著者
中川 敦
出版者
島根県立大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2011

これまで遠距離介護に関する社会学的研究の多くは、その当事者に調査の対象を限定した研究が中心であった。本研究は当事者に対する調査分析を深めつつ、その対象を遠距離介護の宛先である高齢者本人および彼ら彼女らを支える支援者にその対象を広げ、調査分析を行った。その結果、遠距離介護者はそばにいられないやましさを抱えていること、高齢者は死をも見据えた形で現状を受け入れていること、支援者は居住形態よりも関わりの内実から遠距離介護者を評価していることなどが明らかになった。
著者
橋詰 直道
出版者
駒澤大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究は,千葉県の外房地域の臨海型リゾート地及び栃木県の温泉付別荘型住宅地の合計4か所を事例に,定住化と高齢化の実態及びシニアタウン化が抱える諸問題について明らかにしたものである。これらの別荘型住宅地は,定年を機に豊かな自然の中で快適な第二の人生を送るために首都圏からアメニティ移動してきた高齢者が多く,彼らの定住化により超高齢化が進行している。また,公共交通手段が脆弱な超郊外住宅地では,住民の加齢に伴い,買い物や通院が不便になるなどの諸問題が顕在化している。
著者
西本 一雄
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.41-48, 1997-06-25

筆者の課題は,体育のなかに勝利主義の強い競争観が持ち込まれ,勝った・負けた,うまい・へたの結果主義,技能主義から派生する疎外状況を克服する学習指導を究明することにある。今回は大学の卓球の授業を対象にしてその学習指導を考える。授業の枠組みは競争の形を変え,そのなかで技術学習や仲間づくり学習を積極的に進めていくことで構造化した。競争の形は,個人の競い合いから班の競い合いという形につくり変え,それを得失点で班の順位を出す方法で具体化した。技術・仲間づくり学習は,4つの技術をみんなで科学し,うまくなるポイントを明らかにした。そして,「教え合い学習」を活発化していくことで,みんなの技能習熟を図った。それに伴い交流が深まり,うまい・へたを意識しない仲間関係を形成した。この枠組みで授業を進めていくことで勝利主義が出現しないで,だれもが積極的に取り組めることができ,まただれもが技能習熟を図り,質の高い試合展開が可能となった。そのことで,勝利主義的競争観の変革に迫る授業が実現できることが確認できた。
著者
中村 健二 木村 幸四郎 一ノ倉 理
出版者
公益社団法人日本磁気学会
雑誌
日本応用磁気学会誌 (ISSN:18804004)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.602-606, 2004-04-01
被引用文献数
6

A switched reluctance motor (SRM) has such desirable features as simple construction, high reliability, and low cost. The SRM has not, however, been put into wide application because of large torque ripple and acoustic noise. In addition, quantitative analysis and optimum design of the SRM have not been fully clarified. In a previous paper, we proposed a simple magnetic circuit model of an SRM based on its configuration. We calculated such dynamic characteristics of the SRM as excitation voltage, winding current, and flux in each part of the motor. In this model, however, reluctances of the stator and rotor cores are approximnated by a linear function. In order to improve the calculation accuracy, we have to consider nonlinear characteristics of the core material. Furthermore, local saturation occurring at stator and rotor pole-tips and leakage fluxes from the stator pole must be considered. In this paper, we examine a nonlinear magnetic circuit model of the SRM considering the local saturation at the pole-tips and the leakage fluxes.
著者
川手 圭一
出版者
東京学芸大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

本研究は、ドイツ第二帝政期からヴァイマル期にかけての青少年福祉政策が、下層青少年の生活世界に及ぼした影響を考察したものである.世紀転換期以来、ドイツでは、急速な工業化とこれに伴う都市化のもとで、「危険に晒された青少年」の存在が、社会的な問題になっていた.とりわけ危険視されたのは、14歳で初等教育を終えて不熟練労働に従事する青少年たちであり、彼らに対して教育者、社会改良家、行政当局が青少年福祉政策(青少年育成、青少年保護)を実施していくこととなる.そのさい注目すべきは、もっぱら自治体によって運営される補習学校であった.ここでは、単に専門的な技術教育ばかりでなく、「よき国家公民」をつくるための一般教育が行われ、これらを通じて青少年に対する規律化が進められたのである.この補習学校は、手工業の徒弟制度の伝統をある意味では受け継いでいたが、しかしドイツの工業化の中にあって、明らかに近代的な特徴をもつものであった.本研究では、まず第一にこの補習学校設立の理念、またその教育内容の実態が明らかにされた.他方、本報告では、上記の補習学校による青少年の規律化が、下層青少年の生活世界からみたとき、どのようなものであったのかが考察された.近年、社会史・日常史の研究成果は目覚しいものがあるが、ここでもハンブルク、ベルリンなどでの労働者の生活世界、下層青少年のサブカルチュアが、検討の対象となった.そのさいには、世紀転換期の「ハルプシュタルケ」、ヴァイマル期の「ヴィルデ・クリケン」、さらに第三帝国期の「エ-デルヴァイスピラ-テン」の比較検討が問題となる.
著者
長谷川 博
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

時系列データ解析を基礎とした非平衡熱・統計力学の帰納的構築に関する研究を行った。化学振動反応時系列データおよび企業の売上・利益時系列データの解析を行い有意義な結果を得た。また非平衡熱・統計力学についても理論的研究を進めた。(1)熱力学における仕事についての揺動散逸定理を示した。すなわち仕事はエントロピー関数の時間偏微分の自己相関関数として厳密に表される。系が長時間相関を持つ場合、ヒステリス・ループの面積(仕事)に操作周期についてフラクタル・スケーリングが現れることを示した。長時間相関を持つハミルトニアン・カオス力学系による数値シミュレーションで検証した[論文1]。(2)Bromate-Sulfite-Ferrocyanide(BSF)反応振動時系列データをParticle Filterを用いて解析することで、Rabai-Kaminaga-Hanazakiによる反応モデルを改良し、定常・振動の相図を定量的に検証することに成功した[発表1]。(3)東証上場企業の売上・利益時系列データを解析し、自己組織化臨界現象としてのPareto分布を流入のあるときの安定固有超関数として解釈することで、経済系と物理系を共通の視点で捉えることができるようにした[発表2]。(4)仕事についての不等式すなわち熱力学第2法則を、一般の非平衡初期状態についても、成立するように拡張することに成功した。同時に可逆な力学と不可逆な熱力学との関係について、ハミルトニアン・カオス力学系を基礎に解明した[発表3,4]。
著者
日本少年国防協会 編
出版者
新日本書房
巻号頁・発行日
vol.第1篇 (少年航空兵), 1932

1 0 0 0 OA 角觝秘事解

著者
松木平吉 編
出版者
松寿堂
巻号頁・発行日
1884
著者
大橋 雅津代 佐藤 靖 岩田 博司 河合 光久 榑林 陽一
出版者
Japanese Society of Veterinary Science
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.1223-1228, 2007-12-25
被引用文献数
4 23

2、4、6-trinitrobenzene sulfonic acid(TNBS)をラットの近位大腸内に投与すると、遠位大腸の伸展刺激に対する痛み感受性の有意な増大が認められた。TNBSに直接暴露された近位大腸には粘膜壊死と炎症性細胞浸潤が認められ、組織中ミエロパーオキシダーゼの有意な増加が認められた。一方、遠位大腸には粘膜壊死は発生せず、ミエロパーオキシダーゼ含量の増加も認められなかったが、トルイジンブルー陽性粘膜型肥満細胞が有意に増加していた。さらに遠位大腸組織を器官培養し、粘膜型肥満細胞脱顆粒の特異的なマーカーであるrat mast cell protease-2(RMCP-2)の遊離量を測定したところ、TNBS処置ラットでは正常対象値と比較して有意なRMCP-2遊離量の増加が認められた。また、肥満細胞安定化作用を持つデドキサントラゾールの皮下投与によりTNBS誘発大腸過敏は有意かつ用量依存的に抑制された。以上の成績から、脱顆粒亢進を伴った大腸粘膜肥満細胞浸潤によるメディエーター遊離亢進がTNBSによる大腸過敏症の発現に関与していることが示唆された。
著者
永井 實 天久 和正 儀間 悟 長田 孝志
出版者
琉球大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1997

本研究は小型火力発電システムに,海水淡水化装置及び製塩プラントを組み合わせた「一石三鳥」システムの考案に基づき,そのフィージビリティースタディを行おうとするものである.従来は互いに独立であった発電,海水淡水化及び製塩システムを一体化することにより,トータルの熱効率が飛躍的に改善され,ほぼゼロエミッションを達成することは自明のように思われるが,ボイラタービンの材料選択など技術的に克服すべき課題が山積している.本年度は海水用蒸発ボイラの設計仕様の完成と製作に取り組んだ.そのためにまずボイラに見たてた容量3リットルの広口瓶と500W電熱ヒ-タを用いた海水蒸発予備実験を行った.その結果蒸留効率90%で塩濃度1ppm以下の蒸留水を得ることができ,広口瓶下部では飽和塩水(28.2%)から連続的に塩が析出、堆積することを確認できた.予備実験の結果と熱収支計算に基づき,研究室レベルで実験可能な小規模の海水濃縮用ボイラを設計・製作した.蒸気条件は10bar,240℃,流量21.7kg/hであり約1.5kWの蒸気タービンを駆動することができる.ボイラ形式は炉筒煙管型で,生成飽和蒸気を後部煙室で過熱する過熱器一体型である.同ボイラの特徴は,ボイラ胴の下部に塩を析出促進させる温度成層二重管を備えている事である.外観状部に新鮮海水をいったん貯溜し,内部管の濃縮海水を冷却する.使用燃料は灯油で,過熱器をふくめた設計ボイラ効率は80%とした.ボイラは外注により年度内に完成させ,実験室への搬入,設置を行った.なお上記海水濃縮用温度成層ボイラは新型ボイラとして大学へ発明届けと任意譲渡の申し出を行い,現在手続き中である.
著者
藤倉 克則 小島 茂明 藤原 義弘 橋本 惇 奥谷 喬司
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌Venus : the Japanese journal of malacology (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.103-121, 2000-06-30
被引用文献数
11

海洋科学技術センター(JAMSTEC)が運用する深海調査システム(有人潜水調査船, 無人探査機, 深海曳航式カメラ)を用いて, 日本周辺の深海化学合成生物群集におけるオトヒメハマグリ科二枚貝の採集及び生息環境の観察を行い, 6種について新たな分布域を発見した。シマイシロウリガイは, 相模湾の初島沖と沖ノ山堆の冷水湧出域と沖縄トラフ伊平屋海嶺の熱水噴出域に分布していることが知られていたが, 沖縄トラフの北部伊平屋海嶺からも新たに発見された。テンリュウシロウリガイは, これまで知られている南海トラフ天竜海底谷の冷水湧出域に加え, 南海トラフ第三天竜海底谷からも発見された。ナンカイシロウリガイは, 南海トラフ竜洋海底谷の冷水湧出域に分布していることが知られていたが, 沖縄トラフ北部伊平屋海嶺の熱水噴出域にも新たに発見された。ニヨリシロウリガイは, これまで知られている南海トラフのユキエ海嶺や東海スラストの冷水湧出域に加え, 琉球海溝(南西諸島海溝)付近の喜界島沖の冷水湧出域から死殻が採集された。エンセイシロウリガイは, これまで知られている沖縄トラフ南奄西海丘に加え, 南海トラフ第二天竜海底谷の冷水湧出域に生息し, さらに南海トラフの室戸海丘と足摺海丘, 琉球海溝付近の黒島海丘から死殻が採集された。ノチールシロウリガイは, 天竜海底谷に加え, 南海トラフの第一南室戸海丘の冷水湧出域から新たに発見された。また, これまで日本周辺の深海化学合成生物群集から出現しているオトヒメハマグリ科に属するシロウリガイ属およびオトヒメハマグリ属二枚貝の地理的分布・鉛直分布をまとめた。そして, 日本周辺ではシロウリガイ属二枚貝の分布は, 熱水噴出や冷水湧出といった化学合成生物群集のタイプの違いや地理的な距離に左右されず, 同じ水深レベルには同じ種が出現する傾向が認められた。
著者
春日井 敏之
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、学校・地域におけるピア・サポートシステムの構築に関わって、主として4つのフィールドを設定して、調査・研究を進めてきた。第一には、不登校のわが子を持っ「親の会」というセルフヘルプ・グループによる支援のあり方、第二には、学校における子どもの課題に関わる教師、スクールカウンセラーなどによる「ケース・カンファレンス(事例検討会)」を通したチーム支援のあり方、第三には、学校における子ども同士の助け合い、課題解決、対立解消のための教師による子ども支援、子ども相互の支援のあり方、第四には、地域における子ども・青年の居場所づくりに関わる青年・大学生による中高生への支援のあり方である。具体的には、(1)京都府下のU市を中心とした地域の「親の会」における相互支援のあり方、(2)京都府下のRU中学・高校、大阪府H市教育センター、滋賀県O高校をとりあげ、不登校問題に関わる小中高校の教職員などによる「チーム会議」における相互支援のあり方、(3)群馬県T市、広島県H市などの先進地域の小申学校などにおける子ども同士のピア・サポート活動を進めるための教師の役割とプログラム開発のあり方、(4)京都市T児童館、滋賀県O高校における地域の中高生のための大学生による居場所づくりのインターンシップとプログラム開発のあり方について、臨床現場を持ちながら共同研究を進めてきた。また前提として、現代の子どもたちの置かれている社会環境や発達課題をどのように捉え理解していくのかに関しても研究を進めてきた。なお、2004年度、2005年度の3月末には、アメリカ・ニューヨークとカナダ・バンクーバーにおけるピア・サポートの実践・研究の調査を目的に、日本ピア・サポート学会の現地調査団の一員として小学校、高等学校などを訪問し、現地の研究者とのワークショップにも参加し研究を進めてきた。日本とはスクールカウンセラーの制度が異なるアメリカやカナダなどの学校におけるピア・サポートのプログラムが、日本の学校現場で生かしうるのか。そのための条件などについても検討を深めてきた。2006年度は、3年間の研究期間の最後であり、詳しい内容は研究報告論集にまとめる。
著者
遠藤 智子
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

出産・育児のための採用中断を経て採用を再開し、最終年度の後期半年分のみとなる今年度は、データ公開のための準備と学会発表を中心に行った。データ公開のための準備として、まずサーバをレンタルしホームページを開設、国内外の研究者に研究状況や会話データの存在を周知できる環境を整えた。そして、既存の会話データを再度見直し、書き起こしの精緻化を進めた。関連する研究者とは既に連絡を取っているが、今後も学会等で共有可能な中国語自然会話データの存在をアピールし、当該分野の発展に寄与していく予定である。9月に行われた日本認知言語学会では、「会話の中の文法と認知 : 相互 : 行為言語学のアプローチ」と題したワークショップを企画、実行した。相互行為言語学の背景や研究手法の特徴を説明したのち、自身の研究発表ではターン中間部における"我覚得"の使用に焦点を当て、自然会話という時間的制約がある中での発話構築のための時間稼ぎと、対面会話という社会的行為においてスタンス表明が持ちうる危険の回避という観点からその機能を論じた。10月に行われた日本中国語学会では中国語の自然会話における舌打ちについて発表した。舌打ちという、一見したところ言語現象ではないような要素を文法との関連で研究するのは特に当該学会では非常に珍しいことであるが、100例以上のデータの観察に基づいた分析の妥当性を来場者とともに検証し、新たな文法研究の可能性を模索した。