のリスク要因は、(1)女性、(2)中・高齢者、(3)持病で長期間の受療者、(4)初期の頻回避難経験者、(5)自営業的就業者などであった。災害発生時には、被災住民の支援ニーズ変容プロセスを念頭に置いて、支援活動を行うことの必要性が明らかになった。
著者
片山 英雄 林 喜美子
出版者
川崎医療短期大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

研究の目的看護婦養成においてロールプレイは患者の心情の共感的受容という「理念」を「行動的に理解」させることができる優れた教授法であると一般に言われている.これを終末期老人患者の援助場面へ適用し,その効果を実証することを目的とした.研究の実施と結果1.臨床実習で学生が実際に体験した,終末期患者の援助の事例を収集した.学生の報告の中より終末期肝臓癌患者の援助に苦心した事例を選定した.これをもとにロールプレイの紙上シミュレーションの設計を試みた.その要点は,もし終末期の患者から「もうすぐ死ぬのでは?」と話しかけられたら,担当看護婦としてどう答えるか考えて記述させるものである.そして,学生の回答を共感的理解受容を基準として4段階に評価するように計画した.2.終末期老人患者の援助場面のロールプレイを,学生の実際に上演させた.その前後に紙上シミュレーションを実施して効果の確認をした.その結果,著しい向上が確認できた.すなわち,上演前でが「そんな弱気を言ってはいけませんよ」と否定したり,「元気を出して頑張りましょう」と励ましたりするなどの応答が中心であったが,上演後では「もうダメだと感じられているのですね.本当に大変ですね」など理解・受容を示す者がほとどになり学生の意識の変化が確認できた.3.これらの研究成果は今後の学生指導にも活用するとともに,第3回国際保健医療行動科学会会議,第9回日本健康心理学会などで発表する予定である.
著者
那須 壽 草柳 千早 土屋 淳二 榎本 環 河野 憲一 飯田 卓 木村 正人 大貫 恵佳 関水 徹平 大黒屋 貴稔
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

「知の在り方・有り様が変わりつつある」という日常的実感(仮説)を導きの糸として、25大学40年間の社会学関連シラバスに関する調査と、社会学の教育と研究に関する質問紙調査を立案・実施し、分析した。これら二つの調査研究は「知の社会学」の構想の一環であり、今日、多くの人びとによって実感されている(であろう)「知」の在り方・有り様の「変化」を見定める第一歩として、社会学知における変化をいくつかの側面から明らかにした。
著者
加納 航治
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.ポルフィリン-パーメチル化シクロデキストリン錯体:ある種の水溶性テトラアリールポルフィリンがパーメチル化β-シクロデキストリン(TMe-β-CD)と極めて安定な1:2包接錯体を形成することを見出した。この錯体は10^<-6>M程度の希薄水溶液中においても定量的に1:2錯体を形成する。この発見により、ポルフィリン-TMe-β-CD系が種々の超分子構築に有用であることが予想された。2.ポルフィリン-TMe-β-CD錯体の生成機構:異常に安定なシクロデキストリン錯体の生成機構につき検討した。その結果、TMe-β-CDはフレキシブルなホスト分子であり、ゲスト分子の形に応じて、ホスト分子が柔軟にその形状を変えながら包接し、その結果、最大のvan der Waals接触が可能となり、酵素類似のinduced-fit type complexationが起こることが、極めて安定な包接錯体形成の原因であることを明らかにした。3.簡便なヘテロポルフィリンアレーの作成:光合成アンテナクロロフィルモデルや反応中心クロロフィルモデルの構築には、ポルフィリンを自由に集合させ、並べる手法が必要となる。従来は共有結合で複数のポルフィリンを結合させて、ポルフィリン集合体を得てきた。しかしこの古典的な手法は、大変な手間がかかる。我々は、テトラフェニルポルフィリンのメソ位のフェニル基にパーメチル化シクロデキストリンを共有結合で結びつけた複合体は水中で他のポルフィリンと混ぜるだけで、任意のヘテロポルフィリンアレーを作り、このアレー内では非常に効率の良い光エネルギー移動が進行することを見出した。4.メトミオグロビンモデルとアニオン認識:TMe-β-CDと水溶性鉄(III)ポルフィリン(Fe(III)TPPS)との2:1錯体はメトミオグロビンモデルとして機能し、さらにアニオン認識する超分子として機能することを見出した。この機能は水中でアニオンを選択的に認識するセンサーとして応用できることを示し、特許を申請した。5.ミオグロビンモデルと酸素の可逆的吸脱着:パーメチル化β-シクロデキストリン2分子をピリジンを含むリンカーでつないだCD2はFe(III)TPPSと極めて安定な1:1包接錯体を形成する。このmet-hemoCDを還元してhemoCDとし、この水溶液に酸素を吹き込むと、oxy-hemoCDが生成することを見出した。この研究は、水中で機能するヘモグロビンあるいはミオグロビンモデルとして世界で始めての例である。特許を申請した。
著者
安保 雅博 角田 亘
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

近年、経頭蓋磁気刺激(以下TMS)が脳卒中後遺症の治療目的で用いられている。特に、低頻度TMSを適用し、適用部位から対側大脳への大脳半球間抑制を軽減させ、結果的に非適用大脳の活動性を上昇させようとの考え方が注目されている。失語症患者に治療的TMSを導入する場合、言語機能を代償している部位をTMSに先立って機能的MRIで明らかにし、代償部位の対側に低頻度TMSを適用することが望ましいと考えられる。
著者
弓 削繁 美濃部 重克 小林 幸夫 榊原 千鶴 小助川 元太
出版者
岐阜大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

戦国末期は文化が中央から地方へ、公家から武家・町人等へと拡散し、次第に貴族的なものから世俗的なものへと変容を遂げていく時期にあたっているが、本研究は古河公方の重鎮一色直朝(月庵)が編纂・著述した『月庵酔醒記』の注釈・典拠研究に基づいて、この過渡期の文化継承のありようを具体的に明らかにしたものである。注釈・典拠研究の成果は3冊の注釈書(うち1冊は準備段階のもの)に、また注釈・典拠研究から見えてくる文化継承上の諸問題に関する研究成果は1冊の研究書に結実している。
著者
合田 敏尚 望月 和樹
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

マウスの給餌を明期に制限すると、空腸における時計遺伝子Per2および糖輸送担体Sglt1の遺伝子の発現量は、給餌開始前後に最大となるように位相がシフトすることが明らかになった。これらの遺伝子上への核内因子BMAL1およびアセチル化ヒストンの結合は、遺伝子発現の日内リズムと対応して量的に変動していた。この結果は、小腸における糖輸送担体の発現は、食事のリズムに依存して、時計遺伝子の発信機構を介して制御を受けていることを示唆する。
著者
鈴木 一臣 入江 正郎 田仲 持郎 山本 敏男
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

インプラント歯科治療における骨の誘導を促すことおよびインプラント上部構造体(クラウン、ブリッジ等)の新規接着材を開発した。チタン製インプラント表面をリン酸化プルラン処理することによって、ラット脛骨に埋移入2週間後でチタン表面に新生骨の形成が促進された。一方、ウレタンジメタクリレートにアミノ酸(シスチン)誘導体を15~20%添加することで、金銀パラジウム合金に対して22.4MPa(SD:1.8)の接着強さを示し、5-55℃熱負荷2万回後においても10%の低下に止まった。
著者
田中 裕美子 前川 喜久雄 石田 宏代 入山 満恵子 柴 玲子 兵頭 昭和
出版者
国際医療福祉大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

H21年度は、これまでに作成した発話誘発課題を用いて文法習得を評価するための具体的な指標を構築し、さらに、臨床像を掘り下げるために新しい発話誘発法を作成し、検討を試みた。1.ナラティブのミクロ構造指標の構築と躓きの判定成人(10名)、学童(10名)、幼児(10名)の「カエルの話Frog,where are you?」(Mayer,1969)の再生発話の分析に用いてきた構造指標T-unitに加え、従属節などのComplexity指標や、語の総数や異なる語数などのproductivity指標を加えるとともに、5人の分析者が95%の一致を認めるためのトレーニング作業を行った上で、ナラティブ再生発話を分析した。その結果、学童期から発話に関係節や従属説などの複雑指標が増すこと、また、productivityは幼児<学童<成人となり、文法発達の躓きを判定するための指標が得られた。2.受動態・使役態文を誘発する課題を用いた文法の問題特性の解明臨床家が印象として持つ「文法の問題」とは具体的にどういうことかを検討するために、斎藤氏の構文検査(試案)を応用し、複数の言語発達障害児から受動態・使役態文を誘発した。その結果、学齢期になっても受動態・使役態文を構成する際に、動詞の活用に音韻の誤りもしくは不確かさが認められる場合、文法の問題に音韻が介在する可能性が示唆された。また、構造化された誘発課題では受動態・使役態文が言えるが、ナラテイィブの中ではできないなど、文脈によるパフォーマンスの違いが明らかになり、日常の場面で使用できるかどうかを確認するための誘発方法を作成することが今後の課題である。最後に、人物の特性や状況を加味した受動態・使役態の理解課題を考案し、健常児・障害児への実施を行い、表出できないときの背景を探り始めた。
著者
小宮 一夫
出版者
中央大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2000

1.今年度も、直接の研究対象時期である日清戦後(1895〜1903)に期間を限定せず、第二次大戦後の五五年体制形成期までの政党政治の足跡を視野に入れ、幅広い観点から文献や史料の調査を行った。具体的には、国立国会図書館憲政資料室や徳富蘇峰記念館(神奈川県二宮町)、福岡市立博物館で、政治家の書翰を中心とする原史料の調査を行った。昨年度と同様、本年度も研究に利用できる史料を数多く見つけることができた。とりわけ、福岡市立博物館で調査した鍋島直彬宛書翰(「鹿島鍋島家文書」所収)によって、日清戦後から明治末年にかけての貴族院議員の政治ネットワークを解明する一端が得られた。2.日清戦争前と戦争下に行われた二度の総選挙を、自由党と敵対した対外硬派の視点から分析し、その成果を今年度の日本選挙学会の研究大会で報告した。本報告では、現職代議士の不出馬による不戦敗などの事例を踏まえ、対外硬派が党勢拡大に失敗した理由のひとつとして、組織力の弱さという論点を打ち出した。この報告原稿を土台に、データの補充を行い、活字化する準備を行っている。3.今年度は、日清戦争前後に対外硬派の一角を占めた立憲革新党の動向を、ジャーナリスト徳富蘇峰の政治戦略と絡めて分析した。そして、責任内閣と自主的外交という政治理念を共有する徳富と立憲革新党は、同党の長谷場純孝を介して密接な関係にあったことを明らかにした。その成果は、鳥海靖教授の古希記念論文集(吉川弘文館より刊行)に掲載される予定である。4.西欧列強による半植民地が進む中国情勢に即応するためにも、衆議院の過半を占める強固な一大政党の結成が必要だという論理も、明治33(1900)年に立憲政友会が結成されていく過程で無視し得ない論理であることが明らかになった。このように、外交問題は、政界再編の流れを加速させる上で重要な役割を果たすのである。
著者
赤間 亮 CLARK Timothy TOMPSON Sarah
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

全8回の現地調査により大英博物館所蔵のすべての浮世絵・画帖と関連する所蔵版本400点について、精細な画質のデジタル画像を取得することにより、網羅的にカタロギングし、全貌を把握することができた。常にレベルの高い専門学芸員が継続的に収集を続けてきた博物館であり、著名な絵師、初期作品などの知られていた名品以外にも稀少絵師、特殊フォーマットが網羅的に収集されているなど、高い質を有することが判明した。
著者
田上 英一郎 原 成光 西田 民人
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008-04-08

海洋有機物プール消長がもたらす地球表層炭素循環へのインパクトを明らかにするために海洋有機物動態の総合的理解を目指した。ハイスループット分析法を用いて溶存有機物の分布を求め、その特徴から溶存有機物動態を明らかにし、分子レベルで有機物プールの詳細に把握することが主題である。本研究課題では、LC-MS/MSを用いたハイスループット分析法を開発し、観測海域から大量の基礎データを採取した。2次元多核種NMR法およびFACE法を用いて溶存および懸濁態有機物の高分子レベル分析法を用いて、海洋有機物の高次構造を明らかにすることで、海洋有機物の化学像を洗い出しを行った。
著者
草光 俊雄 大石 和欣 笠原 順路 鈴木 雅之 鈴木 美津子 石幡 直樹 アルヴィ宮本 なほ子
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、イギリス帝国主義(パクス・ブリタニカ)の基盤が築かれた時代において、旅行記や見聞記、探検記を地域ごとに 7 名の研究者で手分けをしながら調査し、それぞれの地域の民族、風物、風俗の描写の背後で、イギリス人としての自意識がどのように働いているかを実証した。帝国の拡張はいわば膨張であり、海外探検は科学・文明の拡張であり、旅行記や探検記にはイギリスの覇権拡張という隠された意図と自負が潜むと同時に、異質の民族・文明との接触を通じて不安定に揺れ動いている意識が浮かび上がっている。「イギリス的なもの」(Britishness)についての意識が変容し、国民の帰属意識が再編され、多様化し、ぐらついていく実体を言説上において捕捉できた。研究遂行の課程では、海外研究者の招聘や国際シンポジウム、国際学会の開催・共催、さらに学会発表や論文のかたちで成果を問うことができた。
著者
加賀谷 良平 宮本 律子 梶 茂樹 湯川 恭敏
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

研究期間の平成11年度〜13年度で、タンザニア、ケニア、ウガンダのバントゥ諸語の内、ほぼ30言語を調査した。この言語数は予定数をやや上回っている。具体的な調査内容について言えば、各言語において,ほぼ2000語におよぶ語彙,音声,音韻,文法等の全般的かつ精密な調査と分析を行った。この3年間の調査自体はほぼ満足すべきものであり,バントゥ諸語の音調研究を中心とした研究から新たな一般言語学的知見が得られ、また、言語変容、消滅の危機に瀕した諸言語の記述研究をとおして、我々の調査隊の成果は世界的に貢献できたと考える。しかし、未だに消滅の危機に瀕しているバントゥ諸語は多数存在し,現在を除いてはその記述・記録が不可能となること,また急激な社会変化により、多くの言語が歴史上かつて見られなかったほどの早さで変化していることなどを考えると,アフリカ諸言語の調査分析から得られる成果は極めて大であり,引き続き精力的かつこれまで増した大規模な調査が必要である。現在のアフリカはいわば壮大な言語実験場であり,幾つかの言語の定点観測を行いつつ,経験の深い優秀な調査者がより精力的に調査を行う必要があると痛感する。この3年間の調査成果は,言語学会,アフリカ学会や多くの学会誌等を通じて発表してきたが、今後も多くの成果発表を予定している。また別途の論文集として出版する予定である。なお、この調査隊には、R.Besha(ダルエスサラーム大学教授)、K.Kahigi(ダルエスサラーム大学教授)、小森淳子(大阪外国語大学非常勤講師)、神谷俊郎(東京外国語大学博士後期過程)、阿部優子(東京外国語大学博士後期過程)が研究協力者として参加・協力した。
著者
村川 雅洋 根本 千秋 箱崎 貴大 青木 健一 平間 孝弘 菅野 良子
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

手術患者の予後に重大な影響を与える術後せん妄の神経化学的機序解明を目的として、ラットを用いて麻酔中の侵害刺激と鎮静による脳内神経伝達物質アセチルコリン放出の変化を検討した。その結果、現在一般的に用いられている全身麻酔薬と術後鎮静薬はアセチルコリン放出量に影響を及ぼすことが明らかとなり、大脳皮質のアセチルコリン放出の変化が術後せん妄に影響を与えていることが示唆された。
著者
徳永 智春
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

材料の局所領域の構造をナノスケールで明らかにすることが可能な透過電子顕微鏡により有機材料を観察するための条件を調査した.その結果,加速電圧200kV,照射電流密度2pA/cm^2の条件を用いて短時間のうちに観察する必要があることが判明した.また,有機半導体からなるデバイスの薄膜加工には機械加工が適していることが明らかになった.
著者
戸木田 雅利 松岡 辰郎 姜 聲敏
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

高分子液晶のダイナミクスの特徴を明らかにすることを目的に, 2つのメソゲンをアルキル鎖で連結した二量体液晶分子のネマチック液晶BCBO-m(mはアルキル鎖炭素数)の動的光散乱測定を行った.動的光散乱から,液晶ダイレクターの広がりと曲げのモードの周波数(K/η)を決定することに成功した.それらはmの偶奇に依存する偶奇振動を示した.mが偶数のほうが奇数よりも大きな値を示した.フレデリクス転移挙動から弾性定数を調べたところ,同様な偶奇効果が弾性定数にもみられ,周波数の偶奇効果は弾性定数に支配されるものと結論した.
著者
南部 昌敏 浦野 弘 三橋 功一 小林 稔 井上 久祥 城間 祥子
出版者
上越教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

知識伝達型、問題解決型、省察型の研修スタイルを必要に応じて組み合わせた「協働と省察の継続と積み上げによる校内教員研修標準モデル」を構築し、実践した結果、教員の授業力と児童の学力の向上及び学習習慣の習得が明らかとなった。校内教員研修の効果は、全ての教員の行動変容として表れ(レベル3)、教職員一丸となって学校組織全体の自律的な取り組みも実現した(レベル4)。また、ニーズに応じた多様な集合型研修を行った結果、どの研修でもワークショップ型研修は好意的に受け止められ、授業力の向上に向けた改善点の明確化に寄与したことが確かめられた。
著者
田口 聡 細川 敬祐 小川 泰信 田口 真 塩川 和夫 青木 猛 鈴木 臣 田原 篤史
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

極域電離圏のプラズマは,様々な物理過程によって水平方向に10 kmから100 km のメソスケール構造を作ることが多い.本研究では,そのような構造と,さらにその構造の生成に関わるメソスケールのオーロラ構造を高い時間分解能で捉えることのできる全天イメージャーを構築して,その装置によって得られたデータを解析した.極冠域で生じている現象については,その出現特性と構造化の特徴を見出した.また,カスプ域については,磁気圏からの粒子降下が,これまでに同定されていない時間空間特性をもつことを明らかにした.
著者
吉田 敏 小山 登 福田 哲夫
出版者
産業技術大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

成果の要点は、これまで工学をはじめとした作り手側の領域において軽視されてきた機能面に着目し、使い手視点によって最終的に社会の中で生み出される内容による製品評価の基礎的な考え方を提示することができたことである。製品は何らかの目的に基づいてつくられるが、それは何らかの使い手の要望を実現することである。今回の研究では、工学をはじめ、デザイン学や経営学の学術領域をまたぐ議論が実施でき、総括的な評価軸についてさまざまな議論が行われてきた。その中で、使い手が使用を通して発生させる機能が、設計者が考える機能とまったく異なり、そこに重要な視点がある可能性を得て、新たなる評価軸の可能性を得るに至った。