著者
山本 泰 東 和男 好井 久雄
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.28, no.9, pp.496-501, 1981-09-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
22
被引用文献数
3 3

醸造における原料の有効利用や麹菌による着色コントロールを可能にするためには麹菌のヘミセルラーゼの作用を明らかにする必要があり,本報ではまず市販種麹から分離したキシラナーゼ活性について検討し,次の結果を得た。(1) 麹菌のキシラナーゼ活性測定の条件は,pH5.5,40℃ 30分の反応が適当であった。(2) 〓麹におけるキシラナーゼの生産は,散水が60%以上で30℃培養が優れ,40~60時間において急激に増加し,70時間で最高値に達した。(3) 麹菌を形態や種類によってグループ別けした場合には,これらのグループ間にキシラナーゼ平均活性の差を認めたが,いずれのグループにもキシラナーゼの強い菌株と弱い菌株が含まれていた。(4) キシラナーゼ活性と中性及びアルカリ性プロテアーゼ活性との間には高度に有意の相関があり,醤油の醸造等においてヘミセルロースと蛋白質の分解の関連性が推測された。
著者
周 潔瑩 坪井 哲也 長谷川 大輔 石川 浩司 木村 恵介 田中 未来 大関 和典 繁野 麻衣子
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.63-74, 2018-07-26

レストランの顧客満足度は,料理の品質だけではなく,料理提供の順序とタイミングにも強く関係している.料理の品質は,料理ごとに定められている調理手順に従うことで維持できるが,料理提供の順序やタイミングは,注文された複数料理の組合せにより,各々の調理手順を組み立てなければならない.本研究では,調理手順を組み立てるスケジューリング問題を扱う.まず,スケジュールを行う調理手順を簡素化したモデルを作成し,提供までの時間とグループ客への同時提供を重視したルールを提案する.そして,評価実験により提案したルールを比較し,ルールの有効性と結果にもたらす影響を考察する.
著者
安里 龍 友利 啓子 東盛 キヨ子 新城 澄枝 金城 須美子 山本 茂
出版者
日本民族衛生学会
雑誌
民族衞生 (ISSN:03689395)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.219-236, 1995-07-30
参考文献数
81
被引用文献数
2

Okinawa prefecture, consisting of the Ryukyu Islands in the southern part of Japan archiperago, is located in the subtropics. From ancient time, Okinawa had developed trading networks with China, Korea and many Southeast Asian countries and had received cultural influence from them. As the results, it is said that the foods consumed by, and food habits of, Okinawans, have been more similar to those in such countries than in Japan. The life span of Japanese has recently become longest in the world, and it has been longer in Okinawa than in any other prefectures. In this respect, special attention has been drawn to the historical aspects of Okinawan food habits. In the literature so far, however, typical foods, recipes and food habits in specific historical periods were documented but their compiled description throughout the history was lacking. This paper aims at a comprehensive description of the various events from the ancient time to the present to demonstrate their interrelation in a chronicle. Major a pects treated are introduction of foods, food production systems, food-processing, trades, marketing activities, food consumptions, religious roles of food services, and famines caused by natural and man-made disasters in relation to food habits.
著者
井上 荘太朗
出版者
農林水産省農林水産政策研究所
雑誌
農林水産政策研究 (ISSN:1346700X)
巻号頁・発行日
no.12, pp.65-84, 2006-09

さとうきび作は、沖縄県の経済振興のために必須の作目と政策的に位置づけられてきた。この背景には、沖縄県、特に離島部の経済がさとうきび作と製糖業に対して大きく依存しており、かつ代替的な作目が見出しがたいとする認識がある。しかし農家の高齢化に伴い、沖縄県のさとうきび作は縮小してきている。また、島ごとにみると、他の経済部門が小さい上に輸送条件が不利な遠隔離島地域にある平坦部の広い島(南北大東島や宮古島等)では、依存度は確かに高いが、こうした島を除くと、依存度はあまり高くない場合もあることが指摘される。このように各島での事情は異なるが、製糖工場の操業度が低下していることもあり、いずれの島でも、さとうきび生産の拡大を強く支援するために多様な施策がとられており、高い成果をあげている場合もある。しかし、国内の砂糖市場が縮小し、国内糖業の支持のための財政負担の効率性も厳しく問われている状況下においては、こうしたモノカルチャー的なさとうきび作の拡大に偏った政策を再検討することも必要かもしれない。さらには、今後、離島社会の振興をより持続的な基盤の上で進めるためには、各島の事情に応じて、農業と他の経済部門との連携を含んだ柔軟な施策を採用していくことが求められると考察される。
著者
町田 尚久
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2013, 2013

<B>1.はじめに</B><BR> 寛保2年の洪水は,埼玉県長瀞町の寛保洪水位磨崖標などに代表されるように,関東地方では荒川流域や利根川流域,千曲川流域を中心に大きな被害をもたらした.特に千曲川流域の浅間山周辺では大きな土砂災害や洪水災害がもたらされた(丸山1990など).この洪水にかかわる古文書は,近畿地方から関東地方にかけてあり,近畿地方では鴨川や近江の災害がみられるものの詳細な記録は数少ない.また,関東甲信越地方では,多数の古文書やそれにかかわる文献がある.この洪水の原因に関しては,国土交通省北陸地方整備局(2002)によって複数の台風の進路が提示されているが,諸説あるため,実態に則して気象現象を明らかにする必要がある.そこで本研究では,埼玉県内の寛保2年災害にかかわる複数の資料に記載されている気象実態から,災害の実態との関係を考察する.なお,本研究では日付を旧暦にて表記する.<BR><B>2.寛保洪水にかかわる資料と気象実態</B><BR> 寛保2年の気象の記録は,現在の埼玉県越谷市(越谷市史),深谷市(武州榛沢郡中瀬村史料),加須市(加須市史),羽生市(羽生市史),県外では長野県松本市(松本市史上巻)がある.たとえば,越谷市史の西方村旧記の弐(越谷市役所市史編纂室1981)には次のような天気の変化が記録されている.<BR><BR> 越谷市史(西方村旧記 弐)<BR> <I>寛保ニ戌年七月廿七日より八月二日迄雨ふり続き申候、<BR> 尤朔日之朝より大雨降リ八ツ過より丑寅風にて、雨の降<BR> る事矢之ごとく、同晩四ツ時より辰巳風に成大風にて大<BR> 木もたおれ、雨は桶よりまけることくして,二日之朝七<BR> ツ時より雨風しづかに成、五ツ時より天気能三日之昼九<BR> ツ迄川通リ水少に(略)</I><BR><BR> 気象の実態を解釈し抜粋すると,越谷市では,8月1日の八ツ過(14時過ぎ)より「丑寅風」(北東),同じ晩の四ツ時(20時)より「辰巳風」(南東)となる.2日の朝七ツ時(4時)には,「雨風しづか」となり,降雨をもたらした気象現象がほぼおさまったと考えられる.<BR><B>3.資料からみた埼玉周辺の気象の実態</B><BR> 埼玉県内の越谷,加須,羽生,深谷の各地点では,降雨が27日から認められる.28~29日には,降雨がある場所ない場所に分かれるため,不安定な天候であったこと推察され,29日に限っては小康状態となっていた可能性が極めて高い.一方で29日の夜には,深谷で北東風(艮風)と大雨,長野県松本で大雨との記載があるが,その他で明確な表記が少なく不安定な天候が8月1日の午前中まで続いていたと解釈できる.<BR> 8月1日になると埼玉県内の各地点と長野県松本のすべてで,大雨となり風もあった.特に越谷では14~16時に東北風(丑寅風)が,長野県松本市では16~18時に北風が吹く.そして22~24時には越谷で南東風(辰巳風)となり,風向きの変化がみられることから,台風と考えられる.そして越谷では台風の北から東側にあたる位置であったと解釈される.松本は,山間地域の北風であることを考慮すると,少なくとも台風の西側の位置にあたる.このことから台風の中心は,埼玉県越谷と長野県松本の間を通過したと考えられ,関東・東海から北上し,日本海方面へ向けて通過したと判断される.<BR><B>4.台風の検証と異常気象との関係</B><BR> 越谷で大風の影響が14時~翌4時で最大14時間である.この記録を基に一般的な台風(直径400㎞)を想定すると,平均移動速度が約29㎞/hとなることから比較的速い速度で通過したことになる.寛保2年の全国的な天候を長崎県諫早や青森県弘前などの古文書を参考に解釈すると,比較的天候に恵まれており冷夏や異常気象の記載がみられない.一方で台風の直径が400km以上になると,近畿地方から関東地方にかけてが,台風の影響範囲と一致するので,寛保2年の災害は台風によるものと判断できる.しかし近畿地方の資料には,時間の記録がある資料を得られていないことから,さらに精査する必要がある.<BR><B>5.台風によってもたらされた崩壊とその後の影響</B><BR> 丸山(1990など)は,千曲川流域の災害の実態を古文書などから復元し,町田(2011)は寛保洪水位磨崖標の高水位の原因をマスムーブメントと指摘した.この実態に沿うように,武州榛沢郡中瀬村史料(河田1971)には,西上州の山々の崩壊が記されている.このことから利根川流域の西側では数多くの崩壊をもたらしたと推察できる.一方で秩父では崩壊の記録は少ないため,そこから浅間方面に向けて崩壊地が増加していたと考えられる.従来の歴史水害の研究は,水害の要因を降雨の増加にともなった流量の増大として考えることが多いが,崩壊が河川への供給源となって土砂を下流側へ供給することで,水害が発生することも考慮する必要がある.今後,氾濫の実態から河床変動との関連性を明らかにする.
著者
中佐 啓治郎 山本 旭宏 李木 経孝
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.84, no.862, pp.17-00360, 2018 (Released:2018-06-25)
参考文献数
17
被引用文献数
1

Argon ion sputter-etching of SUS420J2 and SUS316 stainless steels was carried out at a power of 250W for 10.8ks to form cone-shaped sharp protrusions with bottom diameter of 10-30 μm and fine quasi-column-shaped protrusions with diameter smaller than 500 nm respectively by using a radio-frequency magnetron sputter-apparatus. Effects of two types of plasma-nitriding on gripping ability were examined; one is the nitriding of both steel specimens using nitrogen gas of 0.53 Pa mixed with argon gas of 0.67 Pa at a power of 50W for 1.8 ks to maintain the original sharpness of protrusions, and another is the nitriding of SUS420J2 steel specimen using only nitrogen gas of 1.2 Pa at a power of 200 W for 7.2 ks to obtain the cone-shaped protrusions with round top. The coefficient of static friction, or gripping ability, of the plasma nitrided sharp protrusions of SUS420J2 steel specimen to polyethylene, polyvinyl-chloride, polyethylene-naphthalate sheets and a copy paper was about 1.8, 2.4, 1.1 and 1.5, respectively, at a large nominal compressive stress of 18 kPa. The reason for such large frictional coefficients is due to localized deformation of sheet under the sharp protrusions or piercing of the protrusions into the sheet. Although the sharp protrusions were partly broken, the frictional coefficients of these sheets were still about 1.6, 1.8, 1.1 and 1.4 after the second series of tests, which are more than twice as large as that of the specimen ground with #100 emery paper. The plasma-nitrided round protrusions of SUS420J2 steel and the fine protrusions of SUS316 steel were not broken during the friction tests of the polyethylene sheet and the copy paper but the frictional coefficients are smaller than those of the sharp protrusions. The protrusions with large frictional coefficients can be applied to the surface of a frictional conveying roll.
著者
伊藤 信成 中川 友博
出版者
日本地学教育学会
雑誌
地学教育 (ISSN:00093831)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.49-72, 2016

<p>2014年10月8日に起きた皆既月食をデジタルカメラで撮影し,その画像を用いて三重県内の都市の相対位置関係を求めるという試みを行った.この試みは,地上の位置関係が天球上に反転して投影されるという視差の特徴を利用したものである.都市の位置推定のためには,観測地点間での微小な月の視差を検出することが必要であり,県内各地で撮影された月食画像を集める必要がある.皆既月食当日,三重県内は曇天であったが,市民からの協力も得て県内各地から500枚以上の画像が集まり,そのうちの122枚が解析可能な画像であった.解析の結果,三重県の6都市のうちの3都市における月の視差を5″以下の精度で求めることができ,月食画像から推定した都市の位置は既存地図とほぼ一致した.この結果は月食画像を用いて県という狭い範囲内の都市位置を求めることが可能であることを示すものである.</p>
著者
深谷 達史 小山 義徳
出版者
日本読書学会
雑誌
読書科学
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.115-126, 2013

<p>This study examined students' difficulties of explanation activity in university lecture class. Study 1 examined the students' impression to the explanation activities, and the result showed that most of the students thought the activity positive manner. However, the result also suggested that many students felt anxious of the activity because they were not sure how to explain. In Study 2, to reduce their anxiety, students were instructed to give examples for topics hard to understand and to check listeners' understanding. The results showed that although students' confidence to their explanation rose after the instruction, most of their examples just mimicked what on the texts, and some contained inappropriate examples. Based on these results, we discussed the way of effective instruction for explanation activity.</p>
著者
鈴木 諒一
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.5, pp.105-110, 1958-12-31
著者
為永春水 作
巻号頁・発行日
vol.巻之二, 1824
著者
秋里籬島 編
出版者
鶴声社
巻号頁・発行日
vol.自巻之1至巻之2, 1884
著者
本間 貴子 米田 宏樹
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.25-38, 2014

本稿では、1910年代半ばから1930年代の社会適応を重視した時期におけるニューヨーク市公立学校固定式精神遅滞(欠陥)学級のカリキュラムの実態を明らかにした。当学級は、1910年代半ばから1930年代にかけて地域生活を教育目標とするカリキュラムを形成していった。当学級を出た後、地域で生活するために必要不可欠と考えられたのは適切な行動習慣であり、就労する力があることも望ましいとされた。教育実践や卒業後生活調査の中で精神薄弱児の行動が改善し、就労が可能な者がいることも明らかにされた。対象児は、従来より知能指数が高い行動問題のある怠惰児と社会適応が見込まれるIQ 50未満の精神遅滞児に拡大され、知能指数・精神年齢に行動問題を加味した学級編成がなされた。カリキュラムでは職業訓練の強化、性格教育の実施、地域資源を活用した「興味の中心」学習、道具教科としての読みが実施された。1910年代半ば以前からの運動機能訓練等は継続され、社会適応に傾注する中でも個々のニーズに応えるという理念を維持していた。