著者
岩崎 宏之 仲地 哲夫 並木 美太郎 桶谷 猪久夫 柴山 守 勝村 哲也 星野 聰 石上 英一 高橋 延匡 梅原 郁 石田 晴久
出版者
筑波大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1994

かつて琉球は、東アジア世界における地域間交流の要、「万国之津梁」として繁栄した。この沖縄の地理的重要性は、今日においても変るところがない。沖縄は今も日本、中国、台湾、朝鮮半島、さらには東南アジアの諸地域を包む環東シナ海世界の要である。沖縄をそのような国際社会のなかに位置付けて地域間交流の具体的様相を歴史的に考察し、東シナ海を取り囲む諸民族、いわゆるアジアニーズの歴史的変貌を明らかにすることを課題として重点領域研究「沖縄の歴史情報研究」は平成6年度より同9年度までの4年間の研究期間をもって遂行された。本研究は、領域研究の成果を取りまとめて研究成果報告書を作成し、領域研究の成果である琉球・沖縄史と環東シナ海地域間交流史に関する各種歴史情報を、学界はもとより広くインターネット等を利用して一般に公開・利用に供することを課題とした。琉球・沖縄史と環東シナ海世界の地域間交流史に関する多種多様な歴史資料をいかにして情報化するか、本領域研究では、(1)各種研究文献の統合的把握のための歴史情報の集積と検索システムの開発、(2)古文献、古文書資料など琉球・沖縄に関する歴史資料が、どこに、どのようなものがあるか、各種歴史資料の所在に関する情報の集積と検索システムの開発に関する研究、(3)本領域研究で調査・収集した琉球・沖縄史と環東シナ海世界の地域間交流史に関する基本的史料の画像情報の検索システムの開発とこれら各種資料をインターネット上で広く公開・利用するためのシステムの開発、(4)琉球王朝期の外交文書集「歴代宝案」や琉球家譜、「明実録」「清実録」「島津家琉球外国関係文書」など、琉球・沖縄史研究にとっての基本的文献の全文テキスト・データベースや環シナ海地域間交流史に関する各種の文献史料の情報化、を進めた。計画研究・公募研究の各研究班によって行なわれたこれらの情報化資料はすべて総括班に集積された。本研究課題は、これらの情報化資料の統合、ならびにその検索システムの開発等に関する各種の研究成果の取りまとめを行ない、またこれら収集・集積した各種歴史情報を筑波大学付属図書館の電子図書館サーバーからインターネットに公開・提供するための整備作業を進めた。平成10年8月には、本領域研究の全体を総括した総括班研究成果報告書「沖縄の歴史情報研究」を刊行した。また、本領域研究で収集されたマイクロフィルム等各種歴史情報は、東京大学史料編纂所、筑波大学附属図書館、大阪市立大学学術情報総合センター、沖縄国際大学南島文化研究所等に寄贈し、ひろく学界の利用に提供することにした。
著者
出口 禎子 武井 麻子
出版者
日本保健医療社会学会
雑誌
保健医療社会学論集 (ISSN:13430203)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.50-60, 2005-06-30 (Released:2016-11-16)

最近、日本でも自然災害や犯罪などの社会問題と共に心的外傷体験が注目されるようになって来た。日本では、太平洋戦争時に疎開を経験した人は58万人以上いるといわれているが、彼らの体験の実態やその体験がその後の生活にどのような影響を与えたかはあまり明らかにされていない。そこで私達は、7人の集団疎開の体験者に、当時の生活状況やその後の人生について聞き取り調査を行った。その結果、集団疎開は合法的な監禁状態にあったことや日常的に食物の盗みが行われ、一緒に暮らしている仲間同士で疑うという安全保障感の失われた環境になっていたことがわかった。また飢餓や寂しさは誰にも共通のものであったが、主に低学年の3年生がいじめの対象になっていたこと、直接いじめに加担していなくてもいじめを目撃したことが罪悪感となって心の傷となっている人もいることがわかった。また一方では、新しい価値を見出し、集団疎開の経験を生かして社会活動に参加しているひともおり、生活レベルでその記憶は今も息づいていることが明らかになった。
著者
秋山 裕一
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.94, no.7, pp.542-547, 1999-07-15 (Released:2011-09-20)

吟醸酒は, 日本酒の中でも醸造技術を極めた酒であるといっても過言ではない。その中には造り手の吟醸酒に対する思い入れや文化なども伝わってくる。吟醸酒の発展には少なからず, 品評会や鑑評会の果たしてきた役割が大きいと思われる。本稿では吟醸酒の変遷について, その技術的な進展とともに二回にわたって解脱していただいた。その歴史的価値も極めて大きい。
著者
福島 英沖
出版者
特定非営利活動法人 日本電磁波エネルギー応用学会
雑誌
日本電磁波エネルギー応用学会機関誌 (ISSN:24341495)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.13-16, 2015 (Released:2019-07-11)

マイクロ波加熱の課題として、ISM (Industry-Science-Medical)バンドの法規制があり、現状我が国では900MHz 帯は電波法で認可されていない。この周波数帯は浸透深さが大きいため均一加熱に有利であり、エネルギー効率(装置の変換効率)が高く低コストで加工でき、大規模化するには今後必須の周波数となる。北米では915MHz 帯が以前から認められており、大規模なマイクロ波加熱プロセスが行われている。我が国は 900MHz 帯の工業利用が遅れており、海外との競争力を備えるには米国、欧州にあわせ、グローバルスタンダードにする必要がある。産学界で連携して、産業科学医療用として 915MHz帯が ISM バンドとして認められる(もしくは規制緩和される)よう、国に働きかけていく必要がある。日本電磁波エネルギー応用学会 JEMEA では、2011 年から 900MHz 帯 ISMバンド調査 WG を作り、調査活動を行ってきた。本報では900MHz 帯域のマイクロ波加熱の利用可能性と課題について、現在までの WG 活動内容を報告する。
著者
小椋 忠志 MAGASSOUBA Aly 杉浦 孔明 平川 翼 山下 隆義 藤吉 弘亘 河井 恒
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回全国大会(2020)
巻号頁・発行日
pp.1Q3GS1105, 2020 (Released:2020-06-19)

生活支援ロボットは,在宅介護労働者の不足に対する有望な解決策である. 一方で,生活支援ロボットの主な制限の1つに,言語を介して自然に相互作用できない点がある. 近年の研究では,data-drivenのアプローチがあいまいな指示の処理に有効であることが示されているものの,大規模なデータセットを必要とすることが多く,その構築は時間と費用を要する. したがって,生活支援ロボットにおける命令文の自動生成手法は,このコストを大幅に削減し,アノテーション作業の負担を軽減することが期待できる. そこで本稿では,入力画像から把持命令文を生成する手法を提案する. 提案手法は,subword-levelの注意機構を持ち,subword embeddingに基づいて文を生成するMultimodal Attention Branchを有する. 実験では,画像キャプショニングに適した4つの標準的な尺度を使用して提案手法とベースライン手法との比較を行った. 実験結果では,提案手法がこれらの尺度においてベースライン手法を上回ることを示した.
著者
挾間 玄以 楠見 公義
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.265-270, 2004-03-15

抄録 症例は72歳,女性。抑うつ気分や精神運動制止などうつ病類似の症状で発症。症状は抗うつ薬で一時軽快するも再燃し抑うつ状態が遷延化した。その後,パーキンソニズム,認知機能低下が認められ,拒絶症や認知機能の変動も顕在化した。quetiapine少量投与(50mg/日)により,これらの症状の部分的改善が得られた。同薬の増量はパーキンソニズム増悪のため困難であり,donepezilの少量(0.5ないし0.75mg/日)を併用投与したところ拒絶症や認知機能の変動は消失した。quetiapineやdonepezilは少量投与でもDLBの精神症状改善に有効である可能性が示唆された。
著者
石田 亨 西村 俊和 八槇 博史 後藤 忠広 西部 喜康 和氣 弘明 森原 一郎 服部 文夫 西田 豊明 武田 英明 沢田 篤史 前田晴美
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.2855-2865, 1998-10-15

本論文では,国際会議におけるモバイルコンピューティング実験の報告を行い,その役割と効果について分析する.約100台の携帯電話付き携帯端末を用いて,実際の国際会議の参加者に通信/情報サービスを提供し,その際得られたログデータを解析した.ログデータのみでは十分知ることのできないユーザの使用感などは,事後アンケートにより調査した.以下の使用状況が観察されている.(a)ユーザは会議場ばかりではなく,会議後ホテルの部屋へ戻ってからも携帯端末を利用した.携帯端末は通常のデスクトップ型端末と比べて頻繁に使われ,かつ1回の使用時間は短かった.(b)情報サービスは,会議の進行を反映して利用にピークが現れるが,電子メールサービスは会議の進行にかかわらず定常的に利用された.
著者
三條場 千寿 Yusuf ÖZBEL 麻田 正仁 長田 康孝 Sambuu GANTUYA 松本 芳嗣
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.71-77, 2011-03-15 (Released:2011-10-15)
参考文献数
15
被引用文献数
1

唯一の日本産サシチョウバエとして記載されたPhlebotomus squamirostris Newstead, 1923(やまとさしちょうばえ,1934, 山田信一郎; にっぽんさしちょうばえ,1954, 日本昆虫図鑑改訂版)は,現在の分類ではSergentomyia squamirostris (Newstead)となっている.1950年代以降,国内でのサシチョウバエ採集の報告はない.今回,秋田県,鳥取県で初めてサシチョウバエが採集されたので報告する.また,採集したサシチョウバエの詳細な観察を行い,日本で採集されたS. squamirostris では初めてhead, genital pump, paramera, aedeagus, surstyle, およびfemale antennaについて図示した.
著者
植田 和弘
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.6-18, 2008-11-20 (Released:2019-06-08)

環境サステイナビリティという理念はいかに公共政策に組み入れられるべきか,そして現実にでのように取り入れられつつあるか,そこでの課題は何かについて検討した。公共政策の目標との関連で最初に,環境と成長のトレードオフという通念を破る発想に具体的な制度・政策的内容を与えた脱物質化論,ポーター仮説,二重の配当論等を紹介した。いずれの議論にも,環境を大切にする社会は,同時に雇用や福祉など他の社会的目標もあわせて逹成する社会であるべきだとする立場が共通しており,そこに,社会の制度・政策イノベーション能力の源泉があった。第三次環境基本計画は目標としては,持続可能な地域社会を志向しているものの,その実現を図る政策指針を持ちえていない。持続可能な(地域)発展に明確な定義を与え,包括的で測定可能な判定基準を理論的に提示したダスグプ夕の理論を適用すると,持特続可能な地域社会の構築には,地域の資本資産を充実させることと,その資本資産を有効に活用する制度をつくりあげること,が求められる。そうした環境的・経済的・社会的持続可能性を統合した持続可能な地域社会づくりには,地域社会のトータルなデザインが不可欠であり,総合行政の主体として自治体が本来の総合性を回復することが前提となる。同時に,環境的・経済的・社会的持続可能性を統合的に実現するための知的基盤や社会的基盤を形成するとともに,住民が自治の担い手としての力量を高めることが不可欠であり,自治体公共政策の方向性が確認される。
著者
大沼 正寛
出版者
東北工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、天然スレート民家建築の分布状況とその普及プロセスを明らかにすることを目的としたフィールド調査研究である。東日本大震災直後の混乱により調査は難航したが、天然スレート生産の嚆矢となった旧桃生郡十五浜(石巻市雄勝町付近)を中心に、陸前北上地方を捜索して地理情報システムで整理した。また、硯と石盤に始まった地域産業と洋風建築特需の栄枯盛衰、二次良品地消システムともいうべき地元普及プロセスと背景にある復興産業史を描くことができた。さらに民家遺構の具体例を実測調査し、気仙大工系技術者の軸組架構や周辺民俗遺構などにも考察を寄せ、広域文化的景観を形成した歴史地理を把握することができた。

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著者
大蔵省印刷局 [編]
出版者
日本マイクロ写真
巻号頁・発行日
vol.1936年04月20日, 1936-04-20
著者
榎本 雅夫 大西 成雄 嶽 良博 齊藤 優子 池田 浩己 十河 英世 船越 宏子 芝埜 彰 瀬野 悟史 硲田 猛真
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.488-492, 2002-12-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
9
被引用文献数
1

アレルギー性鼻炎における環境調整はメディカルケアへの依存を軽減し, これのみで症状が改善する例もしばしば経験し, 治療を行う上で有意義な方法である0したがって, 鼻アレルギー診療ガイドラインにも室内ダニ除去が推奨され, その具体的方法が示されている。しかし, これらの主要アレルゲンであるDer p (f) 1, Der p (f) 2は水溶性であるにもかかわらず, ガイドラインには洗濯の励行の重要性が記載されていない。本報告では, 洗濯の効果があるのかについて検討した。各種布地による溶出時間とDer 1溶出量, 溶出率, 実際の洗濯によるダニアレルゲン減少度, 漬け置き洗濯の効用などについて検討した。その結果, 布質によってダニアレルゲン吸着度は大いに異なること, 溶出率もそれにより異なること, 漬け置き洗いがより効果的であることなどが明らかになった。これらのことは, 日常の患者指導をする上で直接役立っ事項と考身ている.