著者
長谷川 摂 小野 奈津子 平田 知資 鈴木 みのる 森嶋 朗
出版者
あいち産業科学技術総合センター企画連携部企画室
雑誌
あいち産業科学技術総合センター研究報告 (ISSN:21875073)
巻号頁・発行日
no.3, pp.80-81, 2015-01

たまりしょうゆのもろみ等から分離した3種6菌株の酵母を添加して、実験室レベルのたまりしょうゆの試醸を行った。添加した酵母による香りの違いを評価するため、におい識別装置を使用してもろみのにおいの類似度を比較した。その結果、Zygosaccharomyces rouxiiの2株を添加したサンプル間ではにおいの類似度は高く、Candida versatilisを添加したもろみは、菌株によってはにおいの類似度が低いものがあった。
著者
須藤 廣
出版者
北九州市立大学都市政策研究所
雑誌
都市政策研究所紀要 (ISSN:18814107)
巻号頁・発行日
no.1, pp.31-41, 2007-03

観光地は非日常性を求める観光客と日常性を生きる住民との交換関係で成立している。前近代においては具体的で互酬的であった観光客と住民の関係性は、近代以降の観光においては観光商品として一般化された取引の中に解消され、民族文化や風習その中での人間関係までもが消費の対象となる。タイの「首長族」の観光化はその特徴を典型的に持ったものとして理解できる。このような現代観光文化における「まなざし」の非対称性を十分理解した上で、本来あるべき観光客と住民の相互的なコミュニケーションのあり方の再構築が求められている。
著者
卯田 卓矢
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2020, 2020

<p>近年,星空を新たな観光資源と捉え,交流人口の拡大を図る自治体を各地でみることができる.例えば,長野県阿智村の「天空の楽園・日本一の星空ナイトツアー」や,鳥取県の「星取県」プロジェクト(2017年開始)は星空を活用した代表的な観光振興策と位置づけられる.日本の都市部の夜空は明るく,多くの星を眺めることができない.それゆえ,満天の星空を観望することは「非日常的な体験」=観光対象となる.とくに,都市から遠く,光源の影響を受けない列島縁辺地域では星空は有用な観光資源になりえるといえよう.一方,星空はこうした地域の住民にとって身近過ぎることで観光対象と認知されず,資源化の取り組みが浸透しない傾向にある.また,星空は暗い夜空を見上げれば「誰もが自由に(無料で)」観望できるという性格をもつため,観光振興を進める際は観望の「付加価値化」を図ることが重要となる.</p><p>本発表は以上の課題を踏まえ,沖縄県の八重山諸島を事例に,列島縁辺地域の離島における「観光資源としての星空」の可能性を検討する.八重山諸島を含む南西諸島は緯度の関係上本土と比して多くの星を観望することができる.その中で,石垣島は先進的に星空ツーリズムを推進し,官民一体となった取り組みを展開している.本発表ではこの石垣島に注目し,発展のプロセスとその特徴を明らかにしたうえで(卯田・磯野 2020),八重山諸島への星空ツーリズム拡大の可能性を「すみ分け」という観点から考察する.</p>
著者
阿久井 康平 嘉名 光市 佐久間 康富
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D1(景観・デザイン) (ISSN:21856524)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.32-44, 2016 (Released:2016-09-20)
参考文献数
46

本研究は,大阪市街地における第一次都市計画事業により架設された全154橋の橋梁意匠に着眼し,その骨格をなす高欄,親柱及び照明柱といった[橋梁付属物]を手掛かりに,市街地における展開や実態の特徴を解明しようとするものである.本研究では分類化した[橋梁付属物形式]に加えて,全橋共通で把握可能な[橋梁諸元・立地条件]及び[設計思想との対応]に関する要素を総合的に導入した数量化III類を行い,橋梁意匠を【橋梁デザインの格】と【橋梁付属物形式の趨向】の軸により位置づけ,6パターンの橋梁群に類型化した.各橋梁群は,市街地空間における一定のエリア及び空間軸でまとまりをもって展開され,事業期間における[橋梁付属物形式]の趣向の変遷を明らかにした.
著者
陳 峻雲 坂野 雄二 貝谷 久宣 野村 忍
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-13, 2002-03-31 (Released:2019-04-06)

本研究は、地域の心理相談室において、広場恐怖を伴うパニック障害(PDA)に対する集団認知行動療法(CBGT)プログラムの効果を検討することを目的とした。プログラムは基礎編、準備編、実践編IとII、および2か月後のフォローアップから成り立っており、セミナー形式で行われた。対象者は東京近郊にあるW大学の心理相談室が主催したセミナーに参加した女性10名であった。プログラムの効果を検討したところ、CBGTは参加者の回避行動と主観的不安の改善、および生理的覚醒といったパニック障害の一次的症状の改善に有効であることが明らかにされた。また、それらの改善はセミナー終了後にも引き続いていたことから、本プログラムは参加者のセルフ・コントロール能力の向上にも効果的'であった。本研究の結果から、CBGTプログラムは患者の生活環境に密着した地域の心理相談室といった場におけるパニック障害の治療にも効果的であることが示唆された。
著者
宮内 秀之 米田 卓司 藤原 正和 馬場 崇充 宮澤 昇吾 本郷 良泳 北西 由武 小倉 江里子
出版者
一般社団法人 日本薬剤疫学会
雑誌
薬剤疫学 (ISSN:13420445)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.15-26, 2021-06-20 (Released:2021-07-26)
参考文献数
25

目的:新たな作用機序を有する抗インフルエンザ薬である baloxavir marboxil(以下,baloxavir)のインフルエンザ外来患者における入院及び死亡の発生頻度について,既存の抗インフルエンザ薬であるノイラミニダーゼ阻害剤と比較検討した.研究デザイン:コホート研究方法:急性期医療機関由来のデータベースを用いて,2018/2019 年のインフルエンザシーズンにインフルエンザの診断日(Day 1)を有する 1 歳以上の外来患者を研究対象として抽出し,処方された抗インフルエンザ薬に基づき baloxavir 群,oseltamivir 群,zanamivir 群,または laninamivir 群に群別した.主要なアウトカムとして,Day 2〜14 の入院発生割合を集計し,入院発生の有無を応答としたロジスティック回帰モデルを適用し,年齢カテゴリーによる調整済みオッズ比を算出した.その他,死亡について入院と同様の解析を行った.結果:入院発生割合について,baloxavir 群(1.37%,223/16,309)は,同じ経口剤のoseltamivir 群(1.37%,655/47,843)と同程度であったが,吸入剤の zanamivir 群(0.77%,19/2,474),laninamivir 群(0.91%,234/25,831)よりもわずかに高かった.調整済みオッズ比(対照群/baloxavir 群)[95%信頼区間]は,oseltamivir 群,zanamivir 群及び laninamivir 群との比較において,それぞれ 1.125[0.961−1.317],1.173[0.726−1.897]及び 0.944[0.783−1.140]であり,差は認められなかった.死亡発生割合について,baloxavir 群(0.03%,n=5),oseltamivir 群(0.03%,n=16),laninamivir 群(0.01%,n=3)と同程度であった.一方,zanamivir 群には死亡の発生はなかったが,zanamivir 群の症例数が少ないことの影響が考えられ,他の抗インフルエンザ薬群と死亡発生割合に明らかな差はないと考えられた.結論:Baloxavir 投与によるインフルエンザ外来患者の入院及び死亡の発生頻度は他の抗インフルエンザ薬と同程度であり,インフルエンザ重症化を抑制する新たな選択肢として期待できることが示唆された.
著者
奈良浩介
雑誌
日救急医会関東雑誌
巻号頁・発行日
vol.15, pp.356-357, 1994
被引用文献数
1
著者
寺田 和弘
出版者
水利科学研究所
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.122-128, 2016

大阪府は森林面積5万6千ha,林野率は31%と,いずれも全国で最下位となっている。大阪平野部を取り囲むように位置する山地は現在では豊かな森林に覆われているが,かつては,府民や都市部の生活を支えるため,森林の木々が農耕用や薪,柴,炭などの燃料として利用され,過剰に伐採された結果,木のない荒廃した山が広くみられた。大阪府南部の泉南地域(現在の泉南市・阪南市・岬町)は,かつて荒廃した,はげ山が広範囲に存在した。こうした山々では表土が流出していたため,森林の自然回復が望めず,大雨が降ると崩壊や土砂流出が度々発生していた。また,崩壊により谷に溜まった土砂は度々,土石流となって渓流を下り,道路の損壊や,集落や田畑に土砂が流れ込むなどの被害を引き起こした。こうした災害を防ぐため,この地域では昭和の初期から治山事業による森林基盤の造成事業が続けられてきた。当時の作業は,人力によるもので,ツルハシ等で斜面に階段切付を行い,石筋工等を設置し,その段上にマツ等の苗木を植える植栽工,崩れた斜面を安定させる山腹工,渓流に堆積した土砂を固定する小規模な治山堰堤が主な工種となっていた。このような対策がとられてきたが,森林機能が完全に回復する状況には至らなかった。そのような状況の中,昭和27年7月11日未明,阪南市の山間部にある鳥取池が決壊する大規模な災害が発生した。府では,この鳥取池の災害の翌年の昭和28年度から治山事業による本格的なはげ山復旧に着手した。はげ山復旧事業は昭和38年度までの11年間にわたり実施され,積苗工・石筋工による筋工18万8千m等により山腹からの土砂の流出を抑えるとともに植栽261haが実施された。また,谷部には玉石コンクリート等の治山ダム45基を設置して,谷に堆積した土砂を固定するとともに,山脚を固定した。事業実施から50年の歳月が流れ,泉南地域で裸地化した山は見られなり,現在では,広葉樹を主体とした豊かな森林が広がっている。はげ山復旧事業以降も,荒廃した渓流には治山ダム等が設置され,泉南地域では近年,大規模な災害は発生していない。今回の「後世に伝えるべき治山~よみがえる緑~60選」の候補地選定にあたり,大阪府庁に断片的に残されていた過去の災害や治山事業等の記録を調べると,過去の災害の履歴や,治山事業の実施状況,山地における森林の変遷から,治山事業による森林造成事業は,山地災害防止をはじめとする森林の持つ公益的機能の向上に大きな役割を果たしてきたことが見て取れる。これらの成果は,特別な取り組みからではなく,治山技術者が日々取り組んでいる通常の治山事業の積み重ねから生まれたものである。治山事業の資料は通常,保存期間が過ぎると破棄され消滅することとなるが,治山事業を実施するだけでなく,その記録を整理し残すことで後世に現在の治山事業の果たしている役割を伝えられるよう取り組んでいくことが重要と考える。
著者
サエーンソイ ワラーンカナー 名和 豊春 トウーンカチョーンキット ピパット
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.73, no.631, pp.1433-1441, 2008-09-30 (Released:2009-09-30)
参考文献数
16
被引用文献数
10 22

This study is aimed to elucidate the influence of ambient relative humidity on the compressive strength of fly ash cement paste. The ambient relative humidity has an influence on both the internal relative humidity and the hydration reaction, and further influences the compressive strength development. The experiment results revealed that the compressive strength of paste decreases with a reduction in ambient relative humidity. The same tendency can be found on the internal relative humidity and the hydration reaction as well. The detriment of strength development at low ambient relative humidity is affected by the retardation of the hydration reaction of C2S and C4AF. Moreover, the internal relative humidity at the time of test also has an influence on the compressive strength. The compressive strength decreased with the reduction in the relative humidity below the relative humidity lower than 95%. In addition, the compressive strength can be expressed as a function of the internal relative humidity and the hydrated gel volume derived from the degree of hydration of cement and the degree of pozzolanic reaction of fly ash.
著者
青木 治夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
日本土木史研究発表会論文集 (ISSN:09134107)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.32-37, 1983

辰巳用水は、1632 (寛永9) 年に9ケ月ほどで造られた金沢城中用水である。我が国で、始めて用水路に隧道を用いて地形を克服した赤穂用水・五郎兵衛用水につづくものである。辰已用水の延長は10kmで、そのうち隧道は3.3kmもあり、両用水に較べて著しく長い。現在、隧道部分ば4.3kmになっているのは、寛政大地震 (1799) による崩壊と天保期 (1836) に水の流れをよくするため、隧道に改造したためである。この隧道は、僅かな支保木と幕末以後に行われたらしい切石巻立によっただけで、360年前のツルハシ刃先跡を明瞭に残した素掘区間が2km以上もある。<BR>この区間で、寛永期の掘削工法や近世初期の測量術の水準を調べ、併せて用水の末端で、水圧が10mもかかる逆サイフォンについて述べる。
著者
藤原 俊雄 南木 均
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
no.19, pp.361-366, 1999

中山隧道は新潟県の山間地、山古志村小松倉地区に在り、1998年12月に新トンネルが開通して50年間余の大役を終えた。手掘り隧道建設以前の小松倉は集落戸数が60戸余り、生活の不便はいうにおよばず、積雪深4m以上となる冬季には医療の恩恵を受けられぬまま生命の危険にさらされていた。<BR>地域社会の将来を考え、集落の人々は私財を投げうち、自らの手でツルハシを握り、長さ約1kmに及ぶ全国一の手掘り隧道を昭和8年から16年間の歳月をかけて掘り抜いた。<BR>住民の力にあまる長大な隧道を自らの手で造り上げた精神と行為は、改めて社会資本の意義、役割を考えさせる貴重な土木遺産であり、さまざまな角度から研究するに値する遺産である。
著者
柳井 正 泉 恵理子
出版者
日経BP社 ; 2002-
雑誌
日経ビジネスassocie (ISSN:13472844)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.4-9, 2015-02

テニスの錦織圭選手だってそうでしょう。錦織選手が快進撃を続けている理由の1つは、彼のコーチに就任したマイケル・チャン氏の影響が大きいと思います。指導を受ける中、「ひょっとしたら、自分も世界のトップに勝ち上がれるのではないか」と思えるように…
著者
嘉門 雅史
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会誌 (ISSN:09170855)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.147-155, 1999-03-31
参考文献数
10
被引用文献数
5 1

廃棄物の適正処理・処分の必要性から最終処分場の構造について, 平成9年の廃棄物処理法の改正に伴って, 平成10年6月16日に総理府・厚生省令第2号として「一般廃棄物および産業廃棄物の最終処分場に係わる技術上の基準」の改正案が官報告示された。Fail-safeの設計規範の視点から, わが国の最終処分場の遮水工構造が不十分であることを指摘してきたが, 今回の改正によって, 公式に二重シートが規定されるなど, 一定の前進が見られている。しかしながら, 諸外国の遮水工の規定と比較すると必ずしも万全の構造とはいえないことを地盤工学的立場から明らかにし, 海面埋立地, 内陸埋立地によく見られる処分場断面事例における遮水性能を検討するとともに, より適正な遮水工構造のあり方を探るものである。