著者
川瀬 啓祐 椎原 春一
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.43-47, 2020-06-23 (Released:2020-08-24)
参考文献数
21

近年,動物園や水族館における野生動物の飼育に対する疑念が世界的に広まりつつある。2015年に世界動物園水族館協会は「野生生物への配慮 世界動物園水族館動物福祉戦略」を打ち出し,動物園水族館における動物福祉向上に取り組んでいく姿勢を強めている。上述の戦略の中で,動物福祉向上の具体的な取り組みとして環境エンリッチメントとハズバンダリートレーニングを推奨しており,現在,日本の多くの動物園や水族館で取り組まれている。近年,日本の動物園では飼育動物の高齢化などの多くの課題があげられており,今後こうした課題に対してガイドラインの策定などが必要であると考えられる。
著者
神戸 博太郎
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子 (ISSN:04541138)
巻号頁・発行日
vol.17, no.7, pp.650-655, 1968-07-01 (Released:2011-09-21)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

高分子の熱的性質は高分子の加工に際し,重要な役割をもつと同時に,その熱力学的状態を決定する重要な指標である。熱力学的量である高分子の比容積およびエンタルピー,そしてこれらの温度依存性の係数である熱膨張率と比熱は,高分子の転移を決定するために用いられる。結晶性高分子における融解,無定形高分子におけるガラス転移は,熱力学的には一次および二次の転移とみなされる。またこれらの転移の起こる温度は,高分子を同定する有力な目安となる。これらの転移温度と高分子の構造との関係については多くの研究がなされているが,一般的にいえば,分子鎖の内部回転に対する障害が少なく,屈曲性の大きい高分子ほど,転移温度が低い。逆に剛直な分子構造をもつ高分子は転移温度が高く,軟化しにくい。高分子鎖に芳香環を導入することにより,その耐熱性が向上できる。
著者
宮下 浩二 播木 孝 谷 祐輔 太田 憲一郎 小山 太郎
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.707-711, 2019 (Released:2019-10-28)
参考文献数
21

〔目的〕投球障害肩の要因となる肩内旋制限(硬さ)と肩後方動揺性(緩さ)は一見相反する現象だが,投手の肩で併存するか明確でない.本研究は両者の関係性を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕社会人投手47名を対象とした.両側の内旋・外旋可動域と後方動揺性を測定した.左右の肩内旋可動域の差が20°以上をGIRD群(24名),20°未満を健常群(23名)とした.両群間の可動域の差,後方動揺性の陽性割合の差を検定した.〔結果〕内旋可動域はGIRD群26.0 ± 12.6°,健常群50.0 ± 14.3°で有意差があった.後方動揺性は両群間で割合に有意差はなかった.〔結語〕投手の肩は内旋可動域制限がある一方,同時に後方動揺性も併存する場合があることが示された.
著者
中塚 雅也 小田切 徳美
出版者
農村計画学会
雑誌
農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.6-11, 2016-06-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
4
被引用文献数
1 6
著者
金野 尚武
出版者
公益社団法人 日本木材保存協会
雑誌
木材保存 (ISSN:02879255)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.60-70, 2013 (Released:2013-05-11)
参考文献数
50
被引用文献数
1 1
著者
Tana Bao Tao Gao Banzragch Nandintsetseg Mei Yong Erdemtu Jin
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
SOLA (ISSN:13496476)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.145-150, 2021 (Released:2021-08-27)
参考文献数
42
被引用文献数
13

In this study, we investigated the spatiotemporal variations of border-crossing dust events (DEs), including floating, blowing dust, and dust storms between Mongolia (MG) and Inner Mongolia (IM), China using the ground-based observations from 91 synoptic stations across the Mongolian Plateau during 1977-2018. We defined the intensity of DEs (progressive and recessive) depending on the dust impact area (number of stations affected by dust) by dividing them into three categories: DEs, transported dust events (T-DEs), and severe transported dust events (ST-DEs). The results revealed that during 1977-2018, the frequency of DEs in MG was two times higher than in IM. Simultaneously, the frequency of DEs (dominated by dust storms) increased in MG, whereas IM experienced a decrease in DEs (prevalent types of blowing dust). The T-DEs occurred 2.4 times higher than the ST-DEs over Mongolian Plateau. For the border-crossing DEs, transported dust storms were the dominant type. During 1977-1999, approximately 86% of DEs in IM originated from MG; however, this was decreased to 60% in the 2000s (2000-2018). The intensity of the border-crossing DEs originated from MG and the recessive T-DEs increased significantly since the 2000s, which were more significant than the progressive type.
著者
増田 富士雄 藤原 治 酒井 哲弥 荒谷 忠
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.110, no.5, pp.650-664, 2001-10-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
48
被引用文献数
14 17

Relative sea-level changes and variations in shoreline progradation rate over the past 6000 years are elucidated from the elevations of the beach deposits, their 14C ages, and the geographic position of each locality on the Kujukuri strand plain, Pacific coast of the Boso Peninsula, central Japan. These past sea-levels were +4 to +6 m above the modern sea-level (high-stand stage) at 6000 to 5300 calendar years B.P., +3 to + 4.5 m (stable stage) at 5000 to 3500 years B.P., declined from +1.2-+ 3.4 m to + 0.5-+ 2.1 m (falling stage) at 3300 to 2250 years B.P., and were-1.5--1 m to + 1 m (stable stage) from 1650 to 250 years B.P. ; sea level is 0 m at present. The detailed changes revealed by this new method strongly imply the existence of several rapid uplifts (0.4 to 1.2 m per event) at 5100 to 5500 years B.P., 3400 years B.P., 2400 years B.P., 1650 years B.P., and 0-250 years B.P. The uplifts were co-seismic, because the speed of occurrence seems to have been high, and the events are generally associated with so-called “tsunami deposits.” Co-seismic uplift in this region has not been reported previously from historical records or geological evidence.
著者
松尾 雄司 遠藤 聖也 永富 悠 柴田 善朗 小宮山 涼一 藤井 康正
出版者
一般社団法人 エネルギー・資源学会
雑誌
エネルギー・資源学会論文誌 (ISSN:24330531)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.49-58, 2019 (Released:2019-05-10)
参考文献数
29
被引用文献数
2

In this paper, we used an optimal power generation mix (OPGM) model, as well as meteorological data from 2000 to 2017, to assess the cost of achieving 100% renewable electricity mix in 2050 in Japan. Although the potentials of variable renewable energies, such as wind and solar PV, have been estimated to be large in Japan, grid-related system costs become significant in the cases with very high shares of variable renewables. Particularly, two factors affect the overall costs: The cumulative installed capacity of offshore-wind power, and the required capacity of electricity storage systems. The former is dependent on the curtailment ratio of onshore-wind and solar PV, whereas the latter is determined by the short-time “windless and sunless” factor, i.e. the maximum number of successive days with very small wind and solar power output. The analyses presented in this study highlight the necessity of using long-term meteorological data when estimating the economics of high penetration of variable renewables, as well as the importance of considering the risk of power supply disruption.
著者
中條 宗彦
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.802-809, 1981-10-20 (Released:2011-03-14)

記事の入力から印刷まで, 新聞は毎日一貫した流れの中で, 朝刊, 夕刊が作成されている.そして, その中心にあったのが鉛である.新聞は鉛活字を使用することによって, 日々作成されてきた.しかし, 新聞界にも変革の波が押しよせ, 完全コンピューター制御による製作工程を完成させ, ついに鉛を追放することを可能にした.
著者
柴田 久 土肥 真人
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.674, pp.99-111, 2001-04-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
6
被引用文献数
5 4

本研究では多様化した景観研究の動向について, 研究目的に着目した系譜図を導出し, 景観論の変遷と今後進み得る研究の方向性について検討を行った. 調査対象は1960~98年までの土木, 建築, 造園, 都市計画分野で発表された審査付き論文492編であり, 論文数の推移より動向を把握する時代区分として揺藍, 初動, 発展, 拡充の4期を設定し, 考察を行った. この結果, 揺藍, 初動期における景観概念の論理化と意味解釈の二重性, また拡充期に活発化したテキスト景観と景観行政制度の課題, さらに住民参加型まちづくりに向けた景観論の可能性等について明らかにした.
著者
大石 太郎
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨 2010年 人文地理学会大会
巻号頁・発行日
pp.16, 2010 (Released:2011-02-01)

第二次世界大戦前における日本人の海外への移民については、地理学をはじめ多くの学問分野から関心が寄せられてきた。日本人の移住先は多方面にわたっており、環太平洋地域の全域に広がっているといっても過言ではない。環太平洋地域には第二次世界大戦前までに、人・物・金が移動する地域システムが形成されており、日本人の国際移動はそれを構成する重要な要素であった(米山・河原 2007: 18)。この立場に従えば、1892年以降、おもにニッケル鉱山の労働者として日本からの渡航者がみられるようになったニューカレドニアも、その地域システムの一部であったということになる。実際、ニューカレドニアには戦前期を通じて日本人が居住し、とくに日米開戦直前の数年間は人や金の往来が激しくなっていた。本報告では、ニューカレドニア公文書館が所蔵する在ヌメア日本領事館の記録に基づいて、第二次世界大戦前のニューカレドニアと日本人の実態を明らかにすることを目的とする。 ニューカレドニアは、1774年にイギリスの探検家クックによって「発見」された。しかし、当時は領有には至らず、結局、1853年になってフランス領となることが確定し、流刑植民地として利用されるようになる。その後、1864年にジュール・ガルニエによってニッケルが発見されたことにより、急速に開発が進められた。19世紀後半、鉱山開発のための良質な労働力の確保を迫られた鉱業会社は日本に白羽の矢を立て、日本政府との交渉を模索する。 ニューカレドニアの鉱業会社ル・ニッケルと日本外務省との間で合意に達し、契約移民として最初の移民が日本を旅立ったのは1892年のことであり、600名全員が熊本県出身の男性であった。以来、1918年までの間に5,500名あまりが契約移民としてニューカレドニアに渡航した。移民の出身県をみると、もっとも多くの移民を輩出したのが熊本県であり、2,049名を数えている。以下、沖縄県の821名、広島県687名、福岡県596名、福島県341名の順になり、全体としてみれば,一般に指摘されている傾向と同様に、西南日本からの移民が多数を占めているといえる。 これらの移民は鉱業会社との契約に基づくものであり、たとえば5年間などの契約期間が終われば、帰国することもできた。実際、初回の移民はほとんどが帰国したようである。しかし、その後は現地にとどまる移民がみられるようになる。そして、首都ヌメアでは日本人の商店が軒を連ねるようになり、同時代の記録によると、外地とは思えぬ印象を訪問者に与えるほどであったという。第二次世界大戦直前には合弁により日系の鉱業会社が設立され、それにともなって日本との間で人の往来が活発になり始める。 しかし、1941年12月8日の日本軍による真珠湾攻撃を受けて、ド・ゴールの自由フランス側に立つニューカレドニア当局は日本人を一斉に逮捕し、順次オーストラリアへ強制送致した。終戦後に彼らは日本に強制送還され、ごくわずかな例外をのぞいてニューカレドニアに戻ることはなかった。日本人女性が極端に少ないなかで、現地の女性と結婚あるいは同棲した日本人男性も少なくなかったが、相手の女性とその間に生まれた子どもたちは、現地に残されることになった。こうして、戦前期ニューカレドニアにおける日本人移民社会は崩壊した。 日本とニューカレドニアとの間の人の往来は第一次世界大戦以降、1920年代を通じて停滞していたが、1930年代に入ると再び活発になってくる。そのようななか、在ヌメア日本領事館は1940年3月に開設された。初代領事は黒田時太郎であり、続いて1941年3月に山下芳郎が2代目の領事として赴任している。ニューカレドニア公文書館には、日米開戦までの2年弱のあいだ存在した在ヌメア日本領事館の記録が所蔵されている(資料番号107W)。 この記録にはさまざまなものが含まれるが、中心となるのは受信文書と送信文書である。これらの文書の送信元や送信先はおもにニューカレドニアの政庁や各国の在ヌメア領事館、鉱山会社などであり、そのほとんどはタイプライターを用いてフランス語で書かれている。そのほか、領事業務にかかわるものとして在留日本人から提出された文書やそれらの手数料の記録、領事館で必要とした物品等の購入にかかわる領収書類などが残されている。報告では、こうした資料に基づいて第二次世界大戦前のニューカレドニアと日本人社会に関する知見を提示する。
著者
中村 元保 加藤 晶人 井上 元 鈴木 恵輔 中島 靖浩 前田 敦雄 森川 健太郎 八木 正晴 土肥 謙二
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.407-410, 2020-12-28 (Released:2020-12-28)
参考文献数
7

症例は89歳の女性。身長147cm, 体重43kgと小柄で慢性閉塞性肺疾患 (Chronic Obstructive Pulmonary Disease : COPD) の既往歴がある。1カ月前から呼吸困難を自覚していた。朝に呼吸困難が増強したためにツロブテロールテープ2mgを1枚胸部に貼付したが, 症状改善ないために夕方に2枚目を胸部に追加貼付した。追加貼付2時間後から動悸, 嘔気を自覚したために救急要請した。救急隊到着時は意識レベルJCS1であったが, 嘔吐が出現し意識レベルJCS100まで低下し当院へ救急搬送された。搬送時意識障害は改善傾向であり, 胸部に貼付されていたツロブテロールテープ2枚を剝離したところ動悸と嘔気が消失した。臨床症状よりツロブテロールテープによる中毒症状が疑われた。貼付薬は容易に自己調整できるが, 高齢者や乳幼児など管理能力に問題がある場合や, 低体重の症例では使用方法に注意が必要となる。また, 救急対応の際には全身観察での貼付薬の有無の確認も必要となってくる。
著者
Yuki Shimizu Shigeo Morimoto Masayuki Sanada Yukinori Inoue
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
IEEJ Journal of Industry Applications (ISSN:21871094)
巻号頁・発行日
vol.10, no.5, pp.554-563, 2021-09-01 (Released:2021-09-01)
参考文献数
19
被引用文献数
7

Interior permanent magnet synchronous motors (IPMSMs) have been widely used as traction motors in electric vehicles. Finite element analysis is commonly used to design IPMSMs but is highly time-intensive. To shorten the design period for IPMSMs, various surrogate models have been constructed to predict relevant characteristics, and they have been used in the optimization of IPMSM geometry. However, to date, no surrogate models have been able to accurately predict the characteristics over the wide speed range required for automotive applications. Herein, we propose a method for accurately predicting the speed-torque characteristics of an IPMSM by using machine learning techniques. To improve the prediction accuracy, we set the motor parameters as the prediction target of the machine learning methods. We then used the trained surrogate model and a real-coded genetic algorithm to minimize the volume of the permanent magnet and showed that the design time can be significantly reduced compared with the case where only finite element analysis is used.
著者
Takuro Kushima Kazumasa Yamagishi Tomomi Kihara Akiko Tamakoshi Hiroyasu Iso for the JACC Study Group
出版者
Japan Atherosclerosis Society
雑誌
Journal of Atherosclerosis and Thrombosis (ISSN:13403478)
巻号頁・発行日
pp.62843, (Released:2021-08-30)
参考文献数
17

Aim: Reports have shown that physical activity is inversely associated with heart failure risk, but evidence in Asian populations is lacking. We sought to examine the impacts of walking and sports participation on heart failure mortality among a Japanese population. Methods: We involved 36,223 Japanese men and 50,615 women (aged 40–79 years) who completed a self-administered questionnaire between 1988 and 1990. We divided participants into four categories of walking (<0.5, 0.5, 0.6–1.0, and ≥ 1 h/day) and sports participation (<1, 1–2, 3–4, and ≥ 5 h/week) and examined associations with activity and heart failure mortality through 2009. Results: We found inverse associations between physical activity and heart failure mortality. The multivariable hazard ratios (95% confidence intervals) for the highest category of walking time compared with the second-lowest category were 0.76 (0.59–0.99) in men and 0.78 (0.61–0.99) in women, while the ratios for the highest category of sports participation time compared with the second-lowest category were 0.62 (0.41–0.93) in men and 1.09 (0.73–1.65) in women. The lower hazard ratios in the highest categories of walking and sports participation time in men became no longer statistically significant after excluding heart failure deaths for the first 5, 10, and 15 years for walking time and 10 and 15 years for sports participation. However, in women, the low hazard ratios for the highest category ≥ 1.0 h/day of walking time did not change materially. Conclusions: Physical activity was associated with a lower risk of mortality from heart failure in this Japanese community-based population. The attenuated and nonsignificant association of walking and sports participation with the risk in men after exclusion of first 5–15 years heart failure death was probably due to changes in physical activity and death certificate diagnosis during the follow-up and reverse causation. However, the persistent inverse association between walking and the risk in women suggests a beneficial preventive effect on heart failure.
著者
成澤 雅寛
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.103, pp.5-24, 2018-11-30 (Released:2020-06-26)
参考文献数
31

従来の教育社会学的研究は,子どもの貧困に関して不利伝達のメカニズムやその実態を明らかにしてきた一方で,貧困対策としての支援が盛り上がる中で社会学的に考察することが重要となってきているにもかかわらず,そのような支援を行っている団体について検討してこなかった。貧困の連鎖を防止するための施策として打ち出されている学習支援事業を対象にし,貧困の対策という側面を検討することが,貧困の再生産メカニズムを検討するうえでも重要である。 そこで本稿は,貧困対策として教育活動を行う非営利の学習支援団体を対象として,その意義と支援の限界を明らかにすることを目的とした。本稿ではこれまで支援上の困難が指摘されてきた学習支援と居場所づくりの相互関連に着目しながら,教育支援研究において指摘されてきた各支援団体特有の排除という視点から分析を試みた。 その結果,貧困対策としての学習支援は,多様な貧困層の進学を可能とする点で意義があり,さらに「居場所づくり」を行うことによってより多様な層の包摂を可能としていたが,「居場所づくり」を行うほど「学習支援」という目的を果たせなくなり,その一方で「学習支援」に特化すると学習不適応層を排除せざるを得なくなっていた。 最後にこのような貧困対策としての学習支援の限界について考察,本稿の結果から得られる示唆と残された課題について検討した。
著者
永見 豊 福島 雅弘 滝沢 正仁
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第65回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.454-455, 2018 (Released:2018-06-21)

道路交通法による規定では、歩行者が信号機のない横断歩道を渡ろうとしている場合、車は一時停止しなければならない。しかし、一時停止をしていない車は9割以上と非常に多い。それは、多くの運転手が「後続車がなく、通り過ぎれば歩行者は渡れる」と認識しているためである。交通の安全を確保するためには、横断歩道では「歩行者が優先である」という運転手の意識を向上させる必要がある。海外の報告では横断歩道を立体的に見えるようペイントしたところ、速度抑制の効果が認められている。そこで、本研究では視覚効果を利用したメッセージ入りの立体横断歩道を提案した。文字によるメッセージは、車優先へ意識を変えることを考慮して「歩行者優先」とした。配色はフォトモンタージュで色の明度差と文字との色合いに着目した案を複数比較検討し、その中から文字の見えやすさと色合いの良いオレンジと黒文字の組み合わせを選定した。大学構内の横断歩道にペイントを施し、学内で運行をしているバス運転手4名にヒヤリングしたところ、全員から「横断歩道が目立っていた」、「メッセージが伝わりやすかった」という回答が得られた。