著者
中村 順
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.67-72, 2011-04-15
参考文献数
12

<p>警察は産業事故についても事実を明らかにし,原因を究明して安全を確保する責務がある.対象となる事故は,死傷者を伴う事故や,社会的に関心の高い事故となる.現場検証は裁判所の令状に基づく公式な事故を記録するものである.関係者の供述についても証拠化され,他の調査機関と異なり,人に関する事故に至る背景,事情までも含めて調査を行うことになる.事故原因を明らかにして,責任を明確にすることが求められている.責任者の処罰ではない.</p>
著者
片岡 正教 安田 孝志 藤本 愛美 川崎 純 木村 大輔 島 雅人 赤井 友美 上田 絵美 山本 真士 日下 由紀夫 石原 みさ子 奥田 邦晴
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E4P3215-E4P3215, 2010

【目的】<BR> 2009年9月8日~15日、東京にてアジアユースパラゲームズが開催され、14歳~19歳の身体障害者、知的障害者のユース選手を対象に陸上競技、ボッチャ、ゴールボール、水泳、卓球、車いすテニスの6競技が行われた。その中で、日本障害者スポーツ協会の次世代育成強化事業として、理学療法士10名が科学委員として関わり、大会参加選手の競技動作のデータ収集を行った。本研究の目的は、次世代を担うユース選手に対しての競技力向上における理学療法士の関わりについて、実際の競技場面での動作解析の有用性を通して、今大会で行ったデータ収集と共に報告することである。<BR>【方法】<BR> 対象は、2009アジアユースパラゲームズ陸上競技に参加した27ヶ国229名の選手であり、日本代表選手約65名を中心としたアジア各国代表選手であった。そして、対象種目は短距離走、長距離走、リレー競技、砲丸投げ、円盤投げ、走り高跳び、走り幅跳びであり、9月11日~13日に行われた実際の競技場面における動作をハイスピードカメラ(CASIO EXILIM EXF-1)及びデジタルビデオカメラを用いて撮影した。ハイスピードカメラの取り込み周波数は300Hzとした。また、デジタルビデオカメラで撮影した動画は二次元動作解析ソフトDARTFISH(DARTFISH社)で解析・処理を行った。そしてそれらの動画をDVDデータとして各国のパラリンピック委員会、撮影対象選手ならびに主催者であるアジアパラリンピック委員会に配布した。<BR>【説明と同意】<BR> 本研究は日本障害者スポーツ協会の科学支援事業として行い、大会主催者であるアジアパラリンピック委員会からも承認を得た上で行った。<BR>【結果】<BR> トラック競技においては、スタートダッシュや走動作、長距離走における周回ごとのフォームの違い、リレーのバトンパス等、フィールド競技では投てき種目でのスローイングフォーム、跳躍種目での踏み切りや跳躍動作等、実際の競技場面における選手の素早い動作を、ハイスピードカメラで撮影した動画によりスローモーションでより詳細に確認することができた。二次元動作解析では、実際の競技場での撮影であり、キャリブレーションを行うことができなかったため、各関節の角変位や角速度などの動作解析指標は算出することができなかった。しかし、ストロモーションという処理で、走動作や跳躍動作の連続的な動作を確認したい相に分けて観察することができた。その後、これらのデータは各国選手団の代表者が集う会議で公表され、各国から大きな賞賛を得ることができた。<BR>【考察】<BR> 我々は過去にも、日本障害者スポーツ協会の科学支援事業として、いくつかの競技団体に対して、競技力向上のために動作解析を行い、その中で、選手に対して解析したデータを用いたフィードバックを行ってきた。障がい者のスポーツは決して特殊なスポーツではなく、身体に何らかの障害があるためにできないことをルールや道具を適応させて行うものである。障がい者の障害特性や個人の身体機能を理解した理学療法士が、専門的な知識をもって行う「動作解析」を通して選手に関わり、フィードバックや動作の指導を行うことは、障がい者のスポーツ選手における競技力向上、選手育成に対して、非常に有用であると言える。また今回は、ハイスピードカメラで撮影した動画による動作解析という、より身近で安価な機器を用いることによってもデータ収集を行うことができた。今までも競技場面に近い状況下でのデータ収集を行ってきたが、今回はハイスピードカメラ及びデジタルビデオカメラで撮影した動画からの二次元動作解析によって、実際の競技場面でリアルタイムにデータ収集、動作解析を行うことができた。そしてこれらのデータは各選手、各国にDVDデータとして配布され、特別なソフトなどを使用することなく視聴することができ、自分自身の動作をより詳細に、客観的にチェックできるものであった。今回の動作解析手法を用いたデータ解析は簡便で一般的に行いやすいものであり、臨床場面において、障がい者と関わる理学療法士がこのような事業に関わっていくことが、障がい者の競技スポーツへの参加を促すきっかけにもなることが示唆された。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 本研究のように、障がい者のスポーツにおける理学療法士の関わりや動作解析の有用性を報告することで、障がい者の障害特性や身体機能を理解した理学療法士の知識や技術が選手の競技力向上のためには欠かせないものであり、理学療法士が臨床場面だけにとどまらず、幅広い分野で活躍が再確認された。また、これらの情報を当事者に提供していくことで、障がい者の社会参加を支援する一手段となりうることが考えられた。

1 0 0 0 愛の渇き

著者
三島由紀夫著
出版者
新潮社
巻号頁・発行日
1950
著者
浅山 滉 中村 裕 緒方 甫 森田 秀明 児玉 俊一 畑田 和男
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.121-130, 1984-06-01
被引用文献数
1

国際障害者年を記念して, 初の大分国際車いすマラソン大会(ハーフマラソン:21.1km)が催された. 参加各国選手から任意に選んだ選手を対象に, 大会における選手の体力医学的検討を行った. 脊髄損傷による対麻痺者は体力の向上が望まれるが, 病態生理学的に問題が多く, 持久的体力を必要とする運動には危惧の念があった. 予備試験で車いすトレッドミルの負荷テストを行い, 各人の心拍数と酸素消費量(V0_2)の相関式を得て, 実際のレース時に装着した心拍数記憶箱から得られた値を基に, レース中の推定V0_2を得た. (結果)平均87.1±9.1分間(n=5)にV0_2-34.17+8.11ml/kg/minであり,レース中の高い心拍数(191-152拍/分)の割には低いV0_2であった, 脊損者は事故もなくこの持久運動に十分に耐え, 車いすマラソンは対麻痺者の体力向上に優れたスポーツであると考えられたが, 被検者は体力向上の余地があると思われた.
著者
魚崎 典子 ウオサキ ノリコ Uosaki Noriko
出版者
大阪大学国際教育交流センター
雑誌
多文化社会と留学生交流 : 大阪大学国際教育交流センター研究論集 (ISSN:13428128)
巻号頁・発行日
no.18, pp.11-21, 2014

近年、「留学」の在留資格を有する外国人(以下「留学生」と称する)の日本企業への就職希望率は上昇しているにも関わらず、実際の就職率は低迷している。その一因として、日本独特の就職制度が考えられる。日本では一般的に就職活動は卒業予定年度の前年度(B3,Ml)から始める慣行がある。その慣行を知らずに就職活動を開始する時期が遅れるケースが複数報告されている。手遅れになる前に留学生に情報を伝える有効な対策が早急に望まれている。本調査報告ではまず、日本独特の就職制度とそれを支える就職支援産業に触れ、諸外国の就活事情および、留学生がどのように日本の就職活動に関わる情報を得たかについてアンケート調査を実施した結果を報告する。そして留学生の日本での就職を困難にさせている要因を明確化した上で、有効な情報伝達手段を提案する。
著者
土井 大介
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田國文 (ISSN:02879204)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.14-31, 2001-09-30

一、「義盛百首」の成立と受容二、「義盛百首」の意義三、『万川集海』解題四、『万川集海』の「義盛百首」利用の方法論五、「義盛軍歌」「佃軍歌」の兵法性と文芸性六、兵法道歌の成立基盤
著者
近藤 隆二郎 入江 紗恵子 樋口 幸永
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.187-195, 2014 (Released:2015-01-01)
参考文献数
13

It is difficult to say why using household eco-account books, which are said to be very effective in reducing environmental impact, is not popular today. We believe that the reason for this lies in not only the design of the books, but also the attitude of the people who use them. In order to clarify this, we analyzed the background, the attitude, and the description of the books of twenty-one people who had been using the books for more than three years. The research showed that those who had been keeping these books were generally more than sixty years old and had a lot of free time. It also showed that they could be classified into four different groups. We named them as follows: “Nonbiri” are the members who use the books casually. “Kotsukotsu” use the books on a regular basis. “Waiwai” tend to work in groups, and “Takumi” thoroughly investigate the cause and are active in environmental investment. Of these groups, the people identified as members of Waiwai and Takumi had been using the books relatively longer than the other groups, and their books showed the effect of the reduction of emissions of carbon dioxide. As a result of our research, we came to the following conclusions: (1) It is important to understand that there are two stages, reducing energy on a day to day basis and reducing CO2 by environmental investment. (2) Book-keepers who would like to be part of “Takumi” should be identified. (3)Creating groups like “Waiwai“ should be encouraged.
著者
武田 安弘
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.g105-g106, 1990

顔面に分布する主要動脈の1つである顔面動脈の走行と分枝の発達は動物種によって異なっている. 霊長類の顔面動脈については, ヒトを除いては極めて少数の報告をみるにすぎない. 著者はコモンマーモセット (Callithrix jacchus) の顔面動脈と分枝ならびに分布域について詳細に観察し, 霊長類のものと比較解剖学的に考察した. 本研究には, コモンマーモセット成体7頭を用い, アクリル樹脂脈管注入法によって両側総頚動脈からアクリル樹脂を注入し, うち6体は頭頚部血管系の鋳型標本, 残る1体は10%ホルマリン固定剖検標本として観察に供した. 顔面動脈は起始から顔面での分布まで長い走行をとるので, これを顎下部と顔面部にわけて観察した. 1) 顎下部 : 顔面動脈は環椎中央の高さ, 顎二腹筋後腹ならびに茎突舌筋筋腹中央, かつ舌下神経の内側で外頚動脈の前壁から舌顔面動脈幹 (全観察7体, 14側中10側) または単独 (4側) で起始していた. この動脈幹からは常に上甲状腺動脈が起始していた. 舌顔面動脈幹または単独起始の顔面動脈は顎二腹筋後腹の内側を前上方へ, 同幹は本筋上縁で舌動脈と顔面動脈に2分していた. 顔面動脈は茎突舌筋と顎二腹筋中間腱の間を前外側方へ通過し, 途中, 茎突舌筋枝と顎下腺枝を派出していた. 本幹は内側翼突筋と顎二腹筋中間腱の間を前下方へつづき, 同翼突筋停止前縁でオトガイ下動脈を前上方へ, 咬筋枝を前下外側方へ派出していた. さらに本幹は皮下にでて咬筋と顎二腹筋前腹の間を前走し, 咬筋停止と顎二腹筋停止の後縁の間で前上外側方へ曲がって顔面に出ていた. オトガイ下動脈は内側翼突筋枝, 皮枝, 舌下腺枝, 顎二腹筋枝と顎舌骨筋枝を派出しつつ下顎骨内面を正中まで前走し, オトガイ舌筋の起始に分布して終わっていた. 2) 顔面部 : 顔面動脈本幹は6体の両側では咬筋前縁に接して前上方へ向かっていた. 残る1体の両側では同縁から前方へ離れて走行し, その片側では咬筋前枝の派出を認めた. 本幹は下顎体中央の高さで皮枝, 下顎縁枝, 頬枝を派出し, 頬筋下顎起始の下縁で下唇動脈を前方へ派出したのち, 頬筋外面を上行して頬筋枝を後内側方へ派出していた. さらに本幹は頬骨側頭突起の基部下縁の高さで頬骨動脈との吻合枝を派出したのち, 前方へ曲がり鼻孔外側動脈と上唇動脈に2分して終わっていた. 2体の両側では鼻孔外側動脈を欠如していて上唇動脈が終枝となり, また眼窩下動脈が発達していた. 下唇動脈は下顎縁枝, 唇縁枝, 下唇腺枝を派出し, オトガイ動脈と吻合して終わっていた. 上唇動脈は浅枝と深枝となり, 対側相互間で吻合して鼻中隔枝となっていた. コモンマーモセットの顔面動脈の起始は甲状舌顔面動脈幹が全観察例の2/3に, 単独起始が1/3に認められた. 起始様相について霊長類のツパイからヒトまでを総括すると, 単独起始, 甲状舌顔面動脈幹形成という順に変化し, 高等霊長類ではこのような起始変化が種別に独自の出現率を示している. 顔面動脈顎下部の形態については他種についての所見と変わらない. 顔面動脈は咬筋前縁に接して走行しており, これは頬嚢を有するカニクイザルやアカゲザルと異なっていた. 顔面動脈の終枝は鼻孔外側動脈と上唇動脈であって, カニクイザルやアカゲザルにみられる眼角動脈は認められなかった. したがって, 顔面動脈の分布は鼻背にとどまっていた.

1 0 0 0 OA [地錦抄 20巻]

著者
伊藤伊兵衞 撰
出版者
須原屋茂兵衞
巻号頁・発行日
vol.巻7-8, 1000
著者
元屋 清一郎 Shapiro Stephen M.
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.420-429, 1985-06-05

温度の低下によって秩序相から無秩序相への転移と見られる現象がある種の磁性体において観測されている. この奇妙な現象の解明を通じて不規則系における相転移に関与しているメカニズムについて述べる.
著者
須賀 恭子 波多野 誼余夫
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.65-78, 1969-06-30

The present study aimed at investigating the acquisition process of number conservation by 2 training experiments. Ninety-eight 4-6 year-old children, who had been non-conservers at a Pre-test, served as Ss of Exp. I. Elghteen out of them could anticipate correctly changes of the number of a coliection under transfarmations including addition and subtraction and spatial rearran.gement of elements simultaneously. They were divided into a' gr. and b' gr. (Each had 9 Ss) The remaining 80 children could only antici-pate nuinerical changes without spatial rearrange-ment. They were clivided into a, b, c, d and e grs. (Each had 16 Ss) Each 2 children assigned to a' and b gr. did not participate in the training session. Five different training procedures were adopted : Practice in <)onflict situations with external reinfor-cement CSs of a and a' grs. received this method of training), Practice in conflict situations without external reinforcement (b and b''grs. ), Practice in reinforded conservation situations (c gr.), Practice in mixed situations with reinforcement Cd gr. ), and Practice in conflict situations without reinforcement+some auxiliary steps (e gr. ). Each training procedure consisted of 2 sessions of 24 trials, and was given Ss on 2 consecutive days.
著者
長谷川 高生 ハセガワ コウセイ Kosei Hasegawa
雑誌
近畿福祉大学紀要
巻号頁・発行日
vol.2, pp.22-33, 2001-12-15

In this paper, I analize the political process of transition to the democracy in Spain more in detail than in my book, From Dictatorship to Democracy - Spain and Japan - (1999). I try to examine political reality of the transitional process to the democracy, by considering the policies and disputes among the political parties and analizing the results of elections in this process. As I offered in above-mentioned book, I devide this process into four periods:the period to December of 1973, the period from January of 1974 to July of 1976, the period from July of 1976 to 1979 and the period from March of 1979. In the first period, the authoritarian strategy from above by Franco regime was executed on liiegal oppositions. But this period was ended by the assassination of L. Carrero Blanco. In the second period, C. Arias Navarro did the strategy of confrontation against democratic insistence of the labor movements and oppositions, but failed between the attack from the right and the refusal from the democratic oppositions. The third period is characterized with the strategies of consensus adopted by Adolfo Suarez. He took the policy of consent to both the arms, the conservative right and the parties of democratic opposition, and got the success of democratic transition. He could also execute the strategy of consensus to from UCD as a consociational party and to deal with the parties of AP, PSOE and PCE etc. In the fourth period the democratic system was established, but the strategy of confrontation between the ruling party and the opposition parties appeared again.
著者
関 慶久 樫田 陽子 町田 登 桐生 啓治
出版者
Japanese Society of Veterinary Cardiology
雑誌
動物の循環器 = Advances in animal cardiology (ISSN:09106537)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.74-77, 1998-12-01

うっ血性心不全の症状を呈して死亡したアミメキリン(Giraffa camelopardalis reticulata)の心臓を病理学的に検索した。心臓は拡大して丸みを帯び,両心室腔は著しく拡張していた。左心室内には前乳頭筋と後乳頭筋の位置に2個の硬い灰白色腫瘤病変(それぞれ6×4cm,8×3cm)が認められた。腫瘤は乳頭筋の頂上部.腱索ならびに僧帽弁弁尖の一部を巻き込んでいた。また,左心房の心内膜面には噴流病変が形成されていた。病理組織学的に,これらの腫瘤病変は腱索に主座した心内膜炎の瘢痕化病巣(線維性心内膜炎)とみなされた。
著者
高島 三幸
出版者
日経BP社
雑誌
日経レストラン (ISSN:09147845)
巻号頁・発行日
no.470, pp.52-54, 2013-07

2001年、東京・渋谷のセルリアンタワー東急ホテル内にオープンした中国料理店「スーツァンレストラン陳 渋谷店」。同店を運営するエス・アール・チン(東京・千代田)は陳建一氏が代表を務める。日本に四川料理を広めた陳建民氏が開いた「四川飯店」の2代目…
著者
村上 健 深浦 順一 山野 貴史 中川 尚志
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.27-31, 2016

変声は14歳前後に完了するといわれている.今回,20代で声の高さの異常を他者に指摘されて初めて症状を自覚し,当科を受診した変声障害2症例を経験した.2症例とも第二次性徴を完了しており,喉頭に器質的な異常は認められなかった.話声位は男性の話声位平均値よりも高い数値を示したが,声の高さの異常に対する本人の自覚は低かった.初診時にKayser-Gutzmann法,咳払い,サイレン法により低音域の話声位を誘導後,低音域の持続母音発声から短文まで音声訓練を行い,声に対する自己フィードバックも実施した.訓練は1~2週に1回の頻度で実施した.2例とも訓練初回に話声位を下げることが可能であったが,日常会話への汎化に時間を要した.個性を尊重するなどの学校社会における環境の変化が,本人の自覚を遅らせ,診断の遅れにつながったのではないかと推測した.
著者
上村 昭栄
出版者
東京医学社
雑誌
周産期医学 (ISSN:03869881)
巻号頁・発行日
vol.20, no.12, pp.p1834-1836, 1990-12