著者
手嶋 無限
出版者
長崎大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

臨床では複数の点眼薬を併用する場合が多いにも関わらず、点眼薬併用時の眼組織膜への障害性に関する系統的な研究は少なく、安全性についての合理的な情報はほとんどない。そのため、臨床における市販点眼薬使用時の角膜障害性を予測・評価することに加え、点眼薬併用時の眼組織への障害性を低減できる処方・製剤設計の検討は重要である。本研究では、ヒトの涙のターンオーバーを再現した系として、電気生理学的実験法を考案し、角膜電気抵抗値を指標として、臨床での点眼薬適用時の各種成分をスクリーニングした。臨床において、緑内障は、長期の点眼治療が必要となる場合が多く、安全に使用していくことは重要となる。そこで、本研究では、抗緑内障点眼薬を用いて、原因となる物質の同定やtight junctionを中心とした作用機構を調べた。その結果、保存剤であるベンザルコニウム塩酸塩(benzalkonium chloride;BAC)濃度が角膜電気抵抗値に大きく影響し、低濃度の場合には主成分の種類にも影響されることを明らかにした。また、2種類の抗緑内障点眼薬を併用する場合、点眼順序を考慮することで、角膜障害を低減できることが示唆された。さらに、角膜保護点眼薬(精製ヒアルロン酸ナトリウム点眼液、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム点眼液)を先行して使用することで、抗緑内障点眼薬による角膜障害が改善できることが確認された。本研究は、臨床と基礎研究を結ぶリサーチであり、点眼剤を併用する場合、点眼順序や角膜保護点眼薬の併用が、有害事象低減に有用な処方・製剤設計に繋がることを示唆しており、今後より詳細な検討は必要ではあるものの、重要な知見を得ることができた。`
著者
今村 浩明 宮内 孝知 武笠 康雄
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要. 第2部 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.37-56, 1982-12-20

行為体系理論の立場から設定された4種の価値,スポーツ体系構成要因間の投入産出の相互交換,及びR.ベネディクトの文化型にみられる日本的特性を手掛りにした調査の結果,わが国競技者(陸上競技,野球,剣道)の価値意識について次の事実が明らかになった。1.全体的な傾向についてみれば,スポーツ,チーム,試合,練習に関する価値については業績価値,献身価値が多く選ばれた。これは競技スポーツの特性とよく合致している。指導者の資質,年長者-年少者の関係についてみれば,献身価値,和合価値等の個別主義的価値への志向が多くみられたが,これはベラーの指摘する日本文化の伝統的特性と対応するものである。2.世代間の差についてみれば,スポーツ,チームに関してはOB,現役とも業績価値,献身価値という成就本位の価値に志向する者が多いが,OBは現役よりも和合価値を,現役はOBよりも充足価値を選ぶ者が多い。集団を構成する人間関係についてみれば,年長者-年少者という先天的属性のみにかかわる上下関係では双方とも和合価値を志向し,指導者-競技者という機能的上下関係に関してはOBは現役よりも厳しい献身価値を,現役はOBよりも暖かい和合価値や,自由な充足価値をより多く志向する。これはOB,現役が競技者としておかれた社会的文化的背景の差,また監督経験の有無の差によるものであろう。3.種目間の差についてみれば,陸上競技は合理的な業績価値を,野球はスポーツに対しては和合価値を,チームや連帯,指導者に関しては克服価値を他種目より多く選ぶ。これは個人の記録の客観比較である陸上競技と,監督による統制の強いチーム競技である野球との間のスポーツ文化としての特質の差によるものであろう。剣道は人間関係に関する項目では和合価値を選ぷ者が他の2種目より多いが,この点に限ってみれば個別主義性質本位という日本文化の特徴の一つと対応する。しかし,これ以外の項問では,和合価値以外の諸価値へと志向が分散しており,結果として価値の4類型間のバランスが最もよくとれたものとなっている。これに関しては,伝統的価値への反作用,抽象化と昇華による価値意識の意味拡大などの解釈が可能であろうが,これは今後の課題である。4.各種目の価値意識を世代間で比較すると,陸上競技が最もOB,現役間の差が少ない。これは陸上競技それ自体の客観的,合理的性格から,競技の型や競技のおかれる状況が世代をこえて比較的安定していることによるものであろう。野球では価値意識の世代間の差は,他の2種目と比較して最も大きい。これは野球の現代社会での急速な普及と,それにともなう大衆化,世俗化によるという解釈が可能であろう。剣道にもOBと現役間に若干の差がみられ,特に目立つのはチームの目標決定について,全員の希望の最大充足のために全員で決定することを(充足価値)を現役の大多数が望ましいとしていることである。5.スポーツ体系の構成要因である練習,試合,連帯,楽しさ間の投入産出の相互交換についてみれば,全体では練習-試合間の相互交換量が多く,練習と試合への他の要件からの投入が多かった。これは競技スポーツの特性からみて当然のことであろう。世代間の比較においては,OBでは連帯と練習への投入量が現役より多く,現役では試合と楽しさへの投入量がOBより多かった。これは連帯と練習の揚でのOBの「自己統制」と,試合やインフォーマルな楽しみの場での現役の「自己解放」「自己表現」という態度の差として理解できよう。種目別にみると,陸上競技は他の2種目に比較して試合と練習,特に練習への他要件からの投入量の比率が高く,連帯の比率が低い,また野球は他種目と比較して連帯の比率が高く,楽しさの比率が小さい。これは個人の運動能力の客観比較という陸上競技と,チームスポーツである野球との特質の差をよく表わしている。剣道は他の2種目と比較して,試合の比率が小さく,楽しさの比率が大きいということ,またそのことによって,4要件間の比率のバランスが最もよいものとなっている。これは先にみた4種の価値への志向のバランスのよさと対応している。以上の作業を通してスポーツに関する価値意識の分布様態と,スポーツ体系における投入産出のパタンとの間に蓋然的な対応関係があることが明らかになった。6.競技者の価値意識にみられる日本的特性を明らかにするため,ベネディクトの日本文化の型の特性をスポーツ場面に援用し調査したところ,OBが現役よりも多くの日本的価値意識をもつことが明らかとなった。種目別では陸上競技が最も日本的な型から遠く,剣道が最も日本的な価値意識の型に近いことが明らかとなった。この分析を通して,マクロな普遍文化とその下位体系としての特殊文化,任意文化であるスポーツとの対応関係,及びスポーツの場における文化,集団,個人の意識の3者を総合的に理解するための一つの手掛りを得ることができた。
著者
中出 麻紀子 饗場 直美
出版者
東海学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

朝食欠食は栄養バランスの偏り、学業成績の低下、肥満及び生活習慣病との関連が指摘されている。大学生を含む若年成人の朝食欠食者は全年代層の中で最も多いにも関わらず、朝食欠食者低減のための具体的アプローチ法については未だ確立されていない。本研究では、朝食の重要性に関する知識普及等の従来のアプローチ法に対し、よりテーラーメイド化したアプローチ法を提唱するため、朝食欠食者の持つ「朝食摂取に対するモチベーションに着目し、各モチベーションごとの対象者の特徴を明らかにすることで、より具体的なアプローチ法の確立を目指すことを目的としている。本年度は、昨年度までに収集した2~4年生の大学生男女2816名のデータ解析を行った。朝食を週4日以上食べる人を朝食摂取者とし、朝食欠食者は以下の4群に分類した:朝食を食べる気があり自信がある、朝食を食べる気があるが自信が無い、朝食を食べる気がないが食べる自信がある、朝食を食べる気も自信も無い。朝食摂取者及び上記欠食者の5群間で生活習慣、食事および体重に関する意識、環境の項目についてχ2検定を行い、その後多項ロジスティック回帰分析(上記有意差が認められた項目を独立変数、朝食摂取者及び欠食者4群を従属変数)を行った。その結果、朝食摂取者と比較し、朝食欠食者では共通して喫煙や夜食をする人が多かった。その他、朝食を一人で食べる、健康を維持するために必要だと思う朝食回数が少ない、食事バランスに関する知識が無い、経済的に厳しい等、朝食欠食者がもつモチベーション別に、朝食摂取の妨げとなる要因が明らかとなった。解析結果については学会発表を行い、現在、学術雑誌への論文投稿に向けて、原稿を執筆中である。
著者
梅林 健太 藤井 威生 ザカン タン 小野 文枝 阪口 啓 鈴木 康夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SR, ソフトウェア無線 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.246, pp.65-72, 2009-10-15
被引用文献数
1

本稿では,プライマリシステム(無線LANシステム)と周波数共用を行うセカンダリシステム(Cognitive MIMO Mesh Network:CMN)の評価用シミュレータの紹介を行う.筆者らは,周波数共用を行うセカンダリシステムとして高速高信頼な無線分散ネットワークとしてCMNの検討を行ってきた.CMNは時間,空間軸で既存の無線LANシステムと高効率な周波数共用を実現する.このとき,環境認識技術として協調センシング法,占有率推定法を用い,効率的な周波数共有のためにダイナミックMACプロトコルとダイナミックルーティング法をCMNは備えている.さらに,CMNは,双方向MIMOやネットワークコーディング技術をとりいれることで,より高い周波数利用効率を達成できる.本稿では,特に環境認識技術である協調センシング法,占有率推定法と,周波数共用技術であるダイナミックMACプロトコル,ダイナミックルーティング法の紹介を行う.さらに,それらを統合したCMNの紹介と,トータルパフォーマンスを評価するために評価用シミュレータを開発したのでそれを紹介する.
著者
東長 靖
出版者
学術雑誌目次速報データベース由来
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.48-64, 1986
被引用文献数
1

Yasushi TONAGA, <i>The Position of Allah in the Divine Self-Manifestation in the Thought of Oneness of Being</i> (<i>Wahdah al-Wujud</i>)—<i>with Special Reference to Kashani and Jili</i>—: Ibn 'Arabkl first formulated the theory of Oneness of Being (<i>Wahdah al-Wujud</i>). His theory was later developed into several versions by his direct and indirect disciples, who are called "the School of Oneness of Being". Kashani (d. ca. 735/1334-35) and Jili (d. ca. 832/1428) are two of them.<br>Kashani divided the process of the divine self-manifestation into five stages as follows: (1) <i>ahadiyah</i> (realm of absolute oneness), (2) <i>wahidiyah</i> (realm of relative oneness), (3) <i>'alam al-jabarut</i> (world of spirits), (4) '<i>alam al-malakut</i> (intermediate world), and (5) <i>'alam al-mulk</i> (phenomenal world). <i>Ahadiyah</i> is the realm of the exclusive essence of the One, while <i>wahidiyah</i> is that of integration of all the names and attributes of God. Regarding Allah as the mediator between the essence of the One and the created world of the many, Kashani located the position of <i>Allah</i> in the level of <i>wahidiyah</i>.<br>Almost a century later, Jill divided the same process into six stages as follows: (1) <i>uluhiyah</i> (divinity), (2) <i>ahadiyah</i>, (3) <i>wahidiyah</i>, (4) <i>rahmaniyah</i> (Compassionateness), (5) <i>rububiyah</i> (Lordship), and (6) maliklyah (Kingship). Emphasizing the supremacy of <i>Allah</i>, Jill located the position of <i>Allah</i> not in <i>wahidiyah</i>, but in <i>uluhiyah</i> which stands above <i>ahadiyah</i>.<br>In order to understand the historical change of the position of <i>Allah</i> between Kashani and Jili, one should take into account 'Ala' al-Dawlah Simnani (d. 736/1336) who, belonging to "the School of Oneness of Witness (<i>Wahdah al-Shuhud</i>)", criticized Kashani based on his conviction that <i>Allah</i> is the highest. I point out that Jill's thought would result from the reaction against Simnani from within the School of Oneness of Being.
著者
青木 美奈 藤田 昌彦 町澤 朗彦 皆川 双葉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.2338-2345, 2001-10-01
被引用文献数
1

サッカード中には, 網膜に写った外界の像は激しく揺れ動いているにもかかわらず, 我々はその動きを知覚することはない.このサッカード抑制という現象について, 従来から様々な実験が行われてきており, その要因には中枢性の抑制説, マスキング説などが考えられてきた.本論文では, 水平サッカード中に色縞のパターンを垂直, 水平にして瞬時呈示し, その判別をさせる実験を行って, サッカード中にも視覚が成立していることを示した.また, 背景輝度を様々に変化させた実験も行い, 輝度差によるマスキングの効果を確認した.これらの実験結果より, サッカード中の知覚が低下する要因として, 主にマスキングが働き, 更に網膜像の濁りや中枢性の抑制も多少なりとも存在し, それらが合成されていることを単一の実験手法で確認できた.
著者
馬場 俊輔 山田 陽一 日和 千秋
出版者
(財)先端医療振興財団
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究においては、培養細胞と生体吸収性足場技術を利用して、新生骨の力学的機能を考慮した足場を開発することにある。足場は、天然歯やインプラント周囲欠損部に対する治療において骨芽細胞の発育を促し、また細胞だけでは十分な量が得られない場合はそれらを補填するために用いるものであるが、現在市販されている足場であるハイドロキシアパタイトやリン酸カルシウム系材料は骨の再生能の点において満足できるものではなく、さらに骨細胞形成能においても評価できるものではない。これらの問題点は、自己由来の骨芽細胞と足場の組み合わせによって、細胞成長能を十分に促進させることができないことにある。さらに、これらの足場は、足場としての機能を考えた場合、生体に埋植後、一定期間に自分の骨に置き換わることを期待する生体吸収性足場ではないことから、吸収性が備わり、さらに内部の気孔性が高く、骨芽細胞や血管が進入しやすく、加えて口腔内で咬合力を負担しうる強度を有する構造でなければ、再生骨を機能的に評価することは困難である。今回の研究では、この問題を解決するために、エナメル質、セメント質、歯根膜、歯槽骨の起源である自己由来の未分化問葉系幹細胞(MSCs)と最適化設計した生体吸収性足場を用いて咬合支持に耐えられる培養骨を開発し、天然歯の周囲骨、歯槽骨はもちろんのことインプラント周囲の骨を再生させる点に特徴がある。今回の研究においては生体吸収性の足場を設計することにより、培養骨芽細胞の活性度に応じた足場材の構造を最適化することができ、より効率的骨再生に加え、創傷治癒、骨形成促進作用も期待できる足場を開発した。PRPと細胞の関係や、これまでの臨床研究の結果を参考にして、カゴ状の編み込み型足場に細胞を播種する計画を策定した。これは組織再生用足場としてPLA繊維1本で編み上げた織物構造体の足場で、カゴ形状で内部に空洞を有しており,ここに細胞を入れることにより細胞の着床率を上げ,大きな欠損部に用いる目的で作成したものであり、現在実用化されているものは細胞をスカフォールドの内部まで播種することが困難であるが,このスカフォールドは開口部を有しており,臨床時に内部に播種して必要寸法に切断することが可能で,手術時に欠損部に合わせて形成できる.また,スカフォールドと欠損部の界面で体液が循環できる構造となっている点で有用である。ここに播種する細胞の最適化を計るべく、細胞培養条件の検討も行った結果、足場に播種する細胞の接着効率だけからではなく、足場の力学特性も関与させる必要があることが明らかとなった。さらに、曲げ強度に問題があり操作性を向上させる必要から、PLA繊維の周囲にPCLのバインダーで強度を補った。また,ヒト問葉系幹細胞をかご型スカフォールドに接着させ、培養を行った。その結果、PLAで製造されたスカフォールドの生分解速度は遅く、細胞の増殖及び骨系への分化誘導が可能であったがスカフォールドは6ヶ月以上の長期に亘り外形を保持されたままであった。これらのことから、スカフォールドの吸収分解速度と培養骨芽細胞の骨再生速度の調節が重要な課題となったため、PLA繊維のin Vivoにおける挙動を確認するための動物実験をしたところ12週間で骨の再生が確認され足場の吸収も確認された。細胞のみの移植と比較しても良好な結果が得られた。
著者
武田 弘道
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.462-473, 1957
著者
澤井 努
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 = Journal of religious studies (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.87, no.3, pp.549-571, 2013-12

本稿では、江戸時代中期の市井に生きた思想家、石田梅岩(一六八五-一七四四)の思想に注目し、「儒者」と称した彼が生と死に関する実存的な問いにいかに向き合ったのかを明らかにした。従来、儒教の主たる関心事は、概して死、死者、死後の世界など死に関わる問題ではなく、現生、今現に生きている人間など生に関わる問題にあるとされてきた。しかしながら、梅岩が著したテクストを踏まえれば、生とは何か、死とは何か、という実存的な問いに対して、彼がむしろ真摯に向き合った跡を読み取ることができる。それは、具体的に「心」を知るという修行、すなわち、宇宙論的に生と死の意味を捉えなおすことによって行われた。本稿では梅岩が周〓渓による「太極」の生成論を基本的に踏襲していることを確認したうえで、彼が死後の「霊」の存在について如何に解釈したのかについても言及した。「不生不滅」の議論を踏まえれば、死後も「性」はそのままその場に止まる。また、梅岩独自の言語観(「名」が存在を存在せしめる)に基づけば、生者が死者の存在を「霊」と名づけ、その「霊」を誠意を持って祭る場合に「霊」は確かに存在するのであった。
著者
山口 恵照
出版者
大阪大学
雑誌
大阪大學文學部紀要 (ISSN:04721373)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.143-268, 1957-03-25

The system of the Samkhya-philosophy, which is inherent in the Samkhakarika text by Isvarakrisna, is one of the most excellent of the Brahmanical philosophies (darsana). What is the essential character of that system as a system of philosophy? This point has not been perfectly cleared up until now. The system of Samkhya-philosophy as one of the Indian philosophies should not be approached, says our writer, simply as a heretical philosophy according to the considerations given to the other world philosophies. This philosophy has hitherto been taken as representing dualism, atheism, realism, etc. But such a characterization is not fair and comprehensive, says Prof. Yamaguchi, as it is too sweeping a generalization. As a matter of fact, the Samkhya-philosophy made an attempt after its own manner to give a solution to the common problems of karma, samsara and moksa that commonly pertained to all the other classical Indian philosophies. We must therefore endeavour to clarify the fundamental principles of the Samkhya-philosophy by trying to study it as a composite whole without any prejudice. Prof. Yamaguchi has here ventured a new interpretation of the Samkhya-karika through a textual criticism of it and asserts that the system of Samkhya-philosophy embodies statement, definitions and exposition of the three fundamental principles which are respectively known as vyakta (mahadadi), avyakta (prakriti or pradhana) and purusa (jna). In the present article accordingly Prof. Yamaguchi treats of his subject under the following headings: I. Introduction. II. The System of the Samkhya-philosophy and its Logic (pramana). III. Exposition of vyakta, avyakta and purusa. IV. Conclusion.
著者
佐々木 広美(池澤広美) 秋山 昌範 稲葉 修 上島 励 鎌田 洸一 川名 美佐男 堤 徳郎 芳賀 拓真 吉村 武雄 茅根 重夫
出版者
ミュージアムパーク茨城県自然博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

茨城県の貝類相の実態を明らかにするため、市民参加型調査の他、現地調査やコレクション調査など、様々な方法を通して調査を実施した。その結果、約390種、約4,400点の海産貝類コレクションが同定・整理されただけでなく、約40種の淡水産貝類、約80種の陸産貝類が確認された。また、市民参加型調査によって、農産物に被害を与える外来の陸産貝類の茨城県内の分布状況が明らかになった。これらの成果は博物館の企画展の展示や刊行物を通して広く一般に公開されるとともに、改訂版の茨城県レッドリスト種を選定するための基礎資料として活用された。
著者
九鬼 潤一 戸田 和之 山本 誠
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
年次大会講演論文集 : JSME annual meeting
巻号頁・発行日
vol.2002, no.3, pp.297-298, 2002-09-20

Sand erosion is a phenomenon where a solid particle impinging to a wall causes to damage to a part of the wall. It occurs on the wall in a lot of machines such as airplane, ship and pump. It is well known that performance and lifetime of the equipment are severely degraded due to sand erosion. In this study, we compute sand erosion phenomena in a particle separator which is implemented into the propulsion system of a helicopter, in order to clarity the change of surface geometry and flowfield and the influence on the separator effectiveness with the proceeding of erosion. Moreover, we reveal the difference of the trajectories when material and particle diameter is parametrically changed.
著者
田中 英道 尾崎 彰宏 有賀 祥隆 松本 宣郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、研究代表者が日本と西洋の古典主義を比較検討する作業を行っている。とくに、本年度は、代表者がドイツに長期で滞在する機会を得たため、ドイツ・ゴシック美術と日本美術の関係について詳細な報告をおこなった。古典主義が美術表現にどのような形で表れてくるのか、研究分担者が、それぞれの専門領域からアプローチし、それぞれの成果はやはり研究報告書にまとめられた。古代を担当する松本宣郎は、「古代ローマの美術政策」に光を当てている。ローマ美術、わけてもアウグストゥスの元首政の時代のローマ建築や美術に関する最近の研究に依拠して、「古典美術」が元首・皇帝の政策と関わって展開した状況を概観している。イタリアを担当する森雅彦は、「プッサンとアカデミー」の問題に絞り、古典主義の美術理論とプッサンの芸術との関連性をアカデミーという場に求め、詳細な分析をおこなった。足達薫は、パルミジアニーノの作品における古代に焦点を当て、マニエリスムと古典主義の関係に新たな視点を提供した。元木幸一は、ドイツ美術の古典主義美術の大御所、デューラーの芸術表現にいかに古代が強く作用していたかを改めて検証している。尾崎彰宏は、17世紀オランダ美術の代表的画家、「レンブラントのメランコリー」に絞った検討を行った。古代ギリシアに端を発するこの「メランコリー」理論は、ルネサンスに隆盛を極め、バロックの時代にまでその影響は残っている。その代表格がレンブラントの作品である。この視点は長らく等閑に付されてきた。
著者
陳 商ウック (2009) 陳 商[ウック] (2008)
出版者
名古屋大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本研究は、東京ドームで一般によく知られている膜構造物に導入されている膜張力の大きさを定量的に、二軸方向別々に、高い精度で測定でき、かつ現場で使用できる膜張力測定装置を完成した上、多様な膜構造物の張力を実際に測定することにより、膜構造物において、膜張力の維持管理の現状を把握し、張力の維持管理に適するシステムを提案することを目標としている。その二年目(平成21年度)の研究課題及び成果は、一年度目に完成した小型・軽量の膜張力測定装置を用い、竣工中および竣工後の、様々な形式の膜構造物を対象に膜張力測定を行うことにより、その膜面に設計通りの張力が導入されているか否か、また、経年変化によりどの程度の応力緩和が起きているのかを把握するのである。それに基づき、膜構造物の経年に伴って膜張力が設計どおりに維持・管理できるシステムの提案を目標とする。一年度目には膜張力測定装置が現場で容易に利用できるよう、可搬性や小型・軽量性を満足するコンパクトな装置を完成した。完成した小型・軽量の測定装置を現場で無理なく利用するため、実験室において測定装置の検証実験を行うことによりその精度を検証した。さらに、横浜国立大学内に建設された二重ETFE膜構造物の張力測定を行うほか、これまで行った実在する膜構造物の張力測定により、ほとんどの膜構造が設計通りの膜張力が導入されており、膜張力の維持管理が問題なく行われていることが分かった。これも本装置により、膜張力が定量的に、さらに精度良く測定できたことにより得られた結果である。今まで行われて来た膜張力の維持・管理は、その多くが膜構造物の点検者による目視、または手で触れることなどによる感触や勘に頼らざるを得なかったが、本膜張力測定装置の開発により、科学的ツールの現場提供が可能となった。