著者
杉本 尚次
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.279-294, 1961-05-01 (Released:2008-12-24)
参考文献数
31

西日本における民家間取型の分布把握に重点をおき,生活との関連やその伝播径路さらに変化過程といつたダイナミックな面にも留意しつつ民家間取型に表われた地域的特性を明らかにしようとした. 民家母屋内部の平面構造(間取)は,居住部分のヘヤ割リ,ヘヤの機能(室名,イロリ),土間の機能.(ウマヤ)に分解した. (1) 居住部分は全国的に田字型の四間取りが最も普遍的で,その他に東北・北陸の広間型との関連が考えられる広間的間取・妻入型・土間狭小型・二棟造(南九州・南西諸島)・変型(クド造リ・つのや)の6タイプが区分され,その巨視的な分布圏が判明した. (2) 同一室名の分布を探ることによつて文化圏や伝播径路を把握することも可能である.本稿では特徴ある2~3例を示す.また名称の変化を通して農村生活の変化過程を考察することも出来る.イロリは山陰から中国山地に卓越するが,大部分の地域では小規模火鉢的機能であり,東北日本ほどの重要性はない. (3) ウチマヤは減少の傾向にあるが,分布が牧牛地域と一致し,経済生活を反映した型であること,山間農村では生活機能が母屋の中に集積する特徴がある. (4) 間取型の分析による地域性の把握は家屋自身多くの要素の集積されたものであり,本稿では巨視的考察の段階である.
著者
福島 駿介 小倉 暢之 屋比久 祐盛 山里 将樹
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅建築研究所報 (ISSN:02865947)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.385-394, 1986 (Released:2018-05-01)

本研究は沖縄における民家の発展過程を木工技術に着目し,歴史的,地域的背景との関わりにおいて総合的に明らかにしようとするものであり,これまで沖縄の文化史の中で断片的に扱われてきた木工技術を中心とする民家の発展過程に少しでも脈絡を与える事を意図している。本章は7章よりなるが,第1章「研究の目的と背景」では琉球王朝の中国及び日本との関わりと,その政策的背景の歴史を概観し,第2章「調査概要」で実地調査の方法,対象を説明している。第3章「民家形態」では沖縄において穴屋と貫屋が相互に関わり合いながら発展してきた様子を述べ,日本本土との長い影響関係の中で定着した貫屋技術について沖縄の風土に対する独特な構法的,形態的対応の様子を明らかにした。第4章「木工技術の継承」では沖縄の木工技術と職人の歴史は中国よりむしろ日本本土との交流に負うところが多い事,そしてその関係もかなり古く遡り得ることを明らかにした。又,沖縄における様々な構法的特色について述べている。第5章「建築材料」では大径材の不足する沖縄における行政的努カの過程と用材入手の歴史的,地域的な経路について述べ,又,木材入手の困難さと経済的要因に対応して用材確保と耐久性増加のための工夫がなされている事を明らかにした。第6章「建築儀礼と生産組織」では,沖縄においてみられる様々な建築的仕来りに,構法における場合と異なり,中国の風水等の影響が強く表われている事,そして沖縄における結組織とその建築生産過程への関わり方について明らかにした。
著者
太田 静六
出版者
一般社団法人 日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
vol.323, pp.134-141, 1983-01-30 (Released:2017-08-22)

I studied about all style of the ranged country house, "Futamunezukuri" at the Loochoo Island and southern Kyushu.
著者
小野 一穂
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.604-607, 2014 (Released:2016-08-27)
参考文献数
11
被引用文献数
1
著者
坂本 佑太朗 柴山 直
出版者
日本分類学会
雑誌
データ分析の理論と応用 (ISSN:21864195)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.31-45, 2017-03-01 (Released:2020-04-02)
参考文献数
37

テストが測定すべき心理学的な特性が多様化してくるにしたがって,「テスト(項目)はそもそも何を測っているのか」という構成概念に関する精緻な検証が求められている.最近では,その手段として多次元IRTが注目されてきており,これまでそれほど測定論的な関心が注がれてこなかったテストの下位領域についての定量的な検証の必要性も指摘されている.そこで本研究では,わが国の学習指導要領に則って作成された平成18年度新潟県全県学力調査における中学校2年生数学データ (N=9,102)に対して,多次元IRTを使って下位領域特有の影響について定量的に検証した例を示す.その結果,テスト全体が測定する「数学力」よりも下位領域特有の影響を強く受けている項目は25項目中2項目存在し,その内容は定性的な観点からも妥当であることが確認できた.つまり,多次元IRTを用いることにより,テスト項目の測定内容に関して項目レベルで次元に応じた情報が得られることを意味し,今後のテストデータ分析においても,単にIRTモデルを適用するだけではなく,多次元IRT分析にもとづくより精緻な妥当性検証が可能であることが示された.
著者
松岡 耕史 三沢 幸史 横山 雄一 島田 真太郎 伊藤 富英
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.377-384, 2021-06-15 (Released:2021-06-15)
参考文献数
21

アームサポートであるMOMOは,主に神経難病患者に対して利用されているが,回復期リハビリテーション病棟での利用報告はほとんどない.そこで,MOMOを回復期リハビリテーション病棟入院中の脳血管障害患者や脊髄損傷患者4例に対して,日常生活における生活支援機器と,訓練におけるリハビリテーション機器として利用し,MOMOの活用方法について検討した.その結果,スプーンやパーソナルコンピュータの操作など,生活動作で利用できた他,上肢訓練の補助機器として利用することができた.これらより,MOMOは,回復期リハビリテーション病棟の対象者に対して,生活支援機器やリハビリテーション機器として活用できる可能性が考えられた.
著者
中田 光俊
出版者
Kinki Brain Tumor Pathology Conference
雑誌
Neuro-Oncologyの進歩 (ISSN:18800742)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.1-8, 2017-02-08 (Released:2017-02-08)
参考文献数
27

Drug repositioning refers to the discovery of new indications for approved or failed drugs and the application of the newly identified drugs to the management of diseases other than the drug’s intended disease. It reduces the risk of developmental failure, cost, and time of development. In this review, candidate drugs identified so far based on drug repositioning for malignant glioma are summarized.
著者
深林 太計志 柴田 廣光 杉浦 聡 渡辺 淳二
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.675-682, 1997-09-01 (Released:2017-06-02)

本論文では極零型分析による零点パラメータから求まる零点ケプストラム係数を用いる基本特徴ベクトルの四つの構成法について, 有声子音認識におけるその有効性を検討した。その結果, 極零点ケプストラム係数と零点ケプストラム係数から構成される基本特徴ベクトルのような, 零点ケプストラム係数をそれ独自で特徴ベクトルの成分とする方法がよい結果をもたらすことを示した。このような特徴ベクトルを用いると, 従来のLPCケプストラム係数を成分とする基本特徴ベクトルを用いる場合に比べ, 有声子音認識において, どの音素に対してもよい認識結果となること, ほとんどの話者に対しても, 認識結果がよくなることを示した。
著者
Norio Ogata Hideaki Tagishi Motonori Tsuji
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.1193-1200, 2020-12-01 (Released:2020-12-01)
参考文献数
41
被引用文献数
3

Anisakiasis is common in countries where raw or incompletely cooked marine fish are consumed. Currently, effective therapeutic methods to treat anisakiasis are unavailable. A recent study found that wood creosote inactivates the movement of Anisakis species. Essential oil of Origanum compactum containing carvacrol and thymol, which are similar to the constituents of wood creosote, was reported to inactivate Anisakis by inhibiting its acetylcholinesterase. We examined whether wood creosote can also inhibit acetylcholinesterase. We examined the effect of components of wood creosote using the same experimental method. A computer simulation experiment (molecular docking) was also performed. Here, we demonstrate that wood creosote inactivated acetylcholinesterase in a dose-dependent manner with an IC50 of 0.25 mg/mL. Components of wood creosote were also tested individually: 5-methylguaiacol, p-cresol, guaiacol, o-cresol, 2,4-dimethylphenol, m-cresol, phenol and 4-methylguaiacol inactivated the enzyme with an IC50 of 14.0, 5.6, 17.0, 6.3, 3.9, 10.0, 15.2 and 27.2 mM, respectively. The mechanism of acetylcholinesterase inactivation was analyzed using a computer-based molecular docking simulation, which employed a three-dimensional structure of acetylcholinesterase and above phenolic compounds as docking ligands. The simulation indicated that the phenolic compounds bind to the active site of the enzyme, thereby competitively blocking entry of the substrate acetylcholine. These findings suggest that the mechanism for the inactivation of Anisakis movement by wood creosote is due to inhibition of acetylcholinesterase needed for motor neuron activity.
著者
久保 高明 安田 大典 渡邊 智 石澤 太市 綱川 光男 谷野 伸吾 飯山 準一
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.80, no.3, pp.124-134, 2017-10-31 (Released:2017-12-21)
参考文献数
49

背景:頻回のバスタブ浴を行う日本の中高年者は,睡眠の質やメンタル面が良好であるとの諸家の報告がある.  目的:本研究の目的は,大学生の入浴スタイル(シャワー浴,バスタブ浴,無機塩類含有炭酸ガス入浴剤添加浴)の違いが,睡眠と気分・感情に及ぼす影響を検討することである.  対象と方法:普段シャワー浴のみの健常学生20名(平均年齢20.3±2.1歳)を対象とし,41℃の浴槽に肩まで浸漬し10分間入浴する群(BB)と,前述の浴槽に無機塩類含有炭酸ガス入浴剤常用量30gを添加し入浴する群(BBK)について,各々を2週間で実施するcrossover研究を行った.なおwashout期間を2週間とし,研究開始の1週間前からのアンケート調査を含めて,計7週間の研究を2015年10~12月に実施した.計測項目は睡眠に関するものはOSA睡眠感調査票MA版(OSA-MA)および1ch式ポータブル睡眠脳波計(EEG)で,OSA-MAは毎朝記載させ,EEGは毎就寝中に計測した.気分・感情に関するものは日本語版Profile of Mood States短縮版(POMS),うつ病自己評価尺度(SDS),やる気スコア(AS)で2週間ごとの計4回記載させた.  結果:睡眠について,OSA-MAの「起床時眠気」と「疲労回復」はシャワー浴に比べBBKで有意差を認めた.EEGについては有意差を認めなかった.気分・感情について,POMSのT得点は,シャワー浴に比べBBで活気(V)が有意に値が高かった.そしてシャワー浴に比べBBKで活気(V)が有意に値が高く,疲労(F)で有意に値が低かった.POMSのtotal mood disturbance (TMD)スコアは,シャワー浴に比べ,BBおよびBBKで有意に値が低かった.SDSスコアはシャワー浴に比べBBKで有意に値が低かった.ASはシャワー浴に比べBBおよびBBKで有意に値が低かった.  考察:睡眠については,BBKでは炭酸ガスによる血管拡張作用や無機塩類による浴後保温持続効果,そして香りや色調による疲労軽減・活力低下予防効果がOSA-MAの主観的評価に影響を及ぼしたと考えた.気分・感情については,睡眠脳波では有意な差を認めなかったため,睡眠とは独立した因子,すなわち温熱暴露習慣が気分や感情に関する中枢神経機能に影響を及ぼしたものと考えた.  結論:シャワー浴習慣からバスタブ浴習慣に行動変容することは,健常学生のメンタルヘルスを向上させる.
著者
田中 志帆
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.74-91, 2020-03-30 (Released:2020-11-03)
参考文献数
85
被引用文献数
1

本稿では,2018年6月から2019年6月まで(一部2017年を含む)に発刊された,臨床心理学領域の論文を概観した。まず,初の国家資格者である「公認心理師」が誕生した年であるため,臨床心理学の各学派と職域で,心の健康についての共通認識を持つことが重要な課題であることを論じた。次に日本教育心理学会第61回総会の研究報告とシンポジウムについて述べ,続いて臨床心理学分野の主要5領域ごとに,7つの学会誌に掲載された65本の学術論文の内容と意義について論じた。選定にあたり,国民の心の健康の保持増進に役立つもの,社会的に周知する意義のあるものを基準とした。そして,臨床心理学の研究において,心の健康の理解と探索のためには,「獲得と受容」「個と集団の相互作用の健全化」「心身の安全と主体性の保障」の3つの観点が重要であることを述べた。
著者
小林 拓 日比 紀文
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.5-11, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
13
被引用文献数
4

炎症性腸疾患とは通常潰瘍性大腸炎とCrohn病を指す.いまだ根本原因は解明されていないが,近年の研究の成果により,遺伝的素因,環境因子,免疫学的異常が絡み合って発症すると考えられている.わが国でも患者数は増加の一途を辿っており,潰瘍性大腸炎は9万人超,Crohn病も2万人超が罹患している.若年者が多いことから,患者本人だけでなく社会的損失も見逃すことはできず,今後さらなる病態解明,治療の進歩が待たれる.