著者
藤波 朋子 高瀬 亜津子 飯野 久和 大沢 眞澄
出版者
昭和女子大学
雑誌
昭和女子大学大学院生活機構研究科紀要 (ISSN:09182276)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.31-42, 2001-03-31

本調査では、古糊の生成過程の微生物の関与を把握するために、金沢文化財保存修理研究所の調製した新糊と、貯蔵過程の古糊及び上層水を試料として、各々の微生物相を調べた。その結果、生成過程にある糊および糊上の水のpHは大寒の水交換時には貯蔵年数の多少にかかわらず3.0前後まで低下していることが確認され、貯蔵1年目より微生物によって生成された有機酸等により静菌作用が働いていることが推察された。しかし、その作用は1年よりも短い期間で既に発現していると予想されたため、その時期の確定および関与する微生物の確認には、年間を通しての微生物の挙動およびそれに伴う貯蔵環境の変化について、より詳細に調査することが必要であると考えられた。また、比較的低温下でも生育が認められる微生物が多く分離されたことから、冷暗所に貯蔵中も微生物による緩やかな関与を受けている状態であることがわかった。このことから、微生物の関与速度をより詳細に検討することにより、糊の熟成との関係をより明確にすることができると考えた。さらに、分離菌の菌体外への酵素生産性は弱かったことから、低温度環境下における微生物によるデンプンの低分子化は、非常に緩やかに行われることが示唆された。これらのことから、古糊生成過程における微生物の主要な役割は、微生物生育に伴うpH低下で生じる静菌作用や菌膜形成による菌股下環境の制御による、糊に関与することのできる微生物種の選択及び微生物量の制限等の、糊熟成のコントロールにあると推察した。研究試料について、色々とご指導いただいた、金沢文化財保存修理研究所所長 川口法男氏をはじめ、馬場秀雄氏、荒木史氏に感謝いたします。なお、本研究の一部は日本文化財科学会第15回大会(講演要旨集P61,190-191(1998年))、文化財保存修復学会第20回大会(講演要旨集P40,116-117(1998年))にて発表した。
著者
田中 岳 八幡 洋成 山田 朋人
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2012
被引用文献数
1

二十四節季では,1月5日,6日頃を小寒,1月20日,21日頃を,大寒とよぶ.ただ,大寒の方が暖かくなることもある.近年,この大寒の頃の厳冬期に,気温上昇と降雨が観測されている.例えば,2002年1月21日,北海道の松前町,伊達市では,最高気温がそれぞれ8.2℃,5.0℃,日降水量12mm/day,114.5mm/dayが記録された.その際,札幌市では最高気温4.5℃,日降水量が53.5mm/dayとなり,市内を流れる望月寒川が氾濫し,16軒が浸水した.さらに,雪崩も発生し,国道二路線の一部,道央道の三路線,四区間の通行止めや,航空機の欠航も生じた.このような積雪寒冷地における厳冬期の気温上昇と降雨は,融雪を加速させて河川の氾濫や土砂崩壊をまねきかねない.また,冬期間の全体で気温上昇が続くと,積雪量が減少し水資源管理にも影響を与える.このように,冬期の気象変化は,治水,利水の観点からも注視しなければならない現象である. 本研究では,札幌を例として,積雪寒冷地における気温と降雨について,特に,一年で最も寒い厳冬期に着目し,その特性を気象データに基づき検討する.使用するデータは,気象庁札幌管区気象台で観測された1889年から2011年の123年間の気温,天気,降雨である.厳冬期に着目しているため,1月1日から2月28日の期間と,大寒の頃1月21日の前後2日を含む1月19日から1月23日の5日間のように解析期間を決め,平均気温,最高気温,最低気温および降雨の特性を考察した.その結果,人間活動の影響を強く受ける最低気温の最低値は,札幌市の人口変遷と概ね対応した形で,1940年以降に急激に上昇することを確認した.太陽の活動周期を除去した各気温の11年移動平均値には,上昇傾向と周期的な変動が確認された.そこで,各気温の11年移動平均値を直線近似した後,それぞれの偏差を求めた.その結果,直線近似された最高,平均,最低気温の最低値の長期的な変動傾向は,それぞれ2.2℃/100y,4.5℃/100y,9.7℃/100yと推定された.また,各気温には,およそ20年から25年の周期的な変動が確認された.これらの傾向は,解析期間を変えても確認され,降雨の発生頻度にも同様な傾向が認められた.
著者
山室 信一
出版者
京都大學人文科學研究所
雑誌
人文學報 = The Zinbun Gakuhō : Journal of Humanities (ISSN:04490274)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.63-80, 2011-03

1895年から1945年の敗戦に至るまでの日本は, 日本列島弧だけによって成立していたわけではない。それは本国といくっかの植民地をそれぞれに異なった法域として結合するという国制を採ることによって形成されていったが, そこでは権利と義務が差異化されることで統合が図られていった。こうした日本帝国の特質を明確化するために, 国民帝国という概念を提起する。国民帝国という概念には, 第1に国民国家と植民地帝国という二つの次元があり, それが一体化されたものであること, しかしながら, 第2にまさにそうした異なった二つの次元から成り立っているという理由において, 国民帝国は複雑に絡み合った法的状態にならざるをえず, そのために国民国家としても植民地帝国としてもそれぞれが矛盾し, 拮抗する事態から逃れられなかった事実の諸相を摘出した。その考察を通じて, 総体としての国民帝国・日本の歴史的特質の一面を明らかにする。
著者
堤 富士雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.11, 2007-02-09
著者
鳥居 和之 奥田 由法 久保 善司 川村 満紀
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

「泰平橋」(平成12年8月撤去)の解体では,PC・T桁の一般図及び配筋図(PC鋼線,スターラップ筋,横締め構造など)を完成するとともに「泰平橋」で使用したコンクリート及びPC鋼線(直径5nmのピアノ線)の品質を調べた.その後,平成12年10月に(株)ピー・エス七尾工場(現(株)ピーエス三菱)にて,PC桁の曲げ及びせん断載荷試験を公開試験として実施し,50年が経過したPC・T桁の耐荷力及び変形性能を明らかにした.次に「長生橋」(平成13年8月撤去)の解体では,「泰平橋」と同様にPCスラブ桁の一般図および配筋図を完成するとともに,「長生橋」で使用したコンクリート及びPC鋼線(直径3mmのピアノ線)の品質を「泰平橋」と比較検討した.その後,'平成13年10月に(株)ピーエス七尾工場(現(株)ピーエス三菱)にて,PC桁本体及び合成桁の曲げ及びせん断載荷試験を公開試験として実施した.「長生橋」は移設検討委員会(座長:金沢大学工学部川村満紀教授)が設置され,復元の方法および移設の場所が検討された,移設検討委員会の方針に従って,平成14年4月に建設当時の欄干や電気灯などを復元し,「長生橋」は七尾市の希望の丘公園に移設された.また,「泰平橋」,「長生橋」に関する調査資料を整理し,歴史的価値の高い両橋梁の記録を冊子としてまとめるとともに,平成14年11月に特別講演会「コンクリートは本当に丈夫で長持ちか」を主催し,「泰平橋」,「長生橋」の調査結果を多くの土木関係者に報告した.さらに,解体調査の記録を2本のビデオ(金沢大学工学部編集,(株)ピーエス三菱編集)にまとめた.
著者
植松 海雲 猪飼 哲夫
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.396-402, 2002-07-18
被引用文献数
19

リハビリテーション専門病院に入院した高齢脳卒中患者374症例を対象に,自宅退院のための能力的・社会的因子条件について,classification and regression trees(CART)を用いて分析した.対象患者の自宅退院率は82.6%.単変量の解析では退院時家族構成人数,配偶者の同居の有無,functional independence measure(FIM)18項目各得点において転帰先間で有意差を認めた.CARTによる解析の結果,FIMトイレ移乗,家族構成人数からなる決定木が得られ,トイレ移乗が要介助でかつ家族構成人数が2人以下の場合は自宅退院が困難(自宅退院率21.7%)などのルールが得られた.CARTは,連続変数,カテゴリー変数のいずれをも扱うことが可能であり,結果は直感的に理解しやすく分類や予測などの研究に有効な手法と考えられた.
著者
岡嶋 裕史
出版者
関東学院大学経済経営研究所
雑誌
関東学院大学経済経営研究所年報 (ISSN:13410407)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.131-139, 2014-03

ゲーム業界におけるパッケージゲームからソーシャルゲームへの移行が進行し,ヒットタイトルの多くをソーシャルゲームが占める状況が出来している。このトレンドはPS4などのコンシューマ機の設計とエコシステムの構造にまで影響を及ぼしており,今後も同一傾向が続くことが予想される。一般的に,ソーシャルゲームへの移行は,ユーザがゲームを楽しむ際の短時間志向や無償志向,基本的なインフラとなったSNSとの親和性をひいて説明されるが,本当にソーシャルゲームは短時間かつ無償で楽しめるものなのだろうか。完全に無償であれば,ベンダは開発意欲や開発リソースを維持することはできず,短時間プレイに限局されるなら,広告費でそれをまかなうことすら困難になる。背反するベンダとユーザの要求は,何らかの要素によって調整や隠蔽がなされているはずである。本稿では課金によって短縮される時間の性質に着目し,この背理した状況への説明を試みた。
著者
古市 直樹
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.435-443, 2013-03-10

This paper considers the evolution of structural thought in Heinrich Rombach. He developed the image of communication that underlies his original structural thought “structural ontology” on his new conception “image philosophy” und “hermetics”, but he failed to bring the developed image into his structural thought itself minutely.
著者
Shozo Sawamoto Rui Matsumoto
出版者
日本プランクトン学会、日本ベントス学会
雑誌
Plankton and Benthos Research (ISSN:18808247)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.203-206, 2012-11-25 (Released:2013-06-18)
参考文献数
15
被引用文献数
1 14

More than 50 specimens of the megamouth shark Megachasma pelagios have been reported so far, but biological observations on the species are still limited. We examined a female megamouth specimen that was captured by the bonito purse seine fishery in the Kuroshio Extension in July 2007 and donated to the Okinawa Churaumi Aquarium. The specimen was an immature female, 3,667 mm in total length and 361 kg in weight. The stomach contents measured 2,200 mL excluding the portion that was lost from the specimen before measurement. Detailed examination of a small part (14.6 mL) of the stomach contents revealed undamaged worm-like organisms, 10 partially damaged euphausiids and abundant fragmented pieces of euphausiids. The worm-like organisms were probably parasites such as tapeworms. The partially damaged euphausiids were identified as Euphausia pacifica except for one individual of Nematoscelis difficilis. Based on the number of fragmented right mandibles, which were less damaged than the other fragmented appendages, the total number of euphausiids in the stomach contents is estimated to be at least 18,000 individuals. The high abundance of euphausiids in the stomach contents suggests that the present specimen has fed on a swarm of E. pacifica in an oceanic area.
著者
伊藤 昌毅 川村 尚生 菅原 一孔
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J96-D, no.10, pp.2327-2339, 2013-10-01

本論文では,走行中の路線バスの位置情報を取得するバスロケーションシステムの開発について述べる.バスロケーションシステムは,バス停においてバスの到着を知らせるなど公共交通の利便性を高めるために用いられているが,運用コストの問題で小規模な都市での実現は困難である.本論文では,スマートフォンを車載器として利用することで,導入や運用コストを抑えたバスロケーションシステムを実現した.開発システムは,バスの位置情報をユーザに提供するだけでなく,既に運用中のバスや鉄道の経路案内サービス「バスネット」と連携することで,バスの遅れを考慮した経路探索を実現するなど,公共交通の利便性を高める情報基盤として機能している.開発したバスロケーションシステムは,鳥取県のバスを対象に運用を続けており,アクセス数などの運用状況やそこから得られた知見についても紹介する.
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1520, pp.28-31, 2009-12-14

長野県松本市。北アルプスを遠くに望む工業団地の一角に、泉精器製作所の本社はある。電気シェーバーを筆頭に、毛玉取り機や「ミルサー」といったアイデア商品で一世を風靡した同社だが、今年8月、民事再生手続きを申請した。 「後悔ですか。それはメガバンクをメーンにしていたということですよ」。泉俊二社長は、悔しさをにじませながら現在の心境を打ち明けた。
著者
木下 直治
出版者
公益社団法人精密工学会
雑誌
精密機械 (ISSN:03743543)
巻号頁・発行日
vol.45, no.531, pp.259-262, 1979-03-05