著者
戸張 真臣 石田 多美江 田中 丈三 渡辺 真郎 永山 升三
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.22, no.9, pp.397-402, 1981

家庭洗たくにおける各種衣料用洗剤のウール製品の収縮に与える影響の度合いを明らかにすることを目的とし, このウール製品の収縮がいかなる原因によって生じるのかを, 主にウールの物性面から検討した.その結果, ウール製品を洗たく機・ソフト水流で洗浄すると, 弱アルカリ性合成洗剤や粉石けんは, 中性洗剤に比べ収縮小の傾向にあり, これは, 弱アルカリ性合成洗剤や粉石けんのようなpHの高い洗剤系では, ウール表面のスケールがアルカリで侵されることや, さらに, 粉石けんの場合, カルシウム石けんなどの付着により, 摩擦係数の異方性 (Differencial Frictional Fffect; D.F.E.) が低下することも一因していることがわかった.このD.F.E.の考え方は, 近年の防縮加工技術に応用されているが, 本実験により, 実際の洗浄系においても, この考え方の適用されることが明らかとなった.
著者
渡邉 修
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.110-116, 2020-02-18 (Released:2020-03-25)
参考文献数
13

自動車運転は障害者の社会参加にとってきわめて有用な手段であるが,重大な社会的責任を伴うことから,リハビリテーション科医は,その安全性を見極める必要がある.自動車運転に際し,全身状態が安定していること,服薬状況を確認し,ついで,①視覚系では,視力が保たれ,視野欠損,半側空間無視がないこと,②感覚・運動系では運転操作能力があること,③認知系では,注意,遂行機能,記憶機能,情報処理速度,メタ認知能力が保持されていることを確認する.
著者
Masaaki MOTOZAWA Yoshiyuki MATSUMOTO Tatsuo SAWADA
出版者
The Japan Society of Mechanical Engineers
雑誌
JSME International Journal Series B Fluids and Thermal Engineering (ISSN:13408054)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.471-477, 2005 (Released:2006-02-15)
参考文献数
14
被引用文献数
4 4

Experimental results for the properties of ultrasonic propagation velocity in kerosene-based and water-based magnetic fluids are reported. Ultrasonic wave frequencies of 1MHz, 2MHz and 4MHz are used and the measurement scheme is based on the pulse method. The external magnetic field intensity is varied from 0mT to 550mT and the angle between the magnetic field direction and the direction of ultrasonic wave propagation is varied from 0° to 90°. The ultrasonic propagation velocity in magnetic fluids is dependent on temperature, elapsed time of applying the magnetic field, and magnetic field intensity. Hysteresis and anisotropy of ultrasonic propagation velocity are observed. These interesting results seem to be related to chain-like cluster formation in the magnetic fluids and the characteristic period of Brownian motion of the magnetic particles.
著者
山田 雅教
出版者
早稻田大學東洋哲學會
雑誌
東洋の思想と宗教 (ISSN:09100601)
巻号頁・発行日
no.18, pp.70-86, 2001-03
著者
神崎 亮
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.189-196, 2015-03-05 (Released:2015-04-09)
参考文献数
61

融点が室温付近にあるオニウム塩は,プロトン性イオン液体と呼ばれ,酸塩基反応媒体となり得るイオン液体という新しいカテゴリーの溶媒である.水でも有機溶媒でもない,新しい酸塩基反応場として,分離や精製,抽出などの分析化学的な操作への応用が期待される.本稿では,プロトン性イオン液体の酸塩基性・酸塩基反応について定量的に理解するため,まずpHと水素イオンの反応性との関係について,水と従来の非水溶媒(すなわち有機溶媒)との比較を用いて説明し,これをプロトン性イオン液体へと拡張する.これをもとに,プロトン性イオン液体中における自己解離平衡・酸解離平衡について,これまでの結果をまとめる.
著者
佐藤 貴茂 熊谷 良雄
出版者
Japan Association for Fire Science and Engineering
雑誌
日本火災学会論文集 (ISSN:05460794)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.1-8, 2003 (Released:2011-04-07)
参考文献数
17

本研究は,新たに開発したFRAMSを利用し,震災時における消火活動と救助活動を対象として,消防機関がどのような対応を実施することにより,被害を最小限に抑えることが可能であるかを明らかにしたものである。FRAMSによるシミュレーション結果から,火災や生埋め者が多数発生している場合には,火災の消火を優先とした活動を実施することにより人的被害,物的被害の双方を最小限に抑えることが可能であることが明らかとなり,さらに,この対応方法はいかなる状況下であっても有効であることが確認された。(オンラインのみ掲載)
著者
赤尾 綾子 郡山 暢之 安楽 千鶴 三反 陽子 尾辻 真由美 前田 円佳 森 加弥 渡辺 あつ子 河本 美津紀 深川 俊子
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.1025-1030, 2008 (Released:2009-05-20)
参考文献数
17

外来通院中の2型糖尿病患者257名に対し,睡眠障害(SD), 排尿障害(MD)および末梢神経障害(PN)を示唆する症状の有無についてのアンケート調査を実施した.SD, MDおよびPN症状を有する患者は,各々53%, 27%および44%であった.SDとMDは,年齢と正の関係を有し,特に高齢者において注意を要するものと考えられた.65歳以上のSD, MD, PN群と65歳未満のMD群でHbA1cが有意に高値を示し,65歳未満のSD, PN群でもHbA1cは高い傾向を示した.さらに,SD, MDおよびPNは,相互に関連することが推察された.SDでは中途覚醒の頻度が高く,65歳以上の女性では,SDのパターンがバリエーションに富んでいた.これらの障害を抽出するための問診やアンケートは,早期のアセスメントと対処を可能にし,患者QOLの改善,ひいては血糖コントロールの改善にも影響する可能性が示唆された.
著者
大田 祐子 土橋 卓也
出版者
一般社団法人 日本痛風・核酸代謝学会
雑誌
痛風と核酸代謝 (ISSN:13449796)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.169-174, 2011 (Released:2012-02-14)
被引用文献数
1 1

高尿酸血症の病型を分類することは,患者個人に合った治療法を選択する上で有用であるが,24時間法や60分法による評価の実施は容易ではない.そこで簡便法としての随時尿中尿酸/クレアチニン(UUA/UCr)の有用性について検討した.利尿薬または尿酸降下薬服用者を除く外来高血圧患者1067名を対象に24時間家庭蓄尿により尿酸動態を評価した.さらに蓄尿と随時尿中UUA/UCrの評価を行った177名において,両方法に基づく高尿酸血症の病型分類について比較検討した.24時間蓄尿により高尿酸血症合併高血圧患者の92%が尿酸排泄低下型と判定された.高血圧患者,高尿酸血症合併高血圧患者のいずれにおいても蓄尿で産生過剰型と判定された例で24時間蓄尿中UUA/UCrが0.5未満を示した例はなかった.一方,随時尿実施者においても,随時尿中UUA/UCr が0.5未満を示した例の99%が蓄尿による評価で尿酸排泄低下型を示した.蓄尿中UUA/UCrは随時尿中UUA/UCrと有意な正の相関を認め(r=0.42, p<0.01),両方法に基づくUUA/UCr0.5をカットオフ値とした場合の病型分類の一致率は69.5%であった.高尿酸血症合併高血圧患者において随時尿中尿酸/クレアチニンに基づく病型分類は日常診療での薬剤選択の根拠となりうると思われた.
著者
青木 宣明
出版者
島根大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

予備冷蔵(以下予冷)と冷蔵期間並びにGA処理が促成シャクヤクの花芽の発育と開花に及ぼす影響について調査した。[花芽の発育]野生タイプシャクヤクの花芽の発育について,6月下旬から12月中旬まで10日ごとに調査した。調査開始時の6月20日から9月下旬までは葉数の増加のみ認められた。10月中旬には花弁が,11月中旬には雄しべが,また下旬には雌しべの分化がそれぞれ観察された。‘サラ・ベルナール'の冷蔵(4℃)開始時(10月上旬)における花芽の状態については,数枚の花弁が観察され,‘サラ・ベルナール'の花芽分化は野生タイプよりやや早い傾向を示した。15℃で予冷されたシャクヤクは花芽の発育が促進された。30日〜70日冷蔵中における花芽の発育については,冷蔵期間が長くなるほど花芽の長さは長くなる傾向を示したが,花芽の直径や花弁数については一定の傾向を示さなかった。[促成]植え付け日が早いほど発芽日や開花日は早くなった。植え付けから開花までの到花日数は冷蔵期間が長くなるほど短縮された。発芽から開花までの積算温度は,冷蔵期間の長短にかかわらずほぼ一定であった。一年生株において,開花率は30日冷蔵が67%で最も高かったが,実用限界の80%には及ばなかった。冷蔵期間の長短による切り花形質の差は少なかった。予冷により開花期が促進した。予冷とGA処理の組み合わせにより,開花率は向上し,切り花品質も優れた。GA処理は出芽直後の1回処理が開花率向上に最も効果的であった。GA処理により,切り花の花色は薄くなる傾向があった。
著者
坂木 佳壽美
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科学 = JAPANESE JOURNAL OF PHYSICAL FITNESS AND SPORTS MEDICINE (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.477-488, 2006-10-01
参考文献数
33
被引用文献数
1

本研究では,安静坐位におけるリンパ球比率の平均値37.1(±6.9)%を基準に,平均値未満を顆粒球群(GG),平均値以上をリンパ球群(LG)の2群に分別し,侵襲的なリンパ球の比率と非侵襲的な心拍変動から求める自律神経機能評価指標(%RR50)が対応しているか否かを検討する.次にヨーガ呼吸(完全呼吸)を2群に課し,各群の血液・心拍の動態変化とヨーガ呼吸の有効性に違いが有るか否かを神経・内分泌・免疫三系の相互関係から明らかにする事を目的とした.本研究の対象は健常女性10名(ヨーガ歴5年以上のヨーガクラブ部員),年齢は51.2±8.7歳であった.測定は坐位にて安静15分,ヨーガ呼吸15分,回復30分の計60分間を連続して行ない,経時的に計8回測定した.採血は各ステージ終了直後の計3回行なった(20ml/回).測定項目は%RR50,心拍数,血圧と呼吸数,血液検査では血球算定,白血球分類,血漿CAとcortisol濃度,血清中総蛋白質とIgAを分析し,以下のような結果を得た.1.リンパ球比率により群別したGGとLGは,安静時の%RR50においても両群間にP<0.05の有意差が認められ,GGは交感神経活動亢進傾向群,LGは副交感神経活動亢進傾向群と分別された.また次の各測定項目(血小板,Hb, Hct,リンパ球,好中球,好酸球,単球,Adr, cortisol, IgA,血圧,平均血圧,PRP,呼吸数)では,全体的に両群間に有意差(P<0.01またはP<0.05)が認められ,侵襲的,非侵襲的な自律神経機能評価の両方法は対応していることが判明した.従って,非侵襲的な心拍変動による指標(%RR50)から個体の特徴を把握する事は可能であることが示唆された.2.群別したGGとLGの特徴とヨーガ呼吸の有効性を以下に示す.1)GGは個体差が大きく,変動も大きい.安静時におけるAdr, Nad, cortisolと血圧の高値,IgAと%RR50の低値が示すように,平常時も交感神経活動は緊張状態を示している.しかし,ヨーガ呼吸後の回復時には副交感神経活動は亢進状態を示したことから,神経・内分泌・免疫系活動に影響を与えていると言えよう.2)LGの変動は緩徐で小さく,安静時においてAdr, Nad, cortisol,血圧と呼吸数は低く,IgAと%RR50は高い値を示し,平常時も副交感神経活動が亢進状態にあり,ヨーガ呼吸後の回復時には更に神経・内分泌・免疫系活動が増強されていた.以上の結果から,自律神経機能評価指標の%RR50(非侵襲的)とリンパ球比率(侵襲的)は対応している事が判明し,非侵襲的な心拍変動による指標(%RR50)から個体の特徴を把握する事は可能であることが示唆された.次にヨーガ呼吸により副交感神経活動を亢進状態に導ける事が,神経・内分泌・免疫系三者間の関係から認められ,その有効性は交感神経緊張傾向のGGに顕著にみられ,ユックリ深い呼吸が生体に与える効果が実証された.従って,ヨーガ呼吸は日常生活の中で簡単にできるストレス・マネジメントの一方法である.更に本研究の測定を通して神経・内分泌・免疫系三者間の相互関係から,顆粒球・リンパ球の分布状態は免疫系だけでなく,心身のストレス状態や身体状態を示していると推察された.
著者
中川 一夫 池内 真理 次田 陽子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.425-427, 1986
被引用文献数
2 6

植物性食品材料54種中のグルタチオン含有量を酵素サイクリング法を用いて定量したところ, 0.07~28.7mg/100gの範囲にあった. これらの食品材料のなかでは, ホウレンソウ, キャベツ, シロナ, パセリ, キュウリ, カボチャ, トマト, サヤエンドウ, ソラマメ, エノキタケには相対的に高いグルタチオン含有量が認められたが, 動物肝グルタチオン量に比べると低く, およそ10分の1以下にすぎない.
著者
木本 浩司
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.15-22, 2019-02-28 (Released:2019-03-02)
参考文献数
32
被引用文献数
2

Crystal structure analysis using scanning transmission electron microscopy(STEM)is briefly reviewed. The various imaging techniques, such as bright field(BF), annular BF(ABF)and annular dark-field(ADF)are presented. Recent progress in STEM imaging is also described.
著者
荒井 文雄
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 = Acta humanistica et scientifica Universitatis Sangio Kyotiensis (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
no.49, pp.465-491, 2016-03

東京電力福島第一原子力発電所の過酷事故から数年が経過し,放射能汚染地から避難した住民は,原子力エネルギー政策の継続を掲げる政府の方針によって,被災地の復興のために,ふるさとへの帰還をうながされている。この論考では,原発事故後の帰還と復興をうながす言説を,〈象徴暴力〉の観点から分析する新たなアプローチを取った。〈象徴暴力〉とは,フランスの社会学者ピエール・ブルデューによる概念で,被支配者が自分から支配を正当化して受け入れるメカニズムの中心をなす。帰還と復興を暗示的に推奨する新聞記事の分析をとおして,これらのメディア言説が〈象徴暴力〉の特性を持ち,その効果を発揮していることを示した。なお,「福島第一原発事故関連報道と象徴暴力(上)」では,論考全体のうち,前半部1~3章を分割してとりあげた。