著者
松河 秀哉 北村 智 永盛 祐介 久松 慎一 山内 祐平 中野 真依 金森 保智 宮下 直子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.307-316, 2007
被引用文献数
4

本研究では,高校生から得られたデータに基づいて,データマイニングを活用した学習方略フィードバックシステム「学習ナビ」を開発した.システムの試験運用をふまえ,(a)モデルの妥当性(b)学習ナビで利用したメタファの有効性(c)ユーザからの主観的評価の観点から評価を行い,以下の結果を得た.(a)モデルが仮定する学力差が評価モニタにもみられ,モデルの妥当性が示唆された.(b)学習方略の達成度を表す信号機メタファについて,解説画面の閲覧時間の差から有効性が確認された.学習方略の順序性を表す一本道メタファは,評価モニタの約半数の理解を得た.(c)一部のユーザからアニメーションの長さを指摘された以外は,システム全体として好意的な評価を得た.
著者
倉爪 亮
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. CVIM, [コンピュータビジョンとイメージメディア] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.156, pp.133-145, 2006-11-09
参考文献数
36
被引用文献数
2

本稿では,Active Contour Model(動的輪郭モデル)の代表的な手法として,KassらのSnakesとOsher,SethianらのLevel Set Methodに焦点を当て,その理論と実装法を概説する.特にLevel Set Methodに対しては,その基本的な考え方から,Upwind Scheme,AOS,ADIなどを用いた実装法,局所成長速度場と拡張成長速度場,Gemetric Active ContourとGeodesic Active Contour等,LSMを利用したアプリケーションの構築に必要な知識と具体的な手法を解説する.また高速で安定なLevel Set Methodの実装法として,著者らの提案するFast Level Set Methodを紹介し,ビデオ画像上の移動物体のリアルタイム追跡,および3次元モデリングへの適用例を示す.
著者
須藤 裕子 小笠原 勝 西尾 孝佳 一前 宣正
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.8-14, 2004-03-31
参考文献数
24
被引用文献数
3

舗装道路内の縁石と歩道の接合部に形成される路面間隙に成立する雑草植生の生態学的な特性を明らかにすることを目的に,栃木県宇都宮市内の国道,県道および市道の植生調査を行った。植生調査は2002年3月18日から4月25日(春期),同年10月17日から10月29日(秋期)に行い,間隙のサイズと間隙に含まれる土壌のpHを測定するとともに,草種別の出現頻度,積算優占度,生活型および帰化雑草率を求めた。植生解析の結果から,路面間隙の雑草植生はオランダミミナグサ(Cerastium glomeratum Thuill.),ノミノツヅリ(Arenaria serpyllifolia L.),エノコログサ(Setaria viridis (L.) Beauv.),コニシキソウ(Euphorbia supina Raf.),ニワホコリ(Eragrostis multicaulis Steud.),オヒシバ(Eleusine indica(L.) Gaertn.),スズメノカタビラ(Poa annua L.)およびヨモギ(Artemisia princeps Pampan.)を優占種,ノミノツヅリを標徴種の候補とし,種組成の点において水田や畑の雑草植生と明らかに異なることが判明した。また,路面間隙に出現した雑草種は春期と秋期あわせて25科74種に上り,路面間隙は植物の生育にとって不適な環境と考えられるにもかかわらず,多種類の雑草が生育していることも明らかになった。さらに,路面間隙の雑草の多くは地下および地上に連絡体を作らず(R_5),重力または風によって種子散布を行う(D_4)一年生(Th)のTh-D_4-R_5型の雑草であった。
著者
野崎 泰伸
出版者
大阪府立大学
雑誌
人間社会学研究集録 (ISSN:1880683X)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.3-19, 2006-03-31

What determines the content of justice? The consensus among subjects, justified by social contact, is one answer to this question. Current liberalism maintains that consensus is constructed by social contract - but does the principle of consensus among subjects really lead to the theory of justice? It is important to notice that the current theory of consensus implies that those who cannot satisfactorily participate in consensus are no longer subjects. This article insists that justice should not be based on consensus, but understood as a process of falsification, implying that justice should also remain provi sional.
著者
阿部 尚之 島田 敬士 長原 一 谷口 倫一郎
雑誌
研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM)
巻号頁・発行日
vol.2011, no.30, pp.1-6, 2011-08-29

Web の集合知を活用し,未知の画像に対してその撮影内容に関するラベル付けを行う画像アノテーションという研究が盛んに行われている.従来の画像アノテーションは,収集した全ての訓練データセットから画像特徴とラベル特徴の関係を学習するものが多かった.しかし,それらのデータには入力である未知画像とまったく関係のない不要なデータも数多く含まれている.そこで本稿では,未知画像に付与されている位置情報と画像構図を利用して,そのような不要なデータを排除することで,画像アノテーションの精度を向上させる手法を提案する.実験では,提案手法と従来手法の比較実験を 100 シーンで行い,その得られた結果について報告をする.In recent years, many researchers use collective intelligence of the web to study an image annotation problem. The image annotation problem is to assign a proper label into an unknown image. In the training process, many conventional methods use relationship between image features and label features extracted from all collective training data set. However, the training data set includes much unrelated data to the unknown image. Therefore, we use the unknown image's geo information andcomp osition to eliminate unnecessary data. We report the result that we make a comparison between proposed methodan dt he conventional method.
著者
小浜 駿
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.339-347, 2010

This study investigated change of cognitions and feelings before, during, and after the process of procrastination. A questionnaire was administered to 358 undergraduate students asking them to recall and rate their experience of procrastinating. The results revealed that negative feelings which take place during procrastination interfere with task performance. Planning before procrastination is associated with positive feelings after procrastination, and these positive feelings assist task performance. Optimistic thinking is positively related to both positive and negative feelings; the former take place during procrastination, and the latter take place after procrastination.
著者
門田 暁人 高田 義広 鳥居 宏次
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-コンピュータ (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.80, no.7, pp.644-652, 1997-07-25
被引用文献数
34

ソフトウェアの保守, 再利用などのためには, 解析や理解の容易なプログラムを作成しておくことが重要である. ところが, 完成したプログラムを多数のユーザに配布する場合には, システムの安全性の確保や知的財産権の保護などのために, 内部の解析が困難なプログラムの作成が要求される場合がある. そのような場合には, 解析が容易なように作成したプログラムを, 解析が困難になるように変換する方式が有用であると考えられる. このようなプログラムの等価変換を, プログラムの難読化と呼ぶ. 本論文では, ループを含むプログラムを自動的に難読化する2通りの方法を提案し, それぞれの方法の有効性を評価するための実験について報告する. 実験の結果, 極めて小規模なプログラムに対しても, 提案する方法が有効であることがわかった.
著者
鈴木 真一朗 西本 一志
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.31, pp.37-42, 2008-03-21

本研究では,コミュニケーションの情緒的側面を支援する一手段として,`思い出'に着目し,思い出を同期的に語り合うためのシステム`Sweethearts Client'と非同期に追体験を促すためのシステム`Mobile Sweetheart'からなるコミュニケーションメディア`Lovebird's-Eye'を提案する.特に,コミュニケーションにおける情緒的側面を強く求めるのは恋人たちであろうと想定し,実際に恋愛中の3組の男女に対して約4週間の評価を行った.評価から,Sweethearts Clientが場所にまつわる話題を提供し,Mobile Sweetheartが思い出を共有したいという欲求を促進していることが確認され,これらが連携することによって,さらに情緒的なコミュニケーションが創出される可能性も示唆された.This paper describes novel communication media named ``Lovebird's-Eye'' for enhancing affective communications.Lovebird's-Eye consists of two subsystems, i.e., ``Sweethearts Client'' and ``Mobile Sweetheart.''Sweethearts Client is a synchronous chat system for two people that is equipped with a shared map to let users talk about location-based topics.Mobile Sweetheart delivers a chat log to a user's cell-phone when he/she is near a real place where the conversation in the chat log was held.We conducted user studies with three sweetheart couples for four weeks.As a result, we confirmed that they talked about their memories related to some places using Sweethearts Client and they tried to get the logs in the real world using Mobile Sweetheart to vicariously experience there.
著者
久米 桂一郎 Pavloska Susanna
出版者
同志社大学
雑誌
言語文化 (ISSN:13441418)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.[107]-117, 2008-08

翻訳(Translation)この久米桂一郎のエッセイは、1895年の第四回内国勧業博覧会開催時に、パリの学生時代に知り合った黒田清輝の出品した裸体画の展示を援護するために国民新聞に掲載された。久米は、日本が「東洋の美術国」としての地位を維持したいならば、日本の芸術家は西洋の美術史に精通し、裸体画についてのタブーを克服せねばならないと主張する。This essay, which was published in *The Kokumin Shimbun* during the 1895 Kyoto National Exposition, was written by Kume Keiichiro in support of a nude painting that had been submitted by the painter Kuroda Seiki, whom he had befriended while the two were art students in Paris. Kume argues that Japanese artists need to become conversant in western art history and in particular, overcome their reticence about public representations of the nude if Japan is to retain its status as a leading artistic nation.訳:Pavloska, Susanna / 同志社大学言語文化教育センター准教授
著者
大野 邦夫 渡辺 篤史
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告デジタルドキュメント(DD) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.10, pp.47-54, 2008-01-31
被引用文献数
2

本報告は、SNSを代表とするソーシャルメディアから、テキストマイニングを用いて情報を抽出する手法の技術的可能性を検討するものである。テキストマイニングツール、TRUSTIAを用いてmixiのコミュニティの情報から趣味に関する情報を頻度分布として取り出し、それを用いてデータを抽出し、各種コミュニティを相対的に比較した。さらにmixiがサポートしているカテゴリ毎のコミュニティ情報検索機能を用いて、趣味情報の分布を求め、テキストマイニングによる結果との比較を行ない、SNSに対するテキストマイニングの適用領域を考察した。The goal of this paper is to study the possibility of text mining technology to acquire the information through social media as SNS. A macro program that extracts mixi community information to text mining tool TRUSTIA has been developed. Vocabularies related to personal hobby of various community have been evaluated through TRUSTIA and statistically compared through histogram. Besides, relationship of hobby vocabulary distribution to community category has been calculated through built-in retrieval function of mixi community, and compared to the text mining result.
著者
澤田 いずみ 丸山 知子 吉野 淳一 今野 美紀 片倉 洋子
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

I.研究の目的夫婦間暴力を受け夫と離別した女性の心身の健康状態を明らかにし、暴力が女性の健康に与える長期的な影響とヘルスニーズを明らかにすること。II.研究方法1.質問紙調査1)対象:過去に夫婦間暴力を背景に民間のシェルターに援助を求め、現在は夫と離別して生活している女性100名。2)調査の内容:(1)身体・精神症状32項目、(2)IES-R、(3)Zungうつ病自己評価尺度、(4)受診状況と受診ニーズ、(5)基本的属性、(6)暴力の被害状況、(7)生活習慣を尋ねた。3)回収結果:調査用紙の回収数は67部(回収率67.0%)であった。2.聞き取り調査1)対象:1次調査の参加者で面接への同意が得られ、離別後3年以上を経過していた20名。2)面接内容:20名のうち14名に夫と同居中、別居した直後、現在での健康状態とヘルスニーズについて1〜2回の半構造化面接を行い、逐語録を作成し内容分析を行った。III.調査結果質問紙調査の結果、夫と同居中、約8割の女性が抑うつ状態を体験していたが、夫からの暴力により受診行動が制限されていた。離別後では、約5割の女性が「憂うつな気分」「眠れない」「疲れやすい」などの症状を"まあまあ"又は"かなり"感じており、約3割の女性に軽度以上のうつ状態、7割の女性にPTSDが疑われる状態であることが示唆され、健康に問題を自覚している女性のうち約5割が暴力と関係していると認識していた。心身症状は離別期間の経過に伴い減少するものもみられるが、個人差が大きく顕著な統計学的な関連を認めなかった。面接調査においては、暴力によるソーシャルサポートの分断や経済的困難などの生活基盤の脆弱性や、暴力の影響を受けた子どもの健康状態が、女性たちの健康状態の回復に影響していることが示唆され、離別後の親子を総合的に支援することが必要と考えられた。今後は、健康状態の個別性の背景と回復の過程を明らかにする予定である。
著者
相浦 沙織 氏森 英亞
出版者
目白大学
雑誌
目白大学心理学研究 (ISSN:13497103)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.131-145, 2007
被引用文献数
1

発達障害児をもつ母親は,診断が確定しにくい点から,母親は子どもが障害を持っているかどうかの疑いの時期が長く,障害の肯定・否定の葛藤を繰り返すといわれる(中田,1995)。葛藤を起こしている状態は,心理的に危機的な状態だといえ,障害の疑いの時期から診断名がつくまでの時期における母親を対象とした事例を中心に調査研究を行うこととした。その結果,障害の疑いから診断までの時期が平均して,2年1ヶ月の期間を要しており,先行研究と同様に,診断までの期間が長いことが発達障害児の特徴であることが明らかになった。この期間に対象者全員が,障害があるかどうかの葛藤や不安を感じており,つらかった時期であった。また,10人中8人の母親は,子どもを養育する中で最もつらかった時期としてこの時期をあげた。このような疑いから診断までの時期で,母親の心理的過程に影響を与えたものは,特に,夫からの心理的サポート,同じ悩みをもつ母親同士のピアサポート,専門機関や病院からの実際的サポートであった。以上より,臨床家によって夫への子育ての参加を促す場,同じ悩みを持つ母親同士のピアサポートが得られる場,専門機関や病院につなげるサポートなどの提供が必要であると考察された。
著者
細江 達郎 青木 慎一郎 細越 久美子 糸田 尚史 小野 澤章子
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

青森県下北半島出身者(昭和39年中卒者)の職業的社会化過程に関する追跡調査の一環として、現住地面接調査(有効面接数47)・質問紙調査(有効回答数125)を実施した。その結果、老年期移行期は都市周辺地域居住型と出身地域回帰型に分けられ、後者は対象者の50歳台時点での予測(40%以上)とは異なり少数であった。前者は、都市周辺地域社会内で生活基盤を形成してきたものが多く、再適応が比較的安定している一方で、都市不安定就労を継続し出身地域とも交流に欠ける者も少なくない
著者
加藤 尊秋
出版者
北九州市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究は,原子力発電のリスクが発電所の周辺地域で受け入れられる条件を探り,既存の発電所立地地域での住民の心理的負担を軽減させる方策を考察することを目的とし。ケーススタディとして新潟県の柏崎刈羽原子力発電所を対象とした。平成19年度の実施内容は,以下である。1)発電所の操業に伴うさまざまな経済的利点が市町村によって異なることに着目し,その大きさと発電所のリスクに対する補償としての認知度の関連を,既存の社会調査(2005年度実施)の結果をまじえて検討した。その結果,公共的な資金の流入が大きな市町村では,発電所のリスクが補償されたとみなす人の割合が高まることがわかった。ただし,当該資金が補償として十分であると考える人は,1人あたりの額がもっとも大きい刈羽村でも最大限にみて4割にとどまることがわかった。この結果は,「日本原子力学会和文論文誌」に掲載された。2)柏崎刈羽原子力発電所から15km圏内の住民を対象とした訪問面接形式の社会調査をもとに,原子力発電所のリスクおよび原子力防災に対する住民の認知内容を調べた。とくに,発電所から2.3km圏(柏崎市の重点的な対策区域),10km圏(国や県の対策の基本となる緊急時計画区域),15km圏(明示的な対策区域の外)に分け,住民の認知内容を分析した。この結果は,日本リスク研究学会で発表されるとともに,「化学工学」に関連する論考が掲載された。3)上述の社会調査のデータを用い,発電所の経済的利点の認知と防災意識の間にみられる関連性について検討した。