著者
斎藤 靖二 平田 大二 笠間 友博 新井田 秀一 山下 浩之 石浜 佐栄子
出版者
神奈川県立生命の星・地球博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

箱根火山の構成岩石を築城に使った例をもとに、地域の自然史資源が歴史に深く関わっていることを、総合的に学べる融合プログラムを開発し、博物館における生涯学習への有効活用が検討された。学校教育では理科と社会に区別される異なる分野を互いに関連させ、子どもたちにとって機会が減っている野外観察を体験させながら、自然現象と歴史的事件を同時に学ぶ新しい博物館活動が示された。
著者
西村 佳子 村上 恵子
出版者
京都産業大学
雑誌
京都産業大学教職研究紀要 (ISSN:18839509)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.49-74, 2008-03

本稿の目的は、わが国の中学校・高等学校で行われている金融教育の現状と課題を明らかにした上で、大学生361名を対象として実施した記述式アンケート調査をもとに、学校における金融教育の進むべき方向について考察することである。アンケート調査では、ほとんどの学生が、高等学校卒業期までの金融知識の水準のままで社会に出ることに不安を感じていることが示される。特に、年金保険制度や健康保険制度の詳細な知識、多重債務をかかえないための知識、金融商品の特性やリスクとリターンの関係についての知識が不足しており、ローンや預貯金金利の単利や複利の計算についても理解する必要があると考えていることが明らかになる。リスクと冷静に向き合う道具として、金融に関する基礎知識を効率的に習得できる時期は、ほとんどの国民が就学している高等学校までの時期である。現段階では共通の到達目標を持っているとは言い難い学校関係者と金融業界が協力し、学校教育にふさわしい教育内容についての議論を深め、さらには優れた教材の開発を行うことができれば、時代の要請に応じた国民の金融知識の向上や意志決定能力の向上が期待できる。
著者
堀七蔵 編
出版者
堀七蔵
巻号頁・発行日
1967
著者
宮本 陽子
出版者
広島女学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

リベルタン小説において可能な2通りの身体の在り方である。まず、ひとつはリベルタン小説以外においても見られるような、内面を非言語的に表現する身体である。これは、人間には語るべき内面というものがあり、それは身体を通じて非言語的に発信されるという前提のもとに成立する。また、これを受信するのは他者の内面である。ラクロ『危険な関係』のリベルタンは極悪非道の人非人であるが、しかし、こうしたコミュニケーションの上に成り立つ人間関係のなかで活動する。これは彼らの活動揚所が社交界という、きわめて社会的、文化的な場所であることと連動している。ラクロのリベルタンは言語的、非言語的コミュニケーション双方に精通しており、感受性、慈善、涙等、当時評価を得ていたものの意味を堕落させる。ディドロの『修道女』もこうした前提で描かれている小説である。また、サドにおいても人物たちが社会的領域のなかで活動する署名入り発表作品群においては、善人も悪人も人間の内面に基づく非言語的コミュニケーションを行なうが、こうした作品群におけるサドのリベルタンたちはむしろ、当時の価値体系に掠め取られており、ラクロのリベルタンのような言語的曲芸までは見せない。一方、サドの匿名作品群においては、人間に内面というものをいっさい認めない世界が出現する。人物たちは法や道徳はおろか、社会的文化的な環境から切り離された場所で活動し、彼らが見せる反応はすべて生物的反応に還元される。身体はそれまでの文学、芸術、文化において先験的に与えられてきた特権をすべて剥奪され、筋肉、神経、生物分子、あるいは、鉛、硫黄等と等価になるが、そうした世界においては人間を記述すること、延いては小説を展開することが不可能になり、人間は文字通り数字に換算され、小説の記述は『ソドムの120日』の最後に付されているような計算表に変わる。
著者
平井 友行
出版者
千葉商科大学
雑誌
千葉商大論叢 (ISSN:03854558)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.23-30, 2007-12

本稿では,最近期,個人の資産運用においても,少しずつ取り上げられるようになったオルタナティブ投資について論じてみたい。「絶対リターンを追及する」等々オルタナティ投資ついては様々なフレーズで表現される。こういった環境の中,オルタナティブ投資を我が国において先行的に開始した確定給付型企業年金運用の運用手法の在り方を参考にしつつ,今後,個人がオルタナティブ投資に取り組むにあたって冷静に留意すべき点を抽出しようとした。オルタナティブ投資において,最近期,我が国で喧伝されているフレーズにはその資産特性を十分に検討すること無く,過去のヒストリカルトラックレコードなどをベースに投資が行われることが多い。確定給付型企業年金のような機関投資家ですら,例えば,ヘッジファンドの特つリターン・リスク特性については,非常に詳細な検討を施し,投資を実施しようとしている。個人投資家にとっては,ヘッジファンドにおいてもファンドオブファンズの投資が限界だとした場合,個別のシングルファンドの運用機関選択は専門的なゲートキーパーに依存せざるをえない。ただ,しかし,自身のポートフォリオを構成する場合には,現資産であるシングルファンドが総体としてどのような特性を有する投資対象群であるかを十分に検討する必要がある。最近期,生じているサブプライム問題も,証券化という手法を通じて,原資産の特性を変化させた,恰も,原資産の特性を離れた,リスク・リターン商品が出来上がるような誤解の中で問題が深くなりはじめている。更に,過剰流動性を背景にレバレッジを生じることで,表面上のリスク・リターンは大きく生じているように見えるというものである。伝統的資産の分散投資においても,最適化計算によって「魔法の」資産配分が導かれるわけではないこと,やはり,内外株式,内外債券といった伝統的資産の特つリターン・リスク特性を十分に把握するといった投資対象の検討が重要である。オルタナティブ投資といっても,何か特別な資産がある日突然生じたわけではないこと,何といっても,資産の特つ特性についてじっくりとした検討を経て初めて投資対象となることを我々は肝に銘じて置くべきである。
著者
藤澤 和子
出版者
三重県亀山市立亀山西小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

1.研究目的知的障害のある人たちが、遠隔コミュニケーションを拡げるために携帯電話などの携帯端末で利用できるシンボルを使ったWeb版のメールシステムを開発し、特別支援学校での事例実践によりシステムの教育的な有用性と実用性を検証する。2.研究方法携帯端末に対応できるインターフェースの開発を行い、Ipad、Iphone、パソコンを使って、メールの送受信を行った。A養護学校の知的障害児童5名を対象に、クラス担任3名と、A養護学校で児童がよく知っている教師や保護者、他の養護学校教師7名が参加して、メール交換を行った。顔のイラストで送受信者を選択できるようにしたので、参加者は、事前に登録する手続きを取った。3.研究成果携帯端末用のインターフェースは、表示されるシンボルのサイズが小さくなり、一画面にたくさん並べることは難しくなるため、選択したシンボルの大きさを画面にタッチすることで自由に拡大縮小できる機能を付け、シンボルのカテゴリーに階層性を持たせることで、できるだけ多くのシンボルから選んでメールを作成できるようにした。23年1月~3月にメール使用を実施した。対象児童は、Ipadを使い、遊び時間などに自発的に、保護者や別クラスや他の学校の教師といった目の前にいない人に向けてもメールを送り、返信メールの受信を楽しみにした。児童以外の参加者も、家や学校などからIphoneやパソコンを使って、児童へのメールの返信や自発的な送信を行った。児童からのメッセージは、学校でがんばっていることや遊んでいることの報告や、遊ぼうという呼びかけ、何を勉強しているのかという問いかけなど、伝達意図は明確だった。参加者全員の総メール回数は199回に達し、本システムが時間と場所を選ばず、パソコン環境の有無などの影響を受けずにメール交換ができた利便性と遠隔コミュニケーションツールとして活用できる有効性を明らかにしたと考える。
著者
高井 秀明
出版者
日本バイオフィードバック学会
雑誌
バイオフィードバック研究 (ISSN:03861856)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.157-165, 2009-10-25

本研究では,安静時における心拍音の傾聴が心理・生理的変化に及ぼす影響について検討した.本研究は2つの実験から構成され,実験1では心拍音傾聴条件(閉眼状態で心拍音を傾聴する状態)の影響を,実験2ではメトロノーム音傾聴条件(閉眼状態でメトロノーム音を傾聴する状態)の影響を統制条件(閉眼状態で心拍音とメトロノーム音を傾聴しない状態)と比較して検討した.心理指標にはPOMS(Profile of Mood States)短縮版と内省報告を用い,生理指標には心電図R-R間隔,皮膚電位水準を採用した.さらに心電図R-R間隔からは,Lorenz plotを算出した.その結果,心拍音傾聴条件の特徴がみられたのは,実験1の生理指標であるLorenz plotのCSI値と皮膚電位水準においてである.Lorenz plotのCSI値より,心拍音傾聴条件は実験後安静において心臓交感神経活動を抑制した.また,実験中の心拍音傾聴条件の皮膚電位水準は,統制条件よりも陽性値を示した.以上のことから,安静時に心拍音を傾聴することは,閉眼安静状態よりも交感神経活動を抑制させることが明らかになった.
著者
Genki Terashi Yuuki Nakamura Hiromitsu Shimoyama Mayuko Takeda-Shitaka
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.744-753, 2014-08-01 (Released:2014-08-01)
参考文献数
23
被引用文献数
6

In the absence of experimentally determined three dimensional (3D) structures of proteins, the prediction of protein structures using computational methods is a standard alternative approach in bioinformatics. When using the predicted protein models to compute the native structure of an unknown target protein, estimating the actual quality of the protein models is important for selecting the best or near-best model. Moreover, estimates of the differences between the protein models and the native protein structure are obviously useful to end users who can then decide on the utility of the models for their specific problems. This article describes two new single-model quality assessment (QA) programs, pure single-model QA method (psQA) and a template based QA method (tbQA), that we developed. psQA is a pure single-model QA program that uses a neural network method to predict residue–residue distance matrices of the native protein structures. tbQA is a quasi-single-model QA program that mainly uses target-template sequence alignments and template structures. The performance of these two model QA programs was analyzed in a data set of 24022 models for 94 targets from the 10th critical assessment of protein structure prediction (CASP10) experiment.
著者
清水 以知子
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.559-586, 1992-09-20

熱力学第2法則の開放系への拡張としての熱力学的ポテンシャル(自由エネルギー)最小原理と、質量・運動量・エネルギー保存則から、非平衡・非静水圧下の熱力学的"力"と"流れ"を定式化する。「局所平衡の仮定」は、第2法則と保存則に基づく熱力学の体系とは相容れないことを示す。熱力学的ポテンシャルの勾配によって"力"を定義したとき、現象論的関係式における相反関係がみたされる。

1 0 0 0 OA 政治学ノート

著者
菊地 久
出版者
北海道大学法学部
雑誌
北大法学論集 (ISSN:03855953)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5-6, pp.1223-1245, 1990-09-17
著者
林 智子
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究の目的は,患者心理の理解における看護師の患者心理推測方法の特徴と看護援助との関連を検討し、プログラムを開発することであった.総合病院に勤務する看護師を研究参加者とし,患者と看護師が登場する場面を刺激とした半構造化面接法によりデータを収集した.その結果,看護師は患者の行動を心理推測の根拠とするが,一つの目立つ患者の行動だけにとらわれてしまうと,妥当でない心理を推測する可能性が示された.さらに,患者心理と看護援助の関連では,楽観的心理の推測は妥当でない看護援助を導く危険性を示唆していた.
著者
広瀬 雄二 大駒 誠一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告インターネットと運用技術(IOT) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.96, pp.25-30, 2004-09-24
被引用文献数
1

この数年でUBE(Unsolicited Bulk Email)いわゆるspamは脅威的な増加の一途をたどり,それに対処するための計算機資源,ネットワーク資源の多くが浪費されている.それらに対抗する目的で電子メイル本文を走査し,統計的手法に基づいて不要と予想されるものをふるい落とす「spamフィルタ」が数多く研究・開発され,既に欠かせないもとのしての認識も高まっている.そのいっぽうで,要らないメイルに対してspamフィルタをかける計算機負荷や,一度本文を受け取ってしまうと送信者から見たら送信成功と思われてしまう問題が存在する.本稿ではメイルの送信者のSMTPセッション時の情報だけを元に,メイル本文を見ることなく即座に受信拒否を行なう手法を提案する.さらに,MTAの種類に依らずその手法を実現する SMTP wrapperを実装して実際に運用した結果を示す.We receive excessively high amount of UBE(Unsolicited Bulk Email), so called spam, in these years. Many researchers have contrived 'spam filter' which scans the body of email and decides whether it is spam or not by statistical analysis. However, it becomes problem that those unnecessary computing load is raising and that receiving message body for analyzing let spammers assume they succeeded in sending spam. In this paper, we propose an SMTP wrapper which rejects unsolicited emails by SMTP session parameters without seeing message body, and also report the practical performance of its implementation, 'antibadmail', which is generic MTA wrapper specialized in bad mail rejection.
著者
小和田 哲男
出版者
日経BP社
雑誌
日経ベンチャ- (ISSN:02896516)
巻号頁・発行日
no.177, pp.74-77, 1999-06

戦国時代は、いつ敵に攻められるかわからないということもあって、軍勢がたやすく通れないように、道は狭く、しかも曲がりくねったままで、川には橋を架けないのがあたりまえだった。川は、領内および城を守るための天然の堀と認識されていたからである。 中には、城下町の入口付近にわざと屈曲を設けて、容易に城に近づけないような工夫をしている武将もいた。
著者
後野 昭次
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

〇研究目的:豊田高専・機械工学科の学生に対しては、様々な場面で、設計・製図・工作を行う機会がある。しかし、設計初心者である学生が設計・製図を行なう場合、寸法の記入方法に間違いが多い。なぜなら、設計初心者の学生にとって、工作・組立・測定経験が少ないため、どのような寸法記入を行えば、工作者・組立者・測定者にとって適切な寸法記入になるか実感が持てないからである。そこで、あえて間違った寸法記入の図面により製作した部品の組立・測定がスムーズにいかないことを体験させると同時に、正しい寸法記入の図面により製作した部品の組立・測定がスムーズに行えることを体験させることで、正しい寸法記入方法を理解させるための教材開発を行った。〇研究方法:主にこの教材は、機能上必要な寸法の記入方法がわかる教材を製作した。教材は、平行ピン2本と平行ピンがはまるアルミ製の部品2~3個で構成されて、寸法を記入した場所によって、組立ができたり、組立ができないものである。それは、平行ピン間に寸法が入っているものであったり、端面から平行ピンまでに寸法が入っているものなどで、計3種類製作した。〇研究成果:この教材を学生に試してもらったところ、正しい寸法記入が理解できたと答えた学生が多く、この教材の有効性が確かめられた。この教材により、机上の設計製図の学習だけでなく、実物で実感できるようにすることにより、学年が進んで、卒業研究のための部品製作のための設計製図において、適当に寸法を記入するのではなく、考えられた図面が描かれることが期待できる。
著者
土居 正人 三宅 俊治 園田 順一
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.1112-1119, 2013-12-01

本研究の目的は,自傷行為が行われる傾向を測定する尺度を作成し,今後の疫学的研究に資することである.これまでの自傷行為尺度は,行動的要因の項目のみで構成されており,自傷行為者特有の心理社会的要因についての質問は含まれていなかった.さらにその項目は,自傷行為に関して直接的に表現されており,尺度の精度や倫理的側面に疑問が残る.そこで本研究では,行動的要因における損傷度の高い自傷行為の表現を避け,間接的な表現にし,さらに心理社会的要因からの項目を含めることで,自傷行為者の特性を全体的にとらえ,精度の高い尺度を作成した.大学生209人を対象に質問紙調査を試行した.探索的因子分析,および確認的因子分析の結果,「抑圧状態」「自責思考」「承認欲求」「親子葛藤」の4因子20項目が最も適合した.次に構成概念的妥当性を確認するために54人の学生を対象に調査を実施し,また,基準関連妥当性を確認するために13人の自傷行為者を対象に調査を実施した結果,いずれも妥当性があると認められた.この尺度の使用によって,被験者が回答する際の心理的な負担を軽減することができ,項目からの,バイアスを回避し,精度の高い調査を行うことが可能である.
著者
井上 克也 秋光 純 菊地 耕一 美藤 正樹 岸根 順一郎 戸川 欣彦
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究計画の目的である分子性・無機 Chiral 磁性体の物質設計・制御戦略を確立した。目的以外についても以下の項目が本研究により達成された。キラル無機磁性体 CrNb3S62 の単結晶におけるキラルらせん磁気秩序およびキラルスピンソリトン格子の実空間および逆空間観測に成功した。キラル源を含まないキラル分子磁性体の合成についても新しく発見した。
著者
柴田 克成
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

膨大な時空間情報の中での効率的な学習は,実世界での高次機能創発の鍵を握る。本研究では,特に時間軸の扱いに注目した。事象の重要度を「主観的」に判断し,過去の事象に対する学習に利用する「因果トレース」の考え方を提唱し,状態価値の学習で飛躍的に学習性能が向上した。また,「概念」は行うべき行動の差に基づいて形成されるとの考えの下,強化学習によってリカレントネット内で離散的・抽象的な状態表現が形成された。さらに,自律的なコミュニケーション学習によって物体の動きの情報を伝達できることを示した。時間軸の処理に対して新たな展望をもたらしたが,シンボル処理創発にはダイナミクスの学習能力の更なる向上が必要である。