著者
菅野 類
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学論集. 人文科学系列 (ISSN:02879727)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.112-130, 2008-03

イタリア人の悲劇作家,ヴィットーリオ・アルフィエーリが1777 年の5月にトリノを離れトスカーナへ向かったのは,イタリア語の表現力を向上させるためだったことは良く知られている。しかし,本稿筆者はその旅のもうひとつの理由が,トリノの知的状況内にあったのではないかと考えている。 1773 年,ヴィットーリオ・アメデーオ三世が即位したことをきっかけに,トリノの知的環境は劇的に変化した。伝統的な厳しい統制から解き放たれたことで,トリノはかつてない文化的活況を迎えたのである。しかし,過度の自由は制限されるべきであるとの保守的意見は存続し,1777 年に出版されたベンヴェヌート・ロッビオの『えせ哲学論』により勢いを取り戻す。ロッビオは知的風潮の堕落を警戒し,社会秩序を守るために検閲の重要性を訴えたのだった。アルフィエーリが『専制論』の原案を書き,主にトリノ社会を念頭に置いたものと見られる君主制批判を展開したのも,ちょうどその年のことであった。 これらの対照的な意見がほぼ同時に現れたことは,単なる偶然とは思われない。ロッビオとアルフィエーリは同じ文芸サークルに所属しており,さらにロッビオはアルフィエーリに悲劇の書き方を指導していた。相手の態度と考え方を直接知りうる関係に二人はあったのである。『えせ哲学論』の出版以降,ロッビオは政府の文化政策に関わっている。これは,トリノにおいて保守的論調が支配的となったことを意味する。一方アルフィエーリは,自由な立場で執筆活動を続けられるよう,祖国との関係を絶つ決意をする。たとえ明確に言及されてはいないとしても,トリノの知識人社会における居心地の悪さが,アルフィエーリをトリノから遠ざけた要因のひとつであったものと考えられる。
著者
澤木 啓祐
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1459, pp.166-169, 2008-09-29

まず初めに、今回の北京五輪のマラソンで、国民の皆様から多くのご声援を頂いたことに感謝いたします。期待されるということは、選手冥利、コーチ冥利に尽きます。皆さまの後押しを受けて頑張りましたが、男子、女子共にメダルはおろか、入賞も逃すという大失態を犯してしまいました。 この結果については、日本陸上競技連盟として真摯に受け止めています。
著者
Christian Leithner Helmut Sinzinger Johann Hohenecker Lothar Wicke Fritz Olbert Walter Feigl
出版者
Editorial Board of Okajimas Folia Anatomica Japonica
雑誌
Okajimas Folia Anatomica Japonica (ISSN:0030154X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2-3, pp.119-149, 1975-08-20 (Released:2012-09-24)
参考文献数
31
被引用文献数
3

We investigated the angiograms of 61 grown-up,33 males and 28 females, aged between 17 and 74 years. In its course the aorta was gradually approaching the median line, the calibre decreased from Th12(26 mm) down to the aortic bifurcation (19 mm). The aortic bifurcation had a mean angle of 37°C, the iliac bifurcation one of 29°on the right and 20°on the left side. In the mean the aortic bifurcation had a level of L.. The mean calibre of the left and right renal artery measured about 7.8 mm and differed significantly from the calibre of the splenic artery. In the mean the level of the origin of the renal arteries was slightly higher on the right than on the left side. The side-differences of the calibres of the common external and internal iliac arteries were not significant. In the higher age groups we observed a lowering of the aortic bifurcation and the origin of the renal arteries. The increase in length was particularly marked in the splenic artery. The length of the common iliac arteries varied con- siderably. This artery was rather more tortuous on the left than on the right side. This tortuosity was nearly always found in patients suffering from hypertension.
著者
石田 大典
出版者
日本商業学会
雑誌
流通研究 (ISSN:13459015)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.27-41, 2018 (Released:2018-11-17)
参考文献数
73
被引用文献数
1

過去に取り組まれてきた市場志向研究において,3つのタイプの市場志向(先行型,反応型,萌芽型)がイノベーションや新製品パフォーマンスへ及ぼす影響については十分に議論されてきたが,そのメカニズムについては必ずしも明らかにされていない。そこで本研究では,製品開発チームの学習プロセスに着目し,市場志向と新製品パフォーマンスを結び付ける媒介要因として検討した。日本の上場製造業企業から得られたサンプルを基に分析を行ったところ,先行型市場志向と反応型市場志向は製品開発チームの市場学習を促進させ,萌芽型市場志向は製品開発チームのアンラーニングを促進させていた。また,製品開発チームの市場学習は新製品優位性を高め,結果として新製品パフォーマンスを高めていた。一方,アンラーニングはマーケティング創造性を高めていたが,マーケティング創造性は新製品パフォーマンスへは結びついていなかった。
著者
塩崎 文雄
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.36, no.12, pp.22-32, 1987

谷崎潤一郎の『細雪』は「旧家の没落と戦争の始まり」といった<不可逆的な時間>が年ごとの花見に代表される歳事的なもの=<循環する時間>を制覇する物語として読まれてきた。だが、そうした近代的思惟の常識を顛倒する試みとして、『細雪』を捉え直すことができるので、その徴証として『細雪』における年代記的記述の稀釈化の問題はある。しかも、その問題は「時局」といった<天皇制>の一露頭とも厳しい緊張関係をもったのである。
著者
廣木 華代
出版者
千葉大学大学院社会文化科学研究科
雑誌
千葉大学社会文化科学研究 (ISSN:13428403)
巻号頁・発行日
no.12, pp.176-190, 2006-03

連邦税リーエンは、支払不能法における連邦債権の優先を起源とし、納税者に対しては、なんらの公示を要することなく有効なものとなるが(IRC6321-6322条)、競合債権者に対しては、通知の登録という「公示」を要件として、その優先が制限される(6323条)。最高裁は、連邦税リーエンとの競合に関し、支払不能法の場合と同様、競合する権利の「完全性」をその優劣の判断基準として採用している。6323条が、競合する第三者の利益保護を目的としたものであることに鑑みれば、登録の先後を基準とした「早い者勝ち」の原則についても、一定の配慮が必要であることはいうまでもない。最高裁は、「成立」ではなく、「完全性」を基準として、その優劣を決するという形で、「早い者勝ち」の原則との調和を図ろうとしているが、判例の状況を見る限り、この試みは、成功したものとはいえず、むしろ「完全性」という「ハードル」をわかりにくいものとしている。しかしながら、このようなハードルの存在自体は、連邦税リーエンという優先権の性質や連邦税リーエンの制度趣旨からは肯定されうるものである。決して「完全」なものとはいえないながらも、連邦税債権という特殊な債権に関し、その特殊性を十分に認識した上で、可能な限り一般原則との調和を図っていこうとした最高裁の試みは、債権競合における利益調整のための基本的な原則として、今なお、その意義を失ってはいないといえるだろう。

1 0 0 0 OA 書上帳

出版者
巻号頁・発行日
vol.第64冊(安政2),
著者
浜本 一典
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.89, no.3, pp.521-544, 2015

宗教多元主義はキリスト教神学から生まれた思想であるが、これをイスラーム的に構成し直し、異教徒との共存を説くムスリムが増えている。その中には、来世における異教徒の救済可能性を主張する者と、そのような議論を避けて現世的問題に特化する者がいる。例えば、ペレニアリストでもあるナスルは、伝統宗教の多様性を神の意志に帰し、「相対的絶対」の理論により他宗教の真理性を認める。しかし、この立場は、ムスリムの間であまり支持されていない。イスラームが他宗教に優越するという大方のムスリムの信念に反するからである。これに対し、今日有力なのは、現世での市民権を論じる多元主義である。例えば、カラダーウィーは、信仰に対する賞罰は神のみに委ねられるとして、イスラーム国家における信教の自由の保障と宗教的差別の廃止を訴える。だが、イスラーム国家という前提そのものが多元主義と矛盾するとの見方もある。このように、市民権論においても、救済論と同様、イスラームの優越性と多元主義との衝突が問題となっている。
著者
中山 俊憲
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会総会抄録集 第37回日本臨床免疫学会総会抄録集 (ISSN:18803296)
巻号頁・発行日
pp.14, 2009 (Released:2009-10-21)

アレルギー疾患の発症に関してTh2細胞が重要な役割を果たすことはよく知られているが、たとえば、スギの花粉症患者では、患者の体内にあるスギ花粉特異的なメモリーTh2細胞が反応し、アレルギー性炎症が上気道に起こる。このメモリーTh2細胞の寿命はかなり長く、半減期は1年半にも及ぶことが分かっている。従って、メモリーTh2細胞の形成や維持の分子機構の解明と制御法の開発なしには、根治治療の確立は望めない。私たちは、メモリーTh2細胞の形成、維持に関わる分子機構の解析を行ってきた(Nakayama et al. Curr.Opin.Immunol. 2008, Nakayama et al. Seminars in Immunol. 2009)。転写記憶に関与するといわれている、トライソラックス分子やポリコーム分子の関与を明らかにしてきた。トライソラックス分子のmllはメモリーTh2細胞の機能の維持に必須であること、ポリコーム分子のbmi1はメモリーT細胞の生存に必須であることなどを報告してきた。このシンポジウムでは、これらの制御機構の巧妙さをご紹介したい。
著者
丸山 茂雄
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1078, pp.49-52, 2001-02-12

音楽業界におけるソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)は、プロ野球で言えば巨人軍、そしてその社長は4番バッター。私には、そんな自負がありました。打率で言えば3割2分、ホームラン30本以上は打たないといけない。しかし私の実績は、まあ2割8分の25本くらいか——。他球団なら4番も務まるかもしれない。でも巨人軍の4番の成績じゃない。

1 0 0 0 OA 町方書上

出版者
巻号頁・発行日
vol.[40] 麻布町方書上 六,
著者
岩﨑 和人
出版者
日経BP社
雑誌
日経コミュニケーション = Nikkei communications (ISSN:09107215)
巻号頁・発行日
no.634, pp.8-10, 2016-11-01

電力系の地域通信事業者である九州通信ネットワーク(QTNet)は、FTTHサービス「BBIQ」を主力として右肩上がりの成長を続けている。最近ではMVNO(仮想移動体通信事業者)として格安スマホを提供するなどモバイルにも進出している。現在の状況と今後の戦略を岩崎社…
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス = Nikkei electronics : sources of innovation (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.1194, pp.57-62, 2018-08

クラウドサービスで大きなシェアを持つ米Amazon Web Servicesや米Microsoftが、産業用IoTのエッジコンピューティング領域への進攻を加速させている。