著者
中井 美智子 菊地 和弘 柏崎 直巳 ソムファイ タマス 小沢 学 前泊 直樹 野口 純子 金子 浩之
出版者
公益社団法人 日本繁殖生物学会
雑誌
日本繁殖生物学会 講演要旨集 第99回日本繁殖生物学会大会
巻号頁・発行日
pp.58, 2006 (Released:2006-10-24)

近年、雄性配偶子の新たな保存・増殖法として、ヌードマウス等の免疫不全実験動物への精巣組織の異種移植が注目されている。しかし、移植精巣片から得られた精子を用いた卵細胞質内精子注入 (ICSI)法による胚盤胞作出の成功はアカゲザルで報告されているだけである (Honaramooz et al., Biol Reprod 2004)。そこで本研究では、ヌードマウスへの精巣組織異種間移植により作製したブタ精子の胚発生能の検討を目的として、ブタ精巣組織片移植によるブタ精子作製および移植片由来精子を用いて作出したICSI卵の発生能を調べた。【材料と方法】ブタの精巣は、精細管内に前精祖細胞を多く含んだ状態である6-10日齢の新生子雄ブタから採取し、1.5×1.5×1.5 mmに細切した。この精巣片をおよそ20個ずつ5-8週齢の去勢ヌードマウスの背中の皮下に移植した。移植した精巣片は、移植後125-260日に回収した。そして、回収した移植片をPBS中で細切し数回の遠心分離後、形態的に、より成熟していると判断された精子をICSIに供した。ICSI 1時間後に電気刺激処理を施し、6日間の体外培養後の胚盤胞への発生率および胚盤胞細胞数を調べた。【結果】精巣組織片を65匹のヌードマウスに移植したところ、精子は40匹(61.5%)から得られた。精子には細胞質滴は残存するものの、その頭部は成熟した精子と形態的には同様であった。中には良好な運動性を有するものも確認された。これらの精子を用いて作製したICSI卵の胚盤胞への発生率は24.9±7.1% (63/253)であり、平均胚盤胞細胞数は41.9±3.9個であった。【結論】ブタ精巣組織片由来精子のICSIにより、胚盤胞への発生能を有している胚の作出が可能であることが示唆された。すなわち、ブタ精巣組織片をヌードマウスに移植することにより雄性配偶子の保存・増殖が可能であることが示唆された。
著者
笹本 重子 阿部 絢子
出版者
公益社団法人 日本女子体育連盟
雑誌
日本女子体育連盟学術研究 (ISSN:18820980)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.24, pp.1-10, 2008-03-01 (Released:2010-06-22)
参考文献数
21

太極拳が高齢者の健康運動として有用であるかについて, 免疫機能の指標として唾液中の分泌型免疫グロブリンA (SIgA), ストレスの指標としてアミラーゼ活性, 主観的気分の変化を気分プロフィール検査 (POMS) の測定により評価した。対象は週に1回太極拳の稽古を行っている男性3名, 女性19名であり, 測定は2005年11月と2007年8月に行った。アミラーゼ活性は太極拳稽古の前後で有意な差は見られなかった。POMSは「活気」項目において稽古後に有意に高い値を示した。安静時唾液分泌速度は2005年に比べ2007年に有意に低い値を示し, 安静時SIgA濃度は2007年に有意に高い値を示した。安静時SIgA分泌速度は2005年に比べ2007年の方が高い傾向を示したが, 有意ではなかった。これらのことから太極拳は, 高齢者の健康運動として有用であると考えられる。
著者
長野 鉄明
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.129-137, 2018 (Released:2018-01-25)
参考文献数
13
被引用文献数
1

Servo systems are widely used in various position control applications from general industry machine to semiconductor machine. In these systems, it is usually difficult to adjust the controller to high response, because there are mechanical vibrations caused by mechanical resonances and phase delay in high frequency domain. This paper proposes an auto-tuning method of vibration suppression FIR filter using adaptive FIR filter. The auto-tuning method is performed by setting coefficients of adaptive FIR filter outside of control loop to vibration suppression FIR filter in turn. Simulation and experimental results show that the proposed method can suppress the vibration, and can improve stability and response of servo system. Thus, the proposed method can provide auto-tuning of vibration suppression filter under various operating conditions.
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.903, pp.118-121, 2005-07-04

米国テキサス州オースティンの短い春が終わりを迎え,長く暑い夏がすぐそこまでやって来ていた。州都とはいえオースティンの人口は約65万人と,東京の世田谷区よりも少ない。こぢんまりとしたダウンタウンは,半日もあれば見て回れる。ニューヨークやロサンゼルスといった大都市には幾つもある日本食材を専門に扱うスーパーマーケットなど,もちろん皆無だ。
著者
杉浦 直
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.207-222, 2018

<p>レブンワースは,カスケード山中に位置する資源依存型の山間小都市であったが,戦後1950年代には,産業基盤の弱化により衰退した。1960年代から市の再活性化が模索され始め,その過程でドイツ(ババリア)風に街並みを改造する「ババリア化」のアイデアが浮かび上った。その後さまざまな紆余曲折を経て,1970年代には建物改装のためのデザイン評価ガイドラインも制定され,2001年のガイドライン厳格化を経て,今日ではダウンタウンの建物のほとんどがババリア的建築要素をもつユニークなエスニックテーマ型のツーリストタウンが実現している。こうした「場所の構築」の文化的本質に関して以下の普遍的な意味が指摘できる。1)レブンワースでは他のテーマ性の強い観光空間と同様,ツーリスト向けの特殊な買い物空間が創出され,ビジュアルに特異な建造環境とともに様々なアイテムが消費されている。2)そこで見られるエスニシティは「発明されたエスニシティ」(Hoelscher, 1998)の性質が強いものであり,そこで謳われた真正性は所与のものではなく交渉され演出されたものであった。3)そこにおけるまちづくりの過程は,「空間的ストレス-シンボル化」モデル(Rowntree and Conkey, 1980)にきわめてよく適合する。</p>
著者
今井 昭彦
雑誌
常民文化
巻号頁・発行日
no.10, pp.25-53, 1987-03
著者
堀田 千絵 十一 元三
出版者
人間環境学研究会
雑誌
人間環境学研究 (ISSN:13485253)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.17-23, 2014 (Released:2014-07-23)

It is well-known about the abnormalities of the abilities to remember and preserve information in the individuals with Autism Spectrum Disorder (ASD). Many previous studies have focused on the difference by a final memory performance between individuals with ASD and Typical Development (TD). Then, the aim of this study was to examine the learning process until learning in the individuals with ASD, compared to TD. The participants of ASD and TD groups studied all 24 words pairs. Each word pair was tested until they could reach a criterion, two consecutive testing sessions. Learning processes were examined with four measures of (1) the total number of trials and (2) the number of trials for each pair until two consecutive correct responses, (3) the performance of two consecutive correct responses during study trials and (4) the response time for each word during study trials. Finally, at 30 minute later. they were asked to recall each corresponding word for 8 cues randomly selected from 24 pairs. The results showed that the number of trials until learning (the measurement of (1) and (2)) in ASD group were much than that in TD, whereas, in ASD group, the performance of two consecutive correct responses during studying trials (the measurement of (3)) and final performance after 30 minutes on corresponding words to 8 cues was prominently less than that in TD group. These results are discussed in terms of the memory dysfunction related to adaptation in ASD.
著者
片桐 秀樹
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨 糖尿病学の進歩プログラム・講演要旨
巻号頁・発行日
pp.103, 2005 (Released:2006-03-24)

肥満・糖尿病患者の増加が注目を集めているが、その治療法としては現在でも食事療法や運動療法が中心である。これらの病態ではインスリン抵抗性やレプチン抵抗性がその発症に関与している。そこで我々は、モデル動物に肥満・糖尿病を発症させた後、エネルギー消費に関わる蛋白を発現させ、これら病態の発症機構や治療効果について検討した。 脱共役蛋白UCP1(uncoupling protein 1)は、褐色脂肪細胞でエネルギーをATPに合成することなく熱として放散させる分子として知られ、またその遺伝子多型と2型糖尿病の関連についても報告されている。そこで、まず、高脂肪食により肥満・糖尿病を発症させたマウスの肝臓にUCP1遺伝子を導入したところ、約13%のエネルギー消費の亢進がもたらされた。肝臓では、AMPKが活性化・SREBP1cの発現抑制による脂肪肝の改善が認められ、さらに、このような肝における局所効果のみならず、内臓脂肪組織の脂肪蓄積の減少やレプチン抵抗性の改善といった多臓器における代謝改善効果が認められた。その結果、肥満・糖尿病・高脂血症の改善といった著明な治療効果が観察された。一方、標準餌にて飼育している非肥満・非糖尿病マウスに対しては、肝臓へのUCP1発現導入にてもエネルギー代謝は亢進せず、そのため体重や血糖値、肝や内臓脂肪組織の脂肪蓄積量にも影響を認めないという結果が得られた。このことから、肝臓内に発現した異所性UCP1は、エネルギーバランスを感知し、余剰カロリーのみを効果的に消費するが、必要カロリーについては影響を受けにくいという機序が示唆された。このことは実際の治療への応用を考えた場合、非常に好ましい結果であると考えられる。 次に、肥満・糖尿病の病態発症後の腹腔内脂肪組織におけるUCP1遺伝子導入を行ったところ、さらに強力な治療効果が認められた。高脂肪食負荷にて肥満・糖尿病を発症させたマウスの副睾丸周囲脂肪組織に組換えアデノウィルスを用いてUCP1の発現導入を試みたところ、その発現は局所的・限定的であり、全身のエネルギー消費量には有意な増加を認めない程度であったにもかかわらず、体重増加は抑制され、血糖値・血中脂質値の有意な低下、血中インスリン値・レプチン値の著明な低下を認めた。また、糖負荷試験・インスリン感受性試験・レプチン感受性試験にて、耐糖能・インスリン抵抗性・レプチン抵抗性の著明な改善が観察された。しかし、興味深いことに、皮下脂肪組織へのUCP1遺伝子導入においては、同様の発現が得られたにもかかわらず、これらの治療効果はほとんど認められなかった。このことから、腹腔内脂肪をターゲットとし、そのキャラクターを改善させる事が、メタボリックシンドロームに対する有効な治療になりうることが示唆された。 以上、本レクチャーでは、肥満・糖尿病において、細胞におけるエネルギー消費を亢進させることによる全身代謝に与える影響や病態への関与と、それを応用した新規治療法開発の可能性ついて論じてみたい。
著者
平川 尚毅 中野 英之 鈴木 慎 遠藤 博
出版者
地域生活学研究会
雑誌
地域生活学研究 (ISSN:21869022)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.16-25, 2021 (Released:2021-02-20)
参考文献数
13

福島県伊達市霊山町でかつて操業していた伊達永井鉱山の鉱石を用いて、地域の小学校高学年の児童を対象に、灰重石を分離する授業実践を行った。この実践は、児童が鉱石を破砕・粉砕し、鉱物を取り出し、希塩酸や紫外線ランプなどを用いて鉱物を同定するものである。実践の結果、児童は楽しみながら活動を行い、鉱石から灰重石を取り出すことができた。
著者
吉野 貴順
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.450-459, 1997-10-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
28

本研究の目的は, 間欠的に繰り返される短時間超最大運動のパフォーマンスに及ぼす重炭酸塩摂取の影響を検証し, あわせて血液における酸緩衝能力の低下と運動パフォーマンスとの関連性について検討することであった.400mlの水で溶解した0.2g/kgのNaHCO3 (NaHCO3試行) あるいは1gのNaCl (コントロール試行) 液摂取の1時間後, 6名の大学アイスホッケー選手が, 4分30秒間の休息期を挟んで, 30秒間のウィンゲート・テストを7回繰り返す実験運動を遂行した.運動パフォーマンス関連の変数は, 動輪1/2回転毎の電気信号から算出した.また, 肘前静脈より定期的に採取した血液から, pH, HCO3-および乳酸濃度を分析した.なお, 被験者は各試行を, 7日の間隔をおいて, クロス・オーバー法により行った.NaHCO3摂取の1時間後, pHおよびHCO3-濃度は摂取前およびコントロール試行と比較して有意に上昇した.NaHCO3試行における実験運動期中のpHおよびHCO3-濃度は, コントロール試行と比較して, より高い値で維持される傾向にあった.合計7回の運動で発揮された平均パワー (7.10±0.60vs7.70±0.28W/kg) は, コントロール試行と比較して, NaHCO3試行で有意に大きかった.これは, 主にNaHCO3試行における4, 6, 7回目の運動時の平均パワー, および5~7回目の運動時のピーク・パワーが, コントロール試行時の値を有意に上回ったことに由来する結果であった.一方, 各被験者ごとの△HCO3-濃度と△平均パワー, ならびに被験者全体としてみたpHおよびHCO3-濃度の減少量と平均パワーの減少量との間には, それぞれ統計的に有意な相関関係が観察された.また, それらの関係は指数関数的であり, pHおよびHCO3-濃度が, それぞれ0.20および15.0mM程度低下した付近からの, 平均パワーの減少が加速的に大きくなる傾向が観察された.両試行を比較すると, 血液pHおよびHCO3-濃度の, このレベルへの到達はNaHCO3試行において遅延されていた.そして, このことがNaHCO3試行における, 相対的により高いパワーでのATP供給を可能にし, 結果として実験運動期後半のパフォーマンスを有意に高めたものと考察された.以上のことから, 血液pHが7.20以下にまで低下するような状況では, 運動パフォーマンスの加速的な減少が生じることから, 間欠的に繰り返される短時間超最大運動においては, 運動前に重炭酸塩を摂取し, 血液における酸緩衝能力をより高いレベルに維持することによって, 運動パフォーマンスの向上がもたらされると結論された.
著者
大越 裕文 飛鳥 田一朗
出版者
日本医事新報社
雑誌
日本医事新報 (ISSN:03859215)
巻号頁・発行日
no.4043, pp.73-76, 2001-10-20
被引用文献数
5
著者
片山 悠樹
出版者
愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学研究報告. 教育科学編 (ISSN:18845142)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.51-58, 2019-03-01

本稿の目的は、中学校教員の多忙感と子どもに対する理解との関連について、教員を対象とした調査データをもとに検討することである。近年、教員の多忙が社会的に問題視されるようになっており、政策的にもさまざまな対応策が提言されている。一方で、教師研究でも多忙問題は活発に取り上げられ、多忙の背景要因が検討されている。確かに、教員の多忙をもたらす要因にアプローチすることは重要である。しかしながら、多忙「を」招く要因に関心が集中する一方で、多忙「が」招く問題について実証的に検討した研究は必ずしも多くない。こうした認識から、本稿では教員の多忙感が教育活動にもたらす影響についての検討を試みる。具体的には、多忙感が子どもに対する理解(「子ども理解」)への不安にいかに影響するかについて検証する。また、分析に際しては、年齢を分析視点として取り上げる。教員のバーンアウトの研究の文脈では、年齢が重要な要素として取り上げられており、本稿で扱う多忙感と「子ども理解」への不安においても年齢による違いが観察されると想定するためである。分析の結果、教員の多忙感は「子ども理解」への不安を増長させる可能性があると解釈できる。しかも、そうした傾向は、30 代以降で顕著となる。こうした結果に基づき、教員の多忙「が」教育活動にどのような影響をもたらすのかを考察する。