著者
水野 悠紀子
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.241-248, 2002-05-15 (Released:2010-02-05)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

氷の圧縮実験と光電子増倍管を用いた光(フォトン)の同時計測を行なった.それぞれの時間分解信号から,氷が破壊する時,または,クラックを形成する時に可視光領域(300~650nm)の光を出すことを検証した.さらに,測定波長域が近紫外域(200~320nm)と近赤外域(300~850 nm)を含む光電子増倍管を用い,それぞれ可視域と近紫外域,可視域と近赤外域の同時測定を行った.同時測定の相関から,発光強度が強い光には短波長成分が,発光強度の弱い光には長波長成分が多いことを明らかにした.可視域(300~650nm)の全スペクトルを含む発光強度は破壊時の歪エネルギーの増大とともに増す傾向を示した.しかし,同一の歪エネルギーにおける強度のばらつきは大きく,このことは発光強度が個々のクラックの特性にも大きく依存することを示唆する.氷の破壊時に可視域の光を放出するという事実はクラック表面,または先端で約1.9eV~4.1eVのエネルギーの電荷が形成されると考えられる.
著者
松本 信英 田平 武
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.134, no.2, pp.59-63, 2009 (Released:2009-08-12)
参考文献数
23

アルツハイマー病(AD)は認知機能が次第に低下していく神経変性疾患である.これまでの研究から,アミロイドβ(Aβ)と呼ばれる凝集性の強いペプチドが病因として関与していることが実証され,現在ではこの脳内Aβの増加・凝集・蓄積がAD発症の引き金を引くという「アミロイド仮説」を基盤として,様々な治療法の開発が行われている.その先駆けとなったワクチン療法は,Aβを有害な侵入者に見立て患者の免疫系を利用して排除するという画期的な方法として注目された.ワクチン療法はモデル動物を用いた実験では良好な結果を示したが,ヒトでの治験は副作用の出現により中止され,その後の追跡調査では,ワクチン接種によりAβの蓄積は軽減されるが認知機能の低下は食い止められなかったという残念な結果が報告された.本稿では,これまでの研究から得られた知見を概説し,これからのワクチン療法の可能性について考察したい.
著者
藤原 あや 園山 繁樹
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.125-136, 2019-03-31 (Released:2019-10-01)
参考文献数
27

本研究では、わが国の幼稚園や保育所における場面緘黙幼児の支援に関する先行研究を概観し、保育場面における支援の在り方を検討することを目的とした。対象とした先行研究は、和文の学術誌および学会発表論文集に掲載された、幼稚園や保育所において場面緘黙の幼児への支援を実施している研究であった。そして、選定基準に適合した学術論文5編と学会発表論文集掲載論文5編を分析対象とした。対象児の年齢は2~6歳であり、対象児の多くは発話がないだけでなく、過度の緊張や集団活動や遊びに自分から参加しないといった特徴が見られた。保育者または外部支援者によって、話すことに関する支援、及び園生活や保育活動に関する支援が実施されていた。これらの支援を通して、対象児の発話や保育活動への参加の改善が見られた。しかし、分析対象とした学術論文は5編と少なく、今後は海外の保育場面における場面緘黙幼児の支援の現状を把握する必要がある。
著者
井手 美稀 川越 仁 湯本 英二 兒玉 成博
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.214-219, 2019 (Released:2019-08-24)
参考文献数
8
被引用文献数
1

MDVPは高価にもかかわらず音響分析に広く使用されている.一方,Praatはフリーソフトウェアである.無関位持続発声母音/アー/を用いて,正常声60音声(男性30名,女性30名)と嗄声73音声(男性21名41音声,女性17名32音声)を分析した.正常音声と病的音声を録音しデジタル化された音声ファイルであり,定常的な中央1秒区間を分析に使用した.同じ音声ファイルを用いて2つの異なるソフトウェア(MDVPとPraat)で音響パラメータ(F0,jitter,shimmer,HNR)を測定し両ソフトウェアで得られた結果を比較した.著者らはMDVPとPraatの両ソフトウェアを使用し各パラメータの測定値を比較し正常値を設定した.両ソフトウェアの測定結果は高い相関が見られた.F0は両ソフトウェアの測定結果がよく一致したがjitterはMDVPよりPraatの測定値が有意に小さく,HNRはPraatの測定値がMDVPの約2倍と有意に大きかった.shimmerは有意差がなかった.そのため,施設およびおのおののソフトウェアごとに正常値を設定する必要があり,学会発表や論文記載時には録音時の機器を含めた状況および測定に用いたソフトウェア(バージョン)を明記しておくことが望ましいと考えられた.
著者
Hajime Sakuma Masaki Ishida
出版者
Japanese Society for Magnetic Resonance in Medicine
雑誌
Magnetic Resonance in Medical Sciences (ISSN:13473182)
巻号頁・発行日
pp.rev.2021-0033, (Released:2021-06-09)
参考文献数
86
被引用文献数
5

Stress myocardial perfusion imaging (MPI) is the preferred test in patients with intermediate-to-high clinical likelihood of coronary artery disease (CAD) and can be used as a gatekeeper to avoid unnecessary revascularization. Cardiac magnetic resonance (CMR) has a number of favorable characteristics, including: (1) high spatial resolution that can delineate subendocardial ischemia; (2) comprehensive assessment of morphology, global and regional cardiac functions, tissue characterization, and coronary artery stenosis; and (3) no radiation exposure to patients. According to meta-analysis studies, the diagnostic accuracy of perfusion CMR is comparable to positron emission tomography (PET) and perfusion CT, and is better than single-photon emission CT (SPECT) when fractional flow reserve (FFR) is used as a reference standard. In addition, stress CMR has an excellent prognostic value. One meta-analysis study demonstrated the annual event rate of cardiovascular death or non-fatal myocardial infarction was 4.9% and 0.8%, respectively, in patients with positive and negative stress CMR. Quantitative assessment of perfusion CMR not only allows the objective evaluation of regional ischemia but also provides insights into the pathophysiology of microvascular disease and diffuse subclinical atherosclerosis. For accurate quantification of myocardial perfusion, saturation correction of arterial input function is important. There are two major approaches for saturation correction, one is a dual-bolus method and the other is a dual-sequence method. Absolute quantitative mapping with myocardial perfusion CMR has good accuracy in detecting coronary microvascular dysfunction. Flow measurement in the coronary sinus (CS) with phase contrast cine CMR is an alternative approach to quantify global coronary flow reserve (CFR). The measurement of global CFR by quantitative analysis of perfusion CMR or flow measurement in the CS permits assessment of microvascular disease and diffuse subclinical atherosclerosis, which may provide improved prediction of future event risk in patients with suspected or known CAD. Multi-institutional studies to validate the diagnostic and prognostic values of quantitative perfusion CMR approaches are required.
著者
三品 浩基 横山 葉子 Mitchell D Feldman 角舘 直樹 福原 俊一
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.75-80, 2011-04-25 (Released:2013-03-25)
参考文献数
7
被引用文献数
1

欧米では,メンター制度が医学領域の研究成果の達成のみならずキャリア形成,研究資金獲得にとって有用な教育システムとして認められている.わが国の医学研究教育においてもメンター制度を活用するにあたり,その試行経験から,メンタリングの促進因子と阻害因子を検討することが重要と考える.1)メンター制度下で臨床研究の実施経験がある医師12人を対象として,メンタリングの促進因子および阻害因子を探索するインタビュー調査を行った.2)インタビューの逐語録を質的に分析し,メンタリングの促進因子と阻害因子を抽出した.3)促進因子として,メンティーのレベルの適切な評価,メンティーの考えているキャリアパスの把握,コミュニケーションの双方向性,身近な先輩研究者の存在が抽出された.4)阻害因子として,メンターの忙しさ,相談内容のレベルの低さについてのメンティーの不安,メンター・メンティー間の上下関係が抽出された.5)施設におけるメンタリングの評価制度,およびメンターの教育制度がメンタリングの促進に必要な対策として期待された.
著者
佐伯 香織 平松 朋子 秋山 蘭 生野 佐織 小田 民美 森 昭博 左向 敏紀
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.17, no.Suppl, pp.46-47, 2014-06-30 (Released:2015-04-15)

健常ビーグル犬に対し、血糖降下作用があると言われる桑の葉を0.5g/head添加した食事を給与し、糖脂質代謝に与える影響について比較検討した。桑の葉添加食ではコントロール食と比較して食後30分の血糖値が有意に低値を示し、桑の葉摂取が食後の血糖値の上昇を抑制することが明らかとなった。さらに、桑の葉添加食ではコントロール食と比較して食後30分、180分の血中インスリン濃度に低下傾向が見られ、桑の葉摂取が食後のインスリン分泌を抑制する可能性が考えられる。また、血中TG濃度には変化が見られず、今後も検討する必要がある。
著者
境 徹也 澄川 耕二
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.484-487, 2013 (Released:2013-11-07)
参考文献数
13

薬物乱用頭痛とは,頭痛治療薬を頻用する結果生じる難治性の頭痛である.今回,複数の頭痛治療薬の頻用が誘因と疑われた薬物乱用頭痛に,ガバペンチンが有効であった症例を経験した.症例は50歳,女性で,中学生の頃から片頭痛を自覚し,市販複合鎮痛薬にて自己対処していた.しかし,12年前に市販複合鎮痛薬を毎日内服するようになり,6年前よりリザトリプタンを毎日,ロキソプロフェンを月に10日以上使用するほど頭痛は悪化していた.当科受診時,患者は連日性の頭痛を訴え,その性状は持続的な締め付け感を伴うものであった.薬物乱用頭痛についての患者教育を行い,リザトリプタンとロキソプロフェンの内服中止と頭痛日記の記載を指導した.5週間後,リザトリプタンとロキソプロフェンの内服を中止でき,ガバペンチンの内服を開始した.11週間後,持続的な締め付け感を伴った頭痛は拍動性の頭痛へと変化し,その程度は軽減した.本症例では,薬物乱用性頭痛の説明や頭痛日記の記載といった患者教育とガバペンチンの投与が,症状軽快に有効であったと思われた.頭痛治療薬の乱用により引き起こされた脳の過剰興奮を,ガバペンチンが抑制したのではないかと推測している.
著者
井上 達夫
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.52, pp.14-17,312, 2001-04-01 (Released:2009-12-09)

Philosophical critics of the idea of justice have been motivated by a misperception of this idea: they depicted it as an ideological device for rationalizing our desire to castigate and dominate others in a pharisaic and self-righteous way. They "debunk" the hegemonic function of justice that reproduces and reinforces our self-centered will to power.I will correct this misperception by showing that the truth is the other way around. I argue that the test of reversibility implied by the universalistic idea of justice requires us to carry out a searching self-critical scrutiny of justifiability of our rights-claims and power-claims to others by imagining ourselves not just in their places but in their perspectives. This means that justice requires us to transcend our self-centeredness and seek for public reasons that are intelligible and acceptable both from our own and the others' viewpoints.I also argue that the idea of public justification inherent in the idea of justice guides us in designing a fair political decision-making system that accommodates and resolves the value conflicts about what constitutes public reasons. The political corollaries of the universalistic justice that serve this purpose are the liberal idea of the priority of jusitce over specific conceptions of the good life and the idea of critical democracy that integrates constitutional protection of minority rights on a fair and principled basis with the promotion of the public-spirited democratic deliberation that overcomes the vices of interest-group pluralism.
著者
宮田 成章
出版者
特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
雑誌
日本レーザー医学会誌 (ISSN:02886200)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.137-140, 2018-07-15 (Released:2018-10-16)
参考文献数
16
被引用文献数
1

近年,肝斑に対して低出力QスイッチNd:YAGレーザーを用いたトーニング治療がおこなわれている.より発振パルス幅の短いピコ秒レーザーを用いたトーニング治療は,強力な光音響効果の影響などまだ未解明の部分も多いが肝斑に有効な治療法の一つであると考えられる.1,064 nm波長を主として用いるが,美容,rejuvenation目的での532 nm,785 nm波長複合照射は発展する可能性を秘めている.
著者
藏屋 沙那恵 石田 好輝
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第32回全国大会(2018)
巻号頁・発行日
pp.1B303, 2018 (Released:2018-07-30)

本研究では、フェイクニュースの判定を補助するシステムの構築を目指し,信用度を相対的整合性により動的に決める動的関係ネットワークを用いた信用度評価モデルを提案する.この信用度評価モデルは,記事の真偽を表す結論ノードと,5W1Hの情報を持った事実ノードで構成される.信用度評価モデルの評価のために,通常のニュースとフェイクニュースを用いてネットワークを構築し,評価した.その結果,事実ノードより,信用できない情報の特定が可能,結論ノードより,記事の傾向が推察可能であることがわかった.
著者
横田 美幸
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.498-504, 2005-09-10 (Released:2008-12-09)
参考文献数
12

本稿では, 痛みの基本的なメカニズムを概説し, 急性痛, 特に手術後の痛みにどのような疼痛対策があるかを述べた. さらに, 最近のDDSの進歩により, control release opioidが発展し, 種々の製剤が臨床導入されている. 術後疼痛は, 手術が行われた部位で, 手術中より内因性発痛物質が放出·形成されていることによる. 硬膜外麻酔, 持続鎮痛法, PCA, 持続静脈内鎮痛法(CIVPCA), 持続皮下注(CSC)などの多様性のある鎮痛方法がある. これらの鎮痛方法は, 疼痛コントロールのみならず合併症, 罹病率, 死亡率からも有用であると考えられる. 周術期の疼痛対策は, がん性疼痛コントロールに応用されてきた.
著者
田中 東子
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.51-61, 2016-03-25 (Released:2017-03-24)
参考文献数
27

本論では、フェミニズムの理論とスポーツ文化はどのように関わり合っているのか、今日の女性アスリートの表象はどのような意味を示しているのか、1990年代に登場した第三波フェミニズムの諸理論を参照しながら考察している。まず、アメリカにおける女性スポーツ環境の変化に注目し、そのような変化を導いたのがフェミニズム運動の成果であったことを説明する。ところが、スポーツ文化への女性の参画が進むにつれて、徐々に女性アスリートやスポーツをする若い女性のイメージは、商品の購買を促すコマーシャルの「優れた」アイコンに成り下がってしまった。そこで、女性アスリートやスポーツをする若い女性が登場する広告を事例に、女性たちが現在ではコマーシャリズムと商品化の餌食となり、美と健康と消費への欲望を喚起させられていること、そして、今日の女性とスポーツ文化との関係が複雑なものになったことを示す。最後に、複雑な関係になったとはいえ、スポーツ文化は今日においても「密やかなフェミニズム(Stealth feminism)」の現れる重要な現場であるということを、ストリート・スポーツの例を紹介しながら説明する。
著者
目黒 潮
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.61, 2005 (Released:2005-11-30)

1.はじめに茨城県東茨城郡大洗町(以下,大洗町)は水産加工業が多く立地する地域であるが,近年の小売価格の変遷に伴う賃金の低下によって労働力不足がすすんでいる.このため労働者の確保が困難になった各水産加工会社は,雇用対策として外国人労働者を雇うようになった.その結果,経営難のため倒産する企業が増える一方,大洗町の水産加工業の従業員数は増加傾向にある.2.大洗町の外国人労働者とその国籍および就業職種大洗町の外国人登録者数は1980年以降,急激な増加を示している.2004年1月現在の外国人登録者数は,大洗町の日本人数19,623人に対し,904人であり,国籍別に外国人登録者数を見ると,インドネシア人(444人),中国人(133人),フィリピン人(132人),タイ人(57人),ブラジル人(33人)の順に多い.特にインドネシア人は,北スラウェシ州の出身者であるミナハサ族がほとんどを占めるという点で特徴的である.彼らの流入期は,大きく三つに分けることができる. 第1期: 不法就労者の流入(1980年 ? )1980年代後期,大洗町の水産加工業に就労していた在留外国人はイラン人が中心であったが,1990年代半ばになると,タイ人,フィリピン人の不法滞在者が増加した.しかし1996年になると,各水産加工会社が不法就労助長罪で送検されるようになり,それ以降,不法就労者は減少した. また,1980年代頃から,ある日本人船員と結婚していた北スラウェシ州ビトゥンの女性が,インドネシア人の家族を大洗町の各水産加工会社に紹介していたため,インドネシア人の不法就労者の流入も始まっていた.インドネシア人はその後徐々に増加し,同郷会や教会などのコミュニティを形成するようになった.これらの名簿から延べ人数を推計すると,最多時の2001年当事にはインドネシア人だけで1000人以上が大洗町に居住していたと推定される. 第2期: 日系人の流入(1991年 ? ) 1991年以降,一部の水産加工会社は改正施行された入管法の影響を受け,当事急増していた南米日系人の雇用も行っていた.しかし,南米日系人は業務請負会社を経由して就労するため、高額のマージンが取られるという結果をもたらした.その後,ある水産加工会社の関係者が,インドネシアの北スラウェシ州に日系人が多く居住するという情報を得て,各企業の要請に応じて彼ら紹介することで,雇用の合法化を試みた.1998年から2005年までに,北スラウェシ出身の日系人約180人が,大洗町の企業約20社に就労している.彼らの多くは,周辺の他産業に従事するようになった不法滞在者とも交流を持っている場合が多い. 第3期: 中国人研修生の流入(2003 年? ) 1991年に改正施行された外国人労働者の研修・技能実習制度は,海外への技術移転と同時に,二本の中小企業の雇用対策という,二つの側面を持つ.大洗町では同制度の拡大に応じて,2003年から本格的に中国人研修生を導入するようになった.研修生は二つの団体を経由して受け入れられ,18社に入っている.今後,大洗町では他地域の製造業と同様,徐々に研修生・技能実習生を増加させていく可能性が示唆される.ただしインドネシア人については,不法就労者雇用の経歴を持つ大洗町の水産加工会社に対して研修期間の許可が下りず,難航している.3.大洗町におけるインドネシア人の就業とコミュニティ 不法就労者,日系人,研修生・技能実習生という3つのタイプの外国人労働者の中で最大数を示すインドネシア人は,以下のようなエスニック・コミュニティを形成した. 教会:宗教行事や生活支援,指導などを行う. ● インドネシア福音超教派教会(G_(企)_J) ● 日本福音キリスト教会(GMIM) ● インドネシア・フルゴスペル教団(GISI) ● カソリック 同郷会:仲間同士の相談を行い,葬祭時の費用を出す. ● Langoan ● Kawangkoan ● Kiawa ● Karegesan ● Tomohon ● Sonder ● Sumonder ● Tondono ● Tumpa Lembean 大洗町の行政当局は不法就労者の増加を恐れ,外国人に対する支援策が十分ではない。そのためこれらのコミュニティが彼らの生活に関して指導的な役割を担っているだけでなく,大洗町の水産加工会社と提携してインドネシア人労働者の指導に関わるようになってきている. 本研究でとりあげた事例に見られるシステムは,移民政策や移民産業によって移住労働者の職種や居住を自由自在にコントロールするというトップダウン式のものではない.むしろ,移住労働者のコミュニティと地域産業が自発的に提携し展開していく,ボトムアップ型の事例である.特に,そのコミュニティに対して,民族意識や宗教組織が重要な役割を果たしているという点で特徴的である.このような就労基盤は,今後の移住労働者研究における重要な素材であるといえよう。
著者
山田 克明 宮崎 宏明
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.54, no.11, pp.2048-2051, 1988-11-05 (Released:2009-10-08)
被引用文献数
1 1
著者
野尻 侑 佐橋 栞太 豊原 治彦
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.826-834, 2018-09-15 (Released:2018-10-19)
参考文献数
25
被引用文献数
1 2

短期間にヤマトシジミを高品質化する目的で,給餌条件を検討した。その結果,0.1 g/Lの可溶性糖源では効果がなかったのに対し,同濃度の米粉給餌によりグリコーゲン量が約2.2倍に増強されたことから,懸濁物食のヤマトシジミにとって不溶性餌料が効果的であること,塩分濃度0.5%から1%への高浸透圧処理と環境水中へのアミノ酸投与を併用することでグリシン,プロリン,アラニン及びグルタミン酸を増強できることが分かった。
著者
Yusuke Sato Yuki Suzuki
出版者
The Biophysical Society of Japan
雑誌
Biophysics and Physicobiology (ISSN:21894779)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.116-126, 2021 (Released:2021-05-26)
参考文献数
80
被引用文献数
2

Self-assembled supramolecular structures in living cells and their dynamics underlie various cellular events, such as endocytosis, cell migration, intracellular transport, cell metabolism, and gene expression. Spatiotemporally regulated association/dissociation and generation/degradation of assembly components is one of the remarkable features of biological systems. The significant advancement in DNA nanotechnology over the last few decades has enabled the construction of various-shaped nanostructures via programmed self-assembly of sequence-designed oligonucleotides. These nanostructures can further be assembled into micrometer-sized structures, including ordered lattices, tubular structures, macromolecular droplets, and hydrogels. In addition to being a structural material, DNA is adopted to construct artificial molecular circuits capable of activating/inactivating or producing/decomposing target DNA molecules based on strand displacement or enzymatic reactions. In this review, we provide an overview of recent studies on artificially designed DNA-based self-assembled systems that exhibit dynamic features, such as association/dis­sociation of components, phase separation, stimulus responsivity, and DNA circuit-regulated structural formation. These biomacromolecule-based, bottom-up approaches for the construction of artificial molecular systems will not only throw light on bio-inspired nano/micro engineering, but also enable us to gain insights into how autonomy and adaptability of living systems can be realized.
著者
水田 明子 岡田 栄作 尾島 俊之
出版者
一般社団法人 日本公衆衛生看護学会
雑誌
日本公衆衛生看護学会誌 (ISSN:21877122)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.136-143, 2016 (Released:2016-09-02)
参考文献数
40
被引用文献数
1

目的:中学生のいじめの加害経験と,クラスの結束,いじめの被害経験,時間的展望,家族構成,経済状況との関連を明らかにする.方法:2012年12月から2013年1月に,公立中学校8校の生徒(N=2,968人)に調査を行った.いじめの加害と被害経験の有無は2値変数にした.生徒同士の繋がりを4項目4段階評価で尋ね,クラスの平均値を算出し「クラスの結束」と定義した.いじめの加害経験を目的変数,クラスの結束,いじめの被害経験,時間的展望,家族構成,経済的余裕を説明変数とした単変量ロジスティック回帰分析を行った.結果:クラスの結束が高いといじめの加害経験のオッズ比が低かった(男:OR=0.44,95%CI=0.29–0.67;女:OR=0.59,95%CI=0.37–0.95).いじめの加害経験は被害経験と正の関連,現在の充実感と過去受容は負の関連があった.考察:クラスの結束はいじめの加害経験と関連した.いじめ防止対策にはクラスレベルでの信頼の構築が重要であり,現在の充実感,過去受容への働きかけも有用である.