著者
夏池 真史 菊地 哲郎 Lee Ying Ping 伊藤 紘晃 藤井 学 吉村 千洋 渡部 徹
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.197-210, 2016 (Released:2016-11-10)
参考文献数
144
被引用文献数
12

食物連鎖の根底を担う藻類を含め生物にとって不可欠な微量元素である鉄は, 陸域から河川や地下水を経て下流に移行し, 沿岸域での基礎生産に貢献していると考えられている。本総説では, このような流域における鉄の生物地球化学動態について既往研究を整理した。鉄の化学的特性として, 中性pHでは無機第二鉄の溶解度はサブナノモーラーであること, 溶存有機物が鉄の溶解度を上昇させること, 種々の熱力学・光化学的反応が鉄の生物利用性と密接に関係することが明らかにされている。また, 微細藻類による鉄の生物利用性は鉄の化学種に強く依存するため, 陸域由来鉄が沿岸域の基礎生産に及ぼす影響を適切に評価するには, 鉄の化学種に着目して研究を進めていく必要がある。森・川・海のつながりにおける鉄と有機物の動態研究では, 陸での有機鉄の溶出から沿岸域生態系への移行までをカバーした総合的な研究が重要と考えられる。
著者
竹橋 洋毅 唐沢 かおり
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.117-127, 2010 (Released:2010-08-19)
参考文献数
32

本研究は,時系列的な観点から,集団内でのコミュニケーション,集団同一視,共有的認知の知覚の関係性について検討することを目的とした。データは,仮想世界ゲーム(SIMINSOC)の参加者269人が3度にわたって回答した質問紙から得た。共分散構造分析の結果,集団内でのコミュニケーションは集団同一視を増加させ,それが共有的認知を高めることが示された。また,コミュニケーションにより形成された集団同一視は,その後のコミュニケーションを促進させていた。これらの結果は,コミュニケーションと集団同一視が他方を高め,それが強固な共有的認知の形成に寄与するという再帰的な強化関係の存在を示唆している。最後に,この強化関係が協力行動や意思決定の集団極化などの集団過程にどのような影響を及ぼすのかについて議論した。
著者
忽那 賢志
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.11, pp.2276-2281, 2018-11-10 (Released:2019-11-10)
参考文献数
14

近年,エボラウイルス病や中東呼吸器症候群(middle east respiratory syndrome:MERS)等の新興・再興感染症が次々と現れている.医療従事者は感染のハイリスク群であり,疾患の特徴や感染経路について十分な知識を持ち,適切な感染対策を行うことが自身を守ることにつながる.
著者
Daisuke Komori Shinichirou Nakamura Masashi Kiguchi Asako Nishijima Dai Yamazaki Satoshi Suzuki Akiyuki Kawasaki Kazuo Oki Taikan Oki
出版者
水文・水資源学会/日本地下水学会/日本水文科学会/陸水物理研究会
雑誌
Hydrological Research Letters (ISSN:18823416)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.41-46, 2012 (Released:2012-04-28)
参考文献数
8
被引用文献数
52 159

A massive flood, the maximum ever recorded in Thailand, struck the Chao Phraya River in 2011. The total rainfall during the 2011 rainy season was 1,439 mm, which was 143% of the average rainy season rainfall during the period 1982–2002. Although the gigantic Bhumipol and Sirikit dams stored approximately 10 billion m3 by early October, the total flood volume was estimated to be 15 billion m3. This flood caused tremendous damage, including 813 dead nationwide, seven industrial estates, and 804 companies with inundation damage, and total losses estimated at 1.36 trillion baht (approximately 3.5 trillion yen). The Chao Phraya River watershed has experienced many floods in the past, and floods on the same scale as the 2011 flood are expected to occur in the future. Therefore, to prepare of the next flood disaster, it is essential to understand the characteristics of the 2011 Chao Phraya River Flood. This paper proposes countermeasures for preventing major flood damage in the future.
著者
岩江 信法 平山 裕次 四宮 弘隆 手島 直則 古川 竜也
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.99-102, 2012 (Released:2012-09-20)
参考文献数
6
被引用文献数
1

近年の頸部郭清術においては,胸鎖乳突筋や副神経を温存する保存的で機能的な郭清が普及してきている。今回われわれは胸鎖乳突筋背側面の副神経穿通部位を,レベルII,III,IVを含む郭清を施行した症例46例65側を対象として頸部郭清術中に観察した。穿通部位は胸鎖乳突筋の胸骨部背側0側(0%),胸骨部鎖骨部境界域4側(6.2%),鎖骨部筋体49側(75.3%),鎖骨部後縁付近12側(18.5%)であった。胸骨部の背側から副神経が穿通している症例はなく,鎖骨部前縁までの胸骨部背側面については頸部郭清時に副神経に特に留意する必要なく剥離操作が可能であると考えられた。
著者
森島 美佳 荻須 麻希 宮本 教雄
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.146, 2005 (Released:2005-12-08)

本研究では、マスクの性能と装着感との改善策を提案することを長期的な目的とする。市販されているマスクは、実験的には多量の粉塵、花粉、ウィルスを吸着することができる。しかしながら、実際の装着時におけるその効果は明確ではない。その理由として、マスクと顔との隙間から粉塵、花粉、ウィルスを吸い込んでしまうという点が挙げられる。また、本研究の一環として行ったマスクに関するWeb上でのアンケートでは、現在市販されているマスクに対して、70%の回答者が満足しておらず、その理由として、息苦しい(20%)、蒸れる(16%)、サイズ不一致(10%)、フィット感(6%)、ずれ感(6%)等の装着感の悪さが、防護効果に影響を及ぼすことが予測される。本報告では、装着感に関する問題点とその要因を把握するために、市販マスクに対する息苦しさに着目し、市販マスクのデザインの観点から検討していく。実験では、様々なデザインを有する市販マスクを採用し、官能検査と一般性能を計測した。試験試料は、ガーゼマスク、ガーゼ立体型マスク、不織布マスク、不織布立体型マスク、不織布紐マスクの計5種類である。官能検査では、(1)息苦しさとそれに関連すると予測される(2)吸い難さ、(3)吐き難さおよびアンケート結果から抽出した(4)蒸れ感、(5)ずれ感、(6)フィット感、(7)重量感、(8)圧迫感の計8項目について5段階評価で行った。被験者は18_から_20歳の女性20名である。また、一般性能については、通気性計測、厚さ計測、質量計測、形態観測を行った。本発表では、官能検査で得られた息苦しさとそれに関連する装着感およびマスクの一般性能について、そのデザインの観点から報告する。
著者
佐々木 秀憲
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.85-96, 2011-12-31 (Released:2017-05-22)

Taro Okamoto, the avant-garde artist, 1911-96, was very active in Japan after World War II. Since his death in 1996, an increasing number of studies about Okamoto have been made. While it has been often mentioned that his philosophical background had some influences from Marcel Mauss, Alexandre Kojeve, Georges Bataille and so forth, with whom Okamoto had acquired during his days in Paris between 1930 and 1940, there has been no study on this matter during the period after World War II. Taro Okamoto Museum of Art, Kawasaki possesses about 400 French books of Okamoto's old stock, which had been previously kept in his bedside bookshelf at his residence (present Taro Okamoto Memorial Museum) in Minami-Aoyama, Tokyo. These books that had been treasured by Okamoto, were all donated to the museum without any volume missing. Among these 400 French books, we can confirm that the six books authored by Mircea Eliade, have a number of Okamoto's own underlines and notes. This article has elucidated the Eliade's influences on Okamoto's creative works.
著者
作野 広和
出版者
The Japan Association of Economic Geography
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.10-28, 2019-03-30 (Released:2020-03-30)
参考文献数
42
被引用文献数
5

本稿は,2016年以降に語られはじめた関係人口の概念を改めて整理し,その意義について新たな見解を提示した.従来,関係人口は「交流人口と定住人口の間に位置する第3の人口」と捉えられていた.本稿で検討した結果,関係人口のそうした性格は否定しないものの,3つの人口概念を段階性でのみ説明することは誤解を招きかねないとの結論に至った.すなわち,関係人口を交流人口と定住人口との間のステップとしてのみ捉えるのではなく,新しい時代における都市地域と農山漁村地域との関わり方の一つとして捉えるべきである.また,関係人口が有する多様性についても明らかにした.本稿では,都市農村関係から関係人口を4つに類型化し,それぞれの類型が有する性格を整理した.従来の関係人口に関する言説では,地域支援志向型と地域貢献志向型の関係人口に多くの注目が集まっていた.一方で,地域を維持していく上では「地域を守る」行動を継続的に行える人材が必要である.本稿では,そのような人材を非居住地域維持型の関係人口であると整理した.そのような意味では,社会学で整理されている修正拡大家族の概念も,関係人口の一部として積極的に評価すべきであると考える.
著者
二川 健
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.3-8, 2017 (Released:2017-02-17)
参考文献数
11
被引用文献数
1

Unloading環境ではタンパク質のユビキチン化が促進されるので, Unloading環境に暴露したラットの腓腹筋の遺伝子を網羅的に解析し, そのユビキチン化の原因遺伝子を探索した。その結果, 増殖因子のレセプターやその関連タンパク質を特異的にユビキチン化させるユビキチンリガーゼCbl-b (Casitus B-ligeage lymphoma-b) の発現が宇宙フライトにより増大していることを発見した。Cbl-bは, インスリン受容体基質タンパク質 (IRS-1) をユビキチン化し分解へと導くユビキチンリガーゼとして働き, 骨格筋におけるインスリン様増殖因子のシグナル伝達を負に調整していた。また, Cbl-bノックアウトマウスではUnloadingによる筋萎縮がほとんど起こらなかった。これらの所見より, Cbl-bが筋細胞の増殖因子受容体シグナル系を負に調節し, 筋萎縮を引き起こす重要な筋萎縮関連遺伝子の一つであることがわかった。この分子をターゲットにして, そのユビキチン化を阻害できる栄養素材も発見した (2件の特許取得) 。それは, Cbl-bとIRS-1の結合に対する阻害活性を有するDG (p) YMPペプチド (Cblinペプチドと名付けた) とその類似配列を持つ大豆グリシニンタンパク質である。これらはin vitroやin vivo実験においてCbl-bによるIRS-1のユビキチン化を抑制し筋量を増大させた。また, 大豆タンパク質添加食は寝たきり患者の筋力減少の抑制にも有効であった。以上の知見から, リハビリテーション以外に治療法のないUnloadingによる筋萎縮に対する新しい栄養学的治療法の概念も提唱する。
著者
村岡 克紀 ワグナー フリードリヒ 山形 幸彦 原田 達朗
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
日本エネルギー学会誌 (ISSN:09168753)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.9-16, 2019-01-20 (Released:2019-01-31)
参考文献数
19

本稿では,風力と太陽光発電(以降,PV と略記)を電力網に大規模に導入しようとする際に,これら再生可能エネルギー(以降,REと略記)からの電気出力が間歇的であることによって引き起こされる問題を,簡単化したモデルを用いて定量的に予測する。用いた解析は,九州電力の電力負荷,風力およびPVについての最近の15分間隔データを基にしている。その結果,次の結論を得た:(1)REによる年間発生電力量が年間負荷電力量の40%を超えると,余剰電力量と送電網に流れる電力が過大になる;(2)RE出力の間歇性を補うためのバックアップには現在のところ火力発電での対処が必要であるが,それによるCO2排出があってREを増やしても結果的にCO2排出は大幅には減らない;(3)その状況を克服するのに必要な電力貯蔵量は,現在の九州電力の揚水発電容量の数十倍以上が必要である。本検討により予測された問題点を意識して,より現実に近い近似のもとでの詳しい解析が行われることが期待される。
著者
高橋 工
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.139-160, 1995-11-01 (Released:2009-02-16)
参考文献数
110

本稿では5世紀以前の東アジアで出土した甲冑を検討対象とする。その目的は大きく分けて2つある。第1は,当時の東アジアの各民族・国家がもっていた甲冑にどのような特性が認められるかを明らかにすることである。第2は,わが国の古墳時代前・中期の甲冑が,年代的に,技術的に,あるいは政治的に,東アジアの甲冑の体系の中でどのように位置づけられるかを明らかにすることである。検討の手法としては,東アジアで出土する多様な甲冑をその基本設計の違いから,小札綴・小札縅・地板綴の3つの系統に大別する。そして,小札綴系統が漢民族と,小札縅系統が北燕や高句麗等の騎馬民族と,地板綴系統が朝鮮半島南部・日本の民族と,それぞれ深い係わりを有していたことを述べる。その後,甲冑の基本設計を規定する製作技術の検討から,各種甲冑の変遷,各系統間相互の影響と伝播を考える。その結果,特に3~5世紀代の甲冑の伝播において,騎馬民族国家が果たした役割が大きいことを指摘する。また,地板綴系統として一括される朝鮮半島南部と日本で出土する甲冑が,技術的に別系統として分離可能であり,日本から半島南部へもたらされた可能性が強いことを指摘する。日本では独自の様式の甲冑が生産され続けたが,同時に,甲冑製作技術が海外からうけた影響も大きい。その影響は,4世紀代には中国から完成品が輸入され,5世紀代には朝鮮半島南部から甲冑工人が渡来するといったように,時期によって内容に違いが見られる。そして,このような状況は当時の東アジアの政治情勢と密接に関係していたと考えられるのである。
著者
桂川 泰典 国里 愛彦 菅野 純 佐々木 和義
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.73-76, 2013-07-30 (Released:2013-08-28)
参考文献数
8

The present study developed a Japanese version of the Session Evaluation Questionnaire (J-SEQ), which was translated from the original version of the SEQ (Form 5), and examined its reliability and validity. The respondents were 103 counselors. Exploratory factor analysis (maximum likelihood estimation with varimax-rotation) and confirmatory factor analysis were used to examine the factorial structure of the J-SEQ. The results showed that the J-SEQ had substantial reliability (Cronbach's alpha) and factorial validity. The factorial structure, response tendencies, and the correlations of factors of the J-SEQ were consistent with the original SEQ (Form 5).