著者
呉屋 良明
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.113-132, 1983

気管支ファイバースコープは呼吸器系疾患の診断のみでなく, 治療面でも欠くべからざる器機となった。気管支鏡を用いての検査, 治療には観察している部位の判定と所見の解析が基本となる。検査時, 気管支鏡下に分岐命名を行なうことにより, 各亜区域支まで見落しなく観察が可能となる。また気管支の正常分岐形態と構造を理解することにより, 異常所見の指摘, 病変の分析が容易となる。気管支の分岐形態は1950年に日本気管支分岐命名委員会により決定命名されたものがあるが, これらは気管支造影, 解剖材料を基にして分類されたものである。東京医科大学外科教室では内視鏡下に気管支内腔より生体の気管支分岐形態を分類し, 分岐型の頻度と簡易分岐命名法を検討している。左上区支と右上葉支は雨宮ら(1980年)により, 左舌区支と右中葉支は飯村(1981年)によりすでにそれぞれ報告している。著者は引きつづき左右下葉支の分岐形態を検討した。症例は1979年7月から1982年6月まで当教室で気管支鏡検査を行なった症例のうち, 健側気管支の亜区域支までが正確に判読できた300例について, 気管支造影所見にて裏付けを行ない, 両側下葉支の気管支壁の所見, 分岐形態, 分岐頻度について考察を加えた。左B^6はB^6_aとB^6_<b+c>30.3%, B^6_<a+b>とB^6_c26%, B^6_<a+c>とB^6_b12.7%, および三分岐型17.4%である。右B^6はB^6_aとB^6_<b+c>38%, B^6_<a+b>とB^6_c19%, B^6_<a+c>とB^6_b27.7%, および三分岐型6%である。左底幹はB^8とB^<9+10>62%, B^<8+9>とB^<10>22%, およびB^<8, 9, 10>三分岐型16%である。右底幹はB^8とB^<9+10>66%, B^<8+9>とB^<10>20.7%およびB^<8, 9, 10>三分岐型6%である。右B^7は3.7%に消失している。左右のB^8, B^9の各亜区域支の分岐形態は約85%が完全二分岐を呈している。B^<10>の分岐はB^<10>_aがどの位置でどの方向に分岐するかにより種々に分けられるが, B^<10>_aとB^<10>_<b+c>の型が左93.3%, 右94.7%である。各気管支の簡易命名法は左B^6, B^<10>がB^6_a, B^<10>_aより時計回りに, 左B^8, B^9がB^8_a, B^9_a, より外側, 後方より縦隔側, 内方へ命名した。右B^6, B^<10>はB^6_a, B^<10>_aより反時計回りに, 右B^8, B^9は外側, 前方より縦隔側, 後方へ命名した。
著者
湯川 典子 恩田 裕一
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.224-231, 1995-05-01
被引用文献数
33

下層植生が失われた林地における浸透能の低下の現状と原因を明らかにするために、三重県の鈴鹿山地の下層植生の被覆状態がさまざまなヒノキ林において、土壌の浸透能と土壌物理性の測定を行った。浸透能測定には、雨滴衝撃の少ない散水型浸透計を使用した。測定から、下層植生が失われた林分は、下層植生の繁茂する林分と比較して浸透能が低く、粗孔隙率が高いという結果を得た。また、林床の裸地化したヒノキ林では、土壌硬度が高く浸透能が低い特徴をもった乾燥した皮膜が観察された。この皮膜は、雨滴衝撃による団粒構造の破壊によってできるクラストであると考えられた。以上のことから、下層植生の失われた林地においては、粗孔隙率よりクラストの有無が浸透能に影響を与えることが推察された。
著者
高原 須美子
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.964, pp.131-134, 1998-11-02

今年3月に、セントラル・リーグの会長に就任した私にとって、初めてのシーズンは考えさせられることの多いものでした。会長の仕事は、就任前に予想していた以上に大変なものだと実感しています。これまで、一ファンとして、野球を楽しんできましたが、今年は立場が変わったことで、試合の見方そのものが変わってしまいました。
著者
時実 象一
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.43, no.7, pp.615-624, 2000 (Released:2001-04-01)
参考文献数
10
被引用文献数
5 1

1999年11月に,欧米主要12出版社が引用文献から電子ジャーナルへの相互リンクシステムを実現することで合意した。これに基づきCrossRefプロジェクトが発足し,2000年6月には米国化学会など主要学会も含め36出版社が参加し,すでに10出版社2,700雑誌へのリンクが可能となった。CrossRefはDOI (Digital Object Identifier) をリンク先のURLに用いている。そのメカニズム,料金,影響,問題点について解説した。
著者
網野 真理 吉岡 公一郎 鈴木 陽介 上村 春良 福嶋 友一 櫻井 馨士 守田 誠司 大塚 洋幸 中川 儀英 山本 五十年 児玉 逸雄 猪口 貞樹 田邉 晃久
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.41, no.SUPPL.3, pp.S3_138-S3_138, 2009 (Released:2015-01-23)

本邦においては硫化水素による自殺者が2008年の1年間のみで1,007人にものぼり社会的に深刻な問題になっている. 今回われわれは, 重篤な意識障害と呼吸不全に心筋障害を合併した硫化水素中毒患者の救命に成功し, 心筋障害の回復過程を心臓核医学検査により評価し得たので報告する. 症例は32歳, 男性. 自ら硫化水素を発生させて吸入自殺を図り, 救急車で当院救命センターに搬送された. 来院時の身体所見では, 除脳硬直肢位, 口唇のラベンダーブルー斑, 腐卵臭を呈し, 両側肺野では湿性ラ音が聴取された. 硫化水素中毒に伴う意識障害, 呼吸不全, 肺炎, 横紋筋融解症と診断し, 人工呼吸器管理, 高濃度酸素投与にて集中治療室へ入院. 第2病日には肺炎による敗血症性ショックを発症, 第3病日には横紋筋融解症の進行と心筋障害の新規出現が認められた. さらに第5病日には心原性ショック, 肺水腫が出現したが, 第7病日には人工呼吸器からの離脱に成功した. 第14病日は心筋血流イメージとして99mTc-tetrofosmin (TF), 心筋脂肪酸代謝イメージとして123I-BMIPP, 心臓交感神経イメージとして123I-MIBGを施行可能であった. TF, BMIPPでは前壁の一部, 下壁~後壁における集積低下が認められ, MIBGでは高度交感神経障害が示唆された. 同時期に施行した冠動脈CTにおいて冠動脈の有意狭窄はなかった. 心筋障害に対する内服加療としてカルベジロールおよびエナラプリルを投与し, 第38病日に退院となった. 受傷6カ月後の心電図および心臓超音波検査では, 左室壁運動は正常化し心臓核医学検査ではTF, BMIPPにおける前壁, 下壁~後壁の集積低下は改善した. MIBGにおいては, wash out rateは改善した. 以上の臨床経過から, 内因性の急性心筋梗塞, たこつぼ心筋症, 急性心筋炎の可能性は低く, 硫化水素による心筋障害と考えられた. 本症例は重篤な硫化水素中毒からの急性期離脱後, およそ6カ月の経過を経て心筋障害の改善傾向を示した貴重な症例である.
著者
青木 邦勲
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100021, 2013 (Released:2014-03-14)

1.はじめに 地理Bの学習内容について,教科書で取り扱う内容の順番と各社発行の受験問題集が取り扱う内容の順番が異なっていることは周知の通りである.昨年度より,発表者が担当している授業では受験参考書の順番を採用して授業計画を立てている.この理由は高校2年生では週4時間で授業を行っているが,学習内容が系統地理学の部分で終わってしまうため,地誌学の学習までたどり着かない問題を抱えていたためである. そこで,受験問題集数冊の項目立てから授業の流れが崩れない方法を考え,前半の系統地理学と後半の地誌学を合わせて「系統地誌学」という概念を思いついた(ただ,この概念は発表者が初めて提唱するものではなく,以前からこのような教育方法が提唱されていたのではないかと考えている).この方法で授業を進めると地誌の内容を扱うことも可能になるので生徒が興味を持ち自主的な取り組みが見られ,履修者の減少に歯止めがかかった.また,授業内容や授業回数の短縮にもつながり,3年生の11月に行なわれる日本大学付属学校等統一テストや各大学で実施している推薦入試に対応できると考えている.2.今回の発表内容 5月に行なわれた日本地球惑星科学連合大会では上記の2年生の授業の前半部分について,「特に地形学の授業の進め方を工夫することで,世界の鉱工業の理解が深まり,各地域の特色が明らかになるので生徒が興味を持ち,生徒自らが思考を深めてくれる」という内容で発表を行った.今回は視点を地理B全体に向けて「地理教育」としての観点から発表を行う. 3.発表の具体的な中身と構成 具体的には昨年度2年生の授業(週4時間)では「地形学・世界の鉱工業とエネルギー資源・気候学・世界の農牧業」という流れで授業を進め,今年度3年生の授業(週6時間)では「村落・都市・国家間の結びつき・現代世界の諸課題(民族・人口・環境問題)・林業・水産業・地図の図法・統計演習」で授業計画を立て,現在は現代世界の諸課題まで終了している. このような形で授業を行ったところ,以下のような結果(良い方向への変化)が見られた.①2年生のうちから各地の様子を詳しく見ることができるため,生徒の授業中の活動が積極的になった.②系統地理と地誌の関係が明確になり,各単元で何を学習してどこへ到達させるのか?が生徒自身で理解できるようになった.③生徒の思考が深くなり,各地域の特色について生徒自らがまとめる作業を行なうようになった.よって,従来の地誌学の考え方である各地域の総合的な特色については生徒自身でまとめる作業をしている.④2年生から3年生への地理継続履修者に減少の歯止めが掛かった. 教える側が先に全体の概要を示すことが大前提となるが,生徒自らが進んで地理を選択してくれる状況は整えたと考えている.また,受験のために授業をしている訳ではないが,各種実力テストでも偏差値50を確実に超えてくれている.成果が上がっているが,この方法にはまだ改善の余地があると考えているので,ご意見を賜りたい. 残念なのはこのような状況にあって大学入試で地理が受験教科にないこと,地理学科を持っている大学の入試制度が多様化していないことが残念である.
著者
羽柴 哲夫 山田 正信 本郷 卓 宮原 永治 藤本 康裕
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.301-306, 2010-05-25 (Released:2010-07-09)
参考文献数
5

症例は67歳男性.突然の意識障害と右上下肢麻痺で発症した.臨床症状より脳底動脈塞栓症を疑ったが,発症1時間後の頭部CTでは異常を認めず.撮影中に意識障害・右上下肢麻痺は改善を示したため,同時に3D-CT angiographyを施行した.結果,主幹動脈の閉塞を認めず,塞栓後直ちに再開通が得られたと判断した.発症当日には患者は完全に回復したと発言し,自覚的訴えも無かったが,発症翌日に盲を訴えた.MRIにて両側後頭葉梗塞を認めたため,皮質盲と診断した.本患者は発症急性期には,盲であることに無関心であったと考えられ,病態失認の一種であるAnton症候群を呈していたと考えた.T-PA時代においては脳梗塞急性期に正確な神経症状の評価が必要であり,病態失認の存在は急性期診断のpit fallになりえると考えた.閉塞血管の再開通により神経症状の回復が見られ,t-PA療法の適応がないと判断されてもNIHSSの評価は必須であると考えた.
著者
早川 智
出版者
診断と治療社
雑誌
産科と婦人科 (ISSN:03869792)
巻号頁・発行日
vol.81, no.7, pp.899-901, 2014-07
著者
杉浦 学 小舘 亮之 来住 伸子 加藤 大志 植村 弘洋 國枝 和雄 山田 敬嗣
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告コンピュータと教育(CE) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.12, pp.1-8, 2010-02-27

MIT Media Lab の子供向けビジュアルプログラミング環境である Scratch を拡張した制御プログラムエディタにより,NEC のコミュニケーションロボット PaPeRo を制御可能な 「ぱぺろっち!ツール」 を,NEC と津田塾大学で共同開発した.体験型学習のワークショップで 「ぱぺろっち!ツール」 を利用することにより,PaPeRo の対人コミュニケーション機能を活用して,人間と PaPeRo の対話的な要素を含むロボットの利用シナリオを考案し,シナリオの実現に必要な機能をプログラミングするといった活動が可能になり,アイデアの創出を重視した創造的な学習活動が実現できる.女子高校生を対象とした利用実験では,多様なロボットの利用シナリオが発想され,プログラミングの初学者でも比較的短時間で制御プログラムを記述できることが確認できた.We developed the "PaPeRochTool", a robot programming environment for "PaPeRo", based on Scratch. PaPeRo is a communication robot developed by NEC Corporation, which has various functions of human-robot interaction. PaPeRochTool supports a creative robotics workshop, such as drawing up a scenario which includes human-robot interaction, and developing robot control programs to perform the scenario. The result of experiment carried out for high school female students shows the fact that students could get diverse scenario ideas and developed control programs within a relatively short time.
著者
坂本 哲三
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌. D, 産業応用部門誌 = The transactions of the Institute of Electrical Engineers of Japan. D, A publication of Industry Applications Society (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.120, no.8, pp.1024-1030, 2000-08-01
被引用文献数
2 3

The superconducting magnetically levitated vehicle has guidance coils that produce vehicle guidance forces according to a null flux principle. However, the expected forces dont have significant damping forces to suppress a lateral vibration of the vehicle. Even though the experimental system has some magnitude of damping, it is still small. Moreover, since the guidance forces are very weak at low speeds, the minimum levitating speed is limited. The paper proposes a guidance method using LSM armature coil currents. When the currents are decomposed into dq frame variables so that the d-axis is assigned to the filed axis, the d-axis component of currents generates the lateral forces. The lateral forces of the vehicle are formulated, and the guidance force coefficient is defined. And the author shows the design formula of the guidance regulator system that employs a dynamic compensator using a feedback signal of lateral displacement. The calculated results show that the guidance regulator system works very well as we specify.
著者
一番ヶ瀬 智子 今井 一洋
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.135, no.2, pp.197-203, 2015 (Released:2015-02-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

It is routine to search for and recognized genetic defects in human disorders to provide knowledge for diagnosis, treatment, and protection against diseases. It is also important to investigate and demonstrate the cause of a disease from the proteomic perspective, because intracellular signaling systems depend on protein dynamics. Demonstrating changes in protein levels enables us to understand biochemical events during the initiation and progression of a disease. To understand changes in protein levels in tissues and cells, we have developed a novel proteomics approach, FD-LC-MS/ MS. This consists of fluorogenic derivatization (FD), HPLC separation and detection/quantification of proteins in a biological sample, followed by the isolation and tryptic digestion of target proteins, and then their identification using HPLC and tandem mass spectrometry (MS/MS) with a database-searching algorithm. The method is highly sensitive (femtomole-level detection) through the use of less noisy fluorogenic rather than fluorescence derivatization, and enables precise and comprehensive relative quantitation of protein levels (between-day relative standard deviation of peak heights of ca. 20%) by combining FD with HPLC separation. In this paper, after a simple review of differential profiling using FD-LC-MS/MS, for example the analysis of stimulated vs. unstimulated samples, we introduce the development and application of the FD-LC-MS/MS method for comprehensive differential proteomics of several tissues, including mouse liver, mouse brain, and breast cancer cell lines, to reveal protein levels and biochemical events in tissues and cells.

1 0 0 0 OA 石田三成

著者
直木三十五 著
出版者
博文館
巻号頁・発行日
vol.後篇, 1942
著者
高畑 庄蔵
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.47-56, 2004-05-30
被引用文献数
1

本研究は、校内作業と校内外現場実習についての2年7か月にわたる作業行動支援の経過を報告するとともに、学校場面から職場へのスムーズな移行のあり方について検討することを目的とした。対象生徒は行動障害を示す自閉症の男子生徒であった。支援開始前は、校内外への飛び出しや飛び回り、大声でのエコラリア等の不適切行動が頻発し、持続的な作業が非常に困難な状況にあった。そこで、機能的アセスメントを行い代替となる適切行動を推定した。加えて、それらの適切行動が自発・維持されるための支援ツールを開発して支援計画を作成し、作業学習において複数の作業種目に継続的に用いながら対象生徒の状況に合わせて支援を段階的に行った。さらにA社での校外実習では、支援ツールが職場で有効に機能するように環境整備を教員が実地に行った。その結果、対象生徒は支援ツールを活用することで比較的安定して校内作業に従事するようになり、不適切行動も徐々に低減していった。A社での校外実習においても、自立的な作業態度が確認された。また、本研究で設定した支援ツール、支援手続き、効果について、保護者、監督者へのアンケート調査でも高い評価を得た。機能的アセスメントを中核にした支援計画、移行における支援ツールが果たした役割、就労に向けた学校から職場への支援のあり方について考察した。