著者
宮城島 進也
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

細胞内共生による葉緑体の成立に必須であった、宿主真核細胞と葉緑体の分裂同調化機構を明らかにすることを目的として、種々の真核藻類を用いた解析を行った。その結果、(1)一次共生及び二次共生起源の葉緑体の分裂は宿主細胞周期により、核コード葉緑体分裂遺伝子の発現レベルでS期に限定されること、(2)葉緑体分裂面の収縮開始が宿主細胞の細胞周期進行に必須であること、(3)細胞の安全な複製のために宿主真核細胞の細胞周期進行は、酸化ストレスを生じる光合成の起こらない夜間に限定されることがわかった。つまり、宿主真核細胞・葉緑体の協調増殖は、双方が制約を掛け合うことで成立していることが明らかとなった。
著者
遠藤 俊郎 下川 浩一 安田 貢 布施 洋 袴田 敦士 伊藤 潤二
出版者
山梨大学
雑誌
教育実践学研究 : 山梨大学教育学部附属教育実践研究指導センター研究紀要 (ISSN:13454161)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.84-94, 2009

本研究では,大学における運動部活動(バレーボール) の練習場面における現代の集団規範の実態を把握するとともに,競技水準によってどのような違いがあるかを明らかにし今後のコーチングに役立てるための一資料にする。また,10 年前の選手の集団規範と比較することによって今日の選手の特徴を明確にすることを目的とした。その結果,男子における集団規範下位尺度得点において,競技水準の高いチームに所属している選手が競技水準の低いチームに所属している選手に対してすべての下位尺度得点で高い値を示した。男子における社会的アイデンティティ各項目得点においては,競技水準の高いチームに所属している選手が競技水準の低いチームに所属している選手よりも高い評価が得られた。このことから,男子において競技水準が高いほうが集団帰属意識は強く,規範も厳しいことが示唆された。また,90 年代と現代の集団規範の比較においては,「現代の選手」が3 つの下位尺度得点(態度規範・上下序列規範・奉仕規範)で高い値を示した。このことから「現代の選手」において規範に対する耐性が低下している可能性があることが示唆された。
著者
星 守 小早川 倫広
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究課題では, MPEG-4 audioの圧縮過程から算出されるパラメータ,あるいは楽曲圧縮データのビットストリームに格納されているパラメータを用いた楽曲アノテーションに関する研究を実施した.本研究課題の成果として, 1)圧縮過程で算出される自己相関係数系列を用いた楽曲の構造分析手法, 2)ビットストリームに格納されたLSPパラメータから算出されるLPCケプストラム系列を用いた楽曲のジャンル分類手法, 3)ビットストリームに格納されたLSPパラメータ系列を用いた楽曲に対する印象語付与手法の提案を行った.
著者
紺野 大介
出版者
日経サイエンス
雑誌
日経サイエンス (ISSN:0917009X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.9, pp.72-77, 2003-09
被引用文献数
2

日本では来年の4月から国立大学が法人化され,これまでとは違う厳しい生き残り競争にさらされるが,お隣の中国では国立大学や中国科学院傘下の研究所改革の波はすでに十数年前に始まった。研究者や大学,研究所が置かれている競争的環境や,その研究成果を産業化するベンチャー育成という点で,中国はいまや日本をはるかに引き離している。
著者
新井 正 鈴木 啓助 深石 一夫 水越 允治
出版者
立正大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1988

日本の冬の気候は,アジア大陸東部の影響を強く受けていることはいうまでもない。ところが,アジア大陸の地表面,水面などに関する情報は非常に不足しており,日本と大陸との水文気候の比較は充分にできない状況にある。これは,事情を異にする5か国が接するこの地域の特殊性を反影している。そこで,第一に日本・中国・韓国・ソ連の気候図より,最大積雪深,積雪期間の分布図を作成した。積雪時間は緯度と高度に支配されているが,最大積雪深は収束線の位置も関係するために、必ずしも緯度的な分布になるわけではない。隆雪域は「ひまわり」の赤外・可視画像の分析により推定し,上記の編集図の裏付けを行なった。河川の結氷は水面の熱収支より推定したほか,日平均最低最気温と実際の結氷分布とを対応させ、ともによい結果を得た。第二に水文気候の重要課題である融雪出水について,雪と河川水の水質分析により特性を把握した。融雪出水には直接融雪水が流出するのではなく,地中あるいは雪層中の古い水を押し出す,いわゆる押し出し型であることが分った。しかし,雪の化学成分から大陸諸国の工業活動などを推定する迄には至らなかった。水文気候の比較で特に注目されるのは、過去の記録である。日本,中国ともに古い記録があり,気候の復元が試みられている。本研究では19世紀を中心として気候の復元を行なった。その結果,小氷期においても温暖な期間を狭んでいたことが分った。しかし,中国との対応はまだ完全ではない。
出版者
日経BP社
雑誌
日経レストラン (ISSN:09147845)
巻号頁・発行日
no.275, pp.40-47, 1999-08

店の中,至る所に,お客の不快の源がある。中でも,接客に関する部分の不快感は,店全体のイメージダウンに直結する。全スタッフが「自分がお客だったら」を考えられるようにすることが必要だ。 お客は,実に細かいところまで見ているもの。「皿が欠けていた」「いすが汚れていた」「クーラーの風が当たって寒かった」「従業員がつっけんどんだった」……。
著者
豊田 充崇 中川 一史 中橋 雄 佐和 伸明 山本 朋弘 菊池 寛 加藤 悦雄 山口 修一 海道 朋美 遠藤 麻由美 有田 浩子 増井 泰弘 山中 昭岳 本岡 朋 寺田 好 望月 純子 中原 亜由美 高橋 美咲 広瀬 一弥 甲斐 崇 田中 健太郎
出版者
和歌山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

通常の教科(国語や社会科、生活科等)の単元に情報モラル育成の要素を含ませた学習場面を設計し、モバイル端末を活用したり、学校間交流等で積極的に情報発信・表現する授業を実践した。加えて、学校教育利用向けSNS(Social Networking Service)を設計・開発し、その実践的評価をおこなった。当システムは教育利用を前提に機能の絞込みやユーザーインターフェイスのデザインをおこない、全校種で活用可能な「スクールコミュネット」として公開中である。※当研究関連資料:http://www.wakayama-u.ac.jp/~toyoda/
著者
森 修一
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

ヒストンメチル化酵素(HMT)は各種生命現象に関わっており、その阻害剤は薬剤候補分子として期待されている。当研究ではHMT阻害剤開発に有用な、安価で簡便なHMT活性の評価手法を開発した。HMTはヒストン蛋白質のリジン残基をメチル化するが、我々はリジンとメチル化リジンの化学的性質の違いを識別することで、メチル化リジンの量を測定することに成功した。さらに、より感度の高いメチル化リジン定量法の開発を目指し、この化学的性質の違いを蛍光応答によって検出することを試みた。
著者
野地 秩嘉
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネスassocie (ISSN:13472844)
巻号頁・発行日
vol.11, no.7, pp.92-95, 2012-08

デパ地下の総菜売り場では、売り上げで常に上位にいるテナントがある。サラダのRF1、総菜のまつおか、そして、とんかつのまい泉がそれだ。 まい泉が上位にいる理由は2つ考えられる。1つはブランド力。「箸で切れるやわらかなとんかつ」というフレーズは知られているし、同社のマークに見覚えのある人も少なくないだろう。

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著者
川端満三 著
出版者
丸善
巻号頁・発行日
1923
著者
高科 豊 丸山 久一 Jacobsen Stefan
出版者
神戸市立工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

凍害深さ評価の開発として、コンクリ-ト表層部の剥離量や目視評価を改め、劣化部位の非接触デジタル写真による凹凸形状把握、赤外線法(サ-モグラフィ-)、超音波法の結果統合による凍害深さの3次元把握技術を検討した。階層型ニューラルネットワークを利用することから、複合劣化の自然環境下の凍害局所部位を対象とするコンクリ-ト3次元の劣化予測の推論モデル開発の基礎的な素材の各検討が行なわれた。

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著者
伊藤圭介 編
出版者
巻号頁・発行日
vol.[13],
著者
竹内 重雄
出版者
東京都立成瀬高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

7月21日実施「6月ウマチー」を調査、記録(ビデオ撮影)した。また、平成27年2月26日から3月2日に沖縄、久米島を訪れて関係者から君南風あむしられに関わる行事、組織、現状について取材した。1 「6月ウマチー」当日の行事内容 : 9時、君南風殿内に全員集合、君南風は黄色が基調の紅型神衣装、勾玉、ミチャブイ着用。神棚に祈願→玉那覇蔵下のローカーヤ(6月ウマチー用に設置された拝所)→仲地蔵下のローカーヤで儀礼実施。午後、宇江城城跡に車で移動。城跡に設置したローカーヤで儀礼実施。男神の担当者が行事進行を主導した。オモロは歌われずウムイ等がカセットテープで流された。2 君南風6月ウマチー行事の特長(君南風あむしられ、男神担当者に直接取材をして判ったこと)① 衣装が紅型であり、勾玉着用。通常の祭祀ではノロは白の神衣装を着用。特異であり華やかである。② 3カ所のローカーヤでは、君南風は神拝みはせず、下級の神女が行っていた。君南風はローカーヤの奥に民衆の側に向かって着席したまま。君南風は神で、拝まれる対象のため一切行為は行わなかった。③ 付近には村落の拝所(神あしゃげ)があったが、そこは使わずローカーヤを設置し、拝所とした。④ かつての君南風は10名のノロを従え、君南風殿内の管理から行事一切を下級神女に行わせていたというが、現在はその作業は君南風あむしられとそのご主人が行っているということで、隔世の感がある。3 まとめ : 沖縄の他の祭祀とは、明らかに異なる特長がある。その本質は、琉球王朝時代、聞得大君が現人神として祭場に登場し、オモロに歌われたということを物語る。これまで聞得大君は、オモロを歌う主体と考えられていたが、訂正が必要になった。『おもろさうし』解明の一助となると判断される。
著者
中川 さやか
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2011

生物の多様性をもたらす進化プロセスを総合的に理解するためには、研究に適した対象生物と進化現象を選択して研究を行う必要がある。ツツザキヤマジノギク(以後ツツザキ)は、花形態が近縁種と大きく異なる上に、集団内で著しい変異がある。この変異にCYC相同遺伝子(以後C}℃)の関与が予測され、また、予備的な調査により、花形態の違いによって送粉者誘引効率効率が異なることによる自然選択が生じる可能性が考えられた。本研究ではまず、ツツザキにおいて、候補遺伝子を用いた形態変異の遺伝的基盤を明らかにし、形態間に適応度の差があるかどうかを確認することで、集団内変異が適応進化の文脈で理解できるかどうかを検討する。さらに、花形態変異がどのようなプロセスで生じているのかを理解するために、集団の歴史的背景の解明を行う。これらの研究からツツザキ集団の花形態進化プロセスを包括的に理解することを目的とする。具体的には以下の3つの問題設定に沿い研究を行う。:【1】花形態の変異に遺伝的基盤はあるか/【2】花形態の違いが適応度の差をもたらすか/【3】集団内の花形態のばらつきはどのように生じたのか【1】に対する成果ツツザキの筒状花個体と舌状花個体より、CYCの単離を行い、配列にアミノ酸変異があることが明らかになった。【2】に対する成果野外において、筒状花個体と舌状花個体の訪花昆虫の訪花頻度と結実率の調査を行った。解析の結果、筒状花個体よりも舌状花個体の方が訪花頻度、結実率が高いことが明らかとなった。花タイプによって適応度の違いがあることが示唆された。【3】に対する成果野外集団において、各パッチの増殖率や各花タイプの出現頻度の調査を行った。その結果、筒状花個体の頻度が減少していることが明らかとなった。パッチ間で環境が異なることや、筒状花個体の結実率が暗いパッチより明るいパッチで高くなることなどが、集団内変異の存在を可能にしていると考えられた。起源については、今後さらなる解析が必要である。
著者
田村 紘基
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

ダイオキシン,ハロメタン,その他環境ホルモンなどの有機物質による環境水の汚染が大きな問題になっている.これらの有機汚染物質は一般に水への溶解度が小さく濃度は低いが,その毒性は大きい.したがって,希薄溶液についてそれらを検出定量し,除去処理を実施するために高効率の濃縮,捕集が必要になる.近年,細孔材料のナノ空間が活性の大きい特異な反応場であることが明らかにされ,表面ポテンシャルの重畳場であることによるものとされている.本研究では,細孔材料の反応活性なナノ空間に有機分子を取り込み,電荷を持たない有機分子鎖間に働く水素結合やvan der Waals力などの引力相互作用を利用して吸着を促進,増幅することを着想した.ナノ細孔材料としては層状金属酸化物に着目した.この物質の酸化物相は,金属イオンによる正電荷と酸化物イオンによる負電荷が均衡しないため電荷を持ち,層として二次元的に発達する.層間には反対符号のイオンが位置して層電荷を中和し三次元結晶を形成する.層間イオンはイオン交換可能で,固体バルク成分として多量に存在するため交換容量がきわめて大きい.陽イオンを層間イオンとする層状酸化物として四チタン酸塩,バーネサイト,亜鉄酸塩,陰イオンを層間イオンとする層状酸化物としてハイドロタルサイトを選び,その合成条件を確立した.汚染有機物分子のモデルとしては,陽イオン性官能基を持つアルキルアミンと陰イオン性官能基を持つアデノシン三リン酸(ATP)を選び,イオン交換によるこれらの取り込み反応と反応生成物の性状について調べた.サイズの大きな有機分子が飽和容量まで取り込まれたことから,ナノ空間の活性の高いこと,ならびに取り込まれた有機分子間の引力相互作用により取り込み反応の増幅が起こることが確かめられた.また,層間距離が分子鎖長に相当する増加を示したことから,有機分子は吸着層面に対し直立していることが示唆された.荷電基は両層には接触しないので,層間に整列する分子鎖間の引力相互作用によって層構造が維持されるものと考えられた.
著者
平井 美佳
出版者
横浜市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究は,中国,韓国,台湾,アメリカ,日本の大学生を対象として,自己と他者の要求が葛藤するジレンマ場面における両者の調整について,文化の共通性と差異を明らかにすることを目的とした。調査の結果,場面の深刻度が高いほど自己優先的な程度が増すことがすべての国の大学生で共通して認められた。一方で,文化差については,より深刻度が高い場面では日本と韓国において,あまり深刻ではない場面ではアメリカと台湾においてより自己優先的な傾向が高かった。また,家族に対してはアメリカ・日本・台湾において,友人に対しては韓国・台湾・アメリカにおいて,より自己優先的であることが示された。