著者
村田 晃嗣 阿川 尚之 小島 誠二 中谷 直司 山口 航
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

グローバル化を背景として、国際政治における都市をめぐる外交の重要性が増している。本研究は、「都市からの外交」と「都市への外交」の2つの方向を軸として、①自律的プレイヤーとしての都市による外交の実態を把握し、②都市外交研究の基盤となる分析枠組を構築し、③国家を始めとする他のアクターとの相互作用を分析し、「都市」が世界政治で果たしつつある役割を明らかにしていくことを目指した。都市をめぐる外交を2つの方向から事例を研究し、都市の経済活動の結果ではなく、世界政治の構成要素としての「都市外交」研究を目標にした。本年度は、これまでの成果を踏まえた上で、「世界政治における都市外交」(潜在的役割の評価と政策提言)について研究を進めた。都市が今後「世界政治」のなかで発揮すべき役割について、検討をしていった。とくに①新しい「国際規範」の発信者としての都市と、②国連や地域機構と協力して紛争後地域の「平和構築」に貢献する都市の姿に着目をした。①については、国家主権の制限に必ずしもしばられない都市が、規範(新たな理念)の意識的な発信者として行動を活発化させれば、すでに実績があるNGOや多国籍企業を上回る影響力を発揮することが可能ではないかと予測した。②については、停戦監視や武装解除の初期段階ではなく、その後の自治機構の整備や地域コミュニティーの安定化に、都市が組織的に関与できる「国際制度」の構築を想定した。しかしながら、新型コロナウイルス感染症による国内外の情勢に影響を受けたため、国内外での資料の収集や、研究メンバーによる機動的な行動が困難となり、研究に遅れが生じた。
著者
村上 和雄 堀 美代 坂本 成子 大西 淳之
出版者
公益財団法人国際科学振興財団
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究は、瞑想や祈りなど人類が社会生活の営みに取り入れてきた宗教性が健康にもたらす効果を、アロスタティックな心身変容と捉えて実証した。仏教の護摩行を実践した僧侶は炎症関連,脂肪酸代謝関連,NK細胞調節関連の遺伝子が発現増加し、呼吸やアミノ酸代謝、脂質代謝などの代謝産物の変動が見られた。一方、ヨーガ瞑想の実験では、熟練度で遺伝子発現プロファイルが異なっていた。しかし、ヨーガの経験の有無に関係なく、ネガティブな感情が低下し、がん抑制関連の遺伝子発現やケトン体の生合成や分解に関わる代謝産物などが変動した。また、護摩行とヨーガ瞑想ともに未経験の被験者において即時的な効果が引き出されることも分かった。
著者
吉田 聡
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

本研究では、1分毎、高度100m毎の高時空間分解能で大気中の水蒸気量を推定できる新型マイクロ波放射計と2分毎に全天の雲画像を撮影できる雲カメラを用いた白浜・潮岬での定点観測と同測器を搭載した車両による3点同時観測によって、降水直前の数km、数十分の間に潜む詳細な水蒸気・雲分布の4次元変化を捉え、降水が地上に達する直前までの大気場の変動と、現実大気中での水蒸気、雲、降水に至る過程の実態解明に挑む。
著者
新谷 喜紀 田中 誠二 篠田 徹郎
出版者
南九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

昆虫の過変態における遺伝子発現や内分泌機構を調べるために、過変態昆虫の代表であるマメハンミョウについて、同じ温度のもとで光周期だけの違いによって、4齢から5齢への変態(擬蛹化)と4齢からの直接の蛹化を調節できる飼育条件を見つけ出した。このように、擬蛹化と蛹化予定の幼虫を産み出すことが可能になったので、それぞれの幼虫における遺伝子発現の差異をRNA-seqによって調べたところ、コクヌストモドキなどモデル昆虫で知られている変態のキー遺伝子の発現に差異がみられた。
著者
小西 天二 中村 憲夫 小川 優子 東 朋子 正木 美佳 松本 直美
出版者
同志社女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

オキシピナタニンは,マウスの腹腔内および経口投与後の脳波測定により、経口投与においてのみ睡眠量の増加が認められた。また、血中濃度の検討で,経口投与時の血中濃度は非常に低いことがわかった。オキシピナタニンは体内で代謝を受け、作用する可能性が判明した。人工胃液,人工腸液での安定性、肝臓での代謝の検討から,胃、腸および肝臓で代謝されていないことがわかった。更に、サーモグラフィーを用いた体温測定により、オキシピナタニンは末梢血管の拡張作用に伴う熱放出により、睡眠改善効果を示す可能性が示唆された。
著者
後藤 隆純
出版者
地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センター(臨床研究支援センター)
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

骨髄由来間葉系幹細胞を障害組織へ誘導し組織再生を促進させる因子であるHMGB1が組織リモデリングを抑制する薬剤候補として注目されている. 心筋梗塞モデルラットに対し, HMGB1による心機能改善効果を検証し, 梗塞後リモデリング抑制に関する有効性, 及び, 障害心筋に骨髄由来間葉系幹細胞の誘導が促進される機序を解明した. HMGB1による自己修復能の促進効果は, 心筋梗塞後心不全に対する既知の細胞治療の再生効果を更に強調する事が期待され, HMGB1の早期ヒト臨床応用に向けて, 大動物-心筋梗塞モデルを用いた前臨床試験の実施が必須である.
著者
大瀧 慈 神田 隆至 藤越 康祝 佐藤 健一 越智 義道
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

1)SIRによる有効射影縮約空間の次元選択のための統計規準の構築正準判別関数法において使われているモデル選択基準を基に、SIRでのEDR空間の次元の推定のための統計的選択基準を構築し、数値実験によりその性能を検証した。(シンポジューム「多次元データ構造の探索」において発表、現在論文投稿準備中)2)SIRアルゴリズムの改良回帰関係が対称的構造を伴う有効射影方向に対して、SIRのオリジナル版のアルゴリズムが上手く働かない問題に対して、主要点解析法を組み込みその性能の向上を試みた。(Symposium on"Statistics,Combinatorics and Related Areas",Bombay(India),2000にて発表、現在投稿準備中)3)B-スプライン法による散布図平滑化アルゴリムの改良B-スプラインの基底関数の結節点の配置を調整することで、スプライン曲線モデルの適合度を向上させるように平滑化アルゴリズムの改良を行った。(現在、論文投稿中)。4)低次多項式によるパラメトリックモデルとB-スプラインモデルによるノンパラメトリックモデルの選択における統計的規準の構築(現在、投稿準備中)5)ノンパラメトリック回帰モデルによる一戸建て住宅データ解析(広島女学院大学生活科学部紀要,2000にて論文を掲載済)6)ノンパラメトリック回帰モデルによる日本の市区町村別肺がん死亡危険度データの解析(Jpn J Clinical Oncology,2000に論文を掲載済)
著者
西谷 和彦
出版者
神奈川大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

茎寄生植物であるアメリカネナシカズラ(Cuscuta campestris Yuncker)は茎で他の被子植物の茎に巻き付くと、接着面側の皮層組織から吸器という分裂組織を発生させる。吸器の最前面の細胞列には探索糸細胞が並び、これらが伸長させながら宿主組織内に浸入する。探索糸は伸長を続け、宿主の維管束領域に浸入すると管状要素に分化し、最終的には宿主道管と連結し、水や養分を全て宿主より調達し、繁殖する。吸器形成から道管連結に至る一連の過程の分子メカニズムは今、尚、ほとんど未解明である。我々の今年度の研究により、探索糸が二段階の核内倍加を経て、伸長することをまず明らかにした。ついで、核内倍加と伸長の過程が宿主由来のエチレンにより促進されることを、シロイヌナズナを宿主に用いた解析により明らかにした。すなわち、アメリカネナシカズラが野生型のシロイヌナズナに巻き付くと、1-aminocylclopropane-1-carboxylic acid(ACC)合成酵素の遺伝子、ACC SYNTHASE2(AtACS2)およびACC SYNTHASE6(AtACS6)の発現が上昇するが、エチレン欠乏シロイヌナズナ変異体を宿主とした時には探索糸の伸長や核内倍加が抑制され、これらの抑制はACCの投与によって相補された。一方、シロイヌナズナのエチレン感受性変異体etr1-3を宿主にした時には、探索糸の伸長抑制は観察されず、宿主植物のエチレンシグナル伝達系は、アメリカネナシカズラの寄生には関与しないことも明らかにした。更に、エチレンによるアメリカネナシカズラの核内倍加促進の機構についても分子解剖を行なった。本成果の学術的な意義は、寄生植物が寄生行動の過程で宿主が発する化学シグナルを、寄生植物が寄生行動のゴーサインと認識し、寄生行動を一層推進させるメカニズムの存在を実証した点にあると考えている。
著者
黒川 悠索
出版者
特定非営利活動法人量子化学研究協会
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、多粒子の一般化近接条件(GCC)を提案した。GCCは正確な波動関数がカスプ領域で満たすべき条件であり、高次の微分係数同士の関係式からなる。高次のGCCを満足すれば、カスプ領域において正確な解が得られることを確かめ数値的に実証した。また、Free Complement法を用いて、無限遠領域においても正しい振る舞いをする基底・励起状態における水素分子のポテンシャルカーブを超精密(原子単位で小数点以下5桁程度)に求めた。
著者
尾崎 一郎
出版者
北海道大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2022-06-30

本研究は、専門家ですら読解に困難を覚えるほど、極めて複雑化した現代日本の法言語、すなわち法令の条文と判決文とについて、美的洗練という観点から、簡潔明瞭な言語への転換が人々の法への理解度と共感度を大きく改善することを実証し、法化時代を迎えた日本の法令や判決が今後備えるべき美的合理性の具体的な形を実践的に提言するものである。実証の手段として、法言語の計量分析と実験室を用いた社会心理実験を併用する。
著者
渡邉 淳
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

血管型エーラス・ダンロス症候群(血管型EDS,エーラス・ダンロス症候群IV型)は、血管や管腔臓器に特異的に発現するIII型コラーゲン(COL3A1)の片方のアレルの遺伝子変異で発症する.本症候群は血管破裂、消化管破裂、子宮破裂を合併し、時に突然死を呈する常染色体優性遺伝病であり,他のエーラス・ダンロス症候群と異なる疾患群と考えられている。現在のところ、根本的な治療法はなく対症療法が主となっている.本研究では血管型EDSのCOL3A1変異型(グリシン変異、splicing変異)ごとに、COL3A1変異アレルに対するRNAi(RNA interference)による発現抑制効果を検討し、これまで治療法のない血管型EDSに対する治療の可能性について臨床応用に向けた基礎的研究成果を集積することを目的とした.それぞれの変異型に対して変異部位特異的なsiRNAを作成し、変異線維芽細胞に導入した。Splicing変異においては、変異mRNAの発現を特異的に80%以上減少することができた。さらに、コラーゲンの発現増加に関わるLysyl oxidase(LOX)の発現ベクターをsiRNAと同時に導入したところ正常COL3A1の発現の増加を認めた。その後、グリシン変異、splicing変異によるdominantnegat iveメカニズム以外に、haploinsufficiencyを来すナンセンス変異に対しては、Lysyloxidase(LOX)を導入することで正常COL3A1の発現の増加を認めた。新たにsplicing異常をきたすを来す変異を同定し、スプライスを人工的に起こす発現ベクターを構築し、in vitro変異評価できるシステムを構築した。
著者
川口 寿裕
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

離散要素法(DEM)を歩行者間の相互作用力計算に適用し、高密度下の歩行者流れを解析できる数値シミュレーションコードを作成した。本コードを直線通路内歩行者流れ、出口からの退出、群集詰め込みなどの問題に適用したところ、既存の実験結果と定量的によく一致することが確認された。特に、高密度下での群集内作用力の不均一性について、有益な知見を得た。一方、ビデオカメラを用いて実際の群集の流れを撮影し、PIV解析を行った。二次射影による平面補正を行うことで、斜め上からの撮影画像からも適正な歩行速度を計測できることが確認された。
著者
張 賢徳
出版者
帝京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

(1)自傷行為中に解離状態が生じている、(2)自傷行為中の解離状態が強いほど自傷は重症になる、(3)解離性向が強いほど自傷を起こしやすい、という3つの仮説を立て、これらを検証することが本研究の目的である。対象は精神科患者であり、自傷行為歴、自傷行為歴があった場合にはその行為中の解離度、そして普段の解離性向について、面接ならびに質問紙法によって情報収集を行った。解析方法は、仮説(1)に対して、自傷行為時に解離状態を呈した者の割合を調べる。仮説(2)に対しては、自傷行為中の解離度を質問紙(Peritraumatic Dissociative Experiences Questionnaire)で測定し、その程度と身体重症度との相関を調べる。仮説(3)に対しては、普段の解離性向を質問紙(Dissociative Experience Scale;DES)で測定し、自傷行為群と非自傷行為群の間でその得点を比較する。うつ病性障害の患者200名、精神分裂病患者50名が現在解析可能な段階にある。その他の疾患群では情報収集を続けてきたが、十分な解析に耐えうる数がまだ集まっていない。うつ病性障害では、上記の仮説3つとも支持される結果が得られた。精神分裂病では、仮説(1)、(2)は支持されたが、仮説(3)は支持されなかった。この解釈として、精神分裂病患者は解離性向に無関係に強い覚悟の上の自殺念慮によって自傷行為を起こすと考えられる。つまり、彼らの自殺念慮の高まりには解離はあまり関係せず、一旦強い自殺念慮を抱くと、解離性向に関係なく実行する(「覚悟の上の自殺」と考えられる)。しかし、DESの質問事項の一部が精神分裂病症状に近似しているものがあるため、これらの項目の扱いを再検討して解析することも予定している。本研究から、うつ病性障害では、希死念慮プラス強い解離性向が自殺の危険因子であることが示唆された。
著者
宮本 英昭 石上 玄也 田中 宏幸 尾崎 正伸 日野 英逸
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

数値計算とデータ解析により火星表面は水平方向に飛来するミュオンが地球上より多く存在し,ミュオグラフィが適用しやすいことを確かめた.ピンゴ状地形の内部氷コアをモデル観測シナリオとして,30日程度で観測可能となる超小型ミュオグラフィ装置を設計し,この原理実証モデルを開発した.地上の3地点で5週間に渡り実証試験を実施し,開発した装置が十分な精度で密度構造を計測可能なことを確かめた.3年と短い研究期間であったが,世界発の宇宙版ミュオグラフィ装置の原理実証機の作成と運用,さらに火星で運用するための移動手段の開発・運用に成功し,予定以上の大きな成果を得ることができた.
著者
中村 仁美 玉井 克人 冨松 拓治 遠藤 誠之 味村 和哉
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

現在の不妊治療の治療効率を向上するためには現在ブラックボックスである受け入れ側の子宮の着床能を前方視的に評価しその周期ごとの治療方針に反映させなければならない。これまでの我々の研究において、ヒトでは排卵期前に子宮内膜の電気生理学的パラメータを測定する事でその周期の子宮内膜の受容能が前方視的に評価できる事を明らかにした。本研究では、この物質的基盤を明らかにするために月経による子宮内膜の再生機構について、マウスモデルを用いて基礎研究を行う。将来的に、電気生理学的評価の物質的基盤を検討する事でヒト子宮の着床能を前方視的に評価する装置システムの精度の向上だけでなく、治療への応用をめざす。
著者
小林 亮 石黒 章夫
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

生物界の2大勢力、脊椎動物(魚類以外)と節足動物が採用している移動手段である脚式ロコモーションについて、力学の視点および進化の視点から研究を行った。進化の過程で、一度脚を得たらその後は減っていく一方に見える。節足動物の中では例外的に高速で走行することができ、速度に応じて使用脚数を変えるスナガニに着目し、数理モデルを用いて解析することで、脚数減少の理由付けを与えた。同時に進化の過程における脚数の減少に対する一応の解釈を得た。また、動物の運動と制御を解析するための記述法として、ダイナミックフログラフというプラットフォームを提案した。
著者
東 淳一 新谷 奈津子 仁科 恭徳 小泉 利恵 金丸 敏幸 山下 仁司
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究の目的は、英語のスピーキングの学習を促す教具としての人工知能の有効性と、英語スピーキング力測定の際の学習情報収集用教育ツールとしての人工知能の有効性の両方を検証するために実証実験を行うことである。 1年目の研究準備段階では、まず米国AKA社の英語学習用人工知能ロボット「Musio」を導入してその動作確認を行い、研究計画を立案した。2年目には、Musioとの対話を通じて特定の問題の回答を導くためのタスクを構築することとしたが、実際のMusioとの対話ではタスクベースの会話が想定通り機能しなかった。このため、急遽実験方法を変更し、大学生の実験協力者とMusioの間で自由会話を行ってもらい、その会話記録の分析を行った。実験後に会話記録分析を開始し、実験協力者にはMusio使用の会話練習についてのアンケートを実施し、いわゆる人工知能ロボットの導入が学習者に与えるインパクトを調査することとした。3年目の2020年度については新型コロナ感染拡大により、実験等ほとんどの事業が不可能となった。このためMusioとは別に人工知能的なエンジンをもつ対話システムであるAmazon Lexを用いた音声ベースの対話システムの構築実験を実施し、さらにこのような音声対話システムに用いられる最新のTTS合成音についても調査した。
著者
渡辺 哲
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

CDAA食投与によるラットNASHモデルでは、投与2週目より著明な脂肪肝がみられ、肝線維化(8週)、肝硬変(16週)、肝がん(50週)へと進行した。酪酸菌を投与した群では、肝での酸化ストレス抑制、門脈中エンドトキシン減少、肝脂肪沈着の抑制、インスリン抵抗性の改善、炎症反応抑制等が認められ、同時に肝でAMPK、AKTのリン酸化とともにNrf2の著明な発現増加がみられた。In vitroの解析より、酪酸によるAMPKのリン酸化はSirtuin1のリン酸化と核移行を促し、その結果mTOR2 complexの集積とAKTのSer473のリン酸化が起こり、最終的にNrf2の発現が増加することが判明した。
著者
棟方 有宗
出版者
宮城教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

(1)サクラマス銀化魚の降河回遊行動に及ぼすコルチゾルおよびテストステロン投与の影響を、水産総合研究センター中央水産研究所日光庁舎の実験水路内で調べた結果、降河回遊行動はコルチゾルの投与量依存的に促進されること、またコルチゾル投与による降河回遊行動促進作用は、性ホルモンであるテストステロンの投与によって打ち消されることが明らかとなった。このことから、サクラマスでは河川で孵化したのち、河川内で性成熟に向かう場合にはテストステロン等の性ホルモンによって降河回遊行動が抑制され、性成熟に向かわない銀化魚の場合には、コルチゾルの働きによって川から海への降河回遊行動の発現が促進されると考えられた。(2)平成18年3月に岩手県気仙川においてサンプリングしたサクラマスの銀化魚および河川残留魚の血中ホルモン量をEIA法により測定した結果、前年と同様、主に上流域で採捕される河川残留魚では血中コルチゾル量が低く、川から海に降る過程にあると考えられる銀化魚では、血中コルチゾル量が高いことが明らかとなった。そこで、この2年間と同様の結果が得られるかどうかを確かめるため、平成19年3月にも三度、同様のサンプリング調査を行った。現在、ホルモン量を測定している。(3)春に特異的に起こるサクラマス銀化魚の降河回遊行動を誘起する外部環境要因を明らかにするため、気仙川ならびに宮城県広瀬川の上・中・下流域に水温計測ロガーを設置し、周年にわたって温度変化をモニターした。今後さらに、気象庁や国土交通省の気象・水質データを加えて、サクラマス銀化魚のコルチゾル量変動や降河回遊行動発現のメカニズムを解析する計画である。
著者
熊澤 慶伯 長谷川 政美
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

トカゲ亜目を構成する主要な科より代表種を選んでミトコンドリアDNA全塩基配列約17キロ塩基対の決定を行った。その結果、イグアナ下目やヤモリ下目を構成する科から多数の種について(その他の科の殆どからは少なくとも代表種1種について)ミトコンドリアDNA全塩基配列を決定することができた。コードされる37遺伝子の塩基配列を用いて最尤法などによる分子系統解析を行い、信頼できる系統関係を構築するとともに、分子時計を仮定しないベイズ法を用いて分岐年代の推定を行った。その結果に、大陸移動に関する地質学的情報と古生物学的情報を加味して、トカゲ類の系統分岐と中生代の大陸移動の関係について考察を行った。主な生物地理学的成果は次の通りである。1)トカゲ類の主要な科間の分岐は白亜紀の大規模な大陸分離の以前にさかのぼる、2)ただしアガマ科とカメレオン科の分岐だけは約1億年前のゴンドワナ大陸で起き、その後アガマ科はインド亜大陸などに乗ってユーラシアに分散した可能性がある、3)マラガシートカゲ亜科のイグアナ類は他のイグアナ類と大陸の分断に伴い分岐した、4)ヤモリ科とトカゲモドキ科の分岐はパンゲア超大陸のローラシア大陸とゴンドワナ大陸への分裂に伴い分断的に起きたと考えられる。またこれらの研究を行う過程で、Draconinae亜科アガマ類のミトコンドリアゲノムの遺伝子配置に、脊椎動物としては初めてとなる遺伝子(本件ではプロリンtRNA遺伝子)の逆位を発見し、その分子進化機構として相同的DNA組換えを提唱した。