著者
菊池 友和 瀬戸 幹人 山口 智 小俣 浩 中澤 光弘 磯部 秀之 大野 修嗣 三村 俊英 北川 秀樹 高橋 啓介
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.834-839, 2010 (Released:2010-12-24)
参考文献数
20

【目的】鍼通電刺激(EA)が,ヒトの筋血流に及ぼす影響を定量的に直接法で測定した報告はない。新しく開発したクリアランス法を用いEA前中後での筋血流量の変化を測定した。【方法】健康成人ボランティア10例,男性8例,女性2例(中央値30.5歳)を対象とし,鍼長50mm,直径0.18mmのステレンス鍼で僧帽筋上の天柱穴と肩井穴へEAを行い,右を刺激側,左を非刺激側とした。さらに,EA前2分,EA中4分,EA後4分の計10分のデータを分析した。同時に血圧と心拍数も測定した。【結果】EA側の筋血流量は,刺激中増加し(p < 0.05)。また刺激中,拡張期血圧と心拍数が下降した(p < 0.05)。【考察】EAにより筋血流量が刺激側で増加し,拡張期血圧と心拍数が下降したことから,局所の筋ポンプ作用等により筋血流量が増加することが考えられた。【結語】新しい99mTc04-クリアランス法を用い評価した結果,EAは,刺激中,刺激側の筋血流量を増加させた。本法はこれまでの方法よりも簡便で精度も高いことから,今後鍼灸の臨床研究により積極的に用いられて良いと考える。
著者
深谷 雅博 中山 智博 中村 勇 岩﨑 信明
出版者
一般社団法人 日本小児精神神経学会
雑誌
小児の精神と神経 (ISSN:05599040)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.63-71, 2021 (Released:2021-04-01)
参考文献数
15

当県の小学校通常学級に在籍する自閉症スペクトラム(ASD)特性を強く持つ児の概数とその特徴を調べることを計画した.対象は通常学級に在籍する児童300名であり,自閉症スペクトラム指数日本語版(AQ-J)児童用を用いて調査を実施した.ASD特性を強く持つ児童は11.4%認められた.ASD特性を強く持つ児童群では,合計,社会的スキル,注意の切り替え,コミュニケーション,想像力において,ASD特性を強く持つ児童群の得点が有意に高く,行動面や社会性に差がみられることが明らかとなった.また,因子分析を行ったところ,抽出された項目から第1因子を「メタ認知」と命名し,メタ認知が重要であることが明らかとなった.ASD児・者はメタ認知的な自己認識が脆弱であるといわれており,通常学級に在籍するASD特性を強く持つ児童においても同様の結果が示された.今後調査の規模を拡大していくとともに,児童の支援方法について検討し実践していく必要があると考えられる.
著者
谷山 鉄郎 松岡 武 長屋 祐一 小林 尚文
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物工場学会誌 (ISSN:09186638)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.215-224, 1994

An automatic fogculture system for year-round rice production was developed. Its purpose was to reduce natural and environmental damages on rice production and farmland. Two rice cultivars, Koshihikari and Harebare, were grown from Mar. 12, 1992 to Aug. 24, 1992. Because the amount of sunlight was decreased to one-third of normal light intensity, growth and development of the two cultivars was very uneven. Yield of Koshihikari which was the better developed of the two, was 808 kg/10a. The yield of Harebare, which did not grow well, was 23 kg/10a. If this system was given enough sunlight and had a controlled temperature, a higher yield may be possible.
著者
赤江 尚子 吉井 美穂 笹原 志央里 山口 容子 澤田 陽子 金森 昌彦 西谷 美幸
出版者
富山大学看護学会編集委員会
雑誌
富山大学看護学会誌 (ISSN:1882191X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.37-45, 2012-06

Hand roughness is a problem for medical practitioners who frequently wash their hands.It is currently recommended that hand care preparations are provided to medical practitioners, but the effect or influence when such preparations are used together with antiseptics has not been investigated. In this study, we investigated how drying hand care preparations affect the sterilizing effect of antiseptics.Staphylococcus epidermidis (S. epidermidis) and Staphylococcus aureus (S. aureus) were used as the test strains. The trial medications used were a skin protective agent.As a result, the sterilizing effect after the hand care preparation had dried for 30 minutes was better against S. aureus than S. epidermidis. The present results showed that hand care preparations do not affect bacterial proliferation, that when using hand care preparation and antiseptics together. Moreover, the hand care preparation needs to be dried sufficiently.In the future, comparisons with the present results and further research conducted with consideration of the conditions of the hand care preparation will be needed.
著者
須藤 靖明 筒井 智樹 中坊 真 吉川 美由紀 吉川 慎 井上 寛之
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.291-309, 2006-10-31 (Released:2017-03-20)
参考文献数
55
被引用文献数
3

So far the ground deformation associated with a magma supply system of Aso Volcano had not been discussed because any clear signals in ground deformations and volcanic earthquake activity had been hardly observed near the Nakadake active crater during its activity enhancement cycles. In this article, however, the deflation source and magma supply system is investigated by the long-term geodetic surveys. The secular subsidence is observed in the Kusasenri area about 3km west of the Nakadake active crater from the 1951’s levelling survey in compiled levelling surveys along the Bouchuu-line since 1937. While the ground deformation near the active crater has been obscure. The source of this deflation near the Kusasenri area is estimated on the basis of the spherical pressure source model through the non-linear least square method with using recent survey data which include the Bouchuu-line and an extended survey route. The deflation source is located beneath the Kusasenri area at about 5km depth. However, recent volume changes at the spherical deflation source are smaller than before 1959. The location of the deflation source coincides with the low P- and S-wave velocity body in the 3D seismic velocity structure. This fact supports a hypothesis that the low seismic wave velocity body represents a magma reservoir. Therefore this magma reservoir beneath the Kusasenri area must be connected to the Nakadake active crater. We inferred a rigid conduit in the magma supply system from the obscure ground deformation in the vicinity of the Nakadake crater.
著者
松岡 朱理 立石 清一郎 五十嵐 侑 井手 宏 宮本 俊明 原 達彦 小橋 正樹 井上 愛 川島 恵美 岡田 岳大 森 晃爾
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.263-271, 2015-12-01 (Released:2015-12-13)
参考文献数
5
被引用文献数
1 2

自然災害や工場事故などの危機事象が発生した企業においては,労働者はさまざまな対応を余儀なくされ,直接的に傷病を負う労働者だけでなく,緊急対応や復旧作業に従事する労働者も多様な健康障害リスクに曝される.そのような健康障害リスクに対して,産業保健専門職の予防的介入に役立つ危機対応マニュアルの開発を行った.危機対応マニュアルの開発は,先行研究において8つの危機事象を分析して作成した危機事象における産業保健ニーズリストを用い,危機事象後の時間軸(フェーズ)ごとに発生しうるニーズについて,具体的な解説を施すことを基本とした上で,各ニーズの発生の可能性を表現するため,8事象での発生頻度で記述方法を変えるなどの工夫を施した.作成過程においては,危機対応マニュアルβ版を実際の危機事象で利用に供するとともに,危機管理分野の専門家の意見聴取を行って妥当性の検討を行い,危機対応マニュアルβ版に一部改善を施した上で完成版とした.完成した危機対応マニュアルには,全フェーズ合計で99のニーズに対して解説が加えられており,網羅性は高く,多くの危機事象において利用可能と考えられる.新たな危機事象において,異なるニーズが発生する可能性があるため,汎用性を高めるために今後も継続的に情報を収集して,改善を施していく必要があると考えられる.また,危機事象が発生した際に危機対応マニュアルを入手できるように,ウェブ上でダウンロード可能とするとともに,危機対応マニュアルの存在を広く周知していくことが今後の課題である.
著者
内田 智大
出版者
関西外国語大学・関西外国語大学短期大学部
雑誌
関西外国語大学研究論集 (ISSN:03881067)
巻号頁・発行日
no.85, pp.99-116, 2007-03

日本経済は1992年後半のバブル経済の崩壊に伴う長期のデフレ期を脱し、ようやく2002年から経済成長の軌道に乗り出した。景気の長さで見れば、今回の景気拡大は4年5ヶ月を過ぎ、1965年11月から4年9ヶ月続いた「いざなぎ景気」に迫る勢いである。この景気拡大の影響により、大学新卒を対象とする労働市場も、この2-3年は完全な売り手市場になっている。本稿の研究目的は、2007年度入社予定の本学国際言語学部の4回生を対象に質問票調査を行い、彼らの就職活動の実態や就業意識を明らかにすると共に、就職活動のやり方や学業成績や語学力を含めた彼らの属性が、就職予定の企業に対する満足度や企業規模の大きさとどのような関係にあるかを考察することである。
著者
小田原 謡子 Y. Odawara
出版者
中京大学教養部
雑誌
中京大学教養論叢 (ISSN:02867982)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.p725-740, 1978

The Faerie Queene を書くにあたって Spenser が用いた方法は, C. S. Lewis の表現を借りるならば, 「アレゴリーの核を各々の巻に置ぎ, まわりをタイプのロマンスと呼ばれるもので囲み, 純粋に架空の逸話をちりばめる^1」というものである。第三巻に於けるアレゴリーの核は, Canto VIのGarden of Adonis と名付けられた豊饒の園であるが, この Garden of Adonis という名称は, Spenser の発案ではない。すでに紀元前700年に最古の記録を持つという Adonis 信仰の祭式の一部として存在したものであった。自然祭祀の一つである Adonis 祭祀に於て「はかない一時の美わしさと, すみやかな荒廃の象徴^2」とされていたGarden of Adonis と同じ名称を持つ Spenser の Garden of Adonis は, 生の豊饒が印象的な園であるが, これは, Adonis 祭祀の遠い記憶とどのような関係にあるものなのか。この園の描写にあらわれている豊饒, 輪廻, 再生の観念, 無常の観念と, Adonis 祭祀の記憶とのかかわりあいをさぐってみたい。
著者
渡邉 浩司
出版者
中央大学人文科学研究所
雑誌
人文研紀要 (ISSN:02873877)
巻号頁・発行日
no.93, pp.239-255, 2019

ロベール・ド・ブロワが13世紀後半に著した『ボードゥー』は,ゴーヴァンの息子ボードゥーの幼少年期に焦点を当てた物語である。母の手で騎士に叙任されたボードゥーが一連の冒険の末に,群島王の姫君ボーテを妻に迎える筋書きの中で重要な位置を占めるのは,ボードゥーが最初の試練で獲得する「オノレ」という名の剣である。そもそも古フランス語によるアーサー王物語群では,アーサー王の剣エスカリボール(エクスカリバー)を別にすれば,オノレのように固有名を伴う名剣は珍しい。オノレという名は騎士が守るべき「名誉」というキーワードをもとにしているが,この名の由来を作中人物が説明している点は特筆に値する。
著者
波戸岡 清峰
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.20-22, 1984-05-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
9

沖縄本島名護魚市場において, 延縄による漁獲物中からウツボ類の1新種を得たのでUropterygius mgo-msis (新称: ナゴキカイウツボ) としてここに記載した。本種は垂直鰭が尾端部にのみ存在すること, 体側背方に鰓孔を持つこと, 頭長に対する上顎長の割合が大きく (40.6%), 吻長の割合が小さいこと (13.3%), 下顎がいくぶん湾曲し両顎は完全に閉じられないこと, 不明瞭な網目状斑紋を持つこと等により他のウツボ科魚類と容易に区別される.
著者
John E. McCosker 波戸岡 清峰 佐々木 邦夫 Jack T. Moyer
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.261-267, 1984-11-20 (Released:2010-06-28)
参考文献数
30

日本産キカイウツボ属魚類Uropterygiusの再検討を行った結果, コゲウツボU.concolar, キカイウツボU.bennettii, ナゴキカイウツボU.nagoensis, シズクキカイウツボ (新称) U.marmoratus, ホシキカイウツボU.macrocephalus, アミキカイウッボU.micropterus, の6種の分布を確認し, あわせてその検索を掲げた.これまでホシキカイウツボと称され報告されてきたキカイウツボ属の1種はU.marmoratusではなくU.macrocephalusであり, 従ってU.marmoratusの記録は本邦初となる, また, U.macrocephalusの確認は本種の分布を太平洋全域に広げた.
著者
薄井 達雄
出版者
日本アーカイブズ学会
雑誌
アーカイブズ学研究 (ISSN:1349578X)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.31-46, 2019

<p>旧優生保護法下におけるいわゆる強制不妊手術については、当事者からの提訴などもあり、その補償問題が大きな社会問題になっている。そこで問題になったのが、当事者をどのように特定するのかという点である。本人同意の必要がない強制不妊手術は、都道府県に設置される優生保護審査会でその適否を決定することになっていたので、その関係資料が残されていれば特定は可能なはずである。しかし実際は、文書の保存期間が満了したなどの理由で廃棄されたため、残存率は低い。その事情は、筆者の勤務していた神奈川県立公文書館でも同様であるが、現在の公文書の選別基準に照らせば法定の審査会の会議記録は当然残すべきものであり、当時の文書管理が不十分であったことは否めない。</p><p>国公立の組織アーカイブズ機関は、様々な形で親機関から文書の移管を受けて歴史的に重要な公文書を保管、整理、提供しているが、それぞれ評価選別のルールを設け客観的で公正な選別ができるよう努力している。その本分に徹して、残すべきものは確実に残し、個人情報等真にやむを得ない情報以外は閲覧に供することで、過去の行政施策遂行状況の検証や今回の例のような被害者の救済の一助にもなるよう努めるべきと考える。</p><p></p>
著者
坪田 敏男
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.27-33, 2015-06-30 (Released:2018-05-04)
参考文献数
7

1995年に設立した日本野生動物医学会は20周年を迎え,毎年の大会開催や学会誌およびニュースレターの発行に加え,認定専門医協会の設立,スチューデントセミナーコースの開催,感染症専門家の現地派遣,アジア野生動物医学会のサポート,各種ガイドラインの制定など,活発な活動を続けている。この20年間に野生動物に関連する出来事は数多くみられ,例えば環境ホルモン(内分泌かく乱化学物質)の影響,ワシ類の鉛中毒の発生,ツキノワグマの人里への大量出没,トキやコウノトリの野生復帰,高病原性鳥インフルエンザの発生などは社会の関心も高かった。これらの問題に対応する学問として保全医学が台頭し,今やOne Healthと同じコンセプトとして重要な学際的分野として注目を集めている。今後もこの分野の重要性はますます高まるものと予想され,日本野生動物医学会の発展とともに他関連組織との連携を深めながら生物多様性の保全に貢献していくことが社会から求められている。
著者
上山 隆大
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.202-203, 2021-09-30 (Released:2021-10-21)

The institution of the university, which had begun as a self-governing organization of students in Bologna in the 12th century, has undergone many transformations over the years, which is the fate of the university system. In the nineteenth century, as the utility of knowledge and the value of technology created by academia became enormous, a new structure was born in which the state mainly supported university research. On the other hand, as Max Weber observed about American academia, in the early 20th century, there was a growing expectation for universities to have financial autonomy and agile management of research. In Japan as well, there were already growing voices among professors of imperial universities in the Meiji era that the autonomy of universities should be considered from the standpoint of financial independence. It is now worth considering the historical lessons of this.
著者
岩﨑 千晶 川面 きよ 遠海 友紀 村上 正行
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S45095, (Released:2021-10-21)
参考文献数
9

本稿では日本の4年制大学のラーニングコモンズ(LC)を対象に調査を行い,LC での学習支援の現状に関して分析をした.研究目的は,①LC で提供する学習支援の内容,②授業に関わる学習支援の内容,効果と課題を明示することである.調査の結果,図書館に関連する学習支援に加えて,ライティングやIT といったアカデミックスキルや外国語を扱う学習支援が実施されていることが示された.また授業に関わる学習支援により,学習者の能力向上やLC 利用者の増加につながる効果が見受けられたが,対応できる学生数に限りがあるという課題も示された.大学によっては授業に関する学習支援の拡充を控える傾向もあり,過渡期にあることがわかった.
著者
永岡 謙太郎 平山 和宏 辨野 義己
出版者
東京農工大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

私たちの健康維持には腸内細菌叢が深く関わっています。本研究では、マウスを用いた実験により、母乳中のアミノ酸代謝から産生される過酸化水素が乳子の腸内細菌叢の形成に関与していることを明らかにしました。過酸化水素は乳子の消化管内において外部から侵入してくる様々な細菌に対して門番の様な役割を担っており、乳酸菌など過酸化水素に抵抗性を示す細菌が優先的に腸内に定着していました。本研究結果は、母乳中に含まれる過酸化水素の重要性を示すとともに、アミノ酸や活性酸素による腸内細菌制御方法の開発につながることが期待されます。