著者
石川 知夏 小林 哲生
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PI-005, 2021 (Released:2022-03-30)

言語音の印象に関する研究では,半濁音・清音・濁音の順に丸い印象を持つことが報告され,音象徴との関連から研究が進められている。しかし,日本語の濁音と半濁音はそれぞれに対応する記号(濁点と半濁点)が存在し,その形状が言語音の印象評定に影響を与える可能性がある。そこで本研究では,日本語話者と英語話者を対象として濁点と半濁点が仮名文字の丸さ-鋭さ評定に影響を与えるかを検討した。濁点・半濁点を付与可能な文字(は・ひ・ふ・へ・ほ;既存文字)と通常付与しない文字(れ・よ・レ・ヨ;新奇文字)に対して濁点と半濁点を付与したものとしないものを提示し,それぞれの文字の丸さ-鋭さを7段階で評定させた。その結果,既存・新奇いずれの文字でも日本語話者は半濁点を含む文字・清音を示す文字・濁点を含む文字の順で有意に丸いと評定し,半濁音・清音・濁音の順に丸い印象を持つという結果と一致していた。一方,英語話者は既存・新奇いずれの文字でも日本語話者と同様の結果は得られなかった。これらの結果から,母語話者にみられる濁点と半濁点の記号に関する知識が濁音と半濁音の印象評定に影響を与えている可能性が示唆された。
著者
梅本 丈二 安田 弘之 市来 利香 築山 能大 古谷野 潔 都 温彦
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.457-463, 2001-08-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
9
被引用文献数
2

過食症患者は嘔吐を繰り返すため, 口腔内が頻繁に食渣や胃酸にさらされることになり, 歯の脱灰, 実質欠損をきたすことが報告されている.本研究では嘔吐と歯の実質欠損に関する予備的調査を行った.嘔吐歴が4年以上の対象者は4年未満の者に比べてう蝕の既往が多かったが, 対象患者に歯牙酸蝕の所見は認められなかった.う蝕増加の既往と嘔吐との関連性はさらに今後の検討問題として残された.また歯科治療の際, 摂食障害について話すことに抵抗感があるとの質問紙に対する回答から, 摂食障害患者の自分の症状を知られたくないという心理面も窺えた.いずれにせよ, 医師・歯科医師双方が本件に留意して, 臨床にあたることが重要である.
著者
朱 [ミン]
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.46-55, 2013-12-30 (Released:2018-02-01)

今日の欧米の公的扶助制度は,(1)「最後の拠り所」というセーフティネットの維持,(2)「貧困の罠」,「福祉依存の罠」を回避し,労働インセンティブを高めることによる財政的負荷の軽減,という2つの異なる要請に迫られているという。中国の最低生活保障制度は,まさにこの2つの要請の狭間で呻吟している。1999年に国有企業から排出された大量の余剰人員のために創設されたこの制度は,2000年以降,(1)に対応するため,「応保尽保」による適用対象の包摂,「分類施保」によるニーズに対する確実な保障,(2)に対応するため,労働能力をもつ者に対する給付基準の引き下げ,ハードなワークフェアが行われ,いわば選別主義の拡充と選別主義の限定化が並行している状況である。本稿は,中国の社会保障制度における公的扶助の位置づけを念頭に置きながら,最低生活保障制度の導入過程と展開を概観し,その背景と特徴を考察することによって最低生活保障制度が置かれている難しい状況を明らかにする。
著者
近藤 しずき 清水(肖) 金忠
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.281-286, 2010 (Released:2010-11-25)
参考文献数
30
被引用文献数
3

プロバイオティクスによるコレステロール低下などの血中脂質改善作用に関しては, in vitro実験,動物実験およびヒト試験にて多数の報告があった.その作用機序としてコレステロールの菌体への吸着や脱抱合型胆汁酸との共沈による吸収抑制,ビフィズス菌や乳酸菌の持つ胆汁酸脱抱合酵素の作用による胆汁酸排泄促進および,腸管において産生される短鎖脂肪酸によるコレステロール合成抑制などが考えられている.ヒト試験において,特に高い胆汁酸脱抱合酵素活性を持つビフィズス菌や乳酸菌による改善作用が多く報告されている一方,一部の乳酸菌について効果は認められない報告も散見され,プロバイオティクスによる血中脂質改善効果について更なる検証が必要である.また,近年,腸内細菌叢と肥満や脂質代謝の関係についても急速に研究が進んでおり,今後の発展が注目される.
著者
Manami Kimijima Kengo Mandokoro Yuki Ichikawa Mizuki Tokumaru Naoki Narisawa Fumio Takenaga
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
Food Science and Technology Research (ISSN:13446606)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.267-273, 2022 (Released:2022-05-20)
参考文献数
26
被引用文献数
2

Natto is a fermented food made from soybeans using Bacillus subtilis natto. B. subtilis is present in honey. In this study, we evaluated the genetic and enzymatic characteristics of B. subtilis obtained from commercial honey and its suitability for natto fermentation. Three bacterial strains isolated from honey samples of different origins were found to be highly homologous to B. subtilis via 16S rDNA analysis. Similar to B. subtilis natto, all three isolates were biotin auxotrophs and possessed two insertion sequences. Genotyping by random amplified polymorphic DNA-polymerase chain reaction and enzyme activity analysis showed that the isolates were genetically different from the commonly used natto strains Miyagino, Takahashi, and Naruse. The three isolates are highly suitable for natto fermentation. These results indicate that honey is a source of B. subtilis natto that is potentially useful in the food industry.
著者
伊藤 克哉 南 賢太郎 今城 健太郎 中川 慧
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回 (2020) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.4Rin167, 2020 (Released:2020-06-19)

近年、金融分野において、機械学習的手法を用いた定量的な金融予測手法の開発が実務的にも学術的にも盛んである。 しかし、機械学習を用いた定量的金融予測モデルの開発には三つの困難がある。まず、原理的に全てのモデルは短命でかつ、ほとんどチャンスレートの正解率しか達成できない。次に、取引戦略という特殊なルールを一般的な機械学習モデルが学習することは難しい。最後に、高い予測精度とモデルの解釈性を同時に達成することが難しい。これらの問題に対処するべく我々は、Trader-Company法という新しいメタヒューリスティクスを用いた予測アルゴリズムを提案する。Trader-Company法は、単純な予測アルゴリズムであるTraderとTraderを管理するCompanyからなる。提案手法は、短命で弱いモデルが大量に存在する実際の金融市場の特性を反映している。また取引戦略の枠組み内で最適化を行うため、最適な予測戦略を作成できる。そして個々のTraderは人間に理解に可能な戦略からなるので解釈可能である。我々は提案手法の有効性を、実際の株式市場のデータを用いた実験で確認する。
著者
木島 由晶
出版者
The Japanese Association for the Study of Popular Music
雑誌
ポピュラー音楽研究 (ISSN:13439251)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.16-39, 2006 (Released:2009-10-29)
参考文献数
20
被引用文献数
2

近年の路上演奏は、都市部における青年文化の文脈で捉えられやすい。本稿はこの観点を継承し、大阪有数の都市である心斎橋周辺をモデル・ケースとして、路上文化の今日的な様相を示す。分析の前半では、169名分のインタビュー・データを整理して演者の意識の傾向を把握する。これをふまえて後半では、フィールド・リサーチの知見を導入して路上文化の特色を位置づける。以上の分析から得られた知見は、つぎの3点である。(1)路上文化が定着した要因には、通行人に対する意識の低下よりも、路上に対する安心感の高まりが大きい。(2)路上で自由に演奏してもよいという感覚は、今日では演者当人をこえて、演者をとりまく警察や自治体の側に波及している。(3)こうした状況の変化は、演者の二極化傾向を促進させる。一方は、通行人を意識しないで気ままに演奏を楽しむスタイルであり、他方は、通行人を強く意識してレコード・デビューを目指すスタイルである。

2 0 0 0 OA 7.菊池病

著者
菊池 昌弘
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.91, no.7, pp.2057-2058, 2002-07-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
2
被引用文献数
1
著者
関口 正宇 斎藤 豊 高丸 博之 松田 尚久
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.10, pp.475-482, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
17

近年,直腸NETを中心に大腸NETを治療する機会が増えている.その結果,大腸NET治療後対応の重要性も益々高まってきている.しかし,追加治療やサーベイランスといった大腸NET治療後対応については,コンセンサスが得られていない項目が多く,日常臨床で苦慮する場面も少なくない.追加治療に関しては,粘膜下層にとどまる1cm未満の大腸NETについて,内視鏡的切除後に,脈管侵襲,NET G2,切除断端のどれかのみが陽性となってしまった場合に,特に外科的根治術の侵襲の大きい直腸において,追加手術をすべきかどうか悩む場面も少なからず経験される.サーベイランスについては,どのような対象にどのような方法で検査を進めていくか,質の高いエビデンスに基づくプログラムが世界的に存在していない状況にある.本稿では,大腸NET治療後対応(追加治療,サーベイランス)について,現状の問題点も含めて概説した.
著者
古田 治彦 久保 誼修 堀内 薫 小渕 匡清 白数 力也
出版者
特定非営利活動法人 日本顎変形症学会
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.81-87, 2000-04-15 (Released:2011-02-09)
参考文献数
16

For surgical correction of masseteric muscle hypertrophy, Obwegeser-Beckers method, removal of the exostoses at the mandibular angle, is usually performed. However, it is difficult to obtain satisfactory esthetic results by this conventional method. In this paper, a new surgical technique to easily obtain good esthetic results is reported. This technique can remove exostosis at the mandibular ramus without damage to the inferior alveolar neurovascular bundle and surrounding tissue.The method is as follows:1. A Lindemann bar is used to cut through the exterior cortical plate of the ramus and the area of the antegonial notch. Then, a bone saw is used to cut through the cortical plate on an oblique line.2. A splitting chisel is directed and driven inward to the osteotomy line. The exterior cortical plate of the mandibular ramus is removed, and so, this portion has thin, facial esthetics which are improvable.
著者
大井 一浩 井上 農夫男 金子 真梨 道念 正樹 松下 和裕 山口 博雄 戸塚 靖則
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR JAW DEFORMITIES
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.1-7, 2010-04-15 (Released:2012-03-02)
参考文献数
26
被引用文献数
1

The purpose of this study is to evaluate the incidence, risk factors and postoperative nausea and vomiting (PONV) in patients who underwent orthognathic surgery.The subjects were 139 patients aged 17-52 years (47 males and 92 females) who underwent orthognathic surgery in the Hokkaido University Hospital from January 2001 to December 2003. Ninety-four Sagittal splitting ramus osteotomy (SSRO), 34 Le Fort I osteotomy and SSRO (Le Fort I+SSRO), and 11 surgically assisted rapid palatal expansion (SARPE) were performed. Anesthesia was maintained with sevoflurane and nitrous oxide in oxygen. There were no cases of maxillomandibular fixation. The factors investigated included age, gender, type of surgery, amount of bleeding, operation time, anesthesia time, anesthesia induction drugs, fentanyl dose and incidence of PONV. A statistical study was performed using logistic regression analysis to confirm the statistical significance among age, gender, amount of bleeding, operation time, anesthesia time, difference of anesthesia induction drugs, fentanyl dose, and incidence of PONV. A Chi-square test for independence was used to confirm the statistical significance between the type of surgery and incidence of PONV. Differences were considered significant for a P<.05.Nausea was observed in 44.6% females and 17.1% males. The incidence of nausea was significantly higher in females. A significantly higher amount of vomiting was observed in 23.5% of Le Fort I+SSRO compared with 7.4% of SSRO and 9.1% of SARPE. Statistically significant differences for vomiting were also noted in the operation time and anesthesia time.
著者
吉田 滋
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.215-221, 2019-04-05 (Released:2019-09-05)
参考文献数
20
被引用文献数
2

2017年はまさにマルチメッセンジャー天文学元年ともいうべき年であった.LIGO実験による重力波観測と電磁波対応天体の同定に続いて,ニュートリノ観測でもブレークスルーが起きたのである.我々IceCube実験が検出した高エネルギー宇宙ニュートリノ事象の到来方向を世界中の望遠鏡・宇宙観測衛星が直ちに追観測して,初めて対応天体候補が同定された.宇宙線放射天体がどこにあるのかさえ不明であった状況を一変させたのである.ニュートリノは弱相互作用にしか関与しない素粒子である.ある種の不安定な粒子がより安定な粒子に崩壊するときに伴って放出される.ベータ崩壊が良い例だ.このような「特殊な」素粒子であるニュートリノがなぜ高エネルギー宇宙の理解に本質的な役割を果たし得るのであろうか.高エネルギー現象を引き起こす動力源のエネルギー輸送の一端は陽子や原子核から構成されるハドロン粒子,すなわち宇宙線が担っている.その最高エネルギーは1020 eVにも達するのだ.こうした極限の環境下では超高エネルギー陽子は周囲のガスや光と衝突し,π中間子やK中間子といった不安定粒子を生み出す.これらの中間子が電子やミューオンに崩壊する際にニュートリノも生成されるのだ.いわば宇宙には天然の加速器が存在し,極めて高いエネルギーに加速された陽子や原子核ビームが光子やガスの海に注入され素粒子反応を引き起こしている.素粒子実験で人工的に作り出している状況が宇宙ではより巨大なスケールで実現していると考えられている.この「宇宙加速器」の加速能力は桁違いである.地上最大の粒子加速器であるLHCは陽子を1013 eVまで加速する.しかし宇宙線の最大エネルギーは1020 eVだ.宇宙といえど,これほどの加速能力を簡単には実現できそうにない.この機構を理解する有力な手段は,加速器の「現場」で起きる粒子衝突から生じる産物を直接測定することだ.この産物の中でも,ニュートリノは電荷を持たず,したがって磁場によって軌道が曲げられることもなく,光も通過できないような厚い雲をも突き抜けて,地球まで直進してくる優れたメッセンジャーである.しかもニュートリノは中間子を生成できる宇宙線ハドロン粒子がなければ生まれない.ニュートリノ放射天体イコール宇宙線加速器でもあるのだ.2013年にIceCube実験は初めてこの高エネルギー宇宙ニュートリノを発見し,宇宙加速器の現場でニュートリノが作られていることを実証した.観測データから,加速器天体が満たすべき条件が明らかになっている.しかし具体的な候補天体同定にはこれまで至っていなかった.マルチメッセンジャー観測手法を2016年に導入し観測を継続した結果,2017年9月,ついに候補天体の同定に成功したのである.同定された天体TXS 0506+056はブレーザーと呼ばれる特殊な銀河で,中心にある巨大ブラックホールの重力を動力源とするプラズマのジェットが我々の銀河方向に吹き出している活動銀河核(AGN)である.高エネルギーγ線天体の多数を占め,高エネルギー宇宙の主役の一角を占める.検出した宇宙ニュートリノのエネルギーは約2.9×1014 eVであり,この天体で陽子が少なくとも1015 eV以上に加速されたことを物語る.電波からγ線にいたる広大なエネルギー帯で取得された電磁波観測データから1014 eVを超えるニュートリノ放射を説明するには,幾つかの自明でない仮説が必要なことが明らかになった.これを手がかりに宇宙加速器天体の駆動機構を理解するデータを積み上げることが次のステップである.