著者
丸山 由紀子
出版者
東京外国語大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では教会スラヴ語的要素の一つである双数形に焦点を当てて分析を行った。その結果、15世紀にロシアで成立したオリジナル聖者伝において、双数形の使用が想定されうる文脈における双数形(教会スラヴ語的要素)と複数形の使い分けは、語彙・文法的要因だけでなく、作品における各エピソードをより効果的に伝えるという作者の意図によっても決定されることが判明した。すなわち、教会スラヴ語的要素の用法に関する研究では談話的要因を考慮する必要があることが明らかとなった。
著者
竹田 真帆人 廣井 善二
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ナノグラニュラー磁性体は、次世代の高密度・高機能磁気記録媒体として大きな期待を集めている。磁気特性を含め、これらの材料の諸性質は組織に強く依存すると考えられてきたが、X線回折法などの平均的手法が中心で磁性体の組織と物性に関する詳細な検討が十分になされていなった。本研究では、透過型電子顕微鏡とSQUID装置を組み合わせるとともに、バルク材料からナノ磁性体形成の方法を用いることにより、いろいろな磁性体分布の試料を作成して磁性体の構造、組織、組成と磁気特性の対応関係を明らかにした。また、従来流布してきた解釈の問題点を指摘し、磁気抵抗効果の新しい考え方を提出した。
著者
三輪 建二 倉持 伸江 柳澤 昌一
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

学校・家庭・地域の連携や地域コミュニティの再生などにおいて、社会教育が果たす役割は高まっている。しかし、社会教育主事等を養成する学部段階の社会教育主事課程や、社会教育職員の現職研修である社会教育主事講習は現状に見合ったものになっていない。「実践力」を養成する、アクティブラーニングを取り入れた社会教育主事課程や、実践の省察を組み入れた社会教育主事講習について改善を提言すると同時に、社会教育主事資格の汎用性を高め、「コミュニティ学習支援士」(仮称)の創出と社会教育主事資格との併用や関係性について提言を行った。
著者
森島 邦博
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

原子核乾板は、高速中性子による反跳陽子を3次元飛跡として検出することにより、その飛来方向やエネルギーの測定が可能であるが、ガンマ線起因の電子飛跡がバックグラウンドとなる。本研究では、原子核乾板の受光素子である臭化銀結晶に電子トラップとして働くロジウムをドープして感度制御を行う事で、高いシグナルノイズ比で中性子起因の反跳陽子飛跡の解析が可能な原子核乾板の開発に成功した。本研究において開発した原子核乾板を用いた高速中性子検出技術は、神岡鉱山やイタリア・グランサッソ研究所などにおける地下の高速中性子フラックス測定に用いる事が可能である。
著者
榊原 伸一 上田 秀一 中舘 和彦 野田 隆洋
出版者
獨協医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

神経系前駆細胞、神経幹細胞の分裂タイミング調節などの幹細胞維持機構の一端を明らかにするために、神経幹細胞に強く発現する新規遺伝子を同定し、SE90/Radmis(radial fiber associated mitotic spindle protein)と命名した。radmis mRNAは塩基配列から80kDaのタンパク質をコードすると予測されるが、既知の遺伝子との有意な相同性を示さず、また保存されているモチーフ構造も有さない。ノーザンプロット分析によりradmis mRNAは神経幹細胞で強く発現しているが、分化誘導により発現が低下、消失することが明らかになった。さらに特異的抗体を作製しradmisタンパク質の発現パターンを詳細に解析した。その結果、Radmisはnestin陽性神経幹細胞に強く発現し、胎生期の終脳胞において、Radmisは神経上皮細胞(神経幹細胞)の放射状突起(radial fiber)に発現していた。また脳室に面する部位に見られるリン酸化Histon3陽性の分裂期の神経幹細胞では、有糸分裂紡錘体に非常に強く局在していた。分裂期の発現解析からRadmisはM期の前中期、中期、後期の神経幹細胞の紡錘体に発現し、分裂面とは無関係に発現することから、対称性・非対称性分裂の両方の分裂様式で機能することが示唆された。さらに成体脳では側脳室前角のSVZのわずかな細胞に発現が限局される。これら陽性細胞では、胎生期と同様に、分裂期の紡錘体で発現が見られ、さらにその周囲のnestinまたはGFAP陽性の細胞突起にも発現が認められることから、RadmisはTypeB、TypeCなどの成体の神経幹細胞および神経前駆細胞に発現することが示された。また培養細胞系においてRadmis遺伝子の強制発現を行なったところ、mitotic indexの亢進と異常な紡錘体微小管形成が観察された。以上のデータから、Radmisは神経発生期、成体期を通して神経幹細胞あるいは前駆細胞の分裂時の細胞骨格再編成、あるいは紡錘体微小管の形成調節などを通してこれらの細胞の維持機構に役割を担っている可能性が考えられる。
著者
丹羽 謙治 下原 美保 金井 静香 亀井 森 佐藤 宏之 深瀬 浩三 高津 孝 日隈 正守 橋口 晋作
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究の主要な課題である「自然災害等に備えた、鹿児島県の資料防災ネットワークの立ち上げ」に向けての基礎づくりを行った。鹿児島県、宮崎県の一部自治体の資料保存状況を把握するとともに、鹿児島市の入来院家資料、大武文庫、谷口家資料、姶良市の森山家資料などのデジタルカメラによる資料保存・目録整備、資料防災に関する研究会・講演会の開催、ホームページの立ち上げによる広報活動を実施した。
著者
深尾 武史
出版者
京都教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

熱水力学に現れる自由境界問題の研究に向けて, 流体の方程式に様々な制約条件を付加した問題の可解性の結果を得た. また, 変分不等式と発展方程式の関係性を明確にするため時間依存制約付きの抽象発展方程式に対する解の表現定理の結果を得た. 流速の大きさを温度に依存して制約する熱水力学に現れるモデルについて可解性の結果を得た.
著者
高橋 幸利 藤原 建樹 西村 成子 藤原 建樹 西村 成子 角替 央野 久保田 裕子 今井 克美 重松 秀夫 下村 次郎 池田 浩子 大谷 英之 山崎 悦子 大谷 早苗 高橋 宏佳 美根 潤 池上 真理子 向田 壮一 高山 留美子
出版者
独立行政法人国立病院機構(静岡・てんかん神経医療センター臨床研究部)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

脳炎は感冒などの後に発病し後遺症を残す病気で、病態解明と治療法の開発が重要である。非ヘルペス性急性辺縁系脳炎では、グルタミン酸受容体(GluR)のひとつであるGluRε2分子の幅広い領域を抗原とする抗体が産生されていて、感染ウィルスに対する抗体がGluRε2に交差反応しているのではないことが分かった。ラスムッセン脳炎では抗GluRε2 抗体を含む髄液IgGがアポトーシスを誘導している可能性が示唆された。
著者
作道 信介 北村 光二 太田 至 曽我 亨 羽渕 一代 辻本 昌弘
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

カクマ難民キャンプ設置の住民側の影響は以下のとおり。1)カクマ周辺住民の治療環境の多元化:キャンプの病院・診療所への依存が高まり医学用語の定着がみられる。同時に流入する人びとを患者とする外来の治療者-マッサージ師、薬売り、音楽治療者、移動治療者-が流入してきた。近年、医療と民間治療の棲み分けが明確化してきている。2)「糞肛門」の出現:干ばつ以来の食生活の変化はトゥルカナの主食をミルクからトウモロコシへ変わった。それにあわせて、身体の不調を干ばつによる食生活の変化に帰する新しい病気、「糞肛門」があらわれた。この病気を治療するマッサージ師の多くが干ばつなどによって追われてきた人びとであることがみいだされた。3)トゥルカナと難民との交流:(1)贈り物の交換による友情、(2)婚姻関係があった。トゥルカナは対人関係において、他者をそこにいて代替不能な"あなた"の位置に置こうとする。それが難民との関係形成に重要な働きをしていた。4)携帯電話の普及:それによると、携帯は牧畜民の既存の人間関係を固定化、強化する反面、対面場面での関係形成の柔軟性を損なう可能性があることが示唆された。牧畜民への携帯普及はまだまだであるが、近代化における牧畜民的自己の変容というテーマが浮上した。
著者
山本 正浩
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究提案では、遠隔的酸化還元反応によって環境中に発生する電流を積極的に利用する「環境電流生態系」が存在するという作業仮説を立て、その存在量とメカニズムを解明することを目的とした。本課題において、我々は熱水噴出孔で電流が発生することを、鉱物の電気特性、鉱物の触媒特性、熱水と海水の酸化還元電位、現場発電試験などを通して照明した。さらに、微生物がこの環境電流環境下で鉱物表面に付着することも明らかにした。現場での長期微生物培養試験は天候不良の影響により実現できなかったが、疑似環境下における電流利用微生物の集積培養については今後の進展に期待が持てる。
著者
荒木 慎一郎
出版者
長崎純心大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は教育基本法の教育目的観を、その立案者である田中耕太郎の人格概念に遡って明らかにすることを目的とした。本研究の結果として、先行研究に加えられた知見は次の三点である。第一は田中の教育目的観の出発点が、東京帝国大学法学部長として新入生歓迎講話で述べた人間・政治の究極目的としての「道徳的人格の完成」にあることを明らかにしたことである。第二に、田中の「道徳的人格の完成」に至るまでの思想の変遷を、とくに田中の青年期から出発して、跡づけたことである。田中の青年期の思想をこれまで一般に知られてこなかった二資料、大学時代に友人と翻訳出版した『生ひ立ちの記』、および無教会主義時代に内村鑑三のもとで行った講演「律法の成就」を用いて明らかにしたことはその成果の一端である。第三に、研究の最大の成果は、田中の人格概念がフランスのトマス主義哲学者、ジャック・マリタンの人格理論に大きく依拠していることを実証的かつ論理的に明らかにすることができた点にある。第二次大戦以前から戦後文部大臣を辞任するまで、田中は公に一度もマリタンの名前に言及したことがなく、これまで、教育基本法制定以前の田中とマリタンの関係を主張するには、戦後に書かれた田中の回想、状況証拠および両者の思想の内的関連に基づくよりほかなかった。本研究の結果、フランス・コルプスハイムにあるマリタンの研究センターに、1931年に田中からマリタンに宛てられた手紙が保存されていることが判明した。この手紙には田中がマリタンを知るに至った経緯、マリタンに対する評価、カトリシズムの思想家田中の抱負などが記されており、マリタンの人格理論が田中に与えた影響を実証的に明らかにする上で最大の根拠となった。
著者
影山 穂波
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

都市の「居住空間」とジェンダーとの関係を明らかにするために、住宅開発と地域形成過程で組み込まれたジェンダー関係に関する研究を進めた。都市は人々が日常生活を営む単なる入れ物ではなく、行為主体として活動し、社会的・経済的・文化的変化が生み出される場所である。事例のひとつとして、前年までの那覇新都心の開発の調査に続き、那覇における女性たちの地位の問題について検討した。沖縄の女性たちの生活空間を示す特徴のひとつとして保護施設に注目し、それをめぐる動向を検討した。1972年にうるま婦人寮が要保護女性のために建設された。この年は沖縄の本土復帰の年であり、当初この寮が対象とした女性の中心は買売春を行っていた人々であった。沖縄の日本返還にあたり、問題となったのが買売春の対策であった。新聞記事によると、対策を要する問題点として、業者の転廃業、売春婦の保護・更正、前借金、今後の取締などが挙げられている。うるま寮はこの視点から設置されたものである。現在この施設は、配偶者暴力などによる要保護女性が12名入居している。1972年当時81名であった定員は現在では40名となっている。さらに横須賀の女性たちと生活空間に関する調査を進めている。海軍基地のあった横須賀が1945年にアメリカに接収されると、横須賀には特殊慰安施設協会が設立された。地域の居住者たちがこうした施設の設置に対して反対運動を展開するようになるのが1950年ごろからである。1951年には風紀取締条例が制定され、52年にはPTAが中心となり横須賀子どもを守る会が結成された。「居住空間」を築く際にキーワードとなるのが女性や子どもの保護である。異なる対象でありながら、弱者と位置づけることでまとめられている。一方で、女性を二分化し、排除される対象を生み出すことで、居住者の結束を固め「居住空間」を築くという構造がみられるのである。
著者
多田 孝志
出版者
目白大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の推進により、以下の事項が明らかにされた。1 日本の青少年が対話に苦手意識をもつ要因対人関係を損なうことや、自己への評価への恐れ、コミュニケーション技能を習得していないことによる自信のなさが、大きな要因とみられる。2 学校における対話力向上の方法学校教育の場で、対話スキルの習得、対話型授業の推進、対話的環境の醸成により、児童生徒の対話力着実に向上していく。3 対話指導モデルの有用性学習者の実態に対応し、対話指導モデルを活用することは、対話力向上に有効である。<今後の課題>2年間の研究期間は、研究テーマ「多文化共生社会に生きる基本的技能である対話力育成のための指導モデル作成に関する実践的研究」を推進するにはあまりに短期間であった。「コミュニケーションのスキルを開発する」こと、「授業に対話を持ち込む」ことはかなり進展した。しかし、それをモデル化するためには、更なる実践検証が必要である。対話型授業とはどのように分類できるのか、それぞれの学習効果を上げるための留意点は何か等々の解明が必要である。
著者
田中 美里
出版者
同志社大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2012

本研究では、数値化や記述が困難な人間の感性情報を、人間とコンピュータとの対話を通して明らかにし、意思決定やデザイン設計に応用することを研究目的とする。E-co㎜erceなどに見られる従来の情報推薦はアクセス履歴などに基づくコンテンツ同士の関連度から呈示を行うものである。これに対し、本研究では個人ごとに、そして対象問題ごとに異なる感性モデルから共通するモデル、普遍的なコンセプトと言えるメタモデルを抽出し、応用した新しい推薦技術の確立を目指していることに意義が存在する。これらのモデル抽出を可能とする手法として、対話型遺伝的アルゴリズムに着目している。ユーザの評価と最適化計算を繰り返すことで、ユーザの感性モデルを特徴空間中の景観(ランドスケープ)の形状によって表現する。この対話型遺伝的アルゴリズムを用い、感性のメタモデルを抽出するために、以下の問題を解決していく必要がある。(A)複雑な感性モデルの推定、(B)ユーザの評価の揺らぎの検討、(C)メタモデルの抽出技術の検討である。課題(A)については採用第一年度に、多峰性の感性モデルにおいて複数の最適化を求めるアルゴリズムを開発した。採用第二年度目である本年度は、課題(B)について取り組んだ。対話型最適化手法では、ユーザの主観的な評価値を用いてランドスケープの探索を進めるため、ユーザの評価に揺らぎが生じるとその感性モデルを正しく抽出できなくなる。そこで、ユーザの評価の揺らぎについて検証し、さらにより正確な評価値を得るための一手法として脳活動情報に着目した。ユーザの解候補を評価するときの脳活動を計測し、感性的な評価値との関係を定量化することで、脳活動情報による評価値の算出や補正を行うことを試みた。本研究ではこのためにMRI装置を用いた生体情報の取得と利用について数回の被験者実験を行っている。さらに年度の後半には非常に精度の高いMRI装置を借用し、大規模な被験者実験を行ってユーザの脳活動と嗜好との関連性について調査を進めた。これらの研究の成果については適切な機会に研究発表を行い、外部に公開している。
著者
田中 功 綿打 敏司 長尾 雅則 柿澤 浩太 山田 瑞紀 ALI Md Mozahar 丸山 恵李佳
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、In等の稀少金属を用いない透明導電体や高効率電子放出材料の開発を目指して、遷移金属元素や希土類金属元素をドープしたアルミン酸カルシウムC12A7の高品質バルク単結晶を育成し、その育成結晶をエレクトライド化して元素ドーピング効果を調べた。その結果、固液界面形状を制御して溶媒移動浮遊帯域溶融法(TSFZ法)で結晶育成を行うことによりC12A7バルク単結晶中のドーパント濃度を制御することができた。さらに、希土類金属元素の置換はわずかな固溶量でもC12A7エレクトライドの電気伝導率の向上に効果的であることを明らかにした。
著者
風間 伸次郎
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

エウェン語、ソロン語、ウデヘ語、ナーナイ語、ウルチャ語に関する12冊のテキスト集を刊行することができた。そのうち3冊には文法概説を付した(ウデヘ語、ナーナイ語、ウルチャ語)。国内の研究所機関ならびに記述言語学に携わる諸研究者に発送した。語り手と現地教育機関等にも配布した。文法的な問題に関して、9編の論文を発表し、比較言語学的な問題に関して、論文を2編発表した。言語学会において1度学会発表を行い、一般に公開されたシンポジウムでも1度発表を行った。
著者
小林 繁子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

筆者は昨年度8月より継続して文書館史料や二次文献などを渉猟する調査を行った。具体的には、博士論文のテーマとして設定した「トリーア・ケルン・マインツ三聖界選帝侯領における魔女迫害の構造比較」のための史料としてとくに民衆からの「請願状」に着目し、これが魔女迫害においてどのような機能を果たしたのか分析し、そこから見られる君主一臣民間の複雑な関係を明らかにすることを目的としている。今年度は特に文書館の手稿史料の解読と分析に注力した。8月~9月には一時帰国し、それら史料調査の成果をまとめつつ、マインツ選帝侯領における魔女迫害について論文を作成し、2010年8月末に国内の学術雑誌に投稿した。さらにその後の史料調査によって得られた知見を加えた改稿を経て、現在審査中である。またトリーア大学のフォルトマー氏と同テーマに関する共同論文を現在準備中である。ここではフォルトマー氏がトリーア選帝侯領、ルクセンブルク大公領、聖マクシミン修道院領において行われた魔女迫害とそこでの請願状の役割について、また筆者はマインツ選帝侯領およびケルン選帝侯領レンス市における魔女迫害について執筆を担当することになっている。これは2011年中に発表される予定である。また、2010年9月にマルティン・ルター・ハレ・ヴィッテンベルク大学において行われた日独共同大学院秋季セミナーにおいて「近世における請願状の諸機能-マインツ選帝侯領における魔女迫害の事例から-」と題してこれまでの史料調査に基づきドイツ語での口頭研究発表を行った。
著者
五十殿 利治 井上 理恵 木下 直之 武石 みどり 梅宮 弘光 桑原 規子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、舞台美術という演劇と美術の境界領域に属するジャンルについて、検討するものであった。研究対象は研究者の専門領域の関係で、「近代」(概ね明治以降)と限定し、また舞台美術を視覚文化という視点から多角的に検討するために、美術と演劇の研究者ばかりでなく、音楽史や建築吏の専門家にも参加を求めて、検討を加えた。毎年3回ずつ開催された研究会においては、分担研究者ばかりでなく、専門家にも指導助言を仰いだおかげで、議論されたテーマはすこぶる多岐にわたるものとなった。その内容については、研究成果報告書に反映している。この研究成果報告書では、テーマが近代能、海外巡業演劇、劇場建築、舞台写真、舞踊、劇場音楽等にまで拡がっており、つぎにような論として結実している。伊藤真紀「日比谷野外能と舞台の松」、井上理恵「川上音二郎の『金色夜叉』初演と海外巡業」、梅宮弘光「川喜田煉七郎による劇場計画案の舞台機構とその時代背景」、五十殿利治「『機械美』時代における舞台と写真」、木下直之「日清戦争と原田重吉の奮闘」、木村理恵子「舞踊家アレクサンダー・サハロフの来日をめぐって」、京谷啓徳「山本方翠と活人画」、桑原規子「アーニー・パイル劇場をめぐる美術家たち」、武石みどり「山田耕作の初期劇中音楽」坂本麻衣(研究協力者)「川上音二郎の舞台改革」である。これらの議論は各研究者が研究会での意見交換を踏まえたものであり、今後さらに各ジャンルにおける舞台美術への理解を促進するとともに、舞台美術に関わる文化的な領域の多様性をつねに踏まえた研究を進めることが期待できる。
著者
北原 武嗣 杉浦 邦征 山口 隆司 田中 賢太郎
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

海溝型巨大地震のような長周期・長継続時間地震波を受ける鋼製橋梁の耐震性能の把握が重要である。そこで,都市高速に多用されている鋼製橋脚を対象とし,ハイブリッド実験,静的繰返し載荷実験およびFE非線形解析により,最大耐力履歴後の数十回に及ぶ繰返し変位による耐力低下を検討した。その結果,最大荷重履歴後,初等はり理論で弾性範囲と考えられる数十回に及ぶ変位載荷により,耐力は10%程度低下する可能性のあることが分かった。また繰返し振幅範囲が大きいほど,繰り返し数が多いほど耐力低下の割合が大きいことがわかった。
著者
齋藤 仁
出版者
関東学院大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

本研究では、2001~2011年に降雨に起因して発生した4,744件の斜面崩壊を対象とし、斜面崩壊の規模-頻度と雨量との関係、および台風の影響を解析した。その結果、累積雨量~250 mm、最大時間雨量~35 mm/h、平均雨量強度~4 mm/h を超えると、規模の大きな斜面崩壊の頻度が高くなり、台風の寄与率は最大で約40%であった。また、現在の気候下において斜面崩壊の頻度とそれによる総侵食量を最大にする降雨イベントが存在し、それらの再現期間は約40年以下であることが示唆された(Saito et al., 2014, Geology)。