著者
菅野 了次 田村 和久 平山 雅章 鈴木 耕太 小林 玄器 森 大輔
出版者
東京工業大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

エネルギーデバイスへ応用可能な新しいイオニクス材料の開発を行った。古典的な材料探索に加え、理論科学、情報科学との連携により、材料探索の新しい指針を検討した。新しいイオン導電種であるヒドリド導電体を開発し、全固体型のデバイス用電解質としての応用可能性を見出すことができた。量子ビームを使ったナノ界面解析では、数nmスケールの電気化学界面構造とデバイス性能との相関と制御指針を見出すことができた。既知構造を利用した探索により、リチウムイオン、酸化物イオンが拡散する固体電解質を開発した。さらに、情報科学の手法を用いて新組成、新構造を有する材料探索にも着手し、その課題と展開可能性を提示することができた。
著者
寺内 康夫
出版者
横浜市立大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

グルコースシグナルやAMPKを介したインクレチン受容体の発現および膜移行制御機構を検討した。細胞外グルコース濃度上昇により単離膵島においてインクレチン受容体の発現が上昇した。また、グルコースシグナルを増強するGKAによっても膵島におけるインクレチン受容体の発現は上昇した。さらに、グルコース濃度上昇およびグルコキナーゼ活性化薬添加のどちらにおいてもAMPKが脱リン酸化されることも確認した。一方、単離膵島においてAMPK阻害薬により、インクレチン受容体の発現が上昇した。以上の成績より、グルコースシグナルによりAMPKの脱リン酸化を介して、インクレチン受容体の発現を上昇させることが想定された。
著者
川上 綾子 秋山 良介
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.109-112, 2006
参考文献数
7
被引用文献数
1

授業の計画・実施・評価の各段階における教師の行為(教授スキル)に対する重要度の評価について教師及び教職志望学生を対象に調査し,授業経験によるその違いを検討した.調査の結果,「1.個々の子どもへの対応」「2.授業中の学習活動の指示と評価」「3.授業評価」「4.学習方法の計画」「5.目標の設定と効果的達成」「6.話し方」「7.教材研究」の7因子が見いだされた.それらについて学生と教師の比較を行ったところ第2因子と第5因子で因子得点に差が認められた.また,教育実習経験と教職経験年数に基づくさらに詳細な比較では,第1因子,第2因子,第5因子で授業経験による違いが見いだされた.
著者
内田 智士
出版者
東京大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2013-08-30

劇症肝炎、脳梗塞、心筋梗塞など様々な難治性疾患に過剰な細胞死が深く関わっている。遺伝子治療を用いることで、細胞死を抑制する因子を生体へ持続的に供給することが可能である。従来、遺伝子治療ではDNAの導入が行われてきたが、本研究ではより安全性の高い方法であるメッセンジャーRNA (mRNA)導入を用いて、細胞死を抑制する治療を行った。劇症肝炎モデルマウスを用いた実験で、mRNA導入がDNA導入と比べて高い治療効果を示したことから、本治療戦略の有効性が示された。
著者
中澤 晶子
出版者
日本細菌学会
雑誌
日本細菌学雑誌 (ISSN:00214930)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.557-572, 2001-11-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
102
被引用文献数
1 1

私は共同研究者と共に, ヘリコバクター・ピロリのウレアーゼ遺伝子を特異的に破壊し, 欠損株は胃内に定着できないことを, ヌードマウス感染モデルを用いて証明した。また本菌が尿素走化性と炭酸水素イオン走化性を持つこと, 運動は粘液中で亢進すること, 粘液中での運動にはウレアーゼが必要であることを明らかにした。さらにウレアーゼオペロンの転写産物解析により, 酵素活性化の最終段階で働く蛋白遺伝子mRNAが, 中性で分解され酸性で安定化されることを明らかにした。これらの成績から私は, ヘリコバクター・ピロリの持続感染機構として, 胃粘膜細胞表層の中性領域で分裂したウレアーゼ活性が低い細菌が, 粘膜表層から遊離し胃酸に曝露されると, ウレアーゼが活性化されて酸を中和できること, 粘液層の細菌は, 尿素走化性と炭酸水素イオン走化性によって粘膜表層に回帰し, 再び分裂するというライフサイクルモデルを提唱した。
著者
沼倉 宏
出版者
大阪府立大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

ガラス固体では,熱的ガラス転移温度に近い温度において構成原子・分子が熱揺動することによる粘弾性的挙動(α緩和と呼ばれる)が観測されるが,それよりも低い温度領域(あるいは高い周波数領域)において,それとはやや異なるメカニズムによる可逆的な力学緩和が観測されることがある.これはβ緩和とよばれ,金属ガラスにおいても最近Pd_<43>Cu_<27>Ni_<10>P_<20>合金において報告されている(Pelletierら,2002).本研究代表者がこれまで調べた結果によればZr-Al-Ni-Cuガラスにおいてはこの緩和現象は観測されず,一方pd_<42.5>Cu_<30>Ni_<7.5>p_<20>ガラスにおいては明瞭に現れる.本研究では後者におけるβ緩和をサブレソナンス強制振動法による動的剪断弾性率測定により詳細に調べた.β緩和は温度150℃から240℃の範囲では振動数10^<-3>Hzから10^0Hzに現れ,振動数スペクトルは幅は広いが対称であり,著しい非対称性を示すa緩和とは様相が異なる.今回は粘弾性モデルではなく擬弾性(anelasticity)モデルを用いて緩和時間の分布を考慮に入れて緩和スペクトルを解析した.緩和時間の逆数はアレニウス則に従い,その熱活性化パラメターは,振動数因子10^<12±1>s^<-1>,活性化エネルギー1.11±0.06 evであった.これらは結晶中の原子の拡散素過程における値と同程度であり,固体結晶における点欠陥の応力誘起再配向(短距離拡散)と同様なメカニズムが推測される.
著者
打越 正行
出版者
首都大学東京・都立大学社会学研究会
雑誌
社会学論考
巻号頁・発行日
no.32, pp.55-81, 2011-10

社会学では,小集団で展開される対面的相互行為の多様性や,その多様な現実を行為者が認識する際に用いる枠組の可変性が議論されてきた.それに対して,本稿では対面的相互行為が小集団にある資源とその集団の規模によって支えられていることに着目する.それによって,対面的相E行為の多様性や枠組の可変性は,小集団の資源や規模といった〈土台〉によって規定されていることを示す.現在の沖縄の暴走族少年らは,家族,学校,地域に必ずしも安定した基盤を持たず,加えて労働市場では流動的な労働力として扱われる.そのような彼らが,行き着く場所である〈地元〉が,直接的相互作用を支える資源と規模を備えた〈土台〉になる過程を,そこで展開される文化の継承過程をもとにみる.まずは彼らが〈地元〉に集まり,さまざまな活動を展開する際に必要最低限の資源に着目する.最終的に〈地元〉に行き着いた彼らは,共有する文化や物語以前に,まずはそこに継続的に集うための資源が欠かせない.続いて,それらの資源を有効に用いるために, 〈地元〉が適切な規模にあることに着目する.それらの資源はもともと廃棄物か流通品であったが,〈地元〉にあることによって,有効な資源となる.よって,規模が適切でないと,それらの資源は再び無効化されてしまう.以上のような実体的な資源と規模を備えた〈地元〉によって,〈地元〉における彼らの対面的相互行為は支えられていることを確認した.In sociological small groups studies , diversity offace-to-face interaction and variability of frame which actors usein recognizing the diverse realities have been discussed. On theother hand, in this thesis we focus on the point that face-to-faceinteractions are supported by resources in the group and its scale.Therefore we reveal that diversity of face-to-face interactions andvariability of frame are determined by base , resources in the groupand its scale.Now Okinawan Bosozoku youths do not necessarilyhave stable foundations in family, school and region. In addition ,they are treated as frequent labor forces in labor market. Bosozokuis a motorcycle gang group in Japan. Based on successionprocesses of cultures in Jimoto , we inspect the process that Jimotothey finish becomes base furnishing resource and scale supportingface-to-face interaction. Jimoto is a place they survive withregular members at fixed periods.First we aim at bare resources in Jimoto for they gatherthere , and practice some activities. For them finishing in Jimoto ,before sharing cultures and narratives , resources are necessary forcontinuously gathering there. Next for using them usefully, we aimat appropriate scale of Jimoto. Those resources were originallyoff-scourings in capitalist society or ubiquitous goods incirculation , but in Jimoto are usefu1. Consequently if the scale isnot appropriate , those resources become invalid again. Ultimatelywe confirmed that their face-to-face interactions are supported bybase fumishing material resources in Jimoto and its scale.
著者
下野 裕之
出版者
岩手大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

北日本のコメ生産は冷害が制約し続けており,その被害軽減には耐冷性を強化した品種の効率的な選抜が不可欠である.そのため,近年,育成された極めて高い耐冷性を持つ中間母本系統「東北PL3」が持つ耐冷性QTLを特定し,その機能解明を行うことを目的とした.「東北PL3」と「アキヒカリ」の組み換え近交系統(215系統,F8世代)についてQTL解析を行ったところ,第5,12染色体に有意なQTLが検出された.第12染色体のQTLは,低温ストレス下で葯長を維持しやすい形質を,第5染色体のQTLは,同一の葯長あたりの受精効率を維持する形質と関わることが示された.
著者
中原 賢一 松下 哲 山之内 博 大川 真一郎 江崎 行芳 小澤 利男
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.285-291, 1997-04-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
7
被引用文献数
2

剖検例において, 生前には狭心症状を認めなかったにも関わらず, 著しい冠動脈硬化所見を認めることがある. この無症候性の原因として, 高齢者では心病変のみならず, 脳血管障害をはじめ多くの因子の関与が推測される. 本研究では剖検例を用いて高齢者の無症候性に関わる因子, 予後, 診断について検討した.770例の高齢者連続剖検例を母集団とし, 冠狭窄指数 (冠狭窄度は100%もしくは95%を5, 90%を4.5, 75%を4, 50%を3, 25%を2, 狭窄のない石灰化を1, 正常を0. 冠狭窄指数=3枝の合計) を用い, 次の検討を行った. まず心筋虚血をおこすに充分な冠動脈狭窄の条件を決定する目的で, 冠狭窄指数が10以上かつ狭心症のある症例を分析した. 次に心筋虚血をおこすに充分な条件を満たした症例を狭心症の有無で2群に分け, 1) 予後, 2) 心筋病変の差, 3) 脳血管障害の影響, 4) ADL (Activity of daily living) の差, 5) コミュニケーション障害の有無, 6) 糖尿病の有無, 7) 安静時心電図診断を分析した. またコントロール群として冠狭窄指数10未満の例86例を用いた.狭心症を有した31例を検討し, 最大狭窄度は5かつ冠狭窄指数13以上を心筋虚血を起こすに充分な条件と考え, 770例中二つの条件を満たす症例を選出した. その結果狭心症群24例, 無症候群92例が該当し,この2群を比較した. 1) 心筋梗塞が直接死因となったのは狭心症群67%, 無症候群27%で共に死因中最も多かったが, 頻度には差が見られた (p<0.01). 2) 心筋梗塞の発症率および心内膜下梗塞は狭心症群に多く, 下壁梗塞および小梗塞 (2cm未満) は無症候群に多かった. 3) 無症候群には脳血管障害の合併率が高く, 大きさでは中型病変が多かった。4) 無症候群には, ADLの低い症例, コミュニケーション障害例が多かった. 5) 糖尿病の合併率は狭心症群に高かった. 6) 安静時心電図の比較では, 陳旧性心筋梗塞の所見は, 狭心症群に最も多く, 次いで無症候群で, 共にコントロール群に比し多かった. 虚血性ST低下は3群間に差は認められなかった. むしろ無症候群および狭心症群を含めた重症冠動脈疾患群に左室肥大の診断が有意に多かった. 心房細動が無症候群に多い傾向にあった.高齢者においては心病変と共に, 脳血管障害, ADL, コミュニケーション障害が心筋虚血の無症候性に重要な意味を持つことが明らかになった. 高齢者では冠動脈病変はむしろ存在することが普通であり, 特に脳血管障害のある症例では狭心症状の有無に関わらず, 心筋虚血を探知する努力が必要である.
著者
斉藤 勉
出版者
日本医科大学医学会
雑誌
日本医科大学雑誌 (ISSN:00480444)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.74-85, 1991-02-15 (Released:2010-12-22)
参考文献数
50

内科的治療により胸痛発作が認められないST下降型狭心症93例と心筋梗塞160例の長期予後とその規定因子について, ホルター心電図, トレッドミル運動負荷試験成績および冠動脈造影所見を用い生命表法とCox型重回帰分析法にて解析し, ホルター心電図にて検出されたsilent myocardial ischemiaの臨床的および予後的意義を検討した結果, 以下の成績を得た.1) 狭心症および心筋梗塞群における心事故発生率はそれぞれ19%, 18%であり, 有意な予後規定因子は狭心症群にて多枝病変, asynergy, silent myocardialischemia, 運動負荷試験によるST下降の順であり, 心筋梗塞群ではsilent myocardial ischemia, 多枝病変の順で両群ともに, 多枝病変とsilent myocardialischemiaが独立した予後規定因子であった.2) Silent myocardial ischemiaを有する狭心症および心筋梗塞の頻度はそれぞれ30%, 38%であり, 諸家の報告とほぼ同頻度であった.3) 心事故発生率は狭心症, 心筋梗塞群ともにsilentmyocardial ischemia非出現群に比し出現群で高く, 心筋梗塞群では有意であった. また, その内訳は狭心症群では冠血行再建術が最も多く, 心筋梗塞群では再梗塞が多かった.4) Silent myocardial ischemia出現群の予後規定因子は狭心症群では多枝障害, 運動時間の短縮, asynergyの存在, 運動負荷試験による狭心症出現であるのに対し, 心筋梗塞群では左室駆出分画の低下, ホルター心電図における最大ST下降度であった.以上より, silent myocardial ischemiaは冠動脈疾患における心事故発生の重要な規定因子であり, silentmyocardial ischemia出現例の心事故発生率は非出現例に比し高かった. 心事故の内訳は狭心症群では冠血行再建術施行例が多く重症な合併症は少なかったのに対し, 心筋梗塞群では再梗塞が多く予後は不良であった. したがって, 心筋梗塞群では症状の有無にかかわらずSMI例に対し早期から積極的に冠血行再建術を施行すべきであると考える. 一方, SMI出現例における予後規定因子は心筋梗塞の既往の有無により異なることが明らかにされ, 治療対策上十分留意すべきであると結論される.
著者
伴野 祥一 宇都木 敏浩 大野 富雄 加藤 典浩 大島 伸浩 大島 茂
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.715-717, 1989-11-01 (Released:2009-10-15)
参考文献数
8

Asymptomatic myocardial infarction (MI) was found in 8 (3%) of the 274 patients with MI who underwent coronary angiography, and half of them were diabetics. They represented only 7% of all diabetics however. Twenty-four (9%) had new onset angina within 2 weeks before MI. Among them, 9 (38%) were diabetics and they represented 15% of all diabetics. In terms of the incidence of MI with or without angina, except for the new onset group, there was no significant difference between diabetics and non-diabetics. The severity of coronary atherosclerosis was independent of the presence of angina prior to MI. Our results indicated that the incidence of asymptomatic MI in diabetics is not as high as previously believed.
著者
古川 博史 畑 隆登 津島 義正 松本 三明 濱中 荘平 吉鷹 秀範 藤原 恒太郎 黒木 慶一郎 増田 善逸
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.91-96, 1998-02-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
14

1994年3月から1995年10月までに急性心筋梗塞に合併した乳頭筋断裂による僧帽弁閉鎖不全症4例に対し,超急性期(24時間以内)に緊急でMVRを施行した.術前のMRは全例IVで,緊急手術までの補助手段として4例全例にIABPを,3例にPCPSを積極的に使用し血行動態の安定化を図った.術中所見で4例中3例に後乳頭筋断裂が,1例に前乳頭筋断裂が認められた.術後経過は,1例が術後17時間後に左室破裂を発症し術後6日目に多臓器不全にて死亡したが,3例は術後良好に経過し生存退院した.乳頭筋断裂によるMRは急性心筋梗塞に伴う合併症の中で頻度は少ないが,予後不良な合併症の一つである.発症から短時間での超急性期緊急手術までの補助手段としてIABPやPCPSは非常に有効であると考えられる.