著者
伊勢 優史
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.13-17, 2019-02-28 (Released:2019-03-23)
参考文献数
21

Submarine caves are widely known for their unique biodiversity and peculiar ecosystem. In the submarine caves around the Ryukyu Islands, sponges are the most abundant and diverse organisms. These sponges are considered to play an important role for the coral reef ecosystem in terms of supplying food resources to other organisms. An overview of the features of submarine cave sponge fauna especially at the “Akuma-no-Yakata” cave in Shimoji Island, Miyako Islands, Okinawa is presented herein. Sponges in “Akuma-no-Yakata” are roughly categorized into three types based on their distribution pattern inside the cave. The first category is sponges living around entrance of the cave, which are conspecific with species attached on underside of overhangs and interstices of coral reef. These species are considered as species just favoring cryptic habitats. The second category is sponges living around the mid part of the cave, some of which are closely related to species found in the deep-sea fauna. Lastly, the third category is sponges living in innermost part of the cave, which possibly have strong tolerance to low salinity water. The environment of second and third category is affected by fresh water infiltrated through calcareous ground of the island, and can be regarded as anchialine habitat, where the sponge fauna is very unique.
著者
岩佐 一 吉田 祐子 鈴鴨 よしみ
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.151-160, 2019-03-15 (Released:2019-03-26)
参考文献数
38

目的 食生活は,生物・心理・社会・文化的存在としての人の満足感と密接に結びついており,食生活に関する満足度の評価には多面的な尺度が必要である。本研究では,日本全国に居住する地域高齢者を対象とした標本調査を行い,鈴鴨他(2001)の「食事関連QOL尺度」(18項目版)とその短縮版における計量心理学的特性を検討した。まず,①18項目版の因子構造の確認を行い,その結果をもとに,②短縮版を作成した。次いで,18項目版・短縮版における,③信頼性,④性差ならびに年齢差,⑤妥当性の検証を行った。方法 日本全国に在住する地域高齢者(60~84歳)1,200人を無作為抽出して郵送調査を行い,849人から回答を得た(参加割合70.8%)。このうち,「食事関連QOL尺度」18項目に欠損の無い者780人(男性367人,女性413人)を分析の対象とした。「食事関連QOL尺度」(5件法,18項目),外部基準変数(主観的幸福感,食満足感,食欲,食事の制限,咀嚼,共食の回数,惣菜・インスタント食品の利用頻度,食に関する情報収集,食品摂取多様性),基本属性(居住形態,教育歴,経済状態自己評価,有償労働,健康度自己評価,生活機能,生活習慣病,飲酒,喫煙)を分析に用いた。結果 確証的因子分析を行ったところ,適合度は許容範囲であり,先行研究で報告された4因子解が再現された(『Ⅰ食事の楽しみ』,『Ⅱ食事の充足感』,『Ⅲ食事環境』,『Ⅳ食の多様性』)。8項目を選出し短縮版を作成した。「食事関連QOL尺度」得点(18項目),各下位尺度得点(因子Ⅰ~Ⅳ),短縮版得点(8項目)におけるα係数はそれぞれ,0.94,0.86,0.89,0.77,0.72,0.90であった。「食事関連QOL尺度」得点,各下位尺度得点,短縮版得点をそれぞれ従属変数として2要因分散分析(性別:2水準,年齢:5水準)を行ったところ,すべての変数において,女性のほうが男性よりも得点が高かった。一方,年齢差は認められなかった。総菜の利用頻度において有意な相関は認められなかったほかは,外部基準変数との間に概ね中等度以上の相関が認められた。結論 地域高齢者を対象として,「食事関連QOL尺度」(18項目版)とその短縮版の信頼性・妥当性を確認した。今後は,健康アウトカムを外部基準として「食事関連QOL尺度」の関連要因,予測妥当性の検証を行うことが課題である。
著者
柁原 宏 高久 元 藤田 喜久 角井 敬知
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.1-2, 2019-02-28 (Released:2019-03-23)

Although the 2018 symposium of the Japanese Society of Systematic Zoology, entitled ‘Recent progress and future potential in faunal studies of the submarine caves in the Ryukyu Islands’ was scheduled to be held on the occasion of the 89th annual meeting of the Zoological Society of Japan in Hokkaido, it was unfortunately canceled due to the earthquake ‘2018 Hokkaido Eastern Iburi Earthquake’. However, the five interesting articles were given by the special invited authors: 1) Yoshihisa Fujita ‘The fauna of decapod crustaceans in submarine caves of the Ryukyu Islands, with special reference to environmental factors in the caves’, 2) Yuji Ise ‘Preliminary report of submarine cave sponges in Shimoji Island, Miyako Islands, Okinawa’, 3) Mitchitaka Shimomura ‘Review of recent taxonomic studies of peracarid crustaceans in submarine and anchialine caves of the Ryukyu Islands’, 4) Masanori Okanishi and Yoshihisa Fujita ‘Ophiuroids from submarine caves of the Ryukyu Islands, Japan’, and 5) Akira Iguchi, Masaru Mizuyama, Takefumi Yorisue and Yoshihisa Fujita ‘Current situation and future issues of DNA studies of submarine caves of the Ryukyu Islands’. In this paper, we introduce the purpose and the contents of this special issue.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1790, pp.50-53, 2015-05-11

しかし、90年代に入りバブルが崩壊すると、街の勢いがなくなっていく。景気低迷だけでなく、産業構造の変化も歌舞伎町に影響を与えた。ビデオが普及し、映画館に足を運ぶ人が減少。演歌の人気低迷も歌舞伎町にやってくる人を減らす要因となった。
著者
中村 進一 花田 郁実 水主川 剛賢 村上 翔輝 曽田 公輔 岡谷 友三アレシャンドレ 常盤 俊大
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.25-30, 2017

<p> 動物園や水族館で飼育動物が死亡した際,多くの施設では動物を剖検して必要な検体を採材・保存し,自施設で検査を実施,または外部の検査機関に検体を送付している。疾病診断や死因究明のためには様々な検査結果を総合的に判断する必要があるが,それは正しいサンプリング方法をとることが大前提となる。検体の採取,保存,輸送にあたっては,適切な方法で実施されなければ期待される検査結果が得られないことが多い。検査目的に合わせて適切な採材方法を選択することは,早期かつ正確な診断につながり,後に続く飼育個体の死亡を防ぐことができる。迅速で正しい診断を得ることは,飼育管理を円滑に行ううえでも不可欠である。検査が無駄とならないようにするためには,検査を依頼する側と実施する側双方の実情を知ることが重要であり,日頃からコミュニケーションを図る必要がある。</p>
著者
棚橋 亜矢子 デュアー 貴子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.215, 2014 (Released:2014-07-10)

目的 コーヒーが初めて日本に入ってきた安政2年から159年後の今、コーヒーは世界中で市民権を得た飲物となってきている。しかし、コーヒー飲用には年齢によって差が見られ、コーヒーを苦手とする若者も多い。そこで、本調査においては、女子学生のコーヒー嗜好を官能評価によって調査すると共に、コーヒーの飲用実態についても調査することを目的とした。方法 女子学生400名を対象にコーヒー飲用に関するアンケート調査を行った。また女子学生20名を対象にクローズドパネル法にて官能評価を実施した。インスタントコーヒーと、これと同様の味わいに調整した豆からドリップ抽出したコーヒーの比較は3点識別嗜好試験、豆を浅煎、中煎、深煎してドリップ抽出したコーヒーの嗜好性は順位法によって判定した。データ処理にはSPSSを用い、コーヒー嗜好の比較及び3点識別嗜好試験はχ2検定、順位法はノンパラメトリック検定を行った。結果 女子学生の多くは日常、緑茶を好んで飲用し、コーヒーの嗜好性は低い現状であった。コーヒーが嫌いと回答する割合も24.1%であった。よく飲用するコーヒーは、インスタントコーヒー、外出時食後、缶コーヒーの順であり、54.3%がミルクと砂糖を入れたコーヒーを好む傾向であった。また、女子学生の90.5%がコーヒー摂取によって何らかの効能があると考えており、眠気解消やリラックスしたい時に意識的にコーヒーを飲用していた。嗜好としては深煎ドリップコーヒーを好む傾向がみられた。
著者
井植 敏
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1336, pp.46-51, 2006-04-10

大阪の南海電気鉄道難波駅を出た特急列車は、右手に大阪湾を望みながら南下を続けた。3月中旬、朝はまだ肌寒いが海は早春の太陽を乱反射して、のどかにきらめいている。 関西国際空港の向かい岸にそびえ立つ超高層ビルを通り過ぎると、列車は大阪府の南端、みさき公園駅に着いた。ここで車に乗り換え、国道26号をさらに南下する。
著者
肥後 温子 野口 駿 島崎 通夫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.251-257, 1983-05-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
22
被引用文献数
1

種々の脂質を添加したでんぷん・水系をマイクロ波加熱し, 伝熱加熱とは異なる次のような現象を認めた.1) でんぷん粒には添加した脂質の性質が顕著に認められ, 糊化形態に差を生じた.脂質が疎水性の場合にでんぷん粒はより小さく, 親水性の場合より大きくなった.2) 被包接性脂質のうち, 短鎖成分は “結合型” 脂質量を増大させ, 長鎖成分はでんぷん成分の溶出を効果的に抑制した.以上の現象は, 次の諸要因によってほぼ説明できる.1) マイクロ波加熱ではでんぷん・脂質複合体が生成しやすい.理由としてでんぶんがゲル化し脂質と接触しやすくなること, 脂質の変質や複合体の解離が少ないこと, また分散液においても包接化合物が生成しやすい効果があることがあげられる.2) マイクロ波の選択加熱効果が脂質の昇温をおさえ脂質の性質に従った水分布をつくる.3) マイクロ波では, 水と脂質との分布によって糊化促進的な側面と糊化抑制的な側面が別々に強調される.
著者
Yangkhamman Pranom 深井 誠一 市村 一雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.337-341, 2005-07-15
参考文献数
15

STS無処理または処理のカーネーション(品種エクセリア)の切り花を用い, 24℃または32℃で品質保持とエチレン生成を比較した.24℃では, STS処理によりカーネーションの品質保持期間は延長され, STS無処理のカーネーションでは, 処理9日後から花弁のin-rollingが観察された.32℃ではSTS無処理のカーネーションにおいても, 処理14日後でもなお花弁のin-rollingが認められず, STS処理した区と同等の品質保持期間を示した.STS無処理のカーネーションでは, 24℃では処理8-9日後にエチレン生成のピークが認められたが, 32℃ではごく微量のエチレン生成にとどまった.32℃に1日置きその後24℃に移した区では, 24℃一定の区と同様のエチレン生成のピークが認められた.一方, 24℃に1~5日おき, その後32℃に移した区ではエチレン生成はごく微量であった.以上の結果より, カーネーションの切り花は, 32℃におかれた場合, エチレン生成が抑えられることが明らかとなった.
著者
金沢 佳子
出版者
千葉大学大学院人文社会科学研究科
雑誌
千葉大学人文社会科学研究 (ISSN:18834744)
巻号頁・発行日
no.18, pp.176-190, 2009-03

柳谷慶子『近世の女性相続と介護』吉川弘文館 A5判 328頁 2007年発行 (本体価格)9000円本書は、日本近世における女性と家族の位相を明らかにすることをめざして、著者が1990年から発表してきた論考11篇を二部構成で収録したものである。第一部は、東北諸藩において、女性が家督を相続した数少ない事例を紹介し、史料によっては、その名が系譜から抜け落ちている背景を探り、さらに、大名家の「奥」の機構や「姉家督」慣行から「家」の運営と相続をめぐる女性の役割を検討している。第二部は、今日、自明とされている女性による介護が近世においては家長の役割規範のもとに、当主や跡取りにあたる息子が行っていた例を幕藩の諸史料や武士の日記などから考証した。高齢者や病人の看病・介護における「家」の位置取りを家族のおかれた状況や地域共同体の扶助機能から考察し、公権力の関わりかたにも言及している。現在の社会通念はいつ頃からいかなる変化を経て生じてきたものか、ジェンダーの視座から、近世社会の特質と知られざる姿に光をあてた歴史学的研究である。
著者
長澤 和也
出版者
広島大学大学院生物圏科学研究科
雑誌
生物圏科学 : 広島大学大学院生物圏科学研究科紀要 (ISSN:13481371)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.7-12, 2016-12-25

高知県沿岸で養殖されていたブリSeriola quinqueradiata 幼魚2尾の筋肉に大型吸虫の寄生を認めた。この吸虫は各尾に1個体が寄生し,生時の体長約7–15mm で,わが国の養殖カンパチから報告されている「ヒルディネラ類吸虫」によく似ていた。寄生魚が見出されたのは2015年5月中旬で,養殖種苗はその約1か月前に高知県沖の北西太平洋で漁獲された。寄生魚の皮膚は寄生部位付近で凹凸を有し,筋肉には吸虫から排泄されたと考えられる黒色異物が見られた。Two big trematodes, provisionally identified as a hirudinellid, were found individually in the muscle of two juveniles (ca. 150 mm fork length) of Japanese amberjack, Seriola quinqueradiata Temminck and Schlegel, 1845, cultured in mid-May 2015 in coastal waters of Tosa Bay off Kochi Prefecture, Shikoku, western Japan. The trematodes were 7-15 mm long in fresh conditions. The juveniles were caught in the western North Pacific Ocean off Kochi Prefecture around 10 April 2015 and then cultured in net pens. The body surface of the infected juveniles was uneven in the affected area, and black substances, probably excreted by the trematodes, were found in the host's muscle.
著者
京 将司 中森 正治 石橋 修 黒川 一哉
出版者
公益社団法人 腐食防食学会
雑誌
Zairyo‐to‐Kankyo (ISSN:09170480)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.401-409, 2014

火力発電用ボイラにおいては,長期安定運転が求められている.<br>近年,微粉炭燃焼ボイラにおいて,溝状腐食による伝熱管の減肉が顕在化している.溝状腐食は,バーナーゾーンやその近傍,熱負荷の高い部位に発生し,その発生原因は,H<sub>2</sub>,H<sub>2</sub>Sが混在する低O<sub>2</sub>雰囲気下で火炉側管表面に生じる繰り返し熱応力(スラグの付着脱落による局部的な管表面温度変化,デスラッガ作動中や運転中の管表面温度変化など)に起因する腐食生成物層のき裂発生等が原因であると考えられる.その対応策として,ボイラ伝熱管表面への溶射は有効である.本報では,Cr<sub>3</sub>C<sub>2</sub>-NiCr溶射皮膜を高速フレーム溶射(HVOF)と大気プラズマ溶射(APS)によって作製した.溶射皮膜の特性は,密着力,高温硬さ,摺動摩耗試験,高温エロージョン試験および高温腐食試験などによって評価した.評価結果を基に,実験室で石炭燃焼ボイラに適用するための溶射皮膜における評価方法を提案した.