著者
大沼 一彦 椎名 達雄
出版者
日本眼光学学会
雑誌
視覚の科学 (ISSN:09168273)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.82-87, 2017

<p>眼の中の前方散乱を測定する方法は80年以上前に提案されて実験がなされているが, 実用的な装置となったのはつい最近である。前方散乱の散乱特性についての基礎知識を得るための多くの文献はTJ van den Bergのものがあるが, それを理解するためには, 更なる基礎的な知識がいると思われる。ここでは, 散乱の理解のための入門的知識と人眼の前方散乱の測定手法について述べる。</p>
著者
平松 毅久 新海 明
出版者
Arachnological Society of Japan
雑誌
Acta Arachnologica (ISSN:00015202)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.181-185, 1993 (Released:2007-03-29)
参考文献数
8
被引用文献数
4 5

ユアギグモ1種 Patu sp. の網構造と造網過程を観察した. 網は完全な水平円網で体長にくらべて大きく, タテ糸が極めて多かった. このタテ糸の大部分は普通の円網種と同様な過程でヨコ糸まで張り終えた後に付加されたものであった. また, 造網の最後にタテ糸を緩めて付け直すというこしき部の修正を行った. このような特徴的な造網行動は, 本種が普通の円網種より派生したことを示し, さらに網構造と造網行動の類似性から, 本種がヨリメグモ科やコツブグモ科のクモと近縁であることを示唆している.
著者
水田 圭
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.62, 2015

本研究では、「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」(旧カンヌ国際広告祭)における評価軸の変遷を分類する。 この広告賞は1954年映画館における劇場CM振興のために創設された。当初は1つのグランプリ作品を選んでいたが、現在では13の部門に分け評価をおこなっている。「カンヌ」の最大の特徴は評論家や研究者ではなく制作者が広告作品へ評価していることである。その歴史は、表現メディアの変化への対応ばかりではなく、「あるべき評価」を実現しようと試行錯誤する姿である。文献を追うと「カンヌ」のクリエイティビティの評価に対する真摯な姿勢を確認することが出来る。 現存する各部門は表現メディアの違いによってのみ分けられているのではない。評価対象は、アイデア、革新性、営業活動、表現技術、理論の実行、ターゲットの絞れたコミュニケーションのように多彩である。評価の観点として、対象とする課題、表現技術と理論の実行、広告効果、クリエイティビティ等と整理することが出来る。 「評価」を整理・理解することで制作側と顧客の間にある情報を整理し、事業に貢献することが研究の目的であり、本稿はその基礎研究となる。
著者
橋本 大二郎 瀬川 滋
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.443, pp.20-21, 2008-03-14

はしもと・だいじろう1947年東京都生まれ。72年に慶応義塾大学法学部を卒業後、NHKに入局。91年にNHKを退職し、高知県知事選に出馬して初当選。2007年12月まで4期16年にわたって知事を務め、1.5車線道路などを全国で初めて実現させた。退任時には「次の衆院選で高知から無所属で出馬するつもり。
著者
山内 恭
巻号頁・発行日
no.565, 1978
著者
源島 穣
出版者
日本比較政治学会
雑誌
比較政治研究 (ISSN:21890552)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-17, 2017 (Released:2020-01-29)
参考文献数
80

近年、先進諸国では社会問題が複合的に生じる「社会的排除」の解決を目指す「社会的包摂」のアプローチとして、官-民のアクターの協働に基づく「福祉ガバナンス」が重視されている。しかし参加アクターの権限やリソース、利益が本来的に異なるため、福祉ガバナンスの実施体制を構築することは容易でない。それにもかかわらず、イギリスのブレア政権は地方アクターと円滑な協働関係を構築し、社会的排除の深刻化した地域の再生を進展させた。これより本稿の課題は、「近隣地域再生政策」を事例に、ブレア政権はなぜ社会的包摂をめぐり、福祉ガバナンスの安定した実施体制を構築できたのか、その舵取りの過程を明らかにすることである。本稿は「相互作用ガバナンス論」に基づいて分析し、福祉ガバナンスの政治目標として社会的包摂が設定および共有される過程、地方アクターの意向を反映させる制度および政府のアカウンタビリティを確立する制度が策定される過程、地方アクターによる事業実施過程を明らかにした。いずれの過程においても、ブレア政権は主導的に舵取りすることで、安定した実施体制を構築することに成功したのである。
著者
上條 諒貴
出版者
日本比較政治学会
雑誌
比較政治研究 (ISSN:21890552)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-30, 2018 (Released:2020-01-29)
参考文献数
31

本稿は、同一政党内での首相の交代という、内閣の終了に関する従来の理論では説明困難な現象に対して、党首選出制度の違いに着目することで接近を試みるものである。本稿ではまず、党首選出制度の開放性(一般党員の関与)の違いが、選出される新首相の政策位置・能力・人気、そして現在の首相交代の可能性にどのように影響するかを考察するための数理モデルを構築する。モデルの検討の結果、議員のみで党首を選出する閉鎖的党首選出制度の下でのほうが、一般党員が関与する開放的選出制度の下より首相交代が起こりやすいという仮説が導かれる。その後、オーストラリア、カナダ、日本、イギリスの首相データを用いた生存分析によって、数理モデルの含意を検証する。分析の結果、一般党員など議会外政党が関与する党首選出制度の下の首相より、議員のみで党首を選出する制度の下の首相の方が交代するリスクが有意に高いことが示される。
著者
浜中 新吾 白谷 望
出版者
日本比較政治学会
雑誌
比較政治研究 (ISSN:21890552)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-19, 2015 (Released:2020-01-29)
参考文献数
66

2011年初頭から体制転換をもたらす変動が中東地域を覆ったにも関わらず、君主制諸国は比較的安定を維持している。なぜ中東では君主制国家が共和制以上に安定性を維持しているのだろうか。中東地域における君主制、とりわけ湾岸産油国の安定を説明するのに有用な理論として、レンティア国家論と王朝君主制論が存在する。しかしモロッコは産油国ではないため、レンティア国家論で説明できるアラブ君主制諸国のように、原油レントを使って国民から「忠誠を買う」正統性の調達手段を持たない。またモロッコは政府首脳に王族を配していないため、王朝君主制に基づく説明にも該当しない。このように君主制の安定をめぐる議論にはパズルが存在する。本稿では、国王が多党制の議会を認め、各党の政治対立を調停することで、君主が正統性を調達しているという仮説に着目した。エリート間政治と大衆意識の連関についての前提条件が満たされた上で、仮説が正しいならば、観察可能な含意として、国民は議会制度に代表される「民主主義」を評価しているはずである。本稿では計量的実証分析を行うとともに、事例研究によってモロッコが「与党・野党のローテーション制」と呼ぶべき体制安定化メカニズムを持つことを明らかにした。
著者
小笠原 〓
出版者
Yamashina Institute for Ornitology
雑誌
山階鳥類研究所研究報告 (ISSN:00440183)
巻号頁・発行日
vol.7, no.6, pp.665-680, 1975-12-31 (Released:2008-11-10)
参考文献数
16

1.調査は,東北大学植物園において,エナガ群の動態を明らかにする目的で,1961年7月から1962年1月に56回,1962年4月から1963年4月に124回のセンサス及び1960年から1964年の間に一般観察によって行った。2.エナガ(Aegithalos caudatus trivirgatus)の年周期活動を記載し,シジュウカラ(Parus major minor)のそれと比較した。3.エナガは,その群生活を中心にした,季節的にきわめて特徴的かつ興味ある生活様式をもっている。シジュカラの年周期活動はエナガのそれと多少異なり,繁殖期はエナガが一般的に早いことが認められた。4.エナガの繁殖個体数は秋季-冬季群の個体数とほぼ等しい。1962年にマークした16羽のヒナのうち,1羽(♂)は1963年,1964年にそのヒナが巣立ちした巣の近くに営巣した。さらに,この個体は1962年,1963年及び1964年にそれぞれ夏季群および秋季-冬季群にも認められた。5.エナガの冬季群の各個体は翌春,その採餌行動範囲内に留まり,その地域に分散営巣するものと思われる。このように秋季群及びその群行動はエナガの地域的繁殖個体群の大きさを決定するのに,重要な役割をしているように思われ,もしそうであるとしたら,すでに植物園で繁殖のためにすみついているのであり,植物園はエナガにとっては繁殖のための地域であると考えられる。

1 0 0 0 OA 動物学雑誌

出版者
東京動物學會
巻号頁・発行日
vol.5, no.53, 1893-03-15
著者
五十嵐 龍夫
出版者
北海道農事試驗場北農會
雑誌
北農 (ISSN:00183490)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.326-331, 2017-07

パラグアイでは自炊生活と聞いていた。イタプア県のエンカルナシオン市で,以前日本からの専門家やシニア海外ボランティア(S.V.)が間借りしていた日系人所有の家に住み,そこからカピタンミランダ市のCICM(カピタン・ミランダ研究センター)には路線バスで通勤することになった。家の台所には電気炊飯器や電子レンジがあり,自炊には不自由の無い環境である。以下,筆者の食生活に係わる農畜産物などについて報告する。筆者は自炊のために継続的に食料品を買っているが,買い物に慣れ始めた昨年の6月頃から買った物の価格を記録することにした。こちらでは小さい店では,商品に価格が付いていない場合やレシートが無い場合があるが,中規模以上のスーパーでは商品に価格表示が付き,レシートにはkg単位の価格と,買った商品の重量と価格が表示されている。それで1kg単位の価格の推移を見ることにした。尚,価格は110円=1ドル=5,500ガラニーで換算している。
著者
近藤 英治 曽根 正勝 山原 研一 千草 義継
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

妊娠高血圧腎症や胎児発育不全は主に胎盤形成不全に起因する。病的胎盤からの放出因子が母体血管内皮を障害して高血圧や様々な臓器を障害する。一方、胎児では発育不全や胎児機能不全をきたす。この母児の生命を脅かす疾患の根源は胎盤にあり、胎盤形成不全の原因を明らかにし、胎盤機能再生療法を開発することは、周産期医学にとって喫緊の課題である。しかし、未だ胎盤形成のin vitroモデルはなく、まずは胎盤形成不全の機序を解明するため、胎盤を構成する絨毛細胞、血管内皮細胞、間葉細胞の代用として、ヒトiPS細胞由来絨毛様細胞、臍帯由来の血管内皮細胞、羊膜由来の間葉系幹細胞を共培養することで、胎盤の立体的器官芽(ミニ胎盤)を作成することに成功した。絨毛は2層構造であり、内側のCytotrophoblast(以下CT)と外側の(Syncytiotrophoblast(以下ST)から構成され、CTの融合により形成されるSTは母体血に面しており、母体と胎児の栄養・ガス交換を担っている。また、CTは絨毛外栄養膜細胞(EVT)にも分化し、脱落膜に付着したcell columnのCTから分化したEVTは子宮や子宮動脈内に浸潤する。ミニ胎盤ではこの3種の絨毛(CT, ST, EVT)が局在しており、より生体に近いモデルであると考えられた。ミニ胎盤は免疫不全マウスの子宮内でも生着するため、今後我々が開発したミニ胎盤はin vitroのみならずin vivoにおいても胎盤形成期の研究材料モデルとして用いることができる可能性がある、
著者
宮本 万理子 横張 真 渡辺 貴史
出版者
社団法人 日本造園学会
雑誌
日本造園学会 全国大会 研究発表論文集 抄録
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48, 2012

本論説は文化財としての文化的景観の捉え方を提示するものである。本目的を達成するため、本論説では2つの研究目的を設定した。第一に、UNESCOによる文化的景観(Cultural Landscape)のカテゴリーに影響を与えたと考えられる学識者による文化的景観の定義を検討した。第二に、文化的景観(Cultural Landscape)のカテゴリーに影響を与えた学識者の一人であるWagner & Mikesellによる"文化的景観"の定義に基づき,土地履歴(景観と社会との関係性の履歴)の解釈からみた文化財としての「文化的景観」の新たな概念を提示した。さらに,地図および文書の所在の有無にもとづき土地履歴が辿れるか否かによって景観が分類された。こうした概念にもとづくと,(1)地図あり/文書あり、(2)地図あり/文書なし、(3)地図なし/文書あり、(4)地図なし/文書なし、に分類された。計画論的立場からは(1)地図あり/文書あり、が「文化的景観」として承認されやすい景観であると考えられた。
著者
森 類臣 水野 直樹 コルホネン ペッカ 李 貞徹 ジョンチョル パク
出版者
大谷大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、北朝鮮における文化政策のうち、音楽政策を研究対象とし、音楽政策の実態とその意味を明らかにすることに注力した。研究対象を歴史社会学的アプローチによって時代別に大枠を整理し、さらに音楽と政治を扱う社会学理論を援用して分析した。このような分析によって北朝鮮の音楽政策を説明する基本的なモデルを導出し、その後にモデル有効性について金正恩体制まで射程に入れて検証した。その結果、(1)金日成~金正日時代に行われた音楽政策の基礎理論の整理 (2)北朝鮮の音楽政策理論の独自性とモデル化 (3)金正恩体制の音楽政策へのモデル適用の有効性、などを明らかにした。