著者
笹田 雄三 菊山 正隆 仲程 純 大田 悠司 松橋 亨 平井 律子 小出 茂樹
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.534-539, 2007-10-31 (Released:2012-11-13)
参考文献数
15

症例は71歳, 女性. 検診の腹部超音波検査で胆嚢底部に長径2cm の隆起性病変を指摘され,当科を受診した.腹部CT検査では胆嚢の隆起性病変は動脈相で濃染した.超音波内視鏡検査では胆嚢底部の隆起性病変は実質様エコーを呈していた.また,胆嚢壁の構造は保たれていた.以上より,StageIの胆嚢癌と診断し,開腹下に胆嚢摘出術を施行した.病変は亜有茎性の腺癌で,内部に著明なコレステローシスがみられた.本症例は特異な病理所見を呈した胆嚢癌であり,興味深いと考え報告する.
著者
木暮 道夫 今泉 俊秀 増田 浩 松山 秀樹
出版者
日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.119-124, 2003-07-30 (Released:2012-11-13)
参考文献数
19

60歳男性.以前より,胆嚢にびまん性のコンステローシスを指摘されていた.右上腹部の腫脹・疼痛を主訴に,当院を受診した.腹部エコーにて胆嚢の腫大,壁肥厚に加え,全域にわたる最大径2mm程度の hyperechoic な小隆起性病変を多数認め,胆嚢炎,コレステローシスと診断した.結石やポリープは指摘できなかった.切除標本で胆嚢全域にコレステローシスが見られ,胆嚢は腫大し,壁はやや肥厚していた.胆嚢頸部から胆嚢管にかけての内腔に, 折れ重なるように黄白色のコレステローシスが群生していた. 胆嚢管壁も一部肥厚が見られた.これらのことから,胆嚢管から胆嚢頸部にかけてのコレステローシスにより,胆嚢内の胆汁の流出が妨げられ,胆嚢炎を生じたものと考えられた.胆嚢管,胆嚢頸部のコレステローシスの存在は,コレステロールポリープの脱落・嵌頓例と共に, 胆嚢炎の原因となりうると考えられた.
著者
野上 道男
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100041, 2012 (Released:2013-03-08)

魏志倭人伝は日本の地誌に関する最初の文書である.方位や里程の定義が示されていないので、記事の地名がどこに相当するかについて、様々な説がある.日本では倭(ヰ)国をワ国と読み、元祖ヤマト近畿説の日本書記がある.中国では随書の倭国伝・旧唐書の倭国伝・新唐書の日本伝に混乱した記述がある、江戸時代には新井白石/本居宣長(18世紀初頭/紀末)の研究があり、明治時代を経て皇国史観の呪縛を離れたはずの現在に至るまで、いわゆる邪馬台国論争として決着がついていない.そして現在では所在地論は大きく近畿説と九州説に分けられ、観光(町おこし)と結びついて、ご当地争いが激化し、学術的な論争の域を越える状況にある. 年代の明らかでない出来事の記述は歴史にならない.同様に場所を特定しない事物の記述は地理情報ではない.つまり、魏志倭人伝の読み方は全て場所の特定(方位と里程)から始まる.倭人伝は記紀と重なる時代についてのほぼ同時代文書である.そこに記述された歴史がどこで展開されたのか、これは古代史にとって基本的な問題であろう. 主な要点は以下の通りである1)記事に南とあるのはN150Eである.(夏至の日出方向)2)倭及び韓伝で用いられた1里は67mである.(井田法の面積に起源があると推定)3)古代測量は「真来通る」「真来向く」方向線の認定が基本である.4)里程は全て地標間の距離である.5)来倭魏使の行程記述には往路帰路の混同がある.6)子午線方向の位置(距離)を天文測量で得る方法を知っていた.7)邪馬台国は卑弥呼が「都せし国」である.8)倭国の首都は北九州の伊都(イツ)国である.
著者
丸谷 康平 藤田 博曉 細井 俊希 新井 智之 森田 泰裕 石橋 英明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100928, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】高齢者における足趾把持力の意義については、村田や新井らが加齢変化や性別および運動機能などと影響し、評価としての有用性について報告している。しかしそれらの報告は自作の測定器を用いており、市販された足趾把持力測定器を用いた報告は少ない。また足趾把持力を用いた転倒リスクのカットオフ値を求めた報告も少ない。本研究は地域在住中高齢者を対象とし、足指筋力測定器における加齢による足趾把持力の変化を確認すること、転倒リスクと足趾把持力の関係およびカットオフ値を求めることを目的に研究を行った。【方法】対象は、地域在住中高齢者171名を対象とした(平均年齢71.9±7.6歳;41-92歳、男性64名、女性107名)。測定項目については、Fall Risk Index-21(FRI-21)を聴取し、足趾把持力および開眼片脚立位保持時間(片脚立位)、Functional reach test(FRT)ならびにTimed up and go test(TUG)の測定を行った。FRI-21の聴取はアンケートを検査者との対面方式で行い、過去1年間に転倒が無くスコアの合計点が9点以下の者を「低リスク群」、過去1年間に転倒がある者もしくは合計点が10点以上の者を「高リスク群」とした。片脚立位の測定は120秒を上限に左右1回ずつ施行し左右の平均値を求めた。足趾把持力については、足指筋力測定器(竹井機器社製TKK3361)を用いて左右2回ずつ試行し最大値を求め、左右最大値の平均値を測定値(kg)とした。統計解析において加齢的変化については、対象者を65歳未満、65-69歳、70-74歳、75-79歳、80-84歳、85歳以上に分け年齢ごとの運動機能の差異を一元配置分散分析および多重比較検定を用いて検討した。またt検定により低リスク群、高リスク群の群間比較を行い、足趾把持力および片脚立位、FRTならびにTUGと転倒リスクの関係を検討した。その後、転倒リスクに対する足趾把持力のカットオフ値についてROC曲線を作成し、曲線下面積(Area Under the Curve:AUC)を求めた。解析にはSPSS ver.20.0を用い、有意水準を5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は埼玉医科大学保健医療学部の倫理委員会の承認を得て行われた。また対象に対しては研究に対する説明を文書および口頭にて行い、書面にて同意を得た。【結果】足趾把持力の年代別の値は、65歳未満13.25±5.78kg、65-69歳11.82±5.10kg、70-74歳11.95±5.16kg、75-79歳11.28±3.96kg、80-84歳7.80±3.55kg、85歳以上6.91±3.57kgとなった。一元配置分散分析および多重比較検定の結果、80-84歳と65歳未満や65-69歳ならびに70-74歳との間に有意差がみられた。次にFRI-21による分類の結果、低リスク群は136名、高リスク群35名であり、足趾把持力の平均値は低リスク群11.69±5.19kg、高リスク群9.47±4.42kgとなり、低リスク群が有意に高値であった。一方、片脚立位やFRT、TUGについては有意差がみられなかった。足趾把持力の転倒リスクに対するROC曲線のAUCは0.63(95%IC;0.53-0.72)であった。さらにカットオフ値は9.95kg(感度0.60、特異度0.57)と判断した。【考察】今回、地域在住中高齢者を対象とし、足趾筋力測定器を用いた加齢的変化や転倒リスクに対するカットオフ値を検討した。加齢的変化については、新井らの先行研究と同様に足趾把持力は加齢に伴い低下を来たし、特に75歳以降の後期高齢者に差が大きくなる結果となった。また転倒リスクにおける足趾把持力のカットオフ値は約10kgと判断され、足趾把持トレーニングを行う上での目標値が示された。しかしその適合度および感度・特異度は6割程度であり、転倒リスクを判断するためには不十分である。今後、他の身体機能などを考慮して、さらに検討を重ねることが必要である。【理学療法学研究としての意義】市販されている足趾把持力を用いて地域在住高齢者の年代別平均値を出している報告は少ない。そのため本研究で示した年代別平均値や転倒リスクに対するカットオフ値は、転倒予防教室や病院ならびに施設などでのリハビリテーション場面において対象者の目標設定として有益な情報であると考えられる。
著者
守 一雄
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.114-122, 1982-06-30 (Released:2010-07-16)
参考文献数
89
著者
東根 ちよ Chiyo Higashine
出版者
同志社大学政策学部・総合政策科学研究科政策学会
雑誌
同志社政策科学院生論集 = Doshisha policy and management review
巻号頁・発行日
no.4, pp.39-53, 2015-03-10

本稿は、「有償ボランティア」に関する先行研究を時系列に整理した上で、今後の研究課題について考察を行っている。「有償ボランティア」と称される個人の活動形態は1980年代、高齢者介護分野における会員制の「支え合い」活動の特徴として現れたと考えられている。また1998年のNPO法の施行以降は、会員制の「支え合い」活動のみならず、NPO法人内部における活動形態としても広がりをみせている。一方、「有償ボランティア」の位置づけはかねてから曖昧なまま運営され続けており、その点が時として「有償ボランティア」に過度の負担を強いたり、既存の法制度の適用に関して実務的な課題を生じさせたりしている。そのような中、本稿の考察では「有償ボランティア」には個人として独立して活動を行う「個人形態」と、組織の一員として活動を行う「組織所属形態」の二つの形態が存在することを確認している。加えて、今後の「有償ボランティア」研究には、実証的研究の蓄積と、先行研究で示される四つの基盤整備の方向性に関して具体的な検討が求められることを示している。研究ノート(Note)
著者
田村 良平
出版者
中古文学会
雑誌
中古文学 (ISSN:02874636)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.48-56, 1994
著者
川上 洋一 松村 泰志 笹井 浩介 安永 晋 稲田 紘 木内 貴弘 黒田 知宏 坂本 憲広 竹村 匡正 田中 博 玉川 裕夫 仲野 俊成 朴 勤植 平松 治彦 宮本 正喜
出版者
Japan Association for Medical Informatics
雑誌
医療情報学 = Japan journal of medical informatics (ISSN:02898055)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.421-429, 2006-06-20
参考文献数
8
被引用文献数
3

近年,セマンティックウェブ技術を医療支援に応用するための技術が注目されている.本研究では,過去の画像診断レポートから抽出された症例データをエレメント化し,RDF(Resource Description Framework)で関連づけた症例データベースから支援情報を提供することができるシステムの実現可能性を見極めることを目的とした.<br/> 兵庫医科大学病院のMRIにおける脳血管障害のレポートを利用し,部位や基本所見,診断といったデータエレメントを抽出し,それぞれのデータエレメントを関連付けて症例データベースを構築した.その症例データベースから読影するレポートに応じた支援情報を適切に提供できるかについて過去のレポートから推定した結果,作成できるレポートの範囲およびレスポンスについて概ね満足できる見込みを得た.また構造化したデータモデルが胸部CRにも応用できることを大阪大学医学部附属病院のレポートから推定した.
著者
相澤 哲
出版者
大阪大学人間科学部社会学・人間学・人類学研究室
雑誌
年報人間科学 (ISSN:02865149)
巻号頁・発行日
no.17, pp.85-100, 1996

特定の諸関係の中で、個人がある属性を持つところの主体として構成される過程、即ち「主体化」が、M ・フーコーの仕事における一貫した主題であったことは、今日ではよく知られている。さて、しかし、なぜ「主体」でなく「主体化」なのか? 「主体」になる前の「個人」とは、いかなるものか?本稿前半部では、まず、主体を何らかの操作の結果として、フーコーが扱い続けた理由を、彼の特異な思考の前提を明示することにより、確認する。その前提とは、次のものである。①主体の属性は、特定の実践上の技法の効果として生じる。②個人の〈内に〉複数の諸力が存在する。即ち、個人自体が、既に統治されねばならない複合的・政治的現象である。以上の議論を踏まえ、後半部では、「道徳的主体化の様式」に関する、フーコーの晩年の仕事が持つ意味について、考察する。重要なポイントは、フーコーが、①普遍的規範こそ道徳的主体性の基盤である、とする、西欧哲学において支配的な信念を問い直していること、②普遍的規範への要請・信頼を、特定の道徳的主体化の様式の採用に随伴するものとして、捉えていること、である。結論。もしも我々に共通に与えられているものがあるとすれば、それは、複数の諸力の中で、自らを何らかの実践によって統御せねばならない、という課題であり、規範は、そのための方法でしかない。規範の力でなく、規範を自らにあてがおうとする力の方が本源的なのだ。
著者
松田 法子
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.83, no.747, pp.979-986, 2018 (Released:2018-05-30)
参考文献数
7

A social relationship and a spatial configuration of Beppu hot spring, Oita where “geigi” and “shogi” have worked were investigated in this study. The study focused on condition of “shogi” and “kashi-zashiki” - a licensed prostitute quarter, its employers and their buildings - mainly in ex-Hamawaki village and also in ex-Beppu village. There were people who carry on “geiko” or “yujo” businesses in both Beppu village and Hamawaki village in the early modern period. They had a network extending over vast area such as Bungo, Setouchi and Osaka. Until around 1890, main business area of “kashi-zashiki” was placed along the Nagare River which runs Beppu village where development or settlement dates back in the beginning to the middle of the 19C. The area was originally a lowland swamp and developed by Hinago family, a top family of pedigree in the village, who runs a hot spring hotel. The business in around 1890 and the business in the early modern period had several things in common. They both hired both “geigi” and “shogi” and they also run hot spring hotels. These common features imply a possibility of some “kashi-zashiki” owner families had been running there business as “geiko-ya” from the early modern age. By the end of the Meiji period, “kashi-zashiki” business was more active in Hamawaki village rather than in the Nagare River area. This paper pointed out that this transition results from events. That is, the opening of Hoshu Denki Tetsudo rail-way in 1900, modernizing hot spring facilities or refurbishments of facilities and also real estate trading related to the development. Irie town, emerging “kashi-zashiki” area developed on a land-filled area where used to be a cove in Hamawaki town, had a unique system of landowning. Lands of other places in the town are generally owned by few “zaichi-jinushi” - a prestigious real estate owner of the area - but each “kashi-zashiki” employer owned “soko-chi” - covered area of ground by a building - and “kosen-chi” - a plot where hot spring comes - in Irie town. The paper also pointed out that there was a common feature in “kashi-zashiki” owners in Hamawaki during the modern period and hotel owners. Owners of “kashi-zashiki” consist of old landlords of the town and immigrants. The proportion of which resembles rapidly growing hotel owners at that time. “Geigi” and “shogi” worked during the end of the Meiji period was mainly from Oita, Miyazaki and some areas in Setouchi or Osaka. This geographical tendency has similarity to a network of “geiko-ya” in the early modern period. In addition to above mentioned studies, typology of buildings in Hamawaki and Irie town was described in the paper. In Hamawaki, “kashi-zashiki” buildings were “tsuma-iri” - axis of an entry constructed parallel to the ridge of the roof - and its wall was finished by lime plaster which is similar to vernacular houses. On the other hand, buildings in Irie town had its root in another type of building. This difference was caused by newness of “kashi-zashiki” district. Furthermore, difference of major business area between “kashi-zashiki” and “geigi” related business after the Taisho period was pointed out in this study. “kashi-zashiki” runs at Hamawaki but “geigi” related business run around the Nagare River in Beppu.
著者
菅原 清康
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.1973, no.16, pp.53-57, 1973-09-30 (Released:2009-12-17)
参考文献数
13

(1) 本研究は, 個々の雑草草種が原野, 新開墾畑, 未熟畑ならびに熟畑に単一群落を形成している位置の土壌pH値を群落の規模別に測定し, その草種が生育するための土壌の最適pH値の段階や範囲を究明しようとしたものである。(2) 同一草種では, 単一群落形成の規模の大小によって, 適応pH値の段階や範囲にさほど相異がみとめられない。(3) 個々の草種では適応pH値の段階に著しい相異があるとともに, その範囲にも広狭の相異がある。(4) 土壌のpH値が低く比較的適応範囲の狭い草種は原野に, 土壌のpH値が高く比較的適応範囲の狭い草種は熟畑に, また適応範囲の広い草種は未熟畑に多く発生するようである。また宿根性雑草の多くは, おおむね土壌pH値の適応範囲が広いようである。(5) 土壌pH値の段階や範囲の適, 不適によって個々の草種の発生および消滅が生起し, これらの現象が草種の転換としてあらわれるもののようである。(6) 適応酸度の強弱によって雑草を5段階に分類して1~5の序数をつけ, これを尺度として単位面積当りの平均反応数を出すことが可能である。一方, その場所の土壌酸度を測定し, 土壌酸度を顧慮して雑草を群落の形で土壌の指標としてあらわすことができる。
著者
井堀 礼晶 金子 修 宅島 勉
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.141, no.3, pp.307-314, 2021-03-01 (Released:2021-03-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1

Tracing control is used in various precision processing systems for industrial products. It is important for a tracing control system to be maintained so as to achieve the accuracy of positioning of the gap between the workpiece and the machining tool during the operation. For this requirement, the control gain is implemented as a look-up table corresponding to the gap. This controller is also used to attenuate the effect of an unevenness of the workpiece which is regarded as a measurable disturbance in the output of the tracing control system. In this paper, we present a data-driven update method of table-typed controller gain in tracing control system for disturbance attenuation.